艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP40 雨雲の姫

レ級たちのバトルを見た電たちは、そのあまりのスピードと戦闘力に絶句していた。そしてレ級たちは歓声に耳を傾けることなく会場を後にした。こうして、今日のバトルは全て終了したのだった。

 

バトルが終了し、電たちは会場がある広場から少し離れた公園にいた。3人揃ってベンチに座りながら缶ジュースを飲んでいたがその場は静寂に包まれていた。しかし、しばらくして電が口を開いた。

「あれが…レ級の実力…」

電の言葉を聞いた夕立が今度は口を開いた。

「夕立たちより、確実に強かったっぽい…本当に…勝てるのかな?」

いつになく夕立も弱気だった。すると時雨が、無理もないよ。とポツリと呟いてから間を空けて話し始めた。

「僕たちが今までに戦ってきた人たち、戦いを見てきた人たちの中でも、あの強さは最強クラスだ。きっと、秋月たちや、伊勢さんたちも…」

「時雨さん…」

そして再び静寂がその場を包み込んだ。この状況下で前向きに解決策を考えることなど彼女たちには到底不可能に近かった。しかしそんな時だった。

「おーい!時雨姉ぇー!夕立姉ぇー!」

濃い青髪のロングヘアーを紫色のリボンで二つ結びにした五月雨と同じ服装を着た緑色の目をした少女が、癖のある緑色の長い髪を高い位置でハーフアップにして動物の耳のような形の黒いリボンを付け、前髪は左右に黒いヘアピンを2つずつ留めている青いラインの入った黒と灰色のノースリーブセーラー服を着たエメラルドグリーンの目をした少女を引っ張りながら公園に入ってきた。時雨と夕立の2人が顔を上げると、そこには2人がよく知る顔があった。

「涼風に山風!?ど、どうしたの!?」

夕立が駆けてきた2人の元へと駆け寄った。それに続いて時雨と電も2人の元に駆け寄った。山風は両膝に手をついて荒い息を吐き、涼風は息を整えていた。やがて、呼吸を整えた涼風は3人に話し始めた。

「頼む時雨姉ぇ、夕立姉ぇ!あたいたちを匿ってくれ!」

「………え?」

涼風の言葉に時雨と夕立は動揺するしかなかった。匿ってくれ。涼風は確かにそう言った。しかし、今この現状でその言葉の意味は全くもって意味が分からないと電たち3人は思った。しかし、時雨はすぐに涼風に聞き返した。

「す、涼風…匿ってくれ。ってどういう意味だい?」

「あ!いきなり意味わからないこと言ってごめん!実は―――」

「全く~相変わらず足だけは速いんだから~」

するとその時、公園の入り口から今度は、真っ白な三つ編みツインテールの髪に白い雲の様な帽子を被って半袖の白いワンピースを着た黄色い目をした少女が、銀色の髪を足首まで届きそうな長さの1本の三つ編みにして山風と同じセーラー服を着た青緑色の目をした少女を抑える、真っ黒のボブヘアーと赤いカチューシャを付けた時雨たちと同じセーラー服を着た水色の目をした少女と、赤紅色の髪を後ろで紅いリボンでおさげ髪にしてある白と赤のヘアバンドをした山風と同じ服装を着崩してお腹とへそを見せている青緑の目の少女を抑える、白髪のロングヘアに涼風と同じ服装をした赤い目の少女を従えながら入ってきた。

「放してください!お願いです!」

「このっ!放せってンだよー!」

「ハッ!海風姉ぇ!江風!」

ようやく息を整えた山風が抑え込まれもがく2人の名前を呼んだ。そしてその時、時雨と夕立は気づいた。

「っ!?し、白露に五月雨!?」

「ど、どうして2人がここにいて、海風と江風を抑え込んでるっぽい!?」

時雨と夕立、2人に見分けられない筈がなかった。髪と目の色こそ違えど、海風と江風を抑え込んでいる2人の正体は彼女たちがとてもよく知る自分たちの姉妹、白露と五月雨だった。

