艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
全国大会が始まって3日目、今日もまた白熱したバトルが行われていた。電たちは観客席にて本日のバトルを観戦していた。
「今日は僕たちの知ってる人のバトルが多いみたいだね」
「えっと…あ、加賀さんたちの百年記高校に、阿武隈さんたち、リ級さんたちの龍北高校、あとは川内さん…あれ?川内さんは1人だけみたいなのです」
「ぽい?味方が居ないってことっぽい?」
「そういうことなんじゃない?あ、そんなことを言ってたら川内さんのバトルが始まったよ」
プラフスキー粒子が形成した広大で深い夜の森の中を3機のガンプラが歩いていた。左からドートレス、ガンダムレオパルド、ジェニスと、どれも空中を飛ぶことの出来ない機体ばかりだった。周囲を警戒しながらゆっくりと前進する3機。しかしそれは唐突に訪れた。突如、ガンダムレオパルドの右隣を歩いていたジェニスが真っ二つに両断されたのだ。
「なんだ!?」
「敵は一体何処から―――ぎゃあ!」
すると今度はドートレスに何処からか飛んできたヒートダートが突き刺さり、その場に倒れ伏して動かなくなった。
「ち、ちくしょー!姿を見せろー!」
動かないのは危険と判断したガンダムレオパルドは弾幕を貼りながらその場からの離脱を測った。そして少し移動した時にガンダムレオパルドの後方から黒い大きな兜をかぶった様な頭部に、両肩に大きな角を装備した背部に2対のウイングと刀を背負ったガンプラがガンダムレオパルドに向かって来ていた。背中から白い粒子を履きながら一気に距離を詰めるそのガンプラにガンダムレオパルドのファイターは一切気づいている様子はなかった。そして――――
「一刀両断よ!」
その言葉と共に勢いよく抜かれた背中の刀によってガンダムレオパルドは両断されてしまった。
「フフン!私に夜戦を挑もうなんて、百年早いのよ!」
ガンダムレオパルドを両断した刀を左に切り払い、背中の鞘に戻してカチンッ!と刀が嵌まったのと同時に、そのガンプラが倒した全てのガンプラが爆発した。
「Battle Ended!」
バトルシステムがシャットダウンされ、川内は台の上に立つガンプラを拾い上げた。そして笑顔でそのガンプラに言った。
「次の夜戦も楽しみね!風魔スサノオ!」
川内は全国大会1回戦を無傷で通過した。
「せ、川内さんのガンプラ。まったく見えなかったっぽい」
「うーん。姿が見えなかった…てことはハイパージャマーを使ったのかもしれないね」
「ハイパージャマー…ガンダムデスサイズ
「肩の形状がEW版のデスサイズHに似ていたから可能性は高いかもね。と、加賀さんたちが入ってきたみたいだ」
「いいわね五航戦。作戦通り動くのよ」
「わかっているわよ!あと、その呼び方止めて!」
「瑞鶴、集中して!」
円筒状のコロニー内部市街地を進む3機のガンプラがいた。1機は全身真っ白に染め上げられた背部に2門のビームキャノンとスラスターを内蔵したバインダーを装備して、左腕に先端部に緑のクリアパーツの刃を持ったGバウンサーに似たシールドを持つガンプラ「ガンダムAGE-1バウンサー」。もう1機は、両肩に緑色のクリアパーツを備えた4枚のバインダーを装備したツインドッズキャノンを備え、長大なライフル「ハイパードッズライフル」を持ったスマートな外見のオレンジと白のツートンカラーのガンプラ「ガンダムAGE-2ホーキンス」。そして最後の1機は、ずんぐりした外見に両肩と肘、バックパックにCファンネルを装備して大型のビームキャノン「シグマシスライフル」を持った赤と白のツートンカラーのガンプラ「ガンダムAGE-3FX」。
「まず敵への牽制射を掛けます!加賀さん、瑞鶴、お願いしますね!」
「わかったわ翔鶴ねぇ!」「了解したわ」
翔鶴の言葉を聞いた加賀と瑞鶴はお互いにガンプラを止めた。そして翔鶴は、シグマシスライフルの引き金を引いた。大きな桃色の帯が連続で撃ち出されると、遠くに散開しながら3機に向かってくる光が現れた。
「行くわよAGE-2!」
