艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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Final EP 終わりの光

時間は少しだけ遡る。

 

村雨たちを連れてプラフスキー粒子精製工場を脱出した深海たち。気絶した村雨、五月雨、海風、江風をバトル台にもたれかけさせた時雨たちはようやく落ち着くことが出来た。時雨と夕立の2人は一緒に逃げてきた白露と話をしていた。

「白露、さっきはありがとう。おかげで全員を助けることが出来たよ」

「ぽい!本当にありがとう白露!」

「ううン!しらツゆノほうこソ、タスけてくレテアりがトネ!」

「でも、村雨の深海細胞はどうすれば良いんだろ……ねえ、お兄ちゃ―――」

と、時雨が深海に声を掛けようとした時、深海のポケットに入っていたスマホに着信が入った。深海が着信画面を見ると、一瞬だけハッとした表情になると電話に出た。

「俺だ」

「深海、頼まれていた物。何とか見つかったぞ」

「っ!そうか、ありがとうな中枢棲姫」

電話の相手は中枢棲姫だった。その言葉を聞いた時雨たちは思わずビクッとした。全ての深海棲艦を束ねる深海棲艦の長が、電話越しにとは言えそこに居るからだ。

「まったく、この広い海であれは見つけるのは大変なんだからな」

「ああ、わかってるよ。ちゃんとしたお礼はするさ」

「……ああ。楽しみにしているよ」

「それじゃあな」

そして深海は電話を切った。

「お、お兄ちゃん、中枢棲姫と何を話してたの?」

と、時雨が少し脅えながら深海に尋ねた。すると深海は、少しだけ口元に笑みを浮かべて言った。

「今回の事件を解決する最後のピースの話だ」

「え?」

「俺は電たちを助けに行く。お前たちはこの場から離れておけ」

「深海司令官!」

と、そこへ暁と響、雷が駆け寄ってきて深海に声を掛けた。深海は返答をすることなく、顔だけを3人に向けた。

「電のこと、ちゃんと連れ帰って来てよね!死なせたりしたら絶対に許さないんだから!」

「頼むよ深海司令官。司令官だけが頼りなんだ」

「本当にお願いよ!」

「ああ、わかっているさ。最善は尽くすが、最悪の事態が起こった場合は受け入れてくれよ」

そう言って深海は1人、プラフスキー粒子精製工場へと戻っていった。

 

 

 

そして時間は流れ、電とレ級によって撃墜されたガンダム・アイアンボトムサウンド。

「吹雪ちゃん!」

そう言った白雪は電の隣から駆け出していった。

「白雪さん!」

それに気づいた電もその場を飛び出し、施設の奥へと向かった。

「………」

それを壁に隠れながら見ていた深海も、2人を追って施設の最深部へと向かって行った。

 

イナヅマガンダム・トリニティVI、ガンダムレギュルス・theレプリカとガンダム・アイアンボトムサウンドが戦闘をしていた広間で深海吹雪は項垂れながら床に座り込んでいた。

「何で…どうして……私は……」

「吹雪ちゃん!」

「…あ」

そう言ってそこに白雪が駆け込んでいた。白雪の声を聴いた深海吹雪は、今にも光を失いそうな紅い目で駆け寄ってくる白雪を見つめた。

「白雪ちゃん…」

「吹雪ちゃん、早く脱出しよう!このままじゃ爆発に巻き込まれて死んでしまう!」

「あはは…もう私たち命が短いんだよ?それなのに生きる意味なんてあるの?」

先ほど見た幻影のせいで、吹雪は完全に全てを諦めたような生気のない声でそう言った。

「そんなこと言わないでよ!私はそれでも生きたいよ!」

「白雪ちゃん…」

「吹雪さん、電からもお願いなのです!」

そこへ白雪の後を追いかけてきた電も駆け付け、吹雪に脱出を促した。

「ここまで酷いことをした私に生きてほしいなんて言うなんて、電ちゃんは本当にお人好しだね」

「電は吹雪さんに何と言われても、吹雪さんに生きてほしいのです!電は、吹雪さんと一緒にガンプラバトルを絶対するのです!」

「そう言えばそう言ってたね……でも、深海結晶が壊れてしまえばもうガンプラバトル出来ないんだよ?もう爆発まで3分を切ったからね…」

「もうすぐガンプラバトル出来なくなってしまっても、きっと何か方法がある筈なのです!」

「そんな事有る訳ないでしょ。もういいから、早く逃げ―――」

「残念ながら、ガンプラバトルが完全に無くなることはないぞ」

「!?」

そこへ深海が歩きながら現れた。それに気づいた3人はとても驚いた表情を作った。

「深海提督さん!」

「時間がないから手短話す。吹雪、残念だがお前の企みは完全に終わりだ。中枢棲姫が新しい深海結晶を見つけてくれた。ガンプラバトルが再始動するのに時間はかかるが、無くなることはないぞ」

