艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
その男「黒野深海」の正体を知った電は驚きを隠せなかった。電の顔を見て小さく笑った深海は口を開いた。
「まぁ、いきなり俺が現れたら誰でも驚くよな…世間じゃ英雄呼ばわりされてるしな」
「は、はい…本当に驚きました」
未だに驚いた口調で喋る電に深海は、ははは。と苦笑しそして、優しげな表情になった。
「体の方は大丈夫か?」
「体ですか?」
深海の言葉に不思議そうな顔をする電。その表情を見た深海は、右手を顎に当て少し何かを考えてから口を開いた。
「電。さっきフードを被った奴とバトルしていたのは覚えてるか?その時、奴の「内部侵食」をくらっただろ。その傷は大丈夫か聞いたんだ」
「えっと…ごめんなさい、よく覚えてないのです。でも、身体は大丈夫なのです。ちょっと右目の辺りが変な感覚があるけど…」
「そうか…とりあえずこれを渡しておくな」
電は右目を手で押さえながら答えた。電の言葉を聞いた深海は、ズボンのポケットから白と青に色分けされたカプセルの入ったケースを取り出した。そして、電の手を取るとそれを掌に置いた。電は不思議そうな表情でケースを一弁すると、深海に尋ねた。
「これはなんですか?」
「細胞の深海化を抑制する薬だ。お前が言った「変な感覚」はお前の細胞が徐々に深海棲艦と同じ物に変わっていってる現象だ」
深海は真剣な表情で口を開いた。その言葉に動揺を隠せない電。
「え…深海棲艦と同じ―――」
「ああ。それも以前の戦争でお前たちが目の当たりにした「破壊を求める」という衝動を駆り立てる物にな。奴がどういう訳でお前に自分と同じ細胞を植え付けたのかはわからないが、このまま放っておけばお前は数ヶ月で破壊を求める深海棲艦になってしまう」
「そ、そんな…電は、深海棲艦になるのですか?」
深海の言葉に恐怖を感じた電は、顔から血の気が引いたように青ざめてしまった。そして恐怖心を抱いたままの表情で深海にまた尋ねた。
「い、電は…どうすれば良いのですか?」
「…悪いがそれは自分で決めてくれ。こうなってしまった以上、俺にもどうしようも出来ないんだ。でも――――」
深海は一拍置いて続けた。
「奴らの計画について、ある程度の仮説を立てられる確信が今持てた」
「え、奴らの計画?」
「ああ。まぁ、仮説の域を出ないがな…と、その前に―――」
深海は背後の襖に顔だけを向け一言呟いた。
「何やってんだ?お前ら」
すると、襖がゆっくりと開き秋雨と梅雨葉、雨葉が出てきた。
「み、見つかっちゃった…」
「お父さんに隠し事出来ない。そう言った」
「梅雨葉の言う通りだね。あはは…」
出てきた3人を見た電は驚いた。その中でも秋雨には1番驚いたようで――――
「し、時雨さん?…ううん、ちょっと違う?」
「ははは、秋雨。お前、お母さんによく似てるってよ」
「え!?そ、そう?」
電のその驚いた言葉に茶々を入れる深海。しかし、深海の言葉は電を更に混乱させることになった。それもそうだ、電は時雨と一緒にいるのだから勘違いをしても当たり前だ。
「し、時雨さんが深海提督のお、奥さん!?」
「どうした電?そんなに驚くことか?」
「だ、だって時雨さんは誰かと結婚はしてないですし!それに会ったことがあるだけって!」
(あ、こりゃ勘違いしてるな)
電の勘違いに気付いた深海は、秋雨たちを紹介し現状と電の勘違いについて説明した。そしてようやく電は混乱から抜け出した。
「と言うことだ」
「はわわ…そうだったのですか」
「ねぇねぇねぇ!おねーちゃんはガンプラバトルってするの!?」
「はわっ!と、飛びつかないでなのです!」
と、話に割り込んできた雨葉が電に飛びついてきた。当然驚く電で、そこにさっきの再現と言わんばかりに秋雨が止めに入る。
「コラー雨葉!さっき、すぐに飛びつくのは止めなさいって言ったとこでしょー!」
「良いでしょ良いでしょ良いでしょ!初対面の人にこそ、スキンシップってとってもとってもとっても大事だと思うなー!」
「雨葉、度が過ぎてる。その人驚いてる」
「雨葉、今電と大事な話をしているんだ。飛びつくなら終わってからにしろ」
「うー、おとーさんがそう言うなら…」
「まぁ、お前たちにとっても少し関わってくるかも知れないからな、一緒に聞いてくれ。…白、お前もだぞ」
「!?」
その言葉を聞いた白はビクッと体を震わせ、外に出ようとするのを止めた。難しい話が苦手な白は、こういう時コソコソとその場から逃げようとするのを深海は知っているのだ。そして案の定捕まってしまった白は嫌な表情をしたまま畳の上に座った。白に続いて、秋雨たち3人も座り最後に深海が腰を下ろす。その場にいた全員が少し真剣な表情になるのを確認して深海は口を開いた。
