幕末・浪漫千香〜どんな時代でも、幸せになれる〜 作:秋藤冨美
一週間後。久しぶりの実家を悶々としながらも堪能していた。落ち着かないので家事をして気を紛らせても、ふとした瞬間藤堂の顔が頭に浮かび。そうしているうちに、お盆だということで御墓参りへと向かうことになった。車内では家族がしきりに千香に話しかけてくるも、千香は千香で藤堂のその後が知りたくて、声さえも耳に入らなかった。それを見かねてか、途中コンビニで好きな飲み物やお菓子を買っても良いと言われても、決して首を縦に振らず。とうとう墓地に着いて、車を降り立ったとき。
「あれ、何かここ前と変わった? 」
どことなく以前来たときと雰囲気が違うように思えた。辺りを見渡しても風景は変わりないのに、何故だろうか。
「ううん。何も変わってないけど。 」
一体何を言っているんだ、とでも言う様に姉が顔を歪めた。千香はそんな嫌味めいた言い方をされるのに慣れていたので、ほうなん。と受け流した。
森宮家の墓は山の中にあって、毎回虫や木を掻い潜りながら急な坂を登っていかなければならない。特に今の時期だと蚊が多いので、予め虫除けスプレーをふっていても意味を成さないことが多い。父、母、姉、千香の順で登り終えると、千香は水道で水を汲みに行った。母は来る途中で買ったハナシバを枯れてしまった花と取り替え。姉は線香を出し、父はライターで線香に火をつけていく。水を汲んで戻って来た千香は、花立てに水を入れ。残った水を墓石にかけた。
「ん。 」
父から火のついた線香を渡され、香炉にさして手を合わせる。他の二人はもう手を合わせた様で、ちょっとくらい待ってくれても。と思ってしまう。しかしすぐさま煩悩を振り払い、胸中で峻三や祖父たち先祖に礼を告げた。皆さんが見守って下さったからこそ、あの時代でも頑張る事が出来ました。と。
「ほんなら、行こか。 」
千香が手を合わせ終わったのを確認し、父が歩き始め。千香もそれに続こうと歩き出したとき。ふと視界に無縁仏が見えた。以前来たときは無かったはずなのに。目を凝らしてみると、大分薄くなってはいるが確かに藤堂の諱である
「よし、とら。...父さん。この仏さんにも手え合わせて良え!? 」
「え。...止めとけや。お前は昔からそういうことするけど、誰のか分からんのじゃけん。 」
千香のただ事では無い様子に、足を止めて振り返るも。父は深く溜め息を吐いた。
「...大事な人のお墓よ。何で無縁仏なんかは分からんけど。 」
「良えよ。手え合わせとかんかい。来年は来れんかもしれんのやけん。父さんも待ったげてん。 」
母は何かを察した様で、父を諌めた。父もあっさりと引き下がり、しかし機嫌の悪そうにそっぽを向いた。姉は千香から藤堂の話を聞いていたので、千香と並んで手を合わせた。
「何も隣にお墓作らんでも、山南さんらに任せたら良かったのにね。 」
「ほんまじゃね。 」
千香の震える肩を、姉が優しく抱いて慰めた。