瑞鶴はAGE-2ホーキンスを飛行形態であるストライダー形態に変形させた。顔が胴体に隠れ、腹部が90度に降り曲がると両腕を後方へ向けてツインドッズキャノンを前方に向ける。そして足を折り畳みウイングを展開、ハイパードッズライフルを胸部に差し込んで一気に敵機へと向かって行った。それを追うようにAGE-1バウンサーも前進を開始した。射撃を止めたAGE-3FXも2機の後を追った。
「一気に決めるわ!ファンネル!」
AGE-2ホーキンスのウイングバインダー先端にある緑のクリアパーツ部分が基部から離れると、一斉に敵機へと向かって行った。相手チームのガンプラ、ガーベラ・テトラ、ジム・カスタム、ガンダム試作3号機へとファンネルが襲い掛かった。しかし―――
「何だこの動きは?舐められたものだな」
「この程度で墜ちたら笑われるな」
「余裕だ」
と言って、全てのファンネルを撃ち落とす相手チームのガンプラ。それはファンネル射出から1分くらいしか経っていなかった。
「な!また!?」
「取り囲め!後続が来る前に仕留めるぞ!」
瑞鶴はファンネルの全機消失を知るとすぐにストライダー形態を解除、モビルスーツ形態になってハイパードッズライフルとツインドッズキャノンをそれぞれの敵機に向け発砲した。しかし、突出した瑞鶴のAGE-2ホーキンスに対し敵は3機がかりで仕留めにかかってきていた。散開してAGE-2ホーキンスを全方位から滅多撃ちにしていたのだ。必死に応戦する瑞鶴だが、3対1の数的不利ではどうにもならず少しずつ被弾が増えていっていた。
「くっそぉ…これじゃまたあいつに!」
「あと少しだ!撃ち続けろ!」
そして、ガンダム試作3号機のフォールディングバズーカがAGE-2ホーキンスを捉えた。AGE-2ホーキンスはバランスを崩し、地表へと落ちて行った。
「グッ…くそぉ」
何とか着地に成功したAGE-2ホーキンスだったが、その場に肩膝をついてしまった。そしてそこにビームサーベルを大きく掲げたジム・カスタムが現れた。
「これで終わりだ!」
「し、しまった!」
しかしその時、1本のビームがジム・カスタムの左肩を射抜いたのだ。左肩を射抜かれたジム・カスタムのファイターは驚いてビームの飛んできた方向を向いた。そこには白いガンダム。AGE-1バウンサーがドッズライフルをジム・カスタムに向けていたのだ。ドッズライフルの銃口から白い煙が上がる。
「全く、世話が焼けるのね」
「な、何をー!」
「瑞鶴、避けて!」
「!?」
突然の翔鶴の言葉に驚いた瑞鶴だったが、咄嗟にその場から飛び退いた。するとそこに桃色のビームの帯が飛び込んできて、ジム・カスタムを飲み込んでいった。
「く、後続が来たか」
「仕留めるわ」
そう言った加賀は、AGE-1バウンサーの背部のバインダーに内蔵されたスラスターを展開しハイジャンプをした。そして、高いビルの上に辿り着くともう1度ハイジャンプをした。するとAGE-1バウンサーの眼下にガンダム試作3号機の姿が現れた。
「上だと!?」
「鎧袖一触よ」
するとAGE-1バウンサーは降下しながら手にしたドッズライフルをガンダム試作3号機に撃ち込んだ。ドリル状に回転した桃色のビームがガンダム試作3号機を頭の上から撃ち抜き、そして爆発させる。その場に着地したAGE-1バウンサーはすぐさま動き、残りの1機ガーベラ・テトラを探した。
「瑞鶴、行くわよ!」
「あ、うん…」
ガンダム試作3号機の爆発を確認した瑞鶴と翔鶴もガーベラ・テトラを探すべく行動を始めた。再びストライダー形態に変形したAGE-2ホーキンスは周囲を散策していると、移動しているガーベラ・テトラを発見した。
「よし、見つけたわ」
変形を解いたAGE-2ホーキンスはガーベラ・テトラにハイパードッズライフルの銃口を向けた。だが、その次の瞬間――――
「もらったわ」
AGE-1バウンサーのドッズライフルが移動していたガーベラ・テトラを撃ち抜いたのだった。
「ああっ!?」
「Battle Ended!」
そこでバトルは終了となったが、そこからしばらく会場の一角で瑞鶴と加賀は言い争っていた。
「あ、また言い争いを始めちゃったっぽい」
「はわわ!た、大変なのです」
「と言って、僕たちには止める事なんて出来ないんだけどね」
「う、そうだったのです」
「あ!あれ、リ級さんたちっぽい!」
「ヲッヲー!あの程度で喧嘩するなんて今回の勝負勝てるヲー」
