『提督の奮闘記』   作:零戦

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第三話

 

 

「勝利おめでとうございます」

「いや、俺は何もしていないよ」

 

 海戦後の2000時、三宅は鳳翔が経営している居酒屋鳳翔で一杯やっていた。海戦は那智小破の勝利であった。

 

「偵察艦隊だろうと那智が小破したからね。せめて無傷で終わらせたかったけど完全勝利は奇跡が起きない限りないね」

 

 三宅はそう言って湯豆腐に醤油をタラリと溢し箸で豆腐を四つに切り分けて口に運ぶ。

 

「美味いよ鳳翔さん」

「あら、御世辞でも嬉しいです」

「いやいやそんな事ないです」

 

 そこへ入口の引き戸がガラガラと引かれた。

 

「鳳翔さ~ん。お酒頂戴~」

「あらあら」

「……(隼鷹か)」

 

 入ってきたのは軽空母隼鷹だった。

 

「おりょ? 誰あんた?」

「前提督の後釜に入った三宅提督ですよ隼鷹さん」

「マジ? こりゃゴメンね。商船改装空母隼鷹でーす!! ひゃっはぁー!!」

「ハッハッハ。元気があって良いよ。俺は三宅だ」

「宜しく提督ー」

 

 隼鷹はそう言って出された日本酒をお猪口に入れてくいっと飲み干す。

 

「か~美味いねぇ」

「鳳翔さん、俺も日本酒を」

「はい、何になさいます?」

「五十鈴川ってある?」

「それは……ありませんね」

「済まん、自宅にいる癖でね。八海山で」

「はい」

「なぁ提督。五十鈴川って何? お酒?」

 

 三宅の五十鈴川の言葉に隼鷹が反応した。

 

「伊勢神宮の時に購入した日本酒でな。ほんのり辛口だが美味いんだ」

「ふ~ん。あたしも飲みたくなってきたよ」

「なら内地に言っておこう」

「ありがたいね提督」

(……他の艦娘と違って隼鷹は俺に対して普通だな。性格なせいか?)

「あたしは任務と割り切ってるよ提督」

 

 三宅の考えを否定するように隼鷹はそう呟いた。

 

「あたしは商船から改装されてるからね」

「……そうか」

「でもな提督……あんたは面白そうな人だよ」

「……ありがたいね」

 

 にかっと笑う隼鷹に三宅は苦笑した。その後、三宅は隼鷹にたらふく飲まされるのであった。

 

 それから三日後、三宅にとある任務が入り込んだ。

 

「内地行きの資源船団の護衛ですか?」

「はい、バシー海峡までとの事です。そこから佐世保鎮守府の護衛艦艇と交代せよと」

「……分かった」

 

 大淀からの報告に三宅は頷いて那智達を招集した。

 

「……というわけだ」

「現行の泊地で行かせられるのは軽空母隼鷹に新造した龍驤、祥鳳、重巡那智、高雄、軽巡木曾、五十鈴、駆逐艦吹雪、綾波、睦月、敷波、深雪、菊月、初霜、涼風くらいです」

「提督、資源船団はどのくらいだ?」

「LNGタンカー十二隻、タンカー七隻、コンテナ船と貨物船が六隻ずつ、鉱石運搬船五隻の大船団だ」

「……それは何とも……」

 

 三宅の言葉に高雄がそう呟いた。

 

「これだけの大船団だ。敵も盛大に歓迎するだろう。万が一、敵機動部隊が出現したら隼鷹と龍驤の二隻で当たってもらう。祥鳳には悪いが今回は艦戦満載の防空空母として動いてもらう」

「仕方ありません。船団の防空はお任せ下さい」

 

 三宅の言葉に祥鳳が頷いた。

 

「祥鳳は九六式艦戦だが、明石と工廠の妖精さんが魔改造している」

「魔改造……」

「兵器庫に眠っていた十二.七ミリ単装機銃を改造して航空機関銃にして九六式艦戦に搭載中との事だ。機首と主翼に四丁だ」

「………」

「鳳翔さんが開発して手に入れた零戦二一型も魔改造されそうだったが時間がないから諦めてもらったがな」

「アハハハ……」

「鳳翔さんは待機して開発をして下さい。暫くは自分がいませんが大淀とお願いします」

「分かりました」

「それと旗艦は……高雄。お前にしたいがやれるか?」

「わ、私ですか?」

 

 三宅からの視線に高雄がピクリと身体を震わせた。

 

「今回の作戦は通信機能を高めている艦が適任だ。その点なら指揮設備が充実している高雄を旗艦にしたいが……無理なら那智に旗艦を任せるが」

「……やります。旗艦、やらせて下さい!!」

 

 三宅の言葉を聞いた高雄は決断してそう申し出た。

 

「よし、旗艦は高雄だ。皆、是が非でも船団は死守するぞ!!」

『ハイ!!』

 

 そして艦隊を編成した三宅は翌日の0800時に高雄へ乗艦した。

 

「よ、よろしくお願いします」

「うむ(大丈夫だろうか……)準備出来次第出撃だ」

 

 艦隊は出撃して空母を中心とした輪形陣を組み、経路を南沙諸島方面に向けたのであった。

 

「輸送船団を視認したが……」

「護衛艦艇は少ない……ですね」

 

 南沙諸島付近で待機していると護衛艦艇を伴った輸送船団が現れて船団と合流した。そして一部の艦艇が合流を確認すると船団から離れ始めた。

 

「あの艦艇群は?」

「恐らくリンガ泊地の艦艇群だと思います」

「バシー海峡までの護衛ではないのか?」

「もしかしたら我々と合流するまでだと……」

「……高雄、録音を頼む」

「は、はい」

 

 三宅は船舶電話を使い、リンガ泊地に帰還しようとしている艦艇群を呼び出した。

 

「此方タウイタウイ泊地の三宅だ。貴艦隊はリンガ泊地の艦艇群かね?」

『は、はい。リンガ泊地の軽巡名取です』

「我々は船団をバシー海峡まで届けろと指令された。貴艦隊は船団を我々の艦隊まで届ける役目かね?」

『は、はい。提督からそう仰っていました』

「……そうか。呼び止めて済まないね。貴艦隊の無事を祈る」

『はい。それでは私達はこれで……』

 

 そして名取を含めた数隻の艦艇群が船団から離れ水平線上に消えた。

 

「……提督命令……か」

「何か不審な点でも?」

「いや……少し気になっただけだ。さて、次は護衛艦に連絡するか」

 

 高雄の言葉に三宅はそう言って護衛艦に電話を繋げた。

 

「此方タウイタウイ泊地の三宅です。バシー海峡までですが護衛致します」

『護衛艦たかなみ艦長の岩井だ。護衛感謝する』

 

 旧自衛隊の艦艇は初期の段階で七割を喪失したが残存艦艇は艦娘の登場で活躍の場を船団護衛に改めていた。

 

『私もミリタリーは好きだから旧軍艦艇が見れるのは嬉しいよ』

「ハハハ、それは良かったです」

 

 その後、船団は対空対潜警戒をしつつ交代艦艇が待機しているバシー海峡まで航行をした。

 しかし、先行飛行していたSH-60Kが報告をしてきた。

 

『此方哨戒ヘリ、敵潜を探知した』

「此方旗艦高雄、了解した。艦艇を先行させる」

 

 報告を受けた三宅は五十鈴と初霜、涼風を先行させるのであった。

 

 

 

 




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