艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP102 さいごの夜に

深海たちの反抗の狼煙は上がった。その後から大規模戦闘訓練は何度となく繰り返され、メンバー全員の練度は急上昇していった。しかし、2日と言うとても短い時間はあっという間に過ぎていき、遂に前夜を迎えた。

 

「陽炎。準備は大丈夫ですか?」

「ええ。ガンプラの整備は済んだし、準備万端よ!」

旧艦娘寮の一室では、陽炎と不知火が最終準備を丁度終えたところだった。

「……いよいよ、ですね」

「うん。萩風を取り返す為の戦い…か」

「艦娘時代にもこんな作戦がありましたよね。何と言うか、宿命みたいなものを感じますよ」

「そうね……さて、そろそろ寝ましょ」

「そうですね。おやすみなさい陽炎」

「おやすみ不知火……絶対に、取り戻すわよっ」

「勿論ですっ」

陽炎と不知火はそのまま布団に入り、眠りについた。

 

旧艦娘寮の別の一室では、加賀と瑞鶴が準備を進めていた。そんな中、瑞鶴がふと準備の手を止め、俯いてしまった。

「…どうしたの?」

「……なんか…怖いの」

「怖い?」

瑞鶴の言葉に疑問を持った加賀。しかし加賀は無理に聞こうとせず、瑞鶴の言葉を待った。

「……もし、翔鶴姉ぇが戻って来なかったらどうしよう。って思っちゃって」

「………」

「…柄にもない。って言いたいの?」

「そんな事ないわ。貴女らしいな、と思ったのよ」

「え?」

加賀が口にした、思いもしなかった言葉に驚く瑞鶴。加賀は言葉を続ける。

「貴女は全国大会を棄権してから、とても変わったわ。特に、今みたいに弱音を吐いたり、思っていることを偽ろうとしなくなった」

「え、私が?」

「ええ。今の貴女からは、無理に強がったりする昔の雰囲気が消えているわ。自分を見つめて、思った事を言えるのはとても難しいこと。でも、今の貴女にはそれが出来る」

「加賀さん…」

「大丈夫よ。今の貴女なら、きっと翔鶴(あの子)を連れ戻せるわ。私が保証する」

「……ありがと

「ふふっ…どういたしまして」

加賀と瑞鶴は準備の手を再び動かし始めた。

 

「………いよいよ、か」

「……ああ」

また別の部屋では駆逐棲姫と防空棲姫がお互いを見つめ合いながら、話していた。

「まさか、マスターに反抗する日が来るとは思わなかった」

「…だが、もう私たちにマスターは居ない。いるのは、私を姉妹だと言ってくれる秋月たちだ。それはお前もそうだろう、駆逐棲姫?」

「…そうだったな。時雨に夕立、山風と涼風。私にも姉妹と呼んでくれる人たちがいたな」

「……そんな記憶など無いというのに、不思議なものだ」

「…ああ。だからこそ、応えなければな」

「お互いに、な」

そう言って笑みを浮かべながらグッと握った右手を前へとゆっくり出した防空棲姫。それを見た駆逐棲姫は、フッ。と小さく笑みを浮かべ、握った左手で防空棲姫の右手とグータッチを交わした。

「そうだな…」

 

「よっしゃ、これで準備完了でいっ!山風の姉貴、そっちはどうだい?」

「うん。今終わったところ」

「そっか!んじゃあ、とっとと寝ちまおっか!」

山風と涼風がいる部屋では、準備を終えた2人が就寝しようとしていた。

「……ね、ねえ涼風」

「ん?」

ベットに向かって歩いていた涼風を、山風が引き留めた。山風は顔を赤くしてオドオドした表情で言った。

「あ、あのね…今日は、ベ、別の部屋で…寝てきても…いい?」

「別の部屋?あたいは全然構わねぇけどさ。誰の部屋に行くってんだい?」

「ひ、秘密!」

そう言って山風は部屋を飛び出していった。涼風はそんな慌てた山風を見て小さく笑い、呟いた。

「…ゆっくりしてきなよ」

山風は枕を抱えたまま、旧艦娘寮を抜け出し本庁舎へ向かって走っていった。

 

「………」

深海は旧執務室のソファーに座り、ボーっと天井を見上げていた。時雨や秋雨たちはとっくに就寝し、旧執務室は静かな時間が流れていた。その時、旧執務室の扉がノックされた。ノックに気づいた深海はゆっくりと立ち上がり、扉を開けた。そこには、山風が立っていた。