「おいおいヲ級。気が早いぞ、まずは目の前のバトルに集中してくれ」
「私もリ級の意見に賛成だ。軽率な行動はやめてくれよヲ級」
「分かってるヲ!ま、ヲ級のXラウンダー能力があれば余裕ヲー!」
ため息を吐いたリ級とル級。そしてバトルが始まる。
「ヲッヲー!先手必勝ヲー」
荒野を行く龍北高校の3機のガンプラの中から1機、突出していく機体があった。大きく湾曲したアンテナを持ち、胸部にオレンジ色の円形クリアパーツと、両肩の長方形型シールド、ハイヒール状の脚部、そして大きなマントを思わせるバックパックを装備した黒と白のツートンカラーのガンプラ「オギュルディアアストレイ」だ。オギュルディアアストレイは両脚部に装備されたGNファングを改造した「Xファング」射出した。Xファングは周囲を飛びながらオギュルディアアストレイを追随していたが、やがてヲ級が何かを見つけると一斉に飛んでいった。
「ヲッヲー!動きが見えるヲー!」
そしてしばらくしてオギュルディアアストレイの進行方向に1つの爆発が起こった。
「ヲ級の奴め…ル級、奴をバックアップするぞ」
「了解だ。くそ、少しは調和を取ってほしいものだ」
オギュルディアアストレイを追っていた、両腕に巨大なドラゴンハングを装備し、バックパックに片刃の折り畳まれた大剣を背負った、ツインアイをバイザーで覆った白と黒、光沢を付けた黄土色のガンプラ「リギリンドペイルライダー」と、両肩、両肘に大型のビームランチャーを装備し、バックパックのレールキャノンと全身に装備したミサイルポッド、そして悪魔の顔を思わせる胸部が特徴の黒と深紅で彩られたガンプラ「ルギリスヴァサーゴ」が全速力でオギュルディアアストレイを追っていた。しかし、ヲ級は後続の2機を待つことなく攻撃を続けていた。
「そっこヲー!」
胸部のクリアパーツから黄色のビームが発射され、もう1機の相手チームのガンプラ「ガンイージ」を撃ち抜いた。撃ち抜かれたガンイージは爆散してしまった。
「弱い!弱いヲー!」
そして最後の1機のガンプラの少し先を狙って手にしたビームライフルを撃った。相手の動きを読んだ様な射撃は狙い違わず命中、相手のガンプラ「V2ガンダム」を撃ち抜いた。そして、リギリンドペイルライダーと、ルギリスヴァサーゴがオギュルディアアストレイに追いついた時バトルは終了した。
「Battle Ended!」
「おいヲ級!いい加減周りと動きを合わせてくれ!」
「でないと、これから先勝てなくなるかもしれなくなる!」
「ヲッヲー!ヲ級に追いつけないのが悪いんじゃないかヲー?」
「お前なー!」
と、こちらでも言い争いが始まったのである。
「リ級さんたちまで言い争い始めちゃったのです!」
「たぶんヲ級の連携を無視した突撃が原因だね」
「それにしても、あの先を読んだ射撃。相手にしたら厄介っぽい」
「リアルなXラウンダー…まさかね。と、阿武隈さんたちが入ってきた―――て」
阿武隈、北上、大井の3人は言い争いながら会場に入ってきた。
「いい!北上さんに1発でも被弾させたら許さないからね!」
「なら、機動力を高めたカスタマイズをしてよ!火力ばっかり高くて、重いだけじゃない2人のガンプラ!」
「攻撃こそ最大の防御だー!って昔言ってたのは誰だったっけねー?」
「うぐっ…て、昔の事掘り返さないでよ!今はバトルに集中!」
「わかったよぉ、阿武隈ってやっぱ五月蠅いな~そんなんじゃ早く老けちゃうよ~」
「そうですね北上さん!ほら、早く行くわよ前髪女!」
「前髪女言うなー!」
そしてようやくバトルが始まった。ちなみに、3人が言い争っている間相手チームのファイターが凄い気難しい顔をしていたのはまた別のお話。
今回の戦場は荒廃した廃都市だった。度々砂煙が上がり、かなり視界を制限されそうなフィールドを阿武隈たちが駆る3機のガンプラが駆けていた。先頭を行くのは白と青、赤のトリコロールで彩られた大きく横に突き出した鋭利な形状の両肩アーマーと、戦闘機の翼の様な左右2枚のウイングバインダーを持ったガンプラ「ビルドストライクガンダムノワール」だ。そして、後方からビルドストライクガンダムノワールをホバーで追いかけるのは、非常にずんぐりした外見と右肩の可動式レールガン、そして左肩上部と左脹脛横に大量のミサイルポッドと腰裏に2丁の大型ビームライフルを装備した深緑とグレー、黄色で彩られたガンプラ「ヘビーアームズバスターガンダム」と、同じく非常にずんぐりした外見で、両肩と、右腰、右脹脛横に大量のミサイルポッドを装備し、腰裏に2丁の大型散弾ライフルを装備した紺色と白のツートンからのガンプラ「ガンダムバスターヘビーアームズ」だ。
