『提督の奮闘記』   作:零戦

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松任谷由美の「ひこうき雲」を聞きながら二時間で書いた。


妖精の零戦

 

 

 

 

 タウイタウイ泊地に提督が着任してから半年が経過していた。

 最初は戸惑っていた提督だが、艦娘達と力を合わせて深海棲艦と戦ってきた。そんなある日、提督は朝から頭を悩ます報告が舞い込んできた。

 

「装備品の保管が限界を迎えました」

「……解体しかないな」

「那珂ちゃんを解体するの!?」

「お前じゃない」

 

 何処からか来た那珂のボケに提督はツッコミを入れる。

 

「……仕方ない。加賀、不要な武器は解体して資材にしてくれ」

「判りました。妖精さんはどうしますか?」

「開発で新式が出たら回すよ。妖精さんも旧式武器だと可哀想だ」

 

 提督は秘書艦の加賀にそう指示を出した。加賀は直ぐに旧式武器の解体を開始した。

 妖精さん達は旧式武器の解体に納得して新式武器の受領を待つ事になった。

 だが、ある妖精さんは武器の解体を拒否した。

 

「このきはまだとべます。せいびいんさんがしあげたこのきはまだとべます」

 

 その妖精さんは零戦二一型の妖精さんだった。妖精さんは零戦二一型の解体に断固拒否を表明。加賀は仕方なく他の武器を解体した。

 そして加賀は提督にその事を報告した。

 

「どうしますか提督?」

「……まぁ良いじゃないか。飛べるんなら飛ばしたら良い。滑走路を造営してやるか」

 

 提督はそう言って工廠の妖精さんに頼んで暇になった飛行機乗りの妖精さん達専用の滑走路を造営した。

 妖精さん達は意気込んで滑走路の造営に当たり、僅か六時間で完了したのであった。

 

「ん?」

 

 提督は休憩中、造営した滑走路を見学していると一機の零戦が飛行してきて着陸した。

 

「見事な着陸だな妖精さん」

「ていとくさん、わざわざわたしたちのためにありがとうごさいます」

 

 妖精さんが提督に敬礼をする。提督も返礼しつつ零戦二一型を見つめた。

 

「やっぱり零戦じゃないと駄目か?」

「だめですね。わたしがはじめてもらったせんとうきなんです」

「……そうか。妖精さんのは解体しないようにしよう。それと私から妖精さんにプレゼントだ。ペンキを持ってこないとな」

 

 提督はそう言って白のペンキを持ってきて尾翼に何やら書き出した。

 

「ていとく、それは何ですか?」

「V-103。昔、日本がアメリカと戦争をしていた時に有名な撃墜王が乗っていた零戦の番号なんだ」

 

 提督はそう言って妖精さんに視線を向けた。

 

「君の零戦は解体しない。だから思う存分、あの空を飛翔してくれ」

「……ありがとうごさいますていとく!!」

 

 妖精さんは見事な敬礼を提督に送った。それから提督は旧式武器を帳簿では解体と明記したが、裏では軍港の防備武器として活用したりして旧式武器を扱う妖精さん達から絶大な信頼を得たりするのだが提督本人は気付いていなかった。

 そんなある日の事だった。

 

「今日は殆どの皆がいないな……」

 

 練度が低い艦娘はいたが、大半は出撃したり資源輸送の遠征に出撃していた。

 

「そうだ、零戦の妖精さんのところにでも行くかな」

 

 そう呟いた時、空襲警報のサイレンが軍港に響き渡った。

 

『空襲警報発令!! 繰り返す空襲警報発令!!』

「何!?」

「大変です提督!!」

「鳳翔さん、これは……」

「哨戒に出た彩雲が空母ヲ級flagship二隻を含む敵艦隊が泊地近海で発見しました!!」

「何!?」

 

 鳳翔からの報告に提督は唖然とした。何故敵艦隊が此処まで来れたのか? 何処かに敵の秘密基地があったのではないかと疑ったが今はそれどころではない。

 

「皆の避難は!?」

「天龍さんと龍田さんがしています。提督もお早く」

「判った」

 

 その時、軍港から砲声が聞こえてきた。軍港に配備された旧式武器の妖精さん達が対空砲火を開始したのだ。

 

「ていとくからもらったおんをかえすときです!!」

 

 二五ミリ三連装機銃や十二.七サンチ連装高角砲等が接近してくる敵艦載機に発砲していく。

 そして泊地の滑走路では迎撃隊が次々と離陸していた。

 

「ていとく……なんとしてもまもります!!」

 

 零戦二一型の妖精さんはそう叫び、敵航空機の後方に回り込み七.七ミリ機銃弾を叩き込んで撃墜する。迎撃隊や対空火器の妖精さん達は獅子奮迅の戦いを行った。

 それから数十分後、泊地は黒煙をあげていた。全体的な被害は深刻ではなかったのが幸いだったのかもしれない。

 迎撃隊が次々と着陸する中、零戦二一型の妖精さんは滑走路上空の高度千を飛行していた。

 妖精さんの零戦は左翼の燃料タンクに二十ミリ機銃弾を食らっていて若干の白煙を噴いていた。

 

『妖精さん、急いで着陸してくれ』

「わかってますていとく。でもわたしはていとくにありがとうをいいたいです」

『妖精さん?』

「きゅうしきぶきのわたしたちをたいせつにしてくれてありがとうございました。これがわたしからのおれいです」

 

 妖精さんはそう言って操縦捍を押して急降下に移行。そのまま上下の旋回――宙返りを三回敢行した。

 零戦から吹き出る白煙が三個の丸を大空に描いていた。

 

「……綺麗だ……」

 

 提督は空を見ながらそう呟いた。白煙がスモークのように見え、航空自衛隊のブルーインパルスのように思えた。やがて零戦は着陸して提督は妖精さんに抱きついた。

 

「ありがとう妖精さん……」

「はい……ていとく」

 

 この日以降、泊地で旧式武器は軍港防備に使用されるのであった。

 

 

 

 

――オマケ――

 

「どうも提督さん、憲兵隊です。提督が妖精さんに抱きついたという情報を入手したので御同行願えますか?」

「お、俺は無実だーーーッ!!」

 

 問答無用で憲兵に連れて行かれる提督だった。

 

 

 

 

 

 




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