淫獄都市ブルース   作:ハイカラさんかれあ

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前回までの『傭兵VS屍操術師(ネクロマンサー)-終末世界の七日間戦争、童貞たちへの鎮魂歌-』

世界を襲った未曾有の大災害により人類の総人口は激減し死者が闊歩することになった未来。
死者を操る能力を持つネクロマンサーと呼ばれる異能者たちが世界を支配していた。

この世界で生きる男、本郷(童貞)は屍食鬼(グール)という二つ名を持つ傭兵である。
幼い頃に死者災害によって両親と妹を失った本郷は歩く死者たちを葬り去るため日々死者を狩り続ける傭兵になった過去を持っていた。

ある日、かつて家族を失った災害があるネクロマンサー達が人為的に起こしたことを知る。
異能者に対抗するために得た力の代償に身も心も削り尽くした体に残された時間はわずか七日間。

仇は五人。

終末世界に轟く銃声は自らを死地に誘う開幕の号砲なのか?
それとも眠れぬ死者へ送る弔砲 なのか? 
傭兵と屍操術師たちとの最後の七日間が始まる。


多分、途中でギャングと宝石を巡って戦ったりゾンビになったサメとかと戦ったりして、最後はヒロインを日常に戻すために最後の命を振り絞って自爆して敵と相打ち。
エピローグはヒロインが主人公の墓参りEND

今回はあらすじ二本立てだよ !

▼淫獄都市ブルース あらすじ

秋もときは美人でスタイルがいい剣術使いの先輩とそんな姉を持つ友人とついでに貧乳褐色雷撃娘の三人幼馴染がいるがとある事件で疎遠になっていた超美形の転生者である。

そんな状況だが学園でエロエロな美人、美少女(あと♂)に無意識のニコぽでキャーキャー言われていたというライトノベルの主人公を通り越して属性盛りまくりのエロゲの世界の主人公境遇だった、……そういうギャルゲー方面に行くかもしれない時期がこの話にもありました。
だがそうならなかったんだよ、それでこの話は伝奇バイオレンスになったんだそれだけの話だよロック。

ある日、最強対魔忍の校長アサギに学園を追放されて平行世界から来たボンキュボンの能天気影使い娘と同居しながら東京キンダムで人探しの仕事をしていた。

しかしそんなもときに
「イチャラブなにそれ? いいからバトルしろよ」
といわんばかりに行方不明になり拉致監禁からのアヘ顔調教されている助手を救う為に現在はゾンビみたいな爺さんの館でホラーな敵と戦いを繰り広げ謎の巨体な影を直視したために意識を失ってしまったのであった。


Qなんでこんなあらすじを書いたイカれているのか?
Aああ、窓に! 窓に!

狂った文章を中和するために淫獄都市ブルースはじめます。


淫獄都市ブルース<深者の章 完結編3>(長編)

「おい、起きろ色男!」

 

闇に落ちた意識が怒鳴り声で浮上して、自身の身体が縛られていることに気付く。

指を封じてないので糸でどうにかなるのだが、情報が行き届いてないのだろうか?

目をつぶったまま『探り糸』をこっそり放つとどうやら先程までの廃船から洞窟の様な場所に運ばれたらしい。

 

「あと五分……」

「ベタベタな寝言いってるんじゃねぇぞ!」

 

様式美のわからん相手である粗暴な性格を表したような声でユーモアがないとはさぞモテなさそうな顔に違いない。

どんな顔をしてるか見てみるかと思い目を開くとそこにはカンテラを持ったカエル顔をした背の低い男が居た。

 

「『カエル顔に起こされることから始まる神様転生』」

「何ほざいてんだテメェ!」

「『僕を起こすのが幼馴染じゃないなんてありえない』の方がいい?」

 

ライトノベルのタイトルみたいな事を言いながらもときは縛られたまま、よいしょと身体を起こす。

 

「それで何か御用? 人探しの依頼なら名刺がポケットに入ってるからそこに書いてある連絡先にどうぞ」

 

あまりにも人を喰ったような発言に腹が立ち、男の短絡的で粗暴な思考回路から痛めつけるという答えを導き出したが、近寄りもときの顔が暗闇からカンテラで照らされたことにより、見えるとふにゃと陶酔して思考が桃色に包まれた。

 

話には聞いていたが直接目視するとその美貌がもたらす効果があまりにも絶大すぎた、もときの容姿は男女問わず作用する甘美すぎる猛毒なのである。

防ぐのには常人離れした克己心が必要なのだが安易な暴力に走るチンピラ程度の精神構造では耐えられるはずもないのであった。

 

