「三宅少佐、貴官をタウイタウイ泊地の人型機動艦艇部隊の提督とする」
「……左遷ですか?」
「違う、左遷ではない」
国防省から派遣されてきた大佐は三宅少佐にそう答えた。
「貴官の同期、牟田口少佐は知っているな?」
「はぁ、あまり接点はありませんでしたが風の噂で艦娘に色々な事をして憲兵隊に逮捕されたと……」
「そこまで知っているなら話が早い。貴官には牟田口少佐の後釜としてタウイタウイ泊地の提督となる事が決定した」
「……自分に艦娘の指揮をしろと? 失礼ですが大佐、私は国防艦娘学校の艦娘指揮能力は低いですが……」
「そこのところは承知している。だが深海棲艦の侵攻は日々増加している。それ故に貴官にも来たのだ」
「……分かりました。提督の任務、引き受けましょう」
「……感謝する三宅少佐。後の事はおって連絡する。それとタウイタウイという地域をよく考えてほしい」
「了解です」
三宅少佐は大佐に敬礼をして部屋から退出した。
「……牟田口の後釜とかマジかよ……」
三宅少佐は自室で一人そう呟いていた。
「気付いたら艦これの世界にいてエンジョイわっしょいと思ったら適正能力がなかったから諦めてたのに……」
三宅少佐は所謂転生者だ。ある日気付いたら~~という転生者で、三宅少佐は艦これの世界に転生していたのだ。
三宅は前世でも艦これをプレイしていたので直ぐに高校を卒業すると国防軍(自衛隊から変更)に入隊して艦娘を指揮する国防艦娘学校に入校した。
しかし、指揮能力は下から数えた方が早かった。結果的に言えば屑に近い代物である。国防艦娘学校を卒業したからと言って直ぐに艦娘を指揮できるわけではない。
物言うのはやはり成績である。そのため三宅が提督になれる確率は少なかった。三宅もそれを受け入れて窓際の部署に配属されていたのだ。
「……まぁなるようになるしかないか」
三宅はそう呟いてお茶を飲むのであった。それから数日後、三宅に提督任命の辞令が下りUS-2でタウイタウイ泊地に赴任した。
「三宅少佐だな?」
「は、失礼ですが貴方は?」
泊地の施設前にある門で三宅は数人の兵士に呼び止められた。
「タウイタウイ泊地にようこそ三宅少佐。私はタウイタウイ泊地の憲兵隊隊長の白根少佐だ」
「これはどうも」
「あのアホがいらん事した事で君が貧乏くじを引いたのは申し訳なく思う」
「いえ、あのアホの尻拭いはやりませんとね」
「……そうか。ところで艦娘にいらん事したら……」
白根少佐はそう言って殺気を三宅に向け、刀に手を沿える。
「そのような事はしませんよ大尉」
「……その言葉を信じよう三宅少佐。ついてこい、施設を案内しよう」
白根少佐はそう言って三宅少佐を施設に案内した。
「ちなみに牟田口は何の罪でしょっぴかれたんだ?」
「艦娘へのセクハラ及びパワハラ等々。他にも聞きたいか?」
「いや結構」
そして提督室に入るとそこには一人の艦娘がいた。
「白根少佐、お疲れ様です」
「あぁ、紹介しよう三宅少佐。彼女は我がタウイタウイ泊地の任務娘こと軽巡大淀だ」
「初めまして三宅少佐。軽巡大淀です」
「三宅だ。まぁしがない少佐だが宜しく頼むよ」
三宅はそう言って大淀に敬礼をする。
「それじゃお俺は此処までだ。俺達に逮捕されない事を祈るよ」
「あぁ」
白根少佐はそう言って部屋を退出した。
「では少佐……貴方は今日から提督になります。その前に一言よろしいですか?」
「何かね?」
「前任提督の所業により艦娘の大半は提督不信です。かくいう私もです」
「だろうな。素直で宜しい」
大淀の言葉に三宅は苦笑する。
「泊地の艦艇はどれくらいだ?」
「航空戦艦一、正規空母一、軽空母一、重巡四、軽巡三、駆逐艦八隻が泊地の残存艦艇です」
「……残存艦艇というと……」
「……航空戦艦一、正規空母二、重巡二、軽巡五、駆逐艦十八隻が撃沈しました」
「……そうか(牟田口の馬鹿野郎!!)」
三宅は内心、逮捕された同期を罵倒していた。
「……艦娘の心境を考えると秘書艦は無理そうだな。大淀、兼任出来ないか?」
「……少し無理ですね。私も任務娘としての仕事もありますから」
「……なら秘書艦は今のところ名前だけにしておくしかないか」
「一人、もしかしたら二人くらいなら行けるかもしれません」
「名前は?」
「正規空母鳳翔と重巡高雄です。ですが高雄は……」
「高雄に問題でもあるのか?」
「高雄は前任提督の元で秘書艦をしていました。ですがその時に愛宕と共に前任提督からセクハラを……」
「……男性恐怖症か?」
