艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP120 ゼツボウノアメ

しばらくして時雨は暗闇の中にいた。何か丸い物が薄い黄色の光を放っているようだが、それもハッキリとはしなかった。

「な、なんだ?ここ」

レーダーに目をやった時雨だったが、先程までいた深海雨雲姫のファバルクを始め、4機の巨大ガンプラたちの姿も何処にもなかった。

「え?なんで、レーダーに何も映らないんだ?」

時雨は辺りを見回し、操縦桿を動かした。目の前のメインモニターにエンドレインライフルが姿を現してからゆっくりと姿を消したことを確認した時雨は、機体がまだ動くという事を確認できた。

「でも、ここはいったい何処なんだ?」

先程までいた雨の降る草原とも違う。むしろ、先程自分が飛行して居た場所よりもはるかに高い位置にいる。そんな感じを時雨は感じていた。すると、時雨の耳がとても重い爆音を捉えた。時雨はその方向へエンドレインバレットを向けると、その方向から大きな光がいくつも灯っていた。

「まさか誰か戦っている!?行ってみよう!」

時雨はエンドレインバレットをその方向へと向かわせた。

 

そして、その場所へたどり着いた時雨が目にしたのは目を疑う光景だった。

「な、なん…で…ここに…そんなっ……」

時雨の眼下、そこにいたのは――――

「山城…扶桑…最上…満潮…朝雲…山雲…なんで……」

7隻の船だった。そしてその船を時雨はよく知っていた。前方に4隻の小型の船が三角形状に陣形を組んでその後方に、巨大な船体に、上方が少し前へ飛び出した背の高い艦橋と、2基前方へ向いた連装砲と4基の後方へ向いた連装砲を積んだ戦艦。「くの字型」のとても背の高い艦橋と巨大な船体、それぞれ3基ずつ前方と後方を向いた連装砲を積んだ戦艦。細長い船体に3基の連装砲、そして後甲板には複数の水上機を乗せた飛行甲板を持つ重巡洋艦。

 

戦艦山城

 

戦艦扶桑

 

航空巡洋艦最上

 

駆逐艦満潮

 

駆逐艦山雲

 

駆逐艦朝雲

 

そして――――

 

 

駆逐艦時雨

 

 

「な、なんで……なんであの時の僕たちがいるんだ!」

(それは…キミがあの光景をもう一度見たいって思ったからだよ)

「っ!!誰だ!」

不意に時雨の耳に声が届いた。何処かで聞いたことのある声だった。

(僕はキミだよ。キミの中にいるもう1人のキミさ)

「え?もう1人の…僕?」

(そう…でもそんなことはどうでもいいよね。だってもう、始まっちゃったっからさ)

「なにを?」

直後、山城と扶桑の主砲が火を噴いた。

「山城と扶桑の砲撃!?」

(時間、見て見なよ)

「時間?………!!」

時雨がメインモニター下に表示された時計に目をやると、そこには時雨にとって衝撃を受ける時間が刻まれていた。

 

01:48

 

「こ、この時間って……駄目だ皆!このまま進んだら―――」

時雨が叫んだ瞬間、艦隊の全艦が右舷前方へ向け照射射撃を始めた。時雨が時計に目を向ける。

 

02:53

 

先程からほんの数秒も経っていないのに、時計は1時間以上進んでいた。

「駄目だ!今すぐ引き返すんだ!」

時雨は知っていた。あの日、あの時、自分が、その場に居たのだから。

 

03:10

 

扶桑の右舷中央に水柱が上がった。扶桑は右舷に傾斜し、艦隊から落伍し始めた。その直後に扶桑の周囲を照らしていた光が一斉に消えた。

「扶桑ッ!駄目だ!早く火を消し―――」

しかし、時雨の叫びも虚しく扶桑の第三、第四砲塔の付近で大爆発が発生した。その爆発により、扶桑の巨大な船体は真っ二つになってしまった。

「あ、ああ…そんな…扶桑っ!」

時雨は目を瞑ろうとした。しかし、目は一向に閉じようとしなかった。

(駄目だよ目を逸らすなんて。キミがもう一度見たいって思ったんでしょ?)

「だ、誰が…誰がこんな―――」

叫ぼうとした時雨。しかし、今度は先頭を進んでいた駆逐艦満潮と山城の右舷前方の駆逐艦山雲に水柱が上がった。そして、山雲は瞬く間に海中へと姿を消し、続くようにして満潮も沈没していった

 

03:20

 

「満潮ッ!!山雲ッ!!」

更に続くように満潮の後方にいた朝雲の一番砲塔直下に水柱が上がり、艦首が切断されてしまった。

「朝雲ッ!!早く、早く逃げるんだ!このままだ沈んでしまう!!」

同時に山城の左舷後部にも水柱上がった。

「山城!!」

(ものの数分でこの損害。やっぱりえげつないね…スリガオ海峡は)

「!!」

 

スリガオ海峡

 

時雨にとって忘れられるわけのない。あの海の名前。時雨が条件反射で時計に目を向けた。

 

03:39

 

「ま、まさか―――」

直後―――

 

03:40

 

 

 

 

 

ワレ魚雷攻撃ヲ受ク、各艦ハワレヲ顧ミズ前進シ、敵ヲ攻撃スベシ

 

 

 

 

 

「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」

 

03:51

 

今度は艦隊の反対方向から爆炎が上がり始めた。敵艦隊からの砲撃であることは目に見えていた。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」

時雨の目からは大粒の涙が溢れてきていた。そしてその表情は恐怖に支配されていた。直後、山城の艦橋直下で火災が発生した。更に先程まで動いていた山城の三番四番砲塔が動きを止め、艦隊には次々に飛来した砲弾が命中していった。そして山城に4本目の水柱が上がった。山城の船体は傾斜し始め直後、扶桑と同様大爆発を起こした。そしてその高い艦橋が崩れ落ちていった。そしてその僅か数分後、山城は船尾から横転、その巨体を海中へと没した。

「山城ぉぉぉー!!!」

(あ~あ。山城、沈んじゃったね)

 

 

 

うわあああああああああー!!!!