もっとも対策があっても怪異に慣れきった魔界都市の人間でも目蓋の裏から美貌が浮かんで離れず何も手に付かない状態になり一般人なら三週間、特殊な職に就いてる人間でも復帰に三日はかかるので無理もないのだが。

ここまで美貌が突き抜けるともはや武器の域である。

 

なにはともあれ相手が見慣れた状態になったのを見て、「しめた」ともときが思ったのかどうかはわからないが天与の武器を活かすべく情報収集を開始することにした。

 

「それでここはどこ?」

「あ…う……」

「もしもーし?」

 

魅了されて茫然とするのは反応がなんだか違うがどうしたのだろうか。

 

「『壊れた』のね、即席の刷り込み教育しかされてない精神熟成では貴方の顔は劇薬すぎたのよ」

 

声に振り返ってみるとバイザーをかけた佐兵衛の妻、美沙子がいた。

暗闇でそんなものをかけるとカンテラ程度の明るさではボンヤリとしかものが見えないのでもとき対策であるのは間違いないだろう。

 

「今晩は、夜会の誘いですか?」

「素敵ね、でもお疲れの様子なのでそれはまた今度にしましょう」

 

薄く笑う美女の背後には使用人の亜門が控えていた、こちらは素顔でこちらを薄っすら顔を赤らめながら睨みつけている。

常人離れした克己心を持っている様だ、立ち振る舞いに隙がない、なにか特殊な技術を習得している人種の人間らしい。

 

「ところで刷り込みって? 生えてくるとか用心棒が言ってたことと関係が?」

「ええ……、山岡と毒島は主人の実験によってどうあがいても死ねないの(、、、、、)

「はぁ」

「正確に言うと死亡した場合死体が消滅して別の身体に生まれ変わるの、外見は変わらず別人としてね。 外見も昔はあそこまで醜くなかったのよ?」

 

死んだ瞬間に記憶のないコピーが作り出される、あのカエル顔はその代償だというのか、しかし……。

 

「何故そんなことを?」

「八つ当たりよ、馬鹿な話だわ……頼み事があります」

 

僅かな逡巡を含んで溢れた言葉には暗闇の中でバイザーで目を覆って顔がほとんど見えない状態でありながら、声だけで隠しきれない悲壮な決意を感じさせた。

 

「夫を止めて欲しいのです」

 

2、

「はぁ」

 

悲壮な美女の嘆願にもときは気の抜けた声を出し、後ろの使用人が睨んできた。

 

「僕は人探しであって、世界が滅ぶのを止めるとかそういうのは対魔忍の仕事ですよ」

「元対魔忍だと聞いたけれど?」

「はぁ、まあ確かにそうですけど誰に聞いたんです?」

 

長い夜で時間間隔が狂いそうだが会ってまだ一日と経っていない。

 

「貴方が助け出そうとしてる子よ、捕まる前に話したのだけど自慢げに貴方のことを話していたわ」

「守秘義務ェ……」

 

人様の個人情報を何故ペラペラしゃべるのかコレガワカラナイ。

べ、別に影で女の子に褒められてもう嬉しくないんだからね!

……いやほんとに。

 

「もしかして、同じことをさくらに?」

「……ええ、正直言って後悔してるわ」

「なんとまあ」

 

それでオーク、東郷にやられて捕まったと。

対魔忍は銃弾を正面から躱せる身体能力を持つため銃火器を軽視する傾向がある。

風俗狂いのオークがまさか射撃の達人とは思わず油断したのだろう。

正直自分も目の前で見なければ信じなかったが。

 

「捕まった原因の私を恨む?」

「いや別に。 安請け合いした本人のせいですし、本人も気にしてないと思いますよ」

 

騙すつもりで頼んだのでないようだし、今回は本人の実力不足が原因なので恨むのは筋違いというものであろう。

もっとも大きな口を叩いて本職と関係ない事件に首突っ込んで失敗したさくらの減給は確定である。

……よけいなことに巻き込みやがってと恨んでないよホントダヨ?