「み、深海兄ぃ…」

「深空?どうしたんだ枕なんか持って?」

「あ、あのね…い、一緒に……ね、寝ても、いい?」

「準備はもう終わったのか?」

「うん。だから、来た!」

「そうか。とりあえず、部屋に入れ。体冷やすぞ?」

「うん!」

山風を室内へ入れた深海は、慣れた手つきで部屋の角にある5畳の畳が敷かれた場所に布団を敷いた。

「布団は敷いたから、もう寝てていいぞ」

「深海兄ぃは?」

「俺はもう少しだけ起きてるから、深空は先に寝て―――」

「いやっ!深海にぃにと、一緒が良いっ」

「はあ?」

「深海にぃにが寝ないなら、あたし、まだ起きてる」

「………」

「………」

無言で目を合わせ合う深海と山風。だが、深海が先に折れてしまい結局寝ることになってしまった。

「……わかったよ。だが、布団は狭い。それだけは我慢しろよ?」

「うんっ!」

深海が電気を消し豆電球を点けると、2人は布団の中へ入った。すると、山風が深海に抱き着いてきた。

「おい深空っ、いくら何でもくっつき過ぎじゃないか?」

「ごめんなさい深海にぃに…でも、寝るまでこのままいさせて、ほしい…」

「わかったよ……早く寝るんだぞ?」

「うん。おやすみ、深海にぃに…」

「おやすみ…深空」

だが結局、2人はその1分後にはお互い眠りについていた。それをこっそり隣の寝室から見ていた空母水鬼は、にっこりと微笑みながら見ていたのであった。

 

その頃時雨と夕立は準備を終え、部屋で何をする訳でもなくボーっとしていた。

「………」

「………」

2人は終始無言だったが、時雨が夕立に声を掛けたことで無言の空間は無くなった。

「夕立、ちょっといいかな?」

「どうしたの夜空?」

「…え?夕立、今なんて―――」

「夜空って呼んでみたっぽい!どんな感じっぽい?」

夕立が唐突に自分の本名を呼び出したことに驚きを隠せない時雨。

「う、うん。凄くビックリしてる……でも…いきなり、どうしたの?」

「……うん。ちょっと、考えてたんだ。時雨のこと」

「え、僕のこと?」

いつになく険しくも悲しそうな顔をした夕立を見た時雨は、驚きつつも心配そうな表情をした。普段は自分の心の赴くままに行動する夕立が、これほど険しい顔をする事はとても稀だったからだ。

「……時雨はさ、夜空って本名と深海提督さんの妹として本当の家族と再会できたでしょ?」

「う、うん」

「夕立はね。それがちょっとだけ、怖いんだ……時雨が、村雨みたいに遠くに行っちゃうんじゃないかって…夕立、村雨が敵に回った時…とっても寂しい気持ちになったから」

「………」

「時雨は……何処にも行かないよね?」

「―――っ!」

夕立の弱々しい言葉を聴いた時雨は、居ても立っても居れず夕立を抱きしめた。

「わわ!し、時雨!いきなりどうしたっぽい!?」

「ごめんねっ…夕立」

「時雨?」

「僕のことっ…そんなに思ってくれてたなんてっ…本当に…ごめんね夕立っ、夕立ッ!…うっ、ううう…」

時雨の目からは、ぽたぽたと涙が零れ落ちていた。

「時雨……」

「うわああぁぁん!!!」

そして、夕立の想いを知った時雨は、艦船時代の記憶の中からの込み上げてきた想いに耐えられず、夕立に抱き着いたまま泣き出してしまった。艦船時代、時雨は白露型駆逐艦の最後の1隻となり自分より先に姉妹全員を失って、更に西村艦隊としてもたった1人生き残った。「佐世保の時雨」と幸運艦の判を押されても、その中に残った悔しさ、悲しみが今になって込み上げてきて、時雨は泣くことしか出来なかった。そんな時雨を見た夕立は、優しく抱き締め、声を掛けることしか出来なかった。

「ありがとうね時雨……大丈夫、大丈夫だよ」

「夕立っ!夕立ッ!!」

「大丈夫……大丈夫だよ、時雨……うっ…うう……」

時雨と夕立の2人は、お互いを抱きしめながら泣いていた。

 

