艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP42 今はまだすれ違い

時間は少しばかり遡る。

 

 

深海が青葉の電話を受け取った頃、2回戦のバトルに勝利した加賀と翔鶴、瑞鶴。しかし今回も、バトル終了時に加賀と瑞鶴は口喧嘩をしていた。

「今回も上手くいかなかったわね。五航戦」

「うるさいわね!次のバトルこそは絶対やってみせるんだから!」

「もうこれで8回目ね五航戦。いい加減認めなさい」

「あんたは黙っててよ一航戦!」

そう吐き捨てた瑞鶴は、足早に会場を後にした。

「あ、瑞鶴!」

翔鶴は慌てて瑞鶴の後を追いかけていった。そして残された加賀はと言うと、瑞鶴と翔鶴が出ていった出入口の方を向いて一言呟いた。

「……またやってしまったわ」

そして、ゆっくり歩いて会場を後にした。

 

会場を先に出た瑞鶴は、その足を止めることなく大会会場の近くにある海浜公園を目指した。瑞鶴は海浜公園にたどり着くと、近くにあったベンチに腰を下ろして広がる海を眺めていた。そしてため息を1つ吐いた。

「はぁ……自分でもわかってるのに…何で意地なんか貼ってるんだろ。私?」

そう言った瑞鶴は再び海を眺めていた。すると、瑞鶴の後を追ってきた翔鶴がようやく追いついてきた。

「はぁ…はぁ…やっと追いついたわ!」

「翔鶴姉ぇ…」

「隣、座るわね」

そう言って翔鶴は瑞鶴の隣に座った。しばらく何も口を開かなかった2人であったが、やがて翔鶴が口を開いた。

「瑞鶴、加賀さんが言っていたことなんだけど…」

「何よ?翔鶴姉ぇまで、ファンネル使うのやめろって言うの?」

「ううん。私は、瑞鶴に文句を言うことはしないわ。でも……」

「でも、何?」

翔鶴は一呼吸おいて口を開いた。

「加賀さんは、瑞鶴の事を思って言っている時があるんじゃないかしら?」

「私の事を?あの堅物大食い女が?翔鶴姉ぇ、冗談にしても笑えないんだけど」

「私は冗談で言ったつもりはないわ。瑞鶴」

「どういう事?」

瑞鶴が聞き返すと、翔鶴は瑞鶴の手を握り優しい表情で言った。

「以前、加賀さんがこんな事を言っていたわ。「私は、あの子が羨ましいわ。私には出来ないことが、出来てしまうのだから」って」

「え?」

「そしてこう続けたわ「でもその事が、あの子のらしさ(・・・)を邪魔してしまっている」」

「………」

翔鶴の言葉を聞いた瑞鶴は黙り込んでしまった。翔鶴は海の方に向き直ると、更に続けた。

「この言葉の意味、私には何となくわかる気がするわ。でも、私は瑞鶴にあえてその意味は言わないわ。その意味は貴女が見つけなさい、瑞鶴」

「………」

「さて、私は部屋に戻ってガンプラの手入れをしてくるわ」

そう言って立ち上がった翔鶴は、海浜公園を後にした。残された瑞鶴は、しばらく翔鶴の後姿を見ていたが、やがて自分のガンプラを入れているポーチからファンネルの外れたガンダムAGE-2ホーキンスを取り出して、それをジッと見つめた。瑞鶴の脳裏には「あの子のらしさ」と言う加賀の言葉が何度も響いていた。

「私らしさ……か」

 

一方その頃、加賀は会場の一角にある休憩所にある椅子に座っていた。その顔は何処か悔しそうな表情だった。

「………」

加賀はただただ口を開くことなく俯いていた。そんな時、加賀のよく知る声が耳に届いた。

「あら、加賀さん。こんな所に居たのね」

加賀が顔を上げるとそこには自分の弓道着とは色違いの、赤い弓道着を着た少し茶色がかった黒髪ロングヘアーと髪と同じ色をした目の加賀と同じくらいの背をした女性が立っていた。