「さて、まず俺の目的から話すとしよう…」
「深海提督の目的。ですか?」
「ああ…電。お前は最近相次いでいる失踪事件について知ってるか?」
「はいなのです。この旅館に来るまでに青葉さんから聞きました。確か、元艦娘の失踪が相次いでるって…」
深海の質問に答える電。深海は、そうか。と一言呟くと、一拍おいて話を進めた。
「簡単に言うと、俺の目的は艦娘を失踪…いや拉致している犯人の拘束と、拉致された奴らの救出だ」
「ちょっと待ってお父さん。拉致してる犯人ってどういうことなの!」
深海の言葉に驚きを隠せない秋雨。それもそうだ深海の言ったのは「失踪」ではなく「拉致」。ハッキリ言って失踪とは真逆の言葉だ。
「「失踪事件」って言うのはあくまで世間を騒がせないようにとの措置だ。今この国のトップには提督時代の友人が多いからな。それに…また人類と深海棲艦とで戦争になったらたまったもんじゃない」
「お父さんの友達、皆いい人。心配しなくていい、秋雨お姉ちゃん」
「う、うん」
深海と梅雨葉の言葉を聞き少し安心する秋雨。すると雨葉が深海に抱き着いて上目遣いで深海の顔を覗き込みながら口を開いた。
「つまりつまりつまり、おとーさんは影からこの国と皆を護るヒーローなんだね!」
「よしてくれ。ヒーローなんて、俺のガラじゃない」
「………!」
「おいおい…白までよしてくれ」
と、今度は白が深海に抱き着いた。それを見て秋雨がまた2人、特に雨葉を叱る。しかし、雨葉と白は離れる素振りすら見せなかった。やれやれ、と深海は呟いて話を進めることにした。
「そして、ここからが重要だ」
「重要なこと?」
「ああ。拉致した犯人の思惑…そう「何故、人を…艦娘をさらうのか」だ」
「理由、よくわからないね」
「ああ。だが、仮説は立てられる。恐らくだが……」
その場にいた雨葉と白を覗いた3人がゴクリと唾を呑んだ。そして深海は口を開いた。
あの大戦を再び始めることだろう
「!?」
深海の言葉を聞いた3人は物凄い衝撃を受けた。しかし、3人の反応を気にすることなく深海は話を続ける。
「この答えにたどり着いた理由は2つ。1つはさっき言った「艦娘を狙った拉致」だ」
「で、でも、あの大戦をまた始めるには自分たちと戦う相手が必要なのです!深海棲艦の戦力はどうにか出来たとしても、相手になる艦娘を何故狙うのです?」
「いや、今回の拉致は人類側の戦力の減衰も狙っての物だろうが…それだけじゃないだろう」
「え?」
深海から返ってきた返答は電の予想を大きく外れた内容の物だった。驚いた電に顔を向けた深海は口を開いた。
「その答えはお前自身だ。電」
「え、電が?」
「ああ。お前はさっきあのフードの奴に深海細胞を植え付けられた。そしてその効果はさっき言った通り…つまりだ…」
「そっか!自分たちと同じ存在を増やして深海棲艦としての戦力にするんだ!」
秋雨が咄嗟のひらめきを見せ、深海の言おうとした言葉を代弁した。深海はニッと笑ってみせ言葉を続ける。
「そう言うことだ。艦娘の中にも深海棲艦になりやすい奴も居るからな…今回拉致された艦娘たちもそれに近い存在なのだろう。これが1つ目の理由だ」
「なるほど…それで梅雨葉たちにとっても関わってくる話」
「梅雨葉は頭の回転が速いな。流石だ」
「お父さんは人間と深海棲艦のハーフ。その血を引いている梅雨葉たち、狙われるかも。でしょ?」
「そうだ。まぁ、俺が命を懸けて護ってやるから安心しろ」
(黒野提督って人間と深海棲艦のハーフだったんだ。初めて知ったのです)
梅雨葉の言葉に驚く電。すると、電の驚いた顔を見た深海が口を開いた。
「ん?俺は海軍上層部を崩壊させたあの日の演説で、自分が人間と深海棲艦のハーフだ。って言った筈だが?」
「はわっ!黒野提督さん、なんで電の考えてることが分かったのです!?」
「いや、顔がそう言っていたからな。それにしても、お前は俺みたいな奴に対して「司令官」って言わないんだな。俺の知ってる電はみんな司令官って言ってたが…お前は変わってるな」
「え?」
「まぁ、この話は置いといて。もう1つの理由を言おう」
その瞬間、電に引っかかる何かが頭を過った。
(電は何で知らなかったんだろ?暁ちゃんたちと一緒に終戦を迎えたはずなのに…何か、何かが引っかかるけど……今は考えないようにしよう)
(電の奴、何かが引っかかってるみたいだな。まぁ、俺には何とも言えないしそっとしておいてやるか)