その頃、電は暁たちに呼び出されて1人暁たちがいる部屋へ来ていた。電は扉をノックし声を掛けた。

「暁ちゃん、電なんのです。入って大丈夫ですか」

すると部屋の扉が開き、暁が出迎えてくれた。

「待っていたわ電!さ、入って入って!」

「はい!お邪魔するのです!」

「やあ電。よく来たね」

「いらっしゃい電!」

「響ちゃん、雷ちゃん、こんばんはなのです!」

次いで響と雷が電を迎え入れ、4人は久しぶりに全員集合となった。

「久しぶりね!4人が揃ったのは」

「そうだね。この前のはこんな空気じゃなかったしね」

「うん。あの時は、こんなこと出来る心情じゃなかったもの」

「なのです……」

「「「「………」」」」

それからしばらく電たちは黙り込んでしまった。しかし、暁がその静寂を破った。

「電、あなたに渡したい物があるの」

「え?電に、ですか?」

電がそう聞き返すと、暁はポケットからオレンジがかった黄色い星の形をしたキーホルダーを取り出した。

「これ…は?」

「私たちで作ったんだ。4人のお揃いだよ」

そう言って響がポケットから青みがかった白色の星形のキーホルダーを取り出した。

「ほら!雷も持ってるわ!」

雷はオレンジ色の星形キーホルダーを取り出し、それに釣られて暁も紫色の同じキーホルダーを取り出した。

「はわわ!色が違うけど、確かにお揃いなのです!」

「どう?凄いでしょ!」

「凄いのです!電、とっても嬉しいのです!」

「良かったわ!はい、電!」

暁はそのキーホルダーを電に渡した。紫と、青みがかった白、オレンジに、黄色。4つの星をそれぞれ掲げ、電たちはしばらくそのキーホルダーを眺めていた。

「これにはね、「固い絆」って願いを込めたの…」

「固い絆。ですか?」

「うん。どんなことがあっても、砕けることのない絆」

「私たちが身につけている、特Ⅲ型のバッジと同じ…それくらい大事なもの…」

お守りを眺めながら喋る4人。すると響が、お守りを下げて電を見据えた。

「電」

「…なんですか?」

「……何があっても、帰ってくるんだよ。私たち3人の所に…」

「…響ちゃん」

響が真剣な表情で語る。

「電が帰る場所は、ここしかないんだから!とーぜんでしょ!」

「…暁ちゃん」

暁が少しだけ慌てたように語る。

「大丈夫よ!電の帰る場所も帰ってきた後のパーティーも、雷たちがきっちり用意するんだから!」

「…雷ちゃん」

雷がハツラツとした元気な笑顔を作って語る。

「約束だよ」

そう言って響が小指を伸ばした右手を出し、暁と雷も続くように右手を出した。

「…はい!約束なのです!」

電たちは、4人で小指を結び、約束を交わした。

 

鎮守府から少しだけ離れた岬に、白雪は立っていた。波が岩肌に当たる音と、海から吹き付ける風と草木を揺れる音だけが辺りを包み込んでいた。

「………」

白雪は何かをする訳でもなく、海をただ眺めていた。すると、背後から足音がしてそれは段々と白雪に近づいてきた。

「いざ戦うってなったら、辛くなっちゃう?」

「っ!吹雪ちゃん!?」

「久しぶり、白雪ちゃん」

声を聴いた白雪は慌てて振り返った。そこに立っていたのは紛れもなく自分の姉であり、命を懸けてでも止めるべき存在である、吹雪だった。

「吹雪ちゃん、何でここに!?」

「……最後に、会いに来た。かな?」

少しだけ照れた表情を作る吹雪。白雪は額に汗を流しながら、焦り気味に口を開いた。

「何でこんな事をするの吹雪ちゃん!こんな事したって、何も―――」

「……白雪ちゃん」

「っ!」

「もう、わかってるんだ……こんな事をしても私も白雪ちゃんも救われないって…」

「ならなんで!」

「………」

ひと際強い風が吹き、白雪と吹雪の髪を揺らす。吹雪は、星が瞬く夜空を見上げながら言った。

 

 

 

 

 

風前の灯の命を持った私でも、夢を叶えたかったから…かな

 

 

 

 

 

「…夢?」

「……明日の午前10時」

「え?」

「…明日の午前10時、プラフスキー粒子精製工場で待ってるから。それだけ…伝えに来たんだ……」

そう言った吹雪は、振り返りながら手を振って歩き出した。

「バイバイ……白雪ちゃん」

「吹雪ちゃん!」

吹雪を止めようと駆けだした白雪だったが、吹雪は森の中へ消えていった。波が岩肌に当たって弾け、吹き付ける風と草木を揺れる音だけが辺りを包み込んでいた。

 

 

 

 

2020年 8月某日 午前9時59分

 

 

 

 

森に囲まれたプラフスキー粒子精製工場の入り口、反抗の狼煙を上げた者たちは集った。

 

同時刻、工場内部に反逆の狼煙を上げた者たちは集った。

 

そして――――

 

 

 

 

午前10時(運命の時)

 

 

 

 

工場から青白い光が舞い上がり、全員のガンプラのメインカメラが淡く発光した時―――

 

 

 

 

 

ガンプラバトルの未来をかけた最後の戦いが始まった

 

 

 

 

 

 

続く




いつも「艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん」を読んでいただきありがとうございます。次回はEP88~EP97までに登場したガンプラと登場人物紹介となります。お楽しみに待っていてください。お話の続きが気なる方には申し訳ありませんがご了承ください。
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