「………」

「もうお前の計画は終わりだ。なら、電と白雪の願いくらい叶えてやったらどうだ?」

「吹雪ちゃん!」

「……はぁ。もう、どうでもいっか。いいよ…早く行こ」

「っ!お、お前は黒野深海!?何でお前がここに!」

更にそこへレ級が駆け込んできた。

「レ級!レ級も早く脱出するのです!」

「お、おう。何かよくわからないが、急ごうぜ!」

そう言って何とか吹雪を説得できた3人は、元来た道を全速力で走っていった。

「あ…」

と、走り出そうとした吹雪は突然振り返ると床に転がったガンダム・アイアンボトムサウンドを見つめた。そして、しばらくガンダム・アイアンボトムサウンドを見つめていた吹雪はやがてガンダム・アイアンボトムサウンドを拾い上げたのだった。

「直るか知らないけど、持っていこ」

そして走りだした電たちより少し遅れて、吹雪もその場から走り出したのだった。

 

「急げ!間に合わなくなったらどうしようもないぞ!」

「はい!」

深海を先頭にレ級、白雪、電、吹雪と続いていた。だが、残り3分という時間はあまりにも短かった。電たちが出口まで半分も辿り着いていなかった地点に来て、遂に吹雪が設置していた爆弾が爆発した。爆発によって起こった爆炎が深海結晶を包み込んでいく。そしてその爆音を深海の耳は聞き逃さなかった。

「爆発したぞ!急げ!」

「は、はいです!はぁ…はぁ…」

「電ちゃん、大丈夫?」

「ふ、吹雪さん。電のこと、心配してくれるのですか?」

「まあね。電ちゃんが私の事許してくれたんだから、これくらいしないと罰当たりだよ」

「吹雪さん……」

「この音…連鎖爆発してるな」

そして深海は爆発が連鎖的に起こり、その爆音が徐々に近づいてくるのに気づいた。

「気をつけろ!いつ崩れてもおかしくないぞ!」

「おい吹雪!一体どんだけの爆弾置いたんだよ!」

「この施設をスクラップ同然にする量だよ。急がないと、私たちも巻き込まれる」

「てめぇ、あとで一発殴らせろ!」

「レ級!無駄口叩いてないで走って!」

そんなやり取りをしている間にも爆発は次々に起こり、それはやがて深海の耳で捉え切れないほどの数に達した。そして施設の外でその爆発の様子を見ていた時雨たちは、次々に目の前で起こる爆発に驚きはしたものの、ただ黙って電たちの無事を祈っていた。

(電、必ず帰ってきて!)

そしてそれは暁、響、雷の3人も同じだった。3人は昨日4人お揃いで揃えたお守りと「特Ⅲ型」のバッジを握りしめて必死に祈っていた。

 

そして、電たちはあともう少しで出口となるエントランスまで続く1本道まで戻ってきた。

「あと少しだ!頑張れ電!」

「は、はいなのです……はぁ…はぁ…」

だが、走り続けた電の体力は限界に近づいていた。流石の深海も電の体力が無くなっているのはわかっていた。

(流石に背負って行った方が良さそうだな。これ以上走らせると、途中で倒れてしまいかねない)

「電、俺が背負って行くから背中に乗れ」

そう言った深海は少しだけ走るペースを落としながら電に言った。電は、疲れ果てた表情で深海の顔を覗き込んだ。

「で、でも、電を背負ったら深海提督さんの足が…はぁ…はぁ…遅くなってしまうのです」

「気にするな電。お前が思っている以上に、俺は体力がある方だ」

「深海提督さん…」

「いいから乗れ。さぁ―――」

深海と電が足を止め、深海が少しだけ腰を下ろした時だった。

 

 

 

ガッシャーン!!

 

 

 

突如、天井が崩れ落ちてきたのだ。

「な―――」

流石の深海もこの崩落には驚いてしまい、直後の行動が取れていなかった。

「深海提督さん!!」

「いなづ―――」「電ちゃん!

