艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
選手村ホテルのエントランスを卯月、菊月、瑞鳳の3人が歩いていた。菊月の手には望月から頼まれた修理パーツのリストが書かれた紙が握られていた。菊月はそのリストを見ながら呟いた。
「望月め、色々と頼み過ぎだ」
「ぴょん?」「え?」
「見てくれ」
そう言って菊月はリストを2人に見せた。
「えーっと、HGの獅電にHGのマンロディ、鉄血のオプションセット一式、接着剤……」
「塗料が数種類と、筆2本、艶消しトップコートに墨入れペン、おやつ………おやつ!?」
「全く、調子に乗り過ぎだ…」
「うーちゃんもおやつ食べたいぴょん!」
「あははは………」
そんな会話をしながら瑞鳳たちはホテルを出ていった。
そして瑞鳳たちがホテルを出た数十秒後、エントランスの椅子に座っていた私服姿の男たち4人が立ち上がった。すると彼らは、何やら相談を始めた。
「奴らが月華団か」
茶髪の男が口を開く。
「ああ。明日、あのお方と対戦する相手だ」
茶髪の男の言葉に今度は金髪の男が答える。
「奴らはただ者ではない。特にあの三日月とかいう奴は……」
黒髪の男が言う。
「俺たちでは倒せないだろう。なら、やることは1つだ」
最後に銀髪の男がそう言うと、残り3人が一斉に頷いた。そして瑞鳳たちの後を追うようにホテルを走って出ていった。彼らの胸には「Ⅲ」のバッジが輝いていた。
そしてそれを、通路の端っこに立っていた響が見ていた。
「今の人たち。暁の、自称「親衛隊」の人たちか……何か良からぬことをしなければいいんだけど……」
響はそのまま部屋へと戻っていった。
ホテルからしばらく歩いたところにある大きな電気製品店のプラモデル売り場に瑞鳳たちはいた。手に持つ買い物籠の中には、獅電とマンロディの箱と、数種類の塗料に艶消しトップコート、筆と墨入れペンが入っていた。プラモデルの箱が数多く置かれた棚の前で必死になってオプションセットを探す一行だったが、それはやはり見つからなかった。
「うーん。やっぱりないぴょん…」
「ここまで探して無いのなら、諦めるしかないだろう」
「うん。そうだね……仕方ない別のお店に行こっか」
そして、瑞鳳たちがプラモデル売り場を後にしようとした時、何処からか3人のよく知る声が聞こえてきた。
「ここで買える頼まれたものは全部。だね」
「うん!なら早く次の所に行かなきゃ!」
「じゃあレジに行こ~」
「あれ?この声って……」
そして瑞鳳たちの目の前に、同じく買い物籠を手に提げた弥生、水無月、文月が現れた。
「もしかして、弥生!」
思わず声をあげた卯月。その声に、前を歩いていた弥生が後ろを振り向いた。
「え、卯月?」
「弥生!こんなところで何やってるぴょん!?」
慌てて弥生に駆け寄る卯月。すると、弥生の先を歩いていた文月と水無月も瑞鳳たちに気づいた。
「何やってるって…望月に頼まれた物買ってただけだけど」
「あ!団長に卯月、菊月もいる~」
「ありゃりゃ…どうやら同じ店に来ちゃったみたいだね」
「あはは…そうみたいだね」
「そっちは順調なのか?」
各々の状況を言い合う6人。そして、しばらく話が続いたところでお互いが本来の目的をようやく思い出した6人。
「ああ!買い物の途中だってこと忘れてた!」
「あわわ~そうだったよ~」
「じゃあ、買い物に戻るとしよっか。望月ちゃんを待たせるわけにはいかないしね」
「わかった。じゃあ、早くレジに行こう」
「ああ。そうだな」
レジへ向かって歩き出した6人。するとその時、瑞鳳が水無月を呼び止めた。
「あ!水無月ちゃん!」
「なんですか団長?」
瑞鳳の元に駆け寄った水無月。すると瑞鳳は、少し心配した表情で水無月に話しかけた。
「こんなこと聞くのも何だけど…本当に良かったの水無月ちゃん?」
「え?何がです?」
「ミカの傍にいてあげた方がよかったんじゃないの?」
「水無月は大丈夫だよ!三日月の為って思えば、辛くなんかないから!」
「そっか!じゃあ、残りの買い物もよろしくね!」
「うん!」
お互いに会計を済ませ、店を出た6人。
「じゃあ、私たちはお菓子を買って帰るから。残りはよろしくね!」
「うん。わかった」
