艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP56 手掛り

秋月たちの口から発せられた「白いフードの人物」を聞いた深海は、慌てて4人をキャンピングカーに乗せた。そして秋月を、先程時雨が座っていた場所に座らせると話し始めた。

「秋月、俺からいくつか聞きたいことがある。いいか?」

「ひゃ、ひゃい!な、なんなりと!」

「おいおい、落ち着けよ秋月。じゃあ、1つ目だ」

「ひゃ、ひゃい!な、なんなりと!」

「秋月姉ぇ、いい加減落ち着きなよ」

(お前はお前で、落ち着きすぎだろ初月)

と、この様にとても秋月は答えられるような状況ではなかったが、深海は秋月に問いかけた。

「まず、お前たちにこの写真を渡した白いフードの人物についてだ」

「え、えっと!突然秋月たちに声をかけてきて!いきなり写真を渡されて!このキャンピングカーに行くように言われました!」

「いや、それはわかってるんだが……」

「僕が答えるよ。今の秋月姉ぇにはちょっと答えられそうにないし……そうだね。ハッキリ言って、知らない人物だよ。会ったこともないと思う」

秋月の緊張しまくりの言動を見かねて初月が話し始めた。

「そうか…涼月はどうだ?」

「いえ…私も知らないお方でした」

涼月にも問いかけた深海。そして最後に―――

「防空棲姫」

「私も知らない。信じてもらえるとは思っていないが、な」

「いや、信じさせてもらう。お前は照月として戻って来れたんだからな」

「人格まではまだ戻ってはいないが……その、ありがとう」

と、防空棲姫は少しだけ照れながら答えた。深海は一言、気にするな。と言って話を続けた。

「次にこの写真についてだ」

深海はそう言って写真を全員に見せた。写真に写っていたのは、何処にでもありそうな自然公園だった。木々に囲まれた草原が写真の殆どを占め、隅の方には白い壁の建物がポツンとあった。

「何処にでもありそうな公園の写真だよね?お父さん」

「梅雨葉も、そう思う」

「雨葉も雨葉も雨葉も!」

「………!」

写真を見た秋雨たちは4人とも全員同じ答えを言った。深海も、そうだな。と一言だけ呟いた。しかし、深海はその後すぐにこう言った。

「だが、この写真の裏面に書かれているこの文字を見たらどう思う?」

深海はそう言って写真を裏返した。写真の右下の端、そこにはボールペンで「右に2回、左に6回、全開にして、左に4回、最後に××」と走り書きされていた。

「最後の方が消えかけて読めないが。これは…何かの暗号か?」

文字を見た防空棲姫が呟いた。

「そう考えるのが妥当だろうな。位置の特定は、この後青葉に頼んでおくつもりだ」

「それじゃあ……」

「ああ。お前たちは普段通りの生活をしてくれて構わない」

「わ、わかりましたっ!!」

「まだテンパってるのか秋月……と、忘れるところだった」

すると、深海は何かを思い出し秋月に話しかけた。

「お前たちは、このまま俺の前居た鎮守府に向かってくれ」

「え?それはどういう……」

「防空―――いや、照月がこの状態でいる以上、また奴らがお前たちを襲いに来る可能性がある。このキャンピングカーでは全員を保護することは難しいからな」

秋月はテンパっているせいなのか、完全に思考が追いついていなかった。すると、初月が―――

「なるほど。確かに深海提督の居た鎮守府なら身を隠すにはもってこいだしな」

「そうですね。私も賛成です」

「照月も異論はないな?」

深海から尋ねられた防空棲姫はすぐに答えた。

「ない。私のマスターから秋月たちを守れるならな」

「わかった。場所を教えよう。(フッ、いい妹を持ったな秋月)」

「じゃあ、僕は部屋に戻るよ。気になることも解決したし」

「ああ。気をつけてな」

時雨はキャンピングカーを後にし、秋月たちは深海の鎮守府に向かうことになった。

 