「診察では軽い恐怖症との事です。ですがかなりのトラウマのようです」
「……分かった。なら秘書艦は鳳翔だな。悪いが呼んでほしい」
「分かりました」
そして館内放送で鳳翔を呼び出して五分後に提督室に鳳翔が現れた。
「航空母艦鳳翔です」
「新任提督の三宅です。早速ですが暫くの間秘書艦をしてくれませんか?」
「……分かりました。今の状況を見る限り私が秘書艦をした方が良さそうですね」
「御苦労をかけます」
「いえ、大丈夫ですよ」
鳳翔はそう言って笑う。とりあえず、秘書艦は鳳翔に決定となった。
「それで提督、何かしますか? 出撃しますか?」
「いや、出撃は今の状況ではしない。それより今の資源はどれくらいありますか?」
「……大体が千ほどです」
「なら出撃は暫く無しだな。よくて遠征くらいだ」
「分かりました。艦隊は第三艦隊まで解放されているので二個艦隊は使用可能です」
「……なら長距離練習航海と海上護衛任務の二つを集中的にしよう」
「編成はどのように?」
「長距離の方は駆逐艦四隻、海上護衛は軽巡一、駆逐艦三隻で頼む」
「分かりました」
(さて、どれくらい集まるか……)
三宅はそう思った。それから、集合時間の港には八隻の艦娘が勢揃いしていた。
「……何とか集まったが練度は低いな……」
一番高いのは五十鈴(練度29)であった。他の駆逐艦は15程度である。
「五十鈴よ、宜しくね提督」
「ん。それと鳳翔さん、長距離の駆逐艦達の安全確保のために偵察機で偵察しておいてほしい」
「分かりました。隼鷹さんと共に警戒しておきますね」
「(軽空母は隼鷹だったのか……)宜しく頼みます」
「五十鈴、軍艦形態に移行します」
五十鈴が海に入ると光りと共に一隻の軍艦が現れる。かつて活躍した長良型軽巡洋艦五十鈴であった。
「乗艦して良いわよ提督」
「済まんな」
三宅が乗艦すると妖精さん達が慌ただしく出撃準備をしていた。海上護衛には五十鈴の他に綾波、敷波、睦月の三隻である。
「五十鈴、出撃します!! 五十鈴に任せて」
そして艦隊は三宅を乗せて出撃した。
「それで提督。経路は?」
「ボルネオのタワウに。あそこにタウイタウイ行きの輸送船団がいる」
「分かったわ。進路タワウに(牟田口の後釜と聞いたけど中々優秀なようね)」
「ヨーソロー!!」
五十鈴は妖精さんの言葉を聞きながらそう思った。
「全艦に発光信号。対潜、対空警戒を厳とせよ」
三宅はそう指示を出すと提督の席に座る。
(後は敵が出ない事を祈るか……)
「提督、輸送船団六隻と合流完了よ」
「分かった。タウイタウイに帰還しよう(行きは上手くいった。後は帰りか。行きはよいよい帰りは何とやらだな……)」
艦隊上空には五十鈴から発艦した零式水偵が警戒飛行をしていた。
『聴音機に感あり!! 敵潜水カ級です!!』
「敵の潜水艦を発見!!」
「駄目だ!!」
「……ノってくれる子は好きだぞ五十鈴」
「そりゃあどうも提督」
「五十鈴と綾波は敵潜水カ級の元へ急行する。敷波と睦月は船団を護衛せよ」
「了解、準備は万端よ。突撃します」
五十鈴と綾波は最大速度で零水偵が爆雷を投下している海域に急行、爆雷を大量に叩き込んだ。
「深度九十で固定完了です!!」
「爆雷投下!!」
五十鈴の艦尾で妖精さん達が九四式爆雷投射機を操作して爆雷を投下していく。五十鈴が航行した後には水柱が噴き上がり潜水カ級を追い立てていく。
そして十数発目の水柱は他の水柱より一際大きかった。
「敵潜水カ級撃沈!!」
「周辺海域の捜索を続行、一隻だけではないかもしれんぞ」
撃沈に沸き立つ妖精さん達を三宅はそう指示して周辺海域の捜索に乗り出す。
「み、右舷から魚雷二本来ます!! 凡そ七百メートル!!」
「とぉーりかぁーじ一杯!! 砲雷撃戦用意!!」
「砲雷撃戦!?」
「回避しつつ海面に撃ちまくって魚雷を爆発させるんだ!!」
「分かりました!!」
五十鈴は回避しつつ妖精さん達は五十口径十四年式十四サンチ単装砲と四十口径三年式八サンチ単装高角砲、八年式連装魚雷を放ち魚雷を爆発させようとする。そして砲弾か魚雷が当たったのか、二本の魚雷が爆発して水柱をあげた。
「他の雷跡は確認出来たか?」
「確認ありません」
「綾波から発光信号。敵潜水カ級を撃沈した模様です!!」
「……よし、船団に戻ろう」
1730時、艦隊は無事にタウイタウイ泊地に帰還した。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m