「「………」」

時雨と夕立の言葉に何も答えない2人。すると2人の前に立っていた白い三つ編みツインテールの少女が笑いながら口を開いた。

「アハハ!ムリムリ、もう白露姉さんも五月雨も2人のこと忘れてるんだしね!」

そして2人は再び気づいた。目の前の人物、白い三つ編みツインテールの少女の正体を。

「そ、その声…む、村雨……なの、かい?」

「ハイハーイ!白露型駆逐艦「村雨」だよ!な・ん・て・ね―――」

そう言い放ったその少女は不敵な笑みを浮かべ、更に続けた。

「懐かしい名前ねー!でもワタシ、もう「村雨」じゃないから!」

「「「え?」」」

時雨と夕立、そして電までもが少女の言葉に唖然とした。そして少女は言った。

「生まれ変わったワタシの名前は「深海雨雲姫(しんかいにむぶすき)」みんな、よろしくね!……なんちゃって!」

「おい!村雨の姉貴、何でこんなことすンだよ!いいから放してくれよ!」

「それは無理な相談ね。貴女たちは捕縛対象だから!」

「捕縛…対象?」

深海雨雲姫の言葉を聞いた時雨が、ポツリと呟いた。そのことに気づいてか深海雨雲姫はニヤリと笑い、そして人差し指で涼風を指さした。

「それと涼風。貴女もね!」

涼風が驚いた表情を作る。しかしその瞬間、時雨はあることに気づいた。

(涼風だけを指名した?どういうこと?)

しかし、時雨の表情を見抜いた深海雨雲姫は答えた。

「相変わらず、時雨姉さんは勘がいいわね!教えてあげるわ、何で山風だけ捕縛対象外なのかを、ね!」

(僕の考えを見抜かれた!?)

「私だけ…ち、違う?どういう、意味なの?」

「それはね――――」

深海雨雲姫は、ひと際不敵な笑みを浮かべるとこう言い放った。

 

 

 

貴女は、いらない子だからよ

 

 

 

その言葉に周囲が完全に静まり返った。しかしその中で1人、ポツリと口を開いた者がいた。

「私が…いらな、い子…」

山風だ。山風は深海雨雲姫の言葉に完全に動揺し、目に涙が溜まり始めていた。

「そ!貴女はいらない子なのよ。誰かに頼らないと生きていくことも出来ない、戦うことも出来ない、皆の足を引っ張ちゃう、いらない子なの!」

「私が…私、は…いら、ない?いら、ない、子?い、いら、いらないっ!?」

「ちょっ、山風姉ぇ!」

「うわあああぁぁぁぁー!!!」

その瞬間、山風は大きな叫び声をあげその場に頭を抱えて座り込んでしまった。叫び声は止まることなく、そして山風のその目からは光が消えていくようだった。

「山風っ!!村雨姉さん、なんてことを言うんですか!」

「ん~事実を言っただけなんだけどな~?だってあの子、何も出来ないいらない子じゃない!」

「い、いらない!?私は……いら、いらな、いい!い、いら、ららなな、い!」

「「「山風っ!」」姉ぇ!」

山風の傍にいた時雨と夕立、涼風が慌てて山風を抑えに行った。その光景を見ていた電は、ただあたふたすることしか出来なかった。山風の叫びはやがて情緒不安定な言動へと変わっていった。必死に山風を抑える時雨たちを見て、深海雨雲姫は笑う。

「アハハハハッ!!ホント、おかしいわ!アハハハ!」

深海雨雲姫の言葉を聞いた時雨と夕立は、目に涙を浮かべながら歯をギリッと言わせて深海雨雲姫を睨みつけた。

「許さないっ…絶対に許さないよ村雨!」

「夕立も…絶対許さないっぽい!!」

「アハハハハ!本気にしちゃったんだ!アハハハハッ!!おバカさんっ!」

高笑いする深海雨雲姫。すると、時雨と夕立はゆっくりと立ち上がった。そして――――

「「村雨ぇぇー!!」」

時雨と夕立は、同時に深海雨雲姫に向かって走っていった。

「時雨さん!夕立さん!」

しかし、深海雨雲姫はニヤリとした笑みを浮かべながら呆れた声で言った。

「よせばいいのに…おバカさんっ!!」

深海雨雲姫に殴りかかろうとした時雨と夕立だったが、しかし深海雨雲姫は2人を簡単に殴り飛ばして返り討ちにしてしまった。

「ううっ!」

「きゃあっ!」

「時雨姉さん!夕立姉さん!」「時雨の姉貴!夕立の姉貴!」

公園の地面に倒れ込んでしまった時雨と夕立。叫ぶ海風と江風。そして笑う深海雨雲姫。

「アハハハハハッ!!このみなぎる力、やっぱり最高だわ!……さぁ、涼風。これ以上、お姉ちゃんたちを傷つけてほしくなかったら、ワタシの所に来なさい?」

「ううう……」

「怖くなんかないわよ?こっちに来ても寂しくなんかないからね。時雨姉さんと夕立はいないけど、みんな一緒だから!」

(み、みんな一緒…?)