だが、先にそれに気づいた電は咄嗟に深海を突き飛ばした。深海は電の突然の行動に驚いた。だが、全ては遅く深海が気づいた時にはその場に瓦礫の山が出来ていた。

「電っ!!」

深海は大声で電の名前を叫んだ。すると、瓦礫の反対側から声が聞こえてきた。

「だ、大丈夫なのです!吹雪さんが助けてくれたのです!」

「急いで別のルートで脱出してくれ!すまないが、この瓦礫をどかしている時間はない!」

「わかったのです!」

(くそ!俺としたことが…)

深海は自身の失態をとても悔やんでいた。

「電っ!」

(いや、悔やむのは後だ!レ級と白雪だけでも脱出させなければ!)

「レ級、電は必ず戻ってくる!今はここから出ることを優先しろ!」

「……チクショー!」

そして深海、レ級、白雪はその場を後にした。

 

そして、別ルートでの脱出を迫られた電と吹雪は、瓦礫を目の前にして立ち尽くしていた。

「吹雪さん、助けてくれてありがとうなのです」

「ううん。お礼には及ばないよ…電ちゃん」

「…諦めちゃ駄目なのです!」

「そうだね…急ごう」

「なのです!」

そう言って電と吹雪は瓦礫が点在する反対側へと戻っていった。

 

そしてそれから少しして深海、レ級、白雪が施設の玄関から抜け出してきた。

「お兄ちゃん!」「にぃに!」「深海!」「深海提督さん!」

それを見た時雨、山風、空母水鬼、夕立は慌てて深海の元に走っていった。

「はぁ…はぁ…流石に、ヤバかった…な」

「にぃに、良かった。良かったよぉ…」

「大丈夫なの深海!どこも怪我とかしてないよね!」

「あ、ああ。怪我はしてない…だが……」

「あれ?電ちゃんが、いない…」

そして夕立は電がいないことに気づいた。すると、隣にいたレ級が口を開いた。

「電とは分断されちまった。瓦礫が落ちてきてしまったんだよ」

「!!」

「レ級!まさか、お前―――」

レ級の姿を見るなり、彼女の胸倉を掴もうとした時雨だったが深海が慌ててそれを引き留めた。

「やめろ夜空!そいつはレ級だが、以前のレ級じゃない!」

「え?」

「吹雪に偽の記憶を植え付けられて、お前たちと戦わされていたんだ。だから、暴力を振るうのは止めてくれ。レ級も、被害者の1人なんだ」

「お、お兄ちゃんがそう言うなら……」

その場は事なきを得た。そしてそこに、暁、響、雷がやってきた。

「深海司令官…電は……」

「……すまない。脱出の途中で、分断されて逸れてしまった」

「じゃ、じゃあ、まだあの中にいるのかい!?」

「…ああ」

「――――っ!」

それを聞いた暁は、咄嗟に施設内へと駆けだそうとした。しかし、暁の腕を深海は掴み彼女を引き留めた。

「やめろ暁!今行けば、お前まで死ぬことになるんだぞ!」

「行かせてよ!また電だけが死んでしまうなら、暁も一緒に―――」

「馬鹿なことを言うな!なら電が無事に戻ってきた時に、お前がいなかったらどうする気だ!!」

「でも、これだけ崩れた施設の中で生きてる訳ないもん!」

「いい加減にしろ暁ッ!!これ以上暴れるなら、気絶させてでも止めるぞ!」

「や…やれるものならやって―――」

止めるんだ暁!

そして、響が声をあげた。暁は、響が今までに見せたことのない叫び声に驚きながら、涙でグショグショになった顔を響に向けた。

「今は待つことが私たちの最善策だよ。あの時みたいに、目の前で確実に電が死んだわけじゃないんだ」

「響……」

「私だって、今すぐ助けに行きたい。でも深海司令官の言う通り、電が無事に戻ってきた時に暁がいなかったらどうするのさ?」

「そ、そうよ!雷は電が生きてることを信じるわ!きっと帰ってくる!ううん…絶対帰って来る筈!」

「雷……」

「今は信じて待つんだ暁。今は、私たちに出来る精一杯のことをやろう」

「……う、うんっ」

暁は涙を流しながらゆっくりと響の手を取って立ち上がった。だが、その直後だった。

 

 

 

 

 

ドカァァァーンッ!!

 

 

 

 

 

ひと際大きな爆発が施設で起こったのだ。熱と瓦礫を含んだ爆風が外にいた全員を襲った。

「うわあぁっ!」

「キャアァッ!」

「クッ…!」

爆風が去った後、深海たちの目の前には火を纏った瓦礫の山が積みあがっていた。たった今、暁たちが電の帰還を信じた直後の出来事だった。

「あ、あああ……」

「そ、そんな…」

「建物が…」

 

 

 

完全に崩れた。

 

 

 

「い、電……電――――」

 

 

 

 

いやあぁぁぁぁぁー!!!!

 

 

 

 

その光景を見た暁は、悲しみのあまり絶叫した。それを見た響は完全にゆっくりとうつむき、雷は涙を流しながら放心状態だった。

「………くそぉ!」

そして、流石の深海もこれには地面を殴りつけることしか出来なかった。

「電……」

時雨もまた、放心状態で瓦礫の山を見ていた。

「電ちゃぁーん!!」

夕立は全力で電の名前を呼び、泣き始めてしまった。

(また…また僕は、助けられなかったのか……)

「何でだよ……何で僕は誰も救えないんだよぉ!」

悲しみのあまり、時雨も叫んだ。そして、炎のパチパチッという音と悲しみがその場を包み込んで、その場にいた全員が俯いた。

「吹雪ちゃん……」

そして白雪もまた、目に涙を浮かべていた。もう会うことが出来ない自分の大切なたった1人の姉を思うと、涙を浮かべずにはいられなかった。

「ごめんなさい。もう、私は泣かない!吹雪ちゃんの分も生き抜いてみせるよっ」

 

 

 

 

だが、その時だった――――

 

 

 

 

 

 

 

 

勝手に殺さないでよ

 

 

 

 

 

 

 

 

白雪の耳元に、聞き覚えのある声が届いたのだ。その声に反応するように、白雪はハッキリと声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪ちゃん!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

白雪の声を聴いた深海、時雨、夕立はハッとして白雪の方を向いた。

「白雪!今、吹雪と言ったか!?」

「は、はい!ハッキリと聞こえたんです!吹雪ちゃんの声です!」

「っ!それは何処からだ!」

「そ、それが……耳元にいきなり――――」

と、その時だった。

 

 

 

ガラガラガラ……

 

 

 

施設の隅にある瓦礫の山が崩れたのだった。そしてそこには――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか…ガンダム・アイアンボトムサウンド(深海フレームの機能)に助けられるなんてね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電を抱えた吹雪の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその直後、超大量の青白い光が精製工場の中心から舞い上がるように現れた。

「こ、この光って…」

その場に居る者の中で、この光が何なのか、わからない者はいなかった。

 

 

プラフスキー粒子の光だ

 

 

プラフスキー粒子の光はやがて、その場にいた全員に舞い落ちた。すると駆逐棲姫、防空棲姫の2人に舞い落ちたプラフスキー粒子が2人を光に包み込んだ。

「な、なんだ?…あ―――」「これは…暖かくて優しい光?あ―――」

 

きれいな―――

 

空が、綺麗―――

 

そう言った2人を包む光が晴れると、そこには鮮やかなピンク色と毛先が水色がかった髪を左側でサイドテールにして、白いベレー帽をかぶった時雨たちと同じ制服を着た少女と、明るいセミロングの茶髪を2本の三つ編みおさげにし、その先を黄色いスクリュー型アクセサリーでまとめているのが特徴的な秋月たちと同じ制服を着た、ダークグレーの色をした目の少女が立っていた。

「は、春雨!」

「て、照月!」

そこに立っていたのは、間違いなく時雨と夕立の妹である春雨と、秋月の妹である照月だった。

「時雨姉さん、夕立姉さん…わ、私……」

「秋月姉さん。涼月に初月も…私、もど…れた?」

 

春雨!

 

照月!

 

時雨と夕立、秋月と涼月、初月は春雨と照月にそれぞれ走っていった。夕立は止まることなく春雨に飛び着き、そして時雨は抱き着く夕立の隣で腰をゆっくりと下ろした。

「春雨ー!良かったよ、ちゃんと元に戻ったっぽいー!」

「ひゃあ!ちょっと夕立姉さん、苦しいです!」

「良かった…ありがとう春雨、ちゃんと戻って来てくれてっ…うっ――」

「ええ!?泣かないでくださいよ時雨姉さん!」

そして、秋月もまた嬉しさのあまり照月に飛びついたのだ。

「照月!良かった!本当に良かったよ!大丈夫だって、信じてた!」

「ちょ、秋月姉さんいきなり抱き着かないでよ恥ずかしいって!」

「本当に…良かった。照月姉さん…うっううう……」

「って、涼月は泣き過ぎよ!」

「まあまあ、今日くらいは許してあげなよ。照月姉さん」

「いやいや、号泣しながら何でそんなクールなこと言えるのよ初月!」

そして涼月、初月の2人は秋月と照月の傍で涙を流していた。その2人に照月は的確にツッコミを入れていたが、その目からは涙が零れ落ちていた。そしてプラフスキー粒子の光は駆逐水鬼、深海雨雲姫、深海化した翔鶴、白露、五月雨、海風、江風も包み込んだ。そして光が消えると、そこには元の姿に戻った萩風、村雨、翔鶴、白露、五月雨、海風、江風の姿があった。

 

萩風!

 

翔鶴姉ぇ!

 

古代紫色の前髪を左で七三分して、エッジの効いたアホ毛と左サイドアップが目を引くセミロングが特長の陽炎と不知火と同じ制服着たバトル台にもたれ掛かっていた少女、萩風の元に駆け寄る陽炎と不知火。すると、萩風の金色の瞳がゆっくりと開かれ、陽炎と不知火の2人と視線が合った。

「う…あ……陽炎姉さん、不知火姉さん?」

「萩風!もうっ、勝手にどっか行くんじゃないわよ!」

「本当に…本当に心配したんですからねっ」

「はい……本当に、ごめんなさい。ごめんなさいっ」

涙を流す陽炎と不知火からもらい泣きをする萩風。そして、元に戻った翔鶴の前に座り込んだ瑞鶴は、必死に翔鶴を揺さぶって目を覚まさせようとしていた。

「翔鶴姉ぇ!翔鶴姉ぇ!起きてよ!ねえ起きてよ!」

「うう…瑞鶴、そんなに揺さぶらないで…ちゃんと起きてるわ」

「翔鶴姉ぇ!!」

翔鶴が目を覚ましたことに気づいた瑞鶴は、居ても立ってもいられず衝動的に翔鶴に抱き着いた。そして周囲を気にすることなく、わんわんと泣き出したのだった。

「うわぁぁぁーん!翔鶴姉ぇ!翔鶴姉ぇぇー!!」

「大丈夫よ瑞鶴。もう何処にも行かないわ…だから、安心して…うっ…」

そして翔鶴もまた、瑞鶴の髪をゆっくりと撫でながら涙を流すのであった。

(良かったわね、瑞鶴…)