「えっと…相手チームのガンプラは~」
「あ、見えたね。て、うわ~サイコガンダムMk-2だ」
砂煙の中から現れたのはとても巨大な紫色をした悪魔の様な外見のガンプラ「サイコガンダムMk-2」だった。
「ふん!図体がデカいばかりで北上さんと私に勝てると思ってるの?行きましょう北上さん!」
「そうだね。阿武隈~あたしらいつも通り後方からミサイル撃つからさ。当たんないでよねぇ?」
「わ、わかってるよ!しっかり撃ち込んでよね!」
そう言った阿武隈はビルドストライクガンダムノワールをサイコガンダムMk-2に向かって突撃させた。サイコガンダムMk-2は全身のメガ粒子砲で応戦してきたが、阿武隈は巧みな機体動作でビームとビームの間を潜り抜けていった。そして隙を見てビームライフルを撃ち込むが、放ったビームはサイコガンダムMk-2の直前でかき消されてしまった。
「やっぱり、Iフィールドがあるな~」
阿武隈はIフィールドの存在を感ずいてはいたが、やはり少しショックだった。しかし、攻撃しなければ勝つことは出来ない。阿武隈はバックパックの左右のウイングバインダーに装備されたリニアガンを前方に展開した。そして、相手の砲火を回避しながらビームライフルと織り交ぜてそのリニアガンを装甲が薄いと思われる場所に撃ち込んでいく。
「ガラ空きなんですけどぉ!」
そしてようやくビルドストライクガンダムノワールのリニアガンがサイコガンダムMk-2の左膝の関節に命中した。少し体勢を崩したサイコガンダムMk-2だったがしかし、決定打にはやはり程遠い物だった。むむむ、と唸る阿武隈だったがその時よく知る声の通信が入った。
「行くよ大井っち!」
「はい!北上さん!」
ビルドストライクガンダムノワールとサイコガンダムMk-2の左側面から、ホバー移動しながらヘビーアームズバスターガンダムと、ガンダムバスターヘビーアームズの2機が一斉に全身のミサイルを一斉発射したのだ。
「だから撃つ時はちゃんと言ってよー!」
慌ててその場から離れたビルドストライクガンダムノワールはギリギリの所でミサイルの直撃をま逃れた。そして、2機の出現に驚き反応が遅れてしまった相手チームのファイタは回避行動が間に合わず、膝と足首の関節にミサイルの全弾直撃をくらってしまった。ミサイルの爆炎が次々上がり、サイコガンダムMk-2を包んでいく。やがて、激しく軋む音がした後、ミサイルの全弾発射で関節を破壊されてしまったサイコガンダムMk-2はその場に倒れてしまった。
「阿武隈ー止めよろしくねー」
「言われなくてもわかってるわよー!」
そしてビルドストライクガンダムノワールがバックパックから2本の大剣「フラガラッハ3ビームブレイド」を抜き突撃、サイコガンダムMk-2の頭部をX字状に斬り裂いた。頭部を4分割されたサイコガンダムMk-2。そしてその後方に両腕を広げて、ビルドストライクガンダムノワールは着地した。着地と同時にサイコガンダムMk-2は巨大な爆発を起こした。
「Battle Ended!」
「やった!初戦突破ー!」
グッとガッツポーズをする阿武隈。
「ま、北上さんと私の働きあってこそよ。喜ぶ前にまず北上さんに感謝しなさい前髪女さん?」
「んまぁ、そうだねー今回も活躍できて良かった良かったー」
「もぉー!アタシだって頑張ったのにー!」
そして結局また言い争いを始める3人であった。
「今日のバトルはこれで終わりですね!」
「うん。明日は秋月たちと、伊勢さんと日向さん…あとは――――っ!」
「ん?どうしたの時雨?」
日程を見ていた時雨は何かを見つけると、そこから目線を外せなかった。夕立と電が時雨の持っている日程表に目をやる。
「これは…レ級!?」
「間違いない。明日のバトルにレ級は出てる」
「電ちゃん…」
電はそこから目を外すことが出来なかった。
続く