艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP61 彼女たちについて

バトルシステムがシャットダウンされ、会場が再び歓声に包まれた。一発逆転を果たした月華団には惜しげもない拍手と歓声が送られていたが、現場はそれどころではなかった。

「三日月!長月!」

意識を失って倒れる三日月と長月を起こそうと皐月が2人を交互に揺すっていた。しかし、2人が起きる気配は一切なかった。それを見た暁と響もまた、3人の元へ駆けていった。

「皐月!三日月は!?」

「ダメだよ!2人共うんともすんとも返事がないよ!」

「と、とにかく医務室に運ぶわよ響!皐月は、長月を右から支えて!」

「わ、わかった!」

「暁、あの久条って人は?」

「今はそんなことどうでもいいわ!響は三日月をお願いね!」

「―――!!」

暁の言葉に、久条は黙ってその場を後にした。暁たちは三日月と長月を担ぎ、医務室に向かった。

 

一方その頃、電たちは瑞鳳の元へ向かっていた。瑞鳳もまた、バトルの決着を見てそのまま倒れてしまったのだ。それを見て、放っておくなど彼女たちにはできなかった。

「瑞鳳さん大丈夫っぽい?」

「たぶん大丈夫じゃないと思うのです!」

「うん。だから急ごう!」

そう言って3人は観客席を走った。そして瑞鳳の元に辿り着いた時、そこには別の場所でバトルを見ていた雷の姿があった。雷は一生懸命に瑞鳳の肩を揺すって声をかけていた。

「ず、瑞鳳さん!しっかりしてよ!」

「あ、あれ!?雷ちゃんなのです!?」

「い、電!?なんでここに?」

そこにいた雷の姿に驚く電。しかしそんな中で瑞鳳の元に駆け寄った時雨の言葉が2人を現実へと呼び戻した。

「瑞鳳さん聞こえるかい!………駄目だ。返事がない」

「し、時雨。どうするっぽい!」

「とにかく医務室に運ぼう!雷、君も手伝ってくれるよね?」

「も、勿論よ!人命救助は雷様の十八番なんだから!」

「電も手伝うのです!」

「雷と電は左から支えてくれ!夕立は僕と右側だ!」

「了解よ!」「なのです!」「ぽい!」

4人は瑞鳳を肩で支えながら目の前の階段を下りていった。ただ、瑞鳳の脚は引きずられていた。

 

そして医務室に辿り着いた4人は、扉を開け医務室に入った。そこには既に暁たちが辿り着いていて、三日月と長月の眠っているベッドの隣に立っていた。ガラっという扉の音に気づいた響が電たちの方を向いた。

「あれ?電に時雨、夕立じゃないか……て、雷もいたんだね」

「ちょっと!雷の事をついでみたいに言わないでよ!」

「ちょっと雷!静かにしなさいよ!ここ医務室なのよ!」

「あ、ごめん」

雷が謝ったