艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
体育館の1階に設置されているバトルシステム台の前に電と時雨、夕立は立っていた。そしてその台を挟んだ向かい側に紅い瞳と、鮮やかなピンク色と毛先が水色がかった髪を左側でサイドテールにして、白いベレー帽をかぶった時雨たちと同じ制服を着た少女が立っていた。
「春雨。まさか、こんな所で出会うとは思わなかったよ」
春雨と呼ばれた少女はニコリと笑って口を開いた。
「はい!時雨姉さん、夕立姉さん。お久しぶりです」
「時雨さん。こちらの方は?」
「僕たちの妹の春雨だよ。君とはゆっくり話がしたかったけど―――」
「春雨が相手でも夕立は手加減しないっぽい!」
と夕立は時雨の言葉を遮って、早くバトルがしたい。と言わんばかりに垂れた犬耳の様な髪をピョコピョコと動かしていた。時雨は、はぁ。とため息を吐くが、春雨も苦笑いになって口を開いた。
「あはは…相変わらずですね夕立姉さん…でも―――」
すると今度はキリッとした表情になった春雨は続けた。
「勝負ですから、春雨も全力で挑ませてもらいます!」
「春雨もやる気満々っぽい!さぁ、バトル開始っぽい!」
夕立の言葉に反応したかのようにバトルシステムが起動した。
「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to B」
バトルシステムが起動し、ダメージレベルが設定される。全国大会地区予選ではこの「Bレベル」が原則として決められている。
「please set your GP base.Beginning Plavsky particle dispersal.Field 03 Forest.」
幾億万のプラフスキー粒子がバトルシステムから放出され、巨大な密林のフィールドが形成される。青々と生い茂る木々あちこちに点在する小さな高台と中央のひと際大きな高台が存在するフィールドだ。
「Please set your Gun-pla」
電たち3人と、春雨とそのチームがそれぞれのガンプラを目の前の台座にセットする。システムがそれぞれのガンプラを読み取り、ガンプラのメインカメラが光る。そして、ホログラフの操縦スペースが展開され球状の操縦桿をそれぞれが握りしめる。
「Battle Start!」
システムがバトル開始を宣言し、ガンプラが設置された台座がカタパルトに変貌する。それぞれのガンプラが発進体制に入り、そして―――
「電。イナヅマガンダム、出撃です!」
「時雨。ガンダムレインバレット、行くよ!」
「夕立。ユニコーンガンダムナイトメア、出撃よ!」
電たちの3機のガンプラがフィールドに向かって発進する。そして、台の向こう側でも――――
「春雨。
春雨のガンプラ「
「夕立さん使ってください!」
発進して早々、イナヅマガンダムはバックパックのファトゥム-01をパージしていた。パージされたファトゥム-01はユニコーンガンダムナイトメアを追いかけて飛び、その上にユニコーンガンダムナイトメアを載せると急上昇、イナヅマガンダムと、レインバレットに追いついた。
「さて、どう出てくるかな…」
「ジッと待ってるのは夕立苦手っぽい」
「空を飛んでる以上、ジッとなんかしてられないのです!」
「そうだね。電、夕立と一緒に先行してくれるかい?僕は一旦地上に降りて狙撃ポイントに向かうよ」
「了解なのです」「了解っぽい!」
作戦が決まった3人は、それぞれに行動を開始した。電と夕立はそのまま先行して中央の高台を目指し、時雨は地上に降下しフィールドが形成されたときに見つけていた狙撃ポイントへと向かった。
高台の中腹の台地に到着した電と夕立は、そびえたつ崖に背を当て周囲を警戒していた。ここに来るまで相手と接敵することはなかったことから、電は相手がまだこの高台を越えていないと思いそのことを夕立と相談していた。
「夕立さん。ここまで相手のガンプラと出会わなかったことを考えると…」
「うん。春雨はまだ、この高台を越えてないっぽい」
「高台を迂回してると思いますか?」
「迂回してるなら、時雨が攻撃してると思うっぽい」
「そうですね…」
そこからしばらく静寂が続いたが、その静寂は電と夕立の操縦スペースに鳴り響いたアラートによってかき消された。
「上!?」
太陽を背にし、長大なライフルを構えたガンプラが現れた。太陽の光に目を細めた電と夕立、そしてその目には長大なライフルを三角形上に取り囲むバインダーが赤い電撃を放っている光景が映った。
「命中させます!」
「!電ちゃん、避けて!」
「!?」
イナヅマガンダムと、ユニコーンガンダムナイトメアが飛び退くのと同時に、その場に長大な桃色のビームが直撃し大爆発を起こした。
「夕立さん!」
「ムムム…春雨、やるっぽい!」
