淫獄都市ブルース   作:ハイカラさんかれあ

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前回までの淫獄都市ブルース<深者の章 後編>

深き者たちと戦い『藤曲邸』に戻り会食を終わらせ探索を始めた秋もとき。
館の執事と使用人の魔の手を辛くも逃れたもときは新たな謎の襲撃者により陥った窮地をオーク、東郷に助けられる。

東郷から井河さくらのいる研究室に行くために必要な特殊な『鍵』の存在を聞き、探索を再開すると屋敷は死者が闊歩する魔境と化していた。
謎の声に導かれ新たなる道へと続く『鍵』、禁忌に至る叡智を求むものだけが読むことを許される魔導書の写本を入手する。

異界へ続く扉を探し当て開いた先にいたのは探し求めたさくらであったが、脅迫的で名状しがたい悪夢の牢獄のような肉壁に取り込まれた彼女は助けに来たもときを認識することすらできない淫獄に沈んでいた。
淫猥な喘ぎ声をあげ続けるさくらが狂気に染まる前にもときは彼女を救い出せるのか?


淫獄都市ブルース<深者の章 完結編>(長編)

鍛治の神が白金を削り出したような美しい指先から伝わる切断の意思を1nm(ナノメートル)のチタン鋼の妖糸は忠実に反映して深き者たちの両目を切り裂いた。

世界を呪う怨嗟の呪文とでもいうべき呻く声は苦痛の絶叫に変わり、叫び声をあげて開かれた口から忍びこんだ糸によって頭部が両断された。

 

「んほぉぉぉぉぉ! わらひこわれるのぉぉぉ!」

「……帰りたくなってきた」

 

死体を操り高速移動する魔犬への障害物としてぶつけて動きが止まった隙に首を落としたもときはさくらの嬌声をBGMとして聞いたことにより自分のやる気がだんだんなくなるのを感じていた。

 

もときは魔導書により作動した館の仕組みにより美術室から続く隠し階段を降りて研究室と思わしき異界としか言いようのない(おぞ)ましく脅迫的で名状し難い場所でさくらを見つけて、どうやって肉塊に取り込まれ状態から解放するか考えていた最中に襲いかかってきた敵の軍勢を倒しつづけていた。

 

数頼みの力押しの相手など対処方法がわかっている現状、もはや敵ではないが周囲の邪悪な狂気に溢れる空間で知人の喘ぎ声を聞きながらの長時間の戦闘は流石に気が滅入ってくる。

 

「しかし良く考えると対魔忍的にアヘらなかった今迄が狂っていたのか? うーん対魔忍とはなんだろう……」

 

狂気の混合光を浴びながら妖糸で敵に死を与えるもときの美しき姿は泥にまみれても決して汚なき輝きを放つ宝石の様に揺るぎなく。

悪夢の様な光景の中でも熟練の指揮者が指揮するオーケストラの様な荘厳さを生み出していた。

流れている曲は鎮魂歌(レクイエム)に違いない。

 

「怪物を殺す怪物か」

「ん?」

 

さくらの嬌声以外の声が聞こえたので糸を振るいながら声の方を向くとカメラやマイクもないがどういう方法かこちらを監視しているであろう藤曲佐兵衛の声が聞こえた。

 

「ああ、どうもこんばんわ」

 

飛び込んできた魔犬を空中に張った糸罠で真っ二つにしたもときは場違いとも言える呑気な声で挨拶をした。

 

「この世のものとは思えん恐ろしい程の美しさだと思っていたが、本当に恐ろしいのはその美貌を一切傷つけずに生きてられる強さの方とはな」

「はぁ」

 

迫りくる死者の群れをスパスパとぶつ切りにしながら気のない返事を返す。

その手の賞賛は今日は天気がいい、悪いという話題くらいに聞き慣れているからである。

 

「『これ』どうにかしてくれません? 一応客人だと思うんですが僕」

 

粘液まみれの深き者の体に糸の先端を束ねて突き刺し(、、、、)体内に入った糸で体表を引き裂き、溢れた血で粘膜が流された部分にすかさず斬撃を放ち切断しながらもときは頼んだ。

 

「ふむ、妻が勝手に呼んだ客とはいえそれもそうじゃな」

 

そういうともときを囲んでいた敵の群れは部屋から出ていき、もときとさくらだけが残された。

 

「らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ビリビリきちゃうのぉぉぉぉぉ!」

「……ついでにこれもどうにかなりません?」

「それはさすがに無理じゃのー」

 

相変わらずのアヘ顔で叫び続けるさくらをもときは嫌そうに見ながら頼むがさすがに断られた。

 

「というか年頃の男が痴態を晒してる女を見て何も思わないのか、ん?」

「んー」

 