「お父さん。もう1つの理由は?」
電と深海の2人が何かを考えていたのに気づいた梅雨葉は、2人を会話に戻す為に声をかけた。深海は、すまん。と言って喋り始めた。
「もう1つの理由は、おそらく「犯人のバックにいる人物があの大戦を望んでいる」と俺は予想しているからだ」
「え?それってどういうことなの、お父さん」
「戦争なんて、誰が望むのです?」
「簡単だ。ガンダムSEED DESTINYに出てきた軍需産業複合体「ロゴス」みたいな奴ら…いや、少し違うか」
深海は少し間を開けて口を開いた。
「恐らく、失脚された以前の海軍上層部の連中だろうな。奴らは戦争で食っているって言っても間違いじゃないからな。それと、俺への復讐…も含まれるかもな」
「あり得るかも…お父さん、提督になる前にたくさんの軍の人、殺したし」
「いや、あれは…関係あるかもな…」
「ねぇねぇねぇ、おとーさん。結論から言うとどーなるの?」
「………!」
「ハハ…2人して同じ意見かよ」
雨葉と白に急かされた深海は、やれやれ。と言いたげな表情を一瞬作るとやがて真剣な表情になって口を開いた。
「結論…いや、今後について言うぞ。まずは電だ」
「は、はい!」
「お前は自分のチームメンバーと共に全国に出るんだ。お前を襲ってきた以上、奴らも同じ中高の部に出て来る筈だ。可能なら奴らに勝利し、その場で拘束する手伝いをしてくれ。大丈夫だ、お前のチームメイトにはこの後言いに行く」
「電たちで大丈夫でしょうか…少し心配なのです」
「安心しろ。その為に俺がいるんだ。次に俺たちだ。俺たちは一般の部で大会に出場する。もう切符も持っているしな」
「秋雨たちは、お父さんと梅雨葉のお手伝いとバックアップだね」
「ああ。当てにしてるぞ4人とも」
「まっかせてよ!雨葉と白が作った「ナラティブガンダムE装備」があれば、ぜったいぜったいぜったい負けたりしないもん!」
「………!」
「うん。乗りこなしてみせるよ、白」
と、秋雨たち4人はお互いを鼓舞しあった。すると再び、雨葉が電の方を見た。そして、キラキラした目でその口を開いた。
「ねぇねぇねぇ!おねーちゃんのガンプラってどんなガンプラなの?雨葉、すっごくすっごくすっごく気になるなー!」
「………!」
「梅雨葉たちのも見せるから、見せてほしい。って言ってる」
「な、なのです!えっと、イナヅマガンダムは…」
「ああ、俺が預かってた。ほら」
すると深海が自分の腰についているもう1つのポーチからファトゥム-02シルエットを装備したイナヅマガンダムを取り出した。4人は深海の手に握られたイナヅマガンダムに目を奪われてしまっていた。
「わぁー!すっごいすっごいすっごい完成度だね!」
「ベース機はインパルスガンダム。おぉ…ベース機と同じで合体と分離が出来る」
「す、凄いです…これ程の完成度、秋雨には真似できないよ」
「………!」
「白も凄いって言ってる。雨葉、ナラティブガンダム出して」
はーい!と元気のいい返事をした雨葉はバックの中からそのガンプラを出した。白とグレーで彩られ、機体の胸や両肩、両腕、腰に両膝、バックパックに取り付けられた赤いクリアパーツが目を引くガンプラだ。
「これが、雨葉と白が作ったガンプラ「ナラティブガンダムE装備」だよ!」
「…あの、見た感じナラティブガンダムC装備の、フレームが剥き出しになってる部分に装甲を取り付けただけに見えるのですが…」
「外見はそう。でも、E装備は換装式。状況に応じてバックパックを変えれる」
そう言った梅雨葉はバックからもう1つのガンプラを取り出した。それは戦闘機の様にも見える小さなガンプラだった。それを見た電は一言呟いた。
「これはリ・ガズィ…あれライトニングガンダムのバックパックにも見えるのです?」
「はい!これは秋雨が操縦するE装備本体「エクストラパック」です!」
白と青色で塗られたライトニングパックウェポンシステムとリ・ガズィのバックパックを上下に合わせ後部を延長して大型のスラスターを備え、機首部はそのままの形を残し180度に稼働されるようになっている。そして、バックパック上面左右には大型のビームキャノンと、その内側に2基のバズーカを装備していた。
「これを使えば、なんとなんとなんと!ナラティブガンダムが簡易変形できるんだよ!それにそれにそれに!バックパックをジャスティスガンダムみたいに首元に起こせば火力だって底上げ出来るしね!」
「そ、それは凄いのです!」
「でしょでしょでしょ!雨葉、すっごいすっごいすっごい頑張ったんだよ!」
それからしばらく、その部屋からは賑やかな声が途切れることはなかったのだった。
続く