「じゃあ~また後でねぇ~」
6人はそれぞれの班に分かれ、瑞鳳たちは残りの修理パーツを、弥生たちはお菓子を買いに行くべく、歩いていった。
そして残りの修理パーツを買うべく歩き続けていた瑞鳳たち。だが、歩き続けても近くに模型屋の様な施設が見当たらず、ある意味では「漂流中」というような状況だった。
「だー!なんで都会なのに模型屋的施設がないぴょんっ!?」
「かなり長い時間歩き続けて、もう私もヘトヘト………」
「ああ……さ、流石に私も疲れた……」
しかし、そのような施設が見当たらないのも当然である。何故なら今瑞鳳たちがいる場所は、住宅街の一角だからである。
「え~っと今の時間は……うわ~もう17時だよ……」
「ああ~…うーちゃんの目の前に小さいプラモデル屋さんの幻覚が見えるぴょ~ん…」
「ううう…この私にも、プラモデル屋の幻覚が見えるとは……」
「私も~………って!幻覚じゃないよあれ!」
疲れ果てていた瑞鳳たちの目の前、そこには何とプラモデル屋が存在したのだ。何とかフラフラと足を進め、3人はプラモデル屋に辿り着いた。
「あ~や、やっと着いたぴょ~ん」
「なんだかんだ?で30分くらい歩いたか?」
「時間は……あ、10分しか経ってない……」
時間の感覚までも麻痺してしまう程に疲れていた瑞鳳たちは、プラモデル屋の正面にヘタヘタと座り込んでしまった。すると、プラモデル屋の中から1人の少女が出て来た。
「え?瑞鳳に卯月、菊月まで…こんなところで何してるんだい?」
「あれ?その声は……時雨ちゃん?」
瑞鳳が顔をあげると、そこには秋刀魚漁支援の時の私服を着た時雨が立っていた。時雨は手に大きな買い物袋を提げたまま、座り込んだ瑞鳳たちを驚いた表情で見ていた。
「えっと、これってどういう状況なの?」
瑞鳳たちは弱々しい声で現状と現在に至るまでの経緯を時雨に話した。そして、その内容を聞いた時雨はクスッと小さく笑みを浮かべ、瑞鳳たちは慌てた表情になっていた。
「ええっ!時雨ちゃんってあの深海提督の奥さんだったの!?」
修理用のパーツを買い終え、帰路につく瑞鳳たち。帰路の中で瑞鳳たちは時雨と喋っていたが、瑞鳳は完全に暁学園の時雨と勘違いをしていた。
「えっと、たぶん瑞鳳の知ってる僕は…きっと暁学園の僕じゃないかな?」
「え?……あ、そう言えば私の知る時雨ちゃんはケッコンしてなかったっけ…」
「団長って案外抜けてるぴょーん!うーちゃんは一発で見抜いたもんねー!」
「ああ。私もだ」
「え、え?そ、そうなの?」
「あはは……」
そこから少し歩いた時、買い物袋を確認した時雨が口を開いた。
「あ!しまった…買い忘れが!」
時雨が買い忘れに気づいたのだ。
「時雨ちゃん?」
「ごめん。僕、ちょっと買い忘れがあるから!」
そう言った時雨は元来た道を少し戻っていったが、しばらく行ったところで振り返って瑞鳳たちに言った。
「何かあったら、全国大会の駐車場に来るといいよ!提督も力になってくれると思うからー!」
「うんっ!ありがとー!」
時雨の言葉に、瑞鳳は笑顔で返事をした。そして時雨は曲がり角を曲がって行った。
※注意、ここから鉄血のオルフェンズ「#48 約束」のワンシーンをアレンジ付きで再現します。キャラ崩壊等が含まれますのでご注意ください。
時雨と別れ、夕焼けが照らす静寂な住宅街を進む瑞鳳たち。すると、卯月が突然口を開いた。
「何か静かだぴょん。町の中にはだーれもいないし、会場とは凄い違いだぴょん」
すると瑞鳳が苦笑いしながら卯月に言った。
「あはは……住宅街と大会の会場を一緒にしちゃ駄目じゃないかな……」
「でもっ、そんなの今は関係ないけどねー!」
機嫌良さげに答えた卯月に瑞鳳が、上機嫌だね。と言うと、卯月は上機嫌のまま答えた。
「そりゃそうだぴょん!みんなも喜ぶし、弥生も頑張ってたし!うーちゃんも明日のバトルを頑張らないと!」
「そうだね」
住宅街を進む瑞鳳たちは十字路に近づいていた。すると瑞鳳は何を思ったのか、頭の中で言葉を紡いだ。
(そうだ。今まで私たちが積み上げてきたものは、全部無駄じゃなかった。これからも、私たちが立ち止まらない限り、道は続く……)
そして、瑞鳳たちが十字路に差し掛かった時だった。
キィィー!!
瑞鳳たちの歩いていた右側から車のブレーキ音が聞こえたのだ。不思議に思った瑞鳳は、チラリとその方向を向いた。その時、瑞鳳たちの先を歩いていた菊月が、咄嗟に瑞鳳の前へ飛び出そうとした。そして同時に――――
パァァンッ!!
乾いたガスガンの銃声が辺りに響き渡り、菊月は右肩に1発のペイント弾を当てられた。その瞬間を見た瑞鳳は隣を歩いていた卯月を、猛スピードで抱え込んだ。その数秒後に連続でガスガンの銃声が響いた。瑞鳳たちの居た十字路の右側の十字路に突然現れた車から降りてきた、胸に「Ⅲ」のバッジを付けた男たちが電動ガスガンを瑞鳳たちに向かって撃ったのだ。電動ガスガンから放たれた赤いペイント弾は、瑞鳳たちに襲い掛かった。そして、咄嗟に卯月を庇った瑞鳳に、次々ペイント弾が命中した。
「団長?……何やってるぴょん!団長っ!!」
「くぅっ……グウッ!!」
焦る声をあげる卯月の言葉に耳を貸そうとしない瑞鳳は、やがて歯を食いしばり胸元から三日月から借りたガスガンを取り出し、振り返りざまに――――
「ヴアアアアアアッ!!」
ダァン!ダァン!ダァンッ!
叫び声をあげ撃った。3発放たれたプラスチック弾の内、1発は外れ、2発目は男の1人に命中し、最後の1発は車に命中した。思わぬ反撃に驚いた男たちは慌てて車に乗り込むと、急発進しその場を去っていった。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
男たちを退けることに成功した瑞鳳。瑞鳳はガスガンを握っていた右手から力が抜け、だらりと垂れた。
「なんだよぉ……結構当たるじゃない……ヘッ…」
瑞鳳は皮肉じみた声をあげながら、小さく笑った。
「だ、団長……」
焦りを隠せなかった卯月が、弱々しい声で瑞鳳の名を呼んだ。すると、瑞鳳の体に命中した赤いペイントがダラダラと地面に流れ、瑞鳳の周囲に小さな水たまりを作る。
「あぁ……ああっ!」
「なんて声……出してるのぉ?………うーちゃんっ!」
弱々しい声で瑞鳳は顔を戻し、卯月の名を呼んだ。
「だって……だってぇ!!」
瑞鳳は左膝に手をついてよろよろと立ち上がり、言った。
私はぁ……月華団団長………瑞鳳だよぉ………
フラフラとよろけながら瑞鳳は更に続ける。
「これくらい……なんてことないっ………」
「そんな……うーちゃんなんかの為に……」
地面に両手をついて目に涙を浮かべながら卯月が言った。荒い息をしながらもしかし、瑞鳳は――――
「団員を護るのは私の仕事だからっ……」
その光景に菊月も遂に涙を流した。その隣で卯月が叫ぶ。
「でもぉっ……」
「いいから行くよぉっ……みんなが…待ってるんだっ………」
すると瑞鳳は、ふらつく足をゆっくりと前へと伸ばした。そして、非常にゆっくりとした足取りで前へと進んでいく。
「それに……」
歯を食いしばり尚も前へ向かって歩く瑞鳳。そして瑞鳳はあることに気づいて頭の中で言葉を走らせた。
ミカ…やっとわかったんだ………私たちには辿り着く場所なんていらない……
瑞鳳は歩き続けながら更に言葉を続ける。
ただ進み続けるだけでいい!……止まらない限り…道は……続くッ!!
そして瑞鳳の脳裏に、三日月の言葉が走る。
―――――返してくださいよね?私のお守りなんですから
その言葉に、瑞鳳が答える。
うん……わかってる!
瑞鳳は夕焼けに染まった空を見上げて言った。
「私は止まらないからねぇ……」
そして瑞鳳は最後の力を振り絞って叫んだ。
みんなが立ち止まらない限り……その先に私は居るよぉっ!!
遂に瑞鳳は崩れるようにその場に倒れてしまった。卯月は瑞鳳の名を叫び、菊月は大粒の涙を流した。倒れた瑞鳳は左手の人差し指をまっすぐに伸ばし、薄れゆく意識の中で言った。
だからよぉ………
止まるんじゃねぇぞ………
瑞鳳の伸ばした人差し指から赤いペイントが流れていった。
「瑞鳳?」
ホテルで窓の外を眺めていた三日月は、ふと瑞鳳の名を口にするのだった。
続く