そういわれて視線を横にずらす。

 

「んほぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!イッぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

さくらがビクビク痙攣しているのを見て視線を元に戻した。

 

「……ないわー、もしかしてこういう特殊プレイが好み?」

「いや、ないな(キッパリ)」

「誰得な光景なんだこれは……」

「この手のジャンルは好き嫌いがはっきりわかれるが需要はあるじゃろ」

「ほんとぉ?」

 

周囲に腐った人間と魔獣と深き者の死体が積み重なり腐臭と死臭が漂い、有機物か無機物かすらよくわからない謎の物質で構成された装置に囚われてヨダレや涙まみれのだらしない顔でアヘってる少女という、冒涜的な光景で興奮したら多分それは変態を通り越して邪神の眷属よりの感性ではなかろうか?

 

「特殊性癖じゃないならなぜこんな真似を?」

「その対魔忍の娘は儂の周りを嗅ぎ回るだけでなく暴れまわって研究の妨害をしたからな、新たな同胞たちの母体になるべく調教中じゃ」

 

捕まった後のR-18禁な調教は対魔忍の伝統である。

深き者と直接的な家族計画までいってないが準備中であった。

 

「うちの子がすいません、後日反省文を書かせるので連れて行っても?」

「駄目じゃ」

「うちの子がすいません、後日反省文を書かせるので連れて行っても?」

「いいえ」

「うちの子がすいません、後日反省文を書かせるので連れて行っても?」

「いいえ」

「うちの子がすいません、後日反省文を書かせるので連れて行っても?」

「いいえ」

「うちの子がすいま「しつこい!?」 ……ちぇー駄目かー」

 

某国民的RPGの選択肢ループ作戦は通じなかったようである*1

 

「そもそも何かしてもらうのに対価もなしとかありえんじゃろ」

 

ぶぅ…じゃなく、ぐぅの音も出ない正論である。

 

「未成年を拉致監禁して調教してる人に一般論をいわれても」

 

――もっとも普通の一般人でなく逸脱人に言われても説得力はなかった。

 

「対価ねー、……僕の自撮りブロマイドとか」

 

あまりの美貌にカメラマンが凝視すると恍惚とするため目を閉じてシャッターをきったり、自動で撮ってもカメラさえピントが狂いピンぼけや見切れていたりしてまともに写真が撮れないので秋もときのブロマイドはレア中のレアである。

 

「いらん、その美貌は大変興味があるが手に入れるならブロマイドより本人をホルマリン漬けにして保存した方がじっくり見れるわい」

「うへぇ」

 

冗談で言っている目ではなかった、悲しいことにこの目で自分を見られるのは初めてではないのですぐわかってしまうのであった。

 

「まあ茶番はここまでにしといて、さくらがここに来て妨害した研究とは一体何?」

 

その質問に佐兵衛は闇より濃い漆黒の深淵に染まった目で答えた。

 

「―――大いなる『クトゥルフ』の降臨じゃよ」

「…………それはそれは大変な目的なことで」

 

『クトゥルフ』とは『クトゥルフ神話』と神話体系の名称に冠せられるほど代表的な神性である。

 

その宇宙から飛来した異生物『クトゥルフ』の名前は、本来、人間には発音不能とされ、その呼称を便宜的に表記したものである。

本来人間には発音不能な呼称を便宜的に表記したものであるため、日本語では『クトゥルフ』、『クルウルウ』、『クスルー』、『トゥールー』、『チューリュー』、『九頭龍』など様々な呼び方がある。

 

遥かな昔、眷属と共にゾス(Xoth)星系から飛来し、地球に降り立ってムー大陸を支配した。

ラヴクラフトの小説『狂気の山脈にて』では、『クトゥルフ』の一族は、同じく宇宙から飛来してきた『古のもの』や『イースの大いなる種族』らと当時(約3億5千万年前)の地球の覇権をめぐって争っていたという。

やがて星の位置が作用する霊的な干渉により古代石造都市『ルルイエ』と共に海底に没し、『クトゥルフ』は深き眠りにつくこととなった。

 

H.P.ラヴクラフト著「クトゥルフの呼び声」にて初めて登場し、眷属である深きものどもに崇拝されている様は、「インスマウスを覆う影」でみることができる。

 

『死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり』

という有名な一説があるがこれは死せる『クトゥルー』が封じられ、夢見ながら再浮上を待つ『ルルイエ』は星辰が正しい位置についたとき、『クトゥルー』は目覚め、『ルルイエ』は再び浮上すると伝えられていることをさす一節である。

 

ロバート・ブロック著「アーカム計画」によるとルルイエ浮上状態では「時は止まり、死が死に絶える」らしい。

端的に言えば『クトゥルフ』が降臨すれば人類が終わる(、、、)そうだ。

 