「赤城さん。もう体の方はいいの?」

「ええ、上々よ」

彼女の名前は赤城。百年記高校ガンプラバトル部の部長を務める元艦娘で、加賀の一番の理解者且つ、親友である。以前の合宿では、体調不良(食べ過ぎによる腹痛)を訴え参加できなかった。そして、その後ろから今度も加賀のよく知る女性が現れた。薄紅色の和服の袖をタスキで縛り、紺色の袴を履き、下には白い長靴下を履いている。ダルグレーの瞳と、同じ色の長い髪をポニーテールにし、若干癖の付いた前髪を七三分け気味に整えた女性だ。

「加賀さん。お久しぶりですね」

「これは鳳翔さん。お久しぶりです」

彼女の名前は鳳翔。彼女もまた元艦娘で、現在は艦娘時代に結婚した提督と居酒屋を経営している。そして、赤城や加賀の艦娘時代からの先輩でもある。

「ここにおられるということは、月光華高等学校の応援ですか?」

「ええ。瑞鳳ちゃんから、三日月ちゃんが右目と右腕の感覚を失った。って聞いたものだから、私も微力ながらお手伝いをしてあげないと。と思ってね」

「それで、入り口でバッタリ会ったものだから一緒に来たということね」

月光華高等学校の近くで居酒屋を営む鳳翔は、何かと月華団と面識があるのだ。勿論その事は後輩である赤城も加賀も知っていた。

「そうでしたか」

そう一言呟いた加賀は少しだけ顔を落とした。そのことに気づいた鳳翔は、優しい口調で尋ねた。

「どうしたの加賀さん。何か悩み事?」

「あ、えっと……はい。少し悩み事が」

他人の考えている事を読み解くことが得意な鳳翔に嘘をついても仕方ない、と思った加賀は素直に口を開いた。

「実は瑞鶴とまた喧嘩をしてしまって…」

「フフッ、貴女たち昔からよく喧嘩していたものね」

「わ、笑わないでください」

「ごめんなさい。それで、今回はどんな喧嘩をしてしまったの?」

そして加賀はゆっくりと話し始めた。鳳翔は加賀の話を相槌を打ちながら静かに聞いていた。しばらくして、加賀は話すのを止めた。話の内容を聞いた鳳翔は小さく笑って口を開いた。

「フフッ、貴女たちは昔とちっとも変ってないのね」

「そ、そうなのでしょうか?」

「ええ。今聞いた内容の喧嘩、艦娘だった時の内容とほとんど同じだもの」

「フフッ、確かにそうですね」

「………」

加賀の話を聞いた赤城もまた、鳳翔と同じように小さく笑った。加賀は2人の笑った顔に少し困惑したが、やがて今までにしてきた喧嘩を思い出して、顔を赤くした。その顔を見た鳳翔は、加賀の両肩に優しく手を乗せた。

「大丈夫よ加賀さん。貴女の言っていることは、彼女を思っての事なのでしょ?ならきっと、届けることが出来るわ。前もそうだったじゃないですか。たとえすれ違っても、道はいつか交わるもの。なのだから!」

「鳳翔さん…」

「頑張って加賀さん!貴女ならきっとできるわ!」

「赤城さん…」

鳳翔の隣から赤城も顔を出し、加賀を元気づける。赤城の顔を一弁した加賀は、鳳翔の方にもう一度向き直った。そこには、昔に何度も見た鳳翔の変わらない優しい笑顔があった。

「頑張ってね加賀さん。大丈夫、貴女は本当は優しいって私も、赤城さんも知っているもの!」

「……はい!」

加賀は鳳翔の言葉を聞いて小さい声ながらもハッキリと答えた。するとその時、鳳翔は壁にかかっていた時計が目に入った。

「あ、もうそろそろ瑞鳳ちゃんたちの試合が始まるみたいね。ごめんなさい、私はこれで失礼させてもらうわね」

「はい…」

「それじゃあ、また後でね」

そう言って鳳翔は観客席へ歩いていった。その後ろ姿を加賀と赤城は、見えなくなるまで見ていた。

「それじゃあ、私たちも行きましょうか。加賀さん」

「ええ」

加賀と赤城は、ゆっくり歩いてその場を後にした。加賀の脳裏には「きっと、届けることが出来る」という言葉がリピートされていた。そして、加賀はポツリと呟いた。

 

 

「決心と言うものは、こんなに難しくて簡単なものなのね」

 

 

 

続く

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