電はバックパックに戻していたファトゥム-01を射出した。そしてすかさずフォースシルエットの主翼を展開しその場を離れた。そして、爆煙の向こう側にユニコーンガンダムナイトメアが飛んでいるのを確認しホッと安堵する。しかし、そんなイナヅマガンダムにオレンジ色のビームが迫った。電の目の前にX字状の4つの目とバインダーを持ったガンプラが見えた。ガンダム
「ハッ!」
電は機動防盾を展開させると、それを機体前方に構えビームを防いだ。
「電ちゃん!」
そこにファトゥム-01に乗ったユニコーンガンダムナイトメアが駆け付け、肩部のビームキャノンでGN-Xを追い払った。その隙にイナヅマガンダムは態勢を立て直した。そして、先程太陽を背にして現れたガンプラが姿を現した。背中のコーン型スラスターから淡い緑色のGN粒子を放出する、4枚のウイングバインダーと長大なライフルとシールドを持った鋭利的な頭部と細身の外見が目を引くピンクと白のツートンカラーで彩られたガンプラ。
「これが、春雨のガンプラ。
「「あの機体は、
観客席でバトルの様子を見ていた村雨と操縦スペースの電が呟く。観客席では村雨に続いて五月雨が口を開いた。
「
「それに見てあのGNバスターライフル。銃口が2門になってるし、おまけに機体の隅々が細くなってるわ」
「なんか元々の
「う~あたしにはさっぱりわからん…」
と、解説をする村雨と五月雨の話に全く付いていけない白露だった。
「あれが春雨のガンプラか…」
狙撃ポイントから先程の光景を見ていた時雨。先程の
「気づかれずに接近しているつもりだったようだけど…残念だったね」
そして一言呟くと、操縦桿の引き金を引いた。桃色のビームが森の中へ吸い込まれていき数秒後―――
ドカーン!!
森の奥で爆発が起こった。
「え?」「ぽい!?」
「爆発?…まさか!」
突然起こった爆発は時雨を除く4人を驚かせるには十分すぎた。そして、時雨はレインバレットを再び中央方向に向けて呟いた。
「悪いね春雨。僕の機体のセンサー有効範囲は並みのガンプラを凌いでるんだよ…」
「くっ、流石時雨姉さん」
「隙だらけだよ!」
そう言うと再び時雨は操縦桿の引き金を引いた。放たれたビームは爆発に動揺して動きを止めていたGN-X目掛け飛んでいく。そしてそれは、咄嗟の反応で回避を行ったGN-Xの左腕を直撃し腕部を根元から弾き飛ばした。直撃はま逃れたものの左腕を失ったGN-Xは態勢を崩していた。
「電、今だよ!」
時雨の言葉が電の耳に届く。未だに爆発に驚いていた電だったが、時雨の言葉でハッと我に返り体勢を崩したGN-Xに照準を合わせる。
「もらったのです!」
イナヅマガンダムはビームライフルと、ビームキャノン同時発射した。緑と赤色の3本の閃光がGN-X目掛けて飛び、そしてそれらは胴体部を貫いた。GN-Xが爆発を起こし、消えた。
「あっという間に…でも、まだ終わってません!春雨は、1人になっても―――」
そう言うと、春雨は武器スロットの中から「SP」を選択した。
「絶対に諦めたりなんかしません!トランザムッ!!」
「あれは、トランザム!?」
観客席で村雨が立ち上がって叫ぶ。
「村雨、トランザムって?」
白露がすっとぼけ多様な表情で村雨に聞く。
「トランザムって言うのはガンダム
「基本スペックの3倍!それってかなり凄いよね!?じゃあ、あの赤く光ってるのは?」
「あれは、機体内部に蓄積された高濃度圧縮粒子が全面解放されて機体が赤く発光する現象、更に発動中は残像が残るほどの高速移動が出来るようになるけど、限界時間を過ぎると、粒子の再チャージまで機体性能が大幅に低下してしまってまともに動けなくなっちゃうの」
「行きます!」
赤い衣を纏った
「すごっ!何あの速さ、島風ちゃん以上に見える!」
「えーい!」
「なんのー!」
ユニコーンガンダムナイトメアはビームトンファーを展開し
「あ~!」
「まだまだぁー!」
飛ぶことの出来ないユニコーンガンダムナイトメアを追撃しGNダブルバスターライフルを放つ春雨の
「夕立さん!」
「!電ちゃん!」
そこにイナヅマガンダムがビームライフルを撃ちながら割って入ってきた。しかし、イナヅマガンダムが放ったビームを
「は、早すぎるのです!」
「ロックオン…そこです!」
「あ!」
咄嗟に機動防盾を構え防御するイナヅマガンダム。しかし、攻撃を防ぎきることには成功するも機体はビームの勢いに押され後方へと飛ばされた。
「「電!」ちゃん!」
「うう…だ、大丈夫なのです―――」
「やぁぁー!」
態勢を立て直したイナヅマガンダムにGNビームサーベルを上段に構えた
「電、避けるんだ!」
「っ!」
時雨が全力の声で叫ぶが時既に遅し、GNビームサーベルは上段から振り下ろされていた。イナヅマガンダムは機動防盾を構え防御姿勢を取った。そして――――
バキンッ!!