そんな瑞鶴を見て、加賀はホッとした表情を見せるのだった。

「時雨ー!夕立ー!春雨ー!」

そして、元に戻った白露は全力疾走で時雨と夕立、春雨に抱き着いたのだ。

「わっ!し、白露!」

「わわ!いきなり来られたらビックリしちゃうっぽい!」

「そんなのいいでしょ!せっかくみんな元に戻れたんだから!」

「…そうだね。うん。僕も嬉しいよ」

「春雨もです!」

「夕立もっぽい!」

そして4人が抱き合って喜びあっている間に村雨、五月雨、海風、江風の4人も目を覚ました。

「うう~ん……あ、あれ?私、元に戻ってる?」

「いってて…あ?元に戻ったのか私ら?」

「うう…あ、江風。大丈夫?」

「海風の姉貴こそ、大丈夫なのか―――」

「海風姉ぇー!江風ー!」

「きゃあぁぁ!」「どわあぁぁー!」

と、そこへ山風が飛びついてきた。その目からは大粒の涙が止まることなく流れ落ちていて、山風もわんわんと2人に抱き着きながら大泣きしていた。

「うわぁぁーん!海風姉ぇー!江風ー!」

「山風…よしよし、寂しい思いさせてごめんなさい」

「まったくぅ…相変わらず泣き虫だなぁ山風の姉貴は」

「いいじゃん今日は。気が済むまで泣かせてやんなよ」

「涼風も、心配かけてごめんなさい。もっとしっかりしないと駄目ですね、うん」

「いやいや、これ以上しっかりしてどーすんだよ海風の姉貴」

そして、たった1人だけ気まずそうな雰囲気をかもし出している人物がいた。

「………」

村雨だ。そして、そんな村雨に気づいた時雨は、騒ぐ夕立3人の傍を離れ村雨の元へ歩いて行った。

「村雨」

「………」

そして、村雨に声を掛けた時雨だったが村雨はそっぽを向いたまま口を開こうとしなかった。それを見た時雨は、一方的に話し始めた。

「村雨、僕は姉妹のみんなを苦しめたことは許すことが出来ないよ」

「………」

「だけど、もう止めようよ。村雨がしたことは許されないかもしれないけど…もう僕と村雨に戦う意味なんて無いじゃないか」

「………こんな時にまで、お姉ちゃんぶるのね時雨」

「そりゃそうだよ。だって僕は、村雨のお姉ちゃんだからね」

「……そうよね…あーあ!完全に私の負け!……やっぱり、時雨姉さんには敵わないわ」

そう言った村雨はゴロンと地面に寝っ転がった。それを見た時雨は小さく笑みを浮かべながら言った。

「そんな事ないよ。みんなへのフォローなら、僕は村雨に勝てないよ」

「はいはい、わざとらしく言わないの………でも、ありがとうね時雨お姉ちゃん

「どういたしまして!」

そして時雨は、村雨の頭を優しく撫でたのだった。

 

「なるほど。 D事案(ドロップ)…か」

「え?」

そんな中、深海は今目の前で起こった現象が D事案(ドロップ)であることに気づいた。それを聞いて空母水鬼は疑問の表情を浮かべた。

「深海棲艦を倒すと、稀に新しい艦娘と邂逅する。深海結晶は深海棲艦の力の源。それが破壊されて、深海細胞を浄化したんだろう。まあ、母さんや俺、艤装を解体した深海棲艦とほぼ同じレ級や他の深海棲艦の連中には作用しないだろうがな……」

「そ、そうなんだ……」

だが、当の空母水鬼はまるで意味が分かっていなかった。そしてプラフスキー粒子の光は空母水鬼の隣に立っていた白雪、そして電と吹雪にも舞い降り、包み込んだ。そして彼女たちの白い髪と肌、紅い目、深海細胞によって異形化した吹雪の左腕を元に戻したのだ。その元に戻った肌を見て吹雪は笑った。

「最後の最後に、壊そうとした相手に救われるなんてね……」

「うっ……」

「あっ、電ちゃん」

そして電は、吹雪の肩で目を覚ました。

「吹雪、さん?」

「助かったんだよ、私たち…」

「………」

電はゆっくりと顔を上げた。すると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電ぁぁぁぁー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこへ暁と響、雷が走ってきた。暁は泣きじゃくった顔で電に飛びつき、響と雷も続いて電に抱き着いた。吹雪は咄嗟にその場を避けたので巻き込まれることはなかった。

 

 

 

 

電ぁぁー!!心配したんだからぁー!!

 

 

 

 

もう、ちゃんと帰ってこないと駄目じゃないか!

 

 

 

 

本当、世話の焼ける妹なんだから!!

 

 

 

 

「暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん……ごめんなさい…ごめんなさいなのですっ」

 

 

 

 

うわあぁぁぁーん!!!

 

 

 

 

目の前で泣きじゃくる姉妹たちを見て電も、泣き始めた。姉妹のぬくもりを感じた電には、暁たちと泣くことしか出来なかった。ただただ、謝りながら泣くしか出来なかった。

「………」

「吹雪ちゃん!」

そんな電たちを見ていた吹雪の元に白雪が駆け寄ってきた。そして白雪もまた、吹雪に釣られて電たちを見つめていた。

「…私たち、助かったんだね」

「……うん。無くそうとしたガンプラバトルの根幹部分に命を救われるなんてね…」

「吹雪ちゃん…」

「ううん、わかってるよ。私は簡単には許されないことをしたんだ。この罪は消えないし、消す気も無いよ」

吹雪は今まで自身がしてきたことへの償いの気持ちを白雪に語った。白雪は、そっか。と短く返答したが、やがて吹雪に言った。

「……でも、私は嬉しいよ」

「え?」

「また一緒に、吹雪ちゃんと生きられるんだもん。私は嬉しいよ」

「……そうだね」

そして吹雪は、小さな声でありがとうと白雪に言ったのだった。

 

「電!」「電ちゃん!」

そして暁たちと抱き合っていた電の元に時雨と夕立の2人も駆け寄ってきた。すると、電の声を聴いた暁たち3人は何も言わずに電から離れていった。

「時雨さん。夕立さん」

 

 

良かった…本当に無事で良かったよ…電

 

 

もう!夕立たちを泣かしたお詫びは、しっかりとって貰うっぽい!

 

 

そして時雨と夕立の2人は大粒の涙を流しながら電をギュッと抱きしめ、電もまた涙を流しながら時雨と夕立を抱きしめ返した。

 

そして言った―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのです!

 

 

 

プラフスキー粒子の光が空を照らしたこの日

 

 

 

 

長く短いガンプラバトルを巡る戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

Fin.

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