 

「…………はじまりはよくある出来事でした」

「あのー」

 

引き受けるとは一言も言っていないのに目を閉じて語り出した美沙子に声をかけるもとき。

……スルーされた、さすがゾンビ爺の妻をやっているだけあって肝がすわっており図太い。

 

「息子が死んだのです」

 

その平静を装った声の響きにはいまだに隠しきれない悲しみが残っており、いまだに過去の傷が癒えていない証左であった。

 

3、

「お恥ずかしながら私とあの人は金銭目当ての政略結婚でした。 資金があっても成り上がりゆえに家格のないあの人と、格式がある名家で現在は資金がない我が家はちょうどいい相手同士でした。 私は実の父より年上のあの人に嫁ぐことになったのです」

「はぁ」

 

確か佐兵衛と三十歳以上離れていたはずだ、親と子を超えて下手をすれば祖父と孫ぐらいの年齢差がある夫婦である。

 

「当然うまくいくわけもなく正直干物のようなあの人の身体に抱かれるのは苦痛でしかありませんでした。 しかし愛がなくとも子はできるもの、やがて私は一人の男児を身籠りました。 

子は(かすがい)とはよく言ったもので冷めきった夫婦中でしたが二人で子供の世話をする内に情が芽生えてようやく私と夫は夫婦と呼べる関係になったのです」

 

そう話す美沙子の表情は慈悲深い母のそれであった、しかし月に叢雲、花に風、次の瞬間にはその表情が陰っていた。

 

「あの子が4歳になってそう日の経ってないある日のことです。 夫は用事で家を出かけていて門土はその護衛に、私は執事の山岡と使用人の毒島が子供が散らかしたものの片付けをするという申し出を断り、代わりに息子が外で一緒に遊ぶ係を任せていました。 

……わずかに目を離していた隙に起きたことだそうです、たまたま庭においてあった梯子で木登りをしようとした息子が足を滑らせて頭から落ち、打ちどころが悪く二人が見つけた時にはもう……」

 

そういった彼女の目には光るものがあった、その美しい顔から滴る雫がぽたぽたと洞窟の床を濡らし続けている。

 

「……事故だったのです、どこにでも起きうる悲しい事故。 私は大いに嘆きました、しかしそれ以上に夫は深く嘆きました」

「…………」

「年をとってからできた子供だからか、冷めた私との夫婦生活に明るい灯火となって温もりを与えてくれたからか、あの人は私以上にあの子を溺愛していました」

 

確かによくある話だ、しかし当人達にとっては耐え難い出来後であろうことから流石にもときは口を噤んだ。

 

「悲しみに暮れてただいつしか時間が癒してくれるのを待てばよかったのです、しかし……」

「――――そうは思わなかった、旦那はただの成金じゃなくて天才、藤曲佐兵衛だったから」

「……はい」

「なるほどクゥトルフの降臨が目的とか言ってたけれど本当の目的は『死者の蘇生』か」

 

一般に死者の蘇生は古来より不可能とされている、生あるものに不死をもたらす方が余程簡単だ。

生から死のプロセスは不可逆の一方通行なのである、一部の例外を除いては(、、、、、、、、、、)

 

対魔忍世界の天才である魔科医の桐生 佐馬斗も成功しているし、死者の蘇生が研究課題だというドクター・メフィストも本人は不可能と言っているがそれは謙遜で実際には三十分以内であれば黄泉の淵から引き戻すことができる。

確かに不可能ではないのだ死者の蘇生は、しかしいかに天才とはいえそう簡単にできることでもない。

ましてや時間の経った状態での死者蘇生は。

 

なにせ出来ないことが殆ど無いといっても過言でもないドクター・メフィストでさえも限定的な状況に限っての死者蘇生が限界で、完全な死者蘇生はそれこそ医神と呼ばれるギリシア神話のアスクレピオス等の神話の存在ぐらいしか達成してない程だ。

日本神話やギリシャ神話でも黄泉や冥府まで降り立って引き戻そうとして失敗したエピソードがあるし、その手の失敗談は語りだしたらキリがないほど世界中にその手の話は溢れている。

 

「わからないのがなんでそれでクトゥルフ降臨とかいうことに繋がる?」

「……ご子息を失った旦那様が手に入れた魔導書が原因だ」

 

美沙子の後ろで待機している門土が後を引き継いで話を始めた。

 

「魔導書? 深き者達について書かれている魔導書といったらルルイエ文書だけど」

 

ルルイエ文書、あるいはルルイエ異本とよばれる魔導書は元々は『螺湮城本伝』*1と呼ばれる古代中国の粘土板が元になっており甲骨文字で書かれたオリジナルの粘土板は破壊されている。

しかし世界中にいるクトゥルフ信奉者に写本・訳本である漢文の巻物やイタリア語訳などが世界に広がっている。

 

内容はクトゥルフの召喚、ダゴン・ハイドラの召喚、深きものとの接触、その他にもクトゥルフ教団に必要な呪文が数多く載っているとされている。*2

 