「それはわかったから、うちの従業員返してくれません?」

「なにい!? 貴様どういうことかわかっていないのか!」

「あいにく僕はただの人探し(マンサーチャー)なんでね、探した人間を連れ帰ればそれでいい」

 

世界が滅ぶかどうかという瀬戸際の話でもこの少年は我関せずの態度を崩さなかった。

世界の滅亡など起こるはずがないと思っているのではなく、自分なら大丈夫だと思っているわけではなく、投げやりになって自分を含めて世界などどうなっても構わないと思っているわけでもなくただ興味がないのだ(、、、、、、、、)

 

先程もときの恐ろしさは美貌よりもその技倆といっていたが、本当に恐ろしいのは転生前は元普通の人間だったのが後天的にあらゆる状態でも揺るがない精神性を得てしまった(、、、、、、)という事実の方かもしれない。

どのような出来事を経験すればこうなってしまうのか?

もときに尋ねたとしても。

 

「忘れた」

 

そう返されるだけであろう。

天与の美貌と他を寄せ付けない戦闘技倆を持っていたとしても、過去の思い出にとらわれるような感傷的な人間は生きていけない世界なのだ。

そんな過ぎ去った日々を懐かしむという人間らしい権利はこの世界に転生してからとうになくしている。

 

「なるほど、面白い奴だ……。 いいだろう解放してやってもいい」

「やったー」

「儂の所までこれたらな」

「解放する気ないじゃないですか、やだー!」

 

ゴール直前で鍵がスタート地点にあるから戻って取ってこいとか、それで着いても「騙して悪いが」とかいって酷い目に遭うんでしょ対魔忍みたいに、対魔忍みたいに! 騙されんぞ。

 

 

「嘘か本当かどちらにしろお主にはどうにかする手段はあるまい、言うことを聞くしかないのだ」

 

その言葉にさくらの方に振り返って体を覆う肉塊に両断の意思を込めて不可視の刃を振るった。

世にも美しい切断面を見せて体に纏った支えがなくなったことによりさくらが倒れこむ。

――だが次の瞬間に再び肉塊に取り込まれた。

 

「無駄じゃ無駄じゃ、切り裂けたことには驚いたがその程度の破損ではすぐ修復されるわい次には学習して再生効率がよくなり取り出すのは無理じゃ」

「ふーん」

 

もう一度斬撃を放つとすぐ再生してさくらの体勢を変えることすら出来なかった。

肩を竦めて部屋の入口に向かう。

 

「ん? ……まてまてまて、まさかそこの子を置いて帰る気かこの人でなし!」

「貴方が言うこと? 罠がしかけてるであろう場所にほいほい向かう程、自信家じゃないので一旦戻って準備を整えるだけだよ」

 

先程の様に妖糸が通じない可能性があるなら他の手段を用意した方がいいに決まってるよねー、そう言ってスタスタ歩くと入り口が閉ざされた。

声のする方をジト目で睨みつける。

 

「残念じゃがそれはNGじゃ、さっさとこちらにくるんじゃな」

 

そう言って佐兵衛の声が聞こえなくなる、ここから先は出口のない一方通行を行くしかないようだ。

嫌そうに顔をしかめるといつのまにか静かになったさくらの方を向く。

一瞬解放されたことにより快楽がはじけて気絶したらしい。

 

行方不明の身内を人探しとして探しに来ただけなのに、いつのまにか世界の命運に関わる事件に巻き込まれることになってしまった現状に深く溜め息をつきながら佐兵衛のいるであろう奥に向かって歩きだした。

 

 

淫獄都市ブルース<深者の章 完結編2>へ続く

 

おまけ

 

「ところでオーク、東郷は? 刺客としてこっちにこないの?」

「なにやら紙を大量に抱えてどこかに行った、どうせ娼館じゃろ腕が立って面白い奴じゃが昨日の今日でサボるのは流石に許せんクビじゃ」

「……へー」

*1
「○○してくれますね」→「いいえ」→「そんなひどい」→「○○してくれますね」と「はい」を選ぶまで繰り返すやつである




あけましておめでとうございます

異界ジェノサイダーAMK編…間違えた、淫獄都市ブルース<深者の章 完結編>始まります。

決アナが俺達の戦いはこれからだENDになりそうですねー
対魔忍RPG一本に絞るんですかね、作者がプレイしていたDMMのソシャゲが去年いくつかサービス終わりましたが寂しいものです。
対魔忍RPGは紅狙いでSR確定ガチャを属性魔性でひいたら闘技場でオリジナルレディだしたせいかスネークレディが来たりしました。

相変わらず対魔忍……どこ? な作品ですが今年もよろしくお願いします。

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