「だー!こんなんじゃ、いつまでたっても終わらねーぞー!」

ところ変わって、準々決勝を翌日に控えた月華団の部屋では慌ただしく準備が行われていた。先程の言葉は、連日ガンプラのメンテと修理に追われている望月が放ったものだ。

「そう言わないでお願いだよ望月ちゃん」

「愚痴くらいいーわーせーろー!」

「もっち、何か手伝おうか?」

「ああ、ミカは明日の為に休んどいていいぞ。バルバトスの調整は終わってるからな」

望月の言葉を聞いた三日月は、う、うん。と言って後ずさりしていった。望月は後頭部を掻きながら、修理用のパーツを入れているケースに目を向けた。その時―――

「ああー!修理用のパーツが無いっ!!」

「「ええー!!!」」

望月の絶叫に続いて、その場にいた三日月と瑞鳳が同時にをあげた。3人の絶叫を聞いた睦月と如月以外のメンバーが、まるで野次馬の様に3人の元に集まってきた。

「どうしたんだ望月。大きな声をあげて?」

望月の元に歩き寄ってきた長月が不思議そうな顔で尋ねた。

「無いんだよ!修理用のパーツがっ!」

「なんだとっ!」

「あわわ!一大事だよ~!」

「でも、どうするのさ!修理パーツがないとかなりヤバいんじゃないの!?そこのところどうなのさ望月!」

「バルバトスとグシオンは修理の必要はないが、明日の試合に間に合わせられそうな卯月号がこれでじゃあ間に合わないな」

「ま、まずいぴょん!戦力はどうあれ、うーちゃんのガンプラが直らないのはまずいぴょん!」

「卯月、戦力はどうあれ。ってちょっと違うと思う」

「弥生の言う通りだ。戦力が1機少ないだけでも、かなりバトルに影響が出るからな」

「どうする?瑞鳳」

「うーん」

すると、メンバー各々の言葉が飛び交う部屋の中で、水無月がゆっくりと手をあげた。

「あ、あの~みんなで買いに行くってのはどうかな?」

水無月の提案に最初に食いついたのは文月だった。

「あ!それいいかも~」

「だが、全員では行くわけにはいかないな。特に私と三日月は……団長、意見的には私も賛成だが?」

「長月ちゃんの言う通りだね。なら、2班に分かれるってのでどうかな?」 

「そうだな。なら、班分けは団長に任せよう」

「わかったよ!みんな異論はない……みたいだね」

その場にいた全員が真剣な表情だった。そして、瑞鳳はそれからしばらく考えて―――

「じゃあ班分けを言うね。まず、ここに残るのはミカ、長月ちゃん、睦月ちゃん、如月ちゃん、望月ちゃん、それと皐月ちゃん」

「ん?ボクはここに残るのかい?」

「うん。今回は私も行くつもりだからね」

「え?瑞鳳も行くんですか?」

「ミカ、話はあとで聞くから今は待って。次に買い出しA班、弥生ちゃん、水無月ちゃん、文月ちゃん。最後にB班が、私、卯月ちゃん、菊月ちゃん。いい?」

瑞鳳の言葉に団員それぞれが肯定の言葉を口にした。

「じゃあ、早く行こ~!」

「うん!三日月の為だもんね!」

「弥生は必要なもの聞いてから行くから、先に行ってて」

そして話が終わると、室内は先程より慌しくなった。そんな中、三日月は隣に立っていた瑞鳳に声をかけた。

「本当に行くんですか瑞鳳?」

「当り前だよ!ミカの為でもあるんだから!」

「そうですけど…瑞鳳、私がいないと無茶しますから……」

「あははっ!ミカは心配し過ぎなんだよ……そうだ!ミカの持ってる(お守り)を貸してよ。今も持ってるんでしょ?」

「え?あ、わかりました……」

すると三日月は自分の旅行鞄の中から1丁の銃を取り出した。銃と言っても、プラスチックの弾を撃ち出すガスガンである。三日月は自身が退役する時、今まで使っていた艤装の一部を使ってこの銃を作ったのだ。それ以降はお守りとして、重いながらも常に持ち歩いているのだ。

「ありがとう、ミカ」

「返してくださいよね?私のお守りなんですから」

「わかってるよ!」

「おーいだんちょー!早くしないと置いてくぴょーん!」

すると、部屋の入り口から瑞鳳を呼ぶ卯月の声がした。瑞鳳は慌てて卯月に答えた。

「今行くよー!じゃあ、また後でねミカ!」

「はい!瑞鳳を気をつけて」

卯月と菊月、そして瑞鳳はそのまま部屋を出ていった。

 

続く


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