 

「いえ、旦那さまが手に入れたのはネクロノミコン(、、、、、、、)です」

 

『ネクロノミコン』、恐らく一番有名な魔導書であろうこの本は、狂えるアラビア人、アブドル・アルハズラット*3が、730年にダマスカスにおいて書かれたアル・アジフ(Al Azif)*4『ネクロノミコン』の表題はギリシャ語への翻訳の際に与えられたものとされる。

 

ありとあらゆる魔術とその奥義、邪神の召喚と送還の両方、異星の生物、歴史、崇拝者、組織などが記されているとされる。

それ故か魔道書そのものに邪悪な生命が宿ることもあるという。『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』ではジョセフ・カーウィンが*5所有し、「時を越え」たり「地下の大軍を出現させ」たりする準備をなした。

カーウィンの所有した魔道書は襲撃によって失われたはずであったが、なぜか現代に舞い戻った。

 

また、『ダニッチの怪』では、不完全な英語版が異世界からの怪物を召喚させるために用いられ、逆にそれを撃滅するためにも用いられた。

 

ギリシャ語のΝεκρός(Nekros 死体) - νόμος(nomos 掟) - εικών(eikon 表象) の合成語であり、「死者の掟の表象あるいは絵」の意とされる、日本語での呼び方は……。

 

「死霊秘法、死者の蘇生さえ可能にする(、、、、、、、、、、、、、)魔導の奥義が書かれた本」

「……はい、この本を手に入れたのが過ちの始まりです」

 

なんだか面倒になりそうな物が出てきたなともときは顔を憮然とさせた、いや、あるいは長話に飽きていたかもしれないがそれは本人に聞いてみなければわからない。

 

「で、試してみて失敗したと」

「いえ、成功しました」

「は?」

 

成功例はそこにいます、そういって呆然と立っている使用人の毒島を指さした。

 

「――息子が事故にあった時に目を離したのが原因だと山岡と毒島を薬を使い眠ったままの状態で殺害して、魔導書の死者蘇生の記述の実験台にしたのです」

 

 

涙で目が腫れた顔の美沙子がそう言葉を引き継いだ。

 

「そして二人は生前そのままの状態で蘇生しました、会話をしていくつかの質問にもキチンと答え、健康診断をした結果、薬で眠る前のままの状態とまったく同じ健康な状態で蘇ったのです」

「へぇ」

 

そう言ってカエル顔の横顔を眺めた、しかし佐兵衛がクトゥルフ降臨とかいう世迷い言を言っているなら……。

 

「ああ、そうか。 息子さんの蘇生には失敗したのか」

「……はい、生前の息子ではなく息子の外見を持つ怪物が出来ました」

 

成功したのは大人の二人だったからか、それとも何か他に理由があるのかわからないが本命である息子の蘇生には失敗した。

 

「それからというもの夫は魔導にのめり込む様になり、屋敷にはあのカエルのような顔をした者たちが入り浸るようになりました」

「蘇生した二人も旦那様は何らかの実験で彼らと同じような生き物に変えてなにやらしていたようです」

「普通に考えるなら宗教に走ってクトゥルフ信奉者になった、と考えるところだけど」

 

果たしてそれだけだろか? どうにも東京キングダムという魔境で鍛えた人探しの勘が違うと言っている気する。

 

「お願いです、夫をとめていただけないでしょうか? 儀式は満月に完了すると言っていて、もう時間がないのです」

 

そういえば異界に入る前の月はほとんど真円だったのを思い出す、何でこうなったのかなーともときは深くため息を付いた。

 

淫獄都市ブルース<深者の章 完結編4>へ続く

*1
「螺湮城」は「ルルイエ」の中国語表記である。

*2
ちなみにこの魔導書、某聖杯を巡って戦う話に出てくる目玉が飛び出しそうな顔をしたフランスの聖女信奉の魔術師枠の反英霊が使った宝具として有名である。

*3
アブドゥル・アルハザードや、アブド・アル=アズラットと記される場合もある

*4
某「魔を断つ刃」な巨大ロボを召喚して戦うロリコン魔導探偵の相棒として出てくるのがこの本の精霊である。

*5

『イスラムの琴(カーヌーン)』の偽題で




どうもシリアスになると筆が重くなりますねー、これからキャラが死ぬのを書くのかと思うとしんどくてつい気分転換にfgo書いたりしました。
――大丈夫、答えは得た。 これからは頑張って新キャラを駆逐するよ(彼は狂っていた)
ではまた次回お会いしましょう。

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