 

 

 

時雨は大声で叫びながら泣き崩れてしまった。両膝を地に着き、両手で頭を抱えながら大粒の涙を流し続けた。目を閉じたくても、やはり閉じれない。そして、時雨の目に時間が映り込み―――

 

04:02

 

撤退を始めていた最上の艦橋に砲弾が命中した。座り込んでしまい、メインモニターは自分の視界には無いのに、まるで床そのものが光景を映し出しているようだった。

「も…もが、み……」

続くように艦首を失っていた朝雲が火災を起こし、更なる砲弾を浴び続け轟沈した。

「ぁ…あ、あさ…ぐ、もぉ……」

そして再び最上へと光景は移った。そこに映っていたのは空襲を受けていた最上だった。最上の艦上構造物は殆どが破壊され、酷い状態だった。そして、最上は1隻の駆逐艦が放った魚雷を受けそのまま轟沈し、続くように海面を漂っていた扶桑もその姿を海中に没した。

「あ、ああ……み、みん。なぁ……山城ぉ…扶桑ぉ…最上っ…満潮っ…朝雲っ…山雲っ……」

涙を止めることが出来ない時雨。そして、時雨の目はそれを捉えた。

 

 

 

たった1隻。撤退を続ける駆逐艦を

 

 

 

「な、何で……」

時雨は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

何でいつも僕だけが生き残るんだよッッッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

「なにが幸運艦だ!なにが佐世保の時雨だ!僕は、僕はそんなものなんか――――」

(欲しくなかった?)

「え?」

(じゃあ、キミもここで沈んでしまいたい?)

「なにを、言って―――」

時雨の表情が困惑した物になる。しかし声は続く。

(キミを幸運艦の呪縛から解放してあげようか?って言ってるのさ。今なら、山城や皆もそこにいるじゃないか)

時雨は目の前のスリガオ海峡を見下ろした。暗く光る、飲み込まれてしまいそうな、まっくろな雨が降りしきる海。

「僕は……僕、は…」

(飲み込まれてしまうといいよ。そうすればキミは、幸運艦の呪縛から永遠に自由だ!)

「ぼく………は………」

時雨の瞳から光が消え始めた。そして時雨の目の前に真っ白な手が伸びてきた。

(さぁ、この手を取るといいわ。そうして、深海へと堕ちてしまいなさい!)

時雨がその手をとった瞬間―――

(あ…む、ラ…さ…ぁめ?)

時雨の意識は深い海の底へと呑まれてしまった。

 

 

 

 

 

「うりゃあー!!」

雨の降る草原で、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアがディノーバの超巨大ヒートサーベルを受け止めていた。その周りでは、ナラティブガンダムE装備とゼラクス、2.12ガンダムとタツミネ、ホロルドロッソ・イージスとガムルトがそれぞれ戦闘を行っていた。しかし先程、突如レーダーからエンドレインバレットとファバルクが姿を消し、夕立は非常に嫌な予感を感じていた。

(時雨、一体何処に行ったっぽい!?)

直後にディノーバが超巨大ヒートサーベルでビームサーベルを弾き返した。

「うわっ!」

ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアも弾き返され、ディノーバとの間に距離ができた。

「やっぱり、とんでもないパワーっぽぃ?」

夕立がユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメアの態勢を整えたと同時にディノーバがゆっくりと後退を始めた。

「え?何でこのタイミングな―――」

直後、ジェット推進のような音が夕立たちの耳に届いた。夕立、空母水鬼、山風、駆逐棲姫が一斉に上空へ目を向けると、遥か上空からファバルクが飛来し、その直後1機のガンプラが地上に降り立った。そのガンプラはゆっくりと体を起こし、姿を見せた。黒と白、そして紺色をした、長大なスナイパーライフルとバックパックに2枚の大型のシールド、右肩にはGNライフルビット、左肩にはGNシールドビットを装備していた。夕立には、すぐに分かった。

「し、時雨の機体!?何であんな姿に!」

以前の白、紺、グレーで彩られていたエンドレインバレットとは違う同一機体。すると、深海雨雲姫が言った。

「時雨が私の下僕になったからよ!時雨ったら、貴女たちが全滅する偽映像と西村艦隊の壊滅映像を見せたら、簡単に堕ちたんだから♪」

「村雨、酷すぎるっぽい!」

「何とでも言いなさい。時雨は、自分から(・・・・)深海へ墜ちたのだから」

「嘘っ?夜空がそんなこと!」

「何か言ったらどうなの?時雨」

「………僕は」

深海雨雲姫の言葉を聞いた真っ白な髪と深紅の眼、そして紫色の髪飾りをした時雨「深海化時雨」は言った。

 

 

 

ぼクはもウ、佐セボのシグれジャない!僕ハ開ホウされタンダ!!

 

 

 

 

 

 

サセボノシグレッテコウウンカンノジュバクカラッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「ア、アッハハハ…ジユウ。コレガホントウノジユウナンダ!!ボクヲシバルモノナンテナイ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホントウノジユウナンダッ!アハハ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙を浮かべながら狂ったように笑う深海化時雨の機体「ガンダムノットエンドレインバレット」は、ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメア目掛けて突っ込んできた。

「時雨ぇ!!」

 

夕立は、叫ばずにはいられなかった。

 

続く

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