時雨は少し薄れた意識の中で深海雨雲姫の言葉に何かの違和感を覚えた。しかし、時雨はそこまで来て意識を手離してしまった。涼風はそんな中で公園の中にいる姉たちに戸惑いの表情で目を向けた。そして、目を瞑ってしばらくして目を開くとゆっくりと深海雨雲姫の方へと歩いていった。

「「涼風!!」」

海風と江風が涼風の名を叫んだ。

「いい子ね涼風。何処かのいらない子ちゃんとは大違いだわ」

深海雨雲姫がうずくまって倒れている山風を一弁すると、今度は電に目を向けた。電は深海雨雲姫のその殺意に満ちた怪しげな目に恐怖し、一歩たじろいでしまった。

「電ちゃん。あの方は貴女を殺したいほど憎んでいるわ」

「あの方?…っ!大和旅館で電にバトルを申し込んできたあの人の事なのです!?」

「そ、大正解!だからせいぜい、殺されないように頑張ってね~」

そして、その時涼風が遂に深海雨雲姫の目の前までたどり着いた。

「涼風止めて!村雨姉さん、涼風だけは!お願いです!」

「やめろ涼風!クソッ五月雨の姉貴、いい加減に放してくれ!」

「ごめんな。時雨姉ぇ、夕立姉ぇ、海風姉ぇ、山風姉ぇ、江風姉ぇ…」

「謝ることなんてないのよ涼風。みんな一緒にいるって言ったじゃない?さ、行きましょ!」

深海雨雲姫が手を差し伸べ、涼風はその手を取ろうとした。しかし、その時だった――――

 

 

 

グシャッ

 

 

 

「………え?」

何処からともなく飛んできた何か(・・)が深海雨雲姫の横腹に突き刺さった。深海雨雲姫はその何かに目を向けたそしてそこに刺さった物の正体に気づいた。

「これは、ナイフ?」

深海雨雲姫の横腹に刺さっていたのは1本のナイフだった。刺さった箇所からダクダクと真っ黒な血が流れ出ていた。そしてその次の瞬間、ものすごいスピードで通り過ぎた別の何か(・・)が横腹に刺さったナイフを抜きながら、彼女の目の前に立っていた涼風を攫っていった。そして、深海雨雲姫はその通り過ぎたものの正体にすぐに気づいた。そして、歯をギシッと言わせるとその男を睨みつけた。

「また邪魔をする気なのね……黒野深海!!」

「邪魔とか、人聞きの悪いこと言うな深海雨雲姫」

そこにはナイフを逆手に持ち、涼風を左肩に担いだ黒野深海が立っていた。すると、深海は早々に口を開いた。

「先に言っておくが、俺に敵うと思うなよ深海雨雲姫。理由は、お前の主から聞いてるからわかるだろう?」

「くそっ!」

深海の言葉を聞いた深海雨雲姫はすぐにその場に何かを叩きつけた。すると、その場が煙に覆われ早々に視界はゼロとなった。

「けほっげほっこ、これは!?」

「くそっ!煙幕か!」

「ゲホゲホ!なんも見えねぇじゃねえかー!」

「お、おい!暴れるな涼風!」

やがて煙が晴れたが、そこに深海雨雲姫、そして白露、五月雨、海風、江風の姿は無かった。

「チッ!逃げられたか…」

敵を取り逃したことに舌打ちをする深海。そこへ、電が慌てて駆け寄ってきた。

「深海提督さん!だ、大丈夫なので――――」

「ああ、だいじょぅ――――どわぁっ!!」「はにゃぁぁー!!」「ぎゃあー!」

そして電がこけた拍子に深海に衝突、ドミノ倒しの要領で肩に担がれていた涼風も巻き込み3人揃って転倒したのだった。

 

「痛つつつ……電、涼風、大丈夫か?」

しばらくして、転倒から立ち直った深海は自分の周りを見渡した。そして――――

「はにゃわわわ………」

「てやぁんでぇ~涼風は平気だじぇ~」

「………」

頭上に星とヒヨコ、そして目をクルクルと回して気絶した電と涼風を見つけてしまったのだった。

 

「そりゃねぇだろ……」

 

深海はガックリと肩を落としながら呟いた。

 

続く

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