鈍い割れる音と共に機動防盾がGNビームサーベルによって両断された。
「やった――――あれっ!?」
しかし、そこにイナヅマガンダムの姿はなかった。
「いくらスピードが速くても…」
春雨の操縦スペースに電の声が届き、後方のアラートが鳴り響いた。春雨はハッとして後ろを振り向いた。そこにはビームライフルを構えたイナヅマガンダムの姿があった。電は、直撃の瞬間機動防盾を手離すとスラスターを一旦切って降下、そして
「そんな!」
「真っ直ぐ進んでたら普通の的なのです!」
イナヅマガンダムが放ったビームライフルの光が春雨の目に入り、そして次の瞬間―――
「Battle Ended!」
バトル終了を告げるアナウンスが鳴り響いた。バトルシステムがシャットダウンされ、フィールドと操縦スペースが消える。バトルシステムの台中央に胴体部を撃ち抜かれた
「負けちゃいましたか…」
「春雨ー!」
「へ?きゃあ!」
バトルが終了するなり、夕立は春雨に駆け寄りそして飛びついた。飛びつかれた春雨は体育館の床に尻もちをついた。
「ゆ、夕立姉さん…」
「春雨!良いバトルだったっぽいー!夕立ったら、久しぶりに焦ったっぽい!」
「夕立…すぐ飛びつく癖は直した方がいいと思うよ?でも、僕もあそこでトランザムを使ってくるとは思わなくてビックリしたよ」
「なのです!トランザムが使えるほどのガンプラ作るなんて春雨さん凄いのです!」
電と時雨も春雨に歩み寄って口を開いた。尻もちをついたままの春雨は、えへへ。とテレ顔で頭を搔いていた。
「春雨、またバトルするっぽい!」
夕立が春雨に満面の笑顔で、再戦を願い出た。そして、それに答えるように春雨も満面の笑顔を作り、はい!と高らかに答えた。そして、体育館2階の隅っこからその様子を眺める影がいたことに誰も気づいていなかった。
「フフッ…いい
夕暮れに照らされる住宅街を春雨が歩いていた。地区予選の1回戦で敗北を喫した彼女だったが、その心の中は晴れやかだった。夕立たちと交わした再戦の時が、待ち遠しくてたまらないと言わんばかりの表情だった。
「よし!今度は姉さんたちに負けないようにもっと強いガンプラ作らないと!」
そんなにこやかな表情で歩いていた春雨の表情は、横道から出てきたフードかぶった黒のロングコートを羽織った人物の言葉で一瞬にして険しいものへと変わった。
「待ってたよ。春雨ちゃん」
「!誰ですかあなたは!」
その人物から放たれるおぞましい何かを感じた春雨は慌てて身構えた。そして、しばらくの沈黙の後ロングコートが口を開いた。
「名乗るほどの者でもないよ。ただちょっと、春雨ちゃんの力を貸してほしいんだよね」
「っ!な、なにを言っているんですかあなたは!」
「まあでも、顔もわからなかったら普通は付いてこないよね――――」
そう言うと、その人物はフードをまくってみせた。そして、春雨に衝撃が走った。
「あ、あなたは――――」
その次の瞬間、その人物は春雨の首の裏をトンと叩いた。すると、春雨は気を失いその場に倒れてしまった。そしてその人物は、フードをかぶりなおすと春雨を担ぎ上げ路地裏へと消えていった。その口元は笑っていた。
続く
次回の投稿は、来年1月の2週目とさせていただきます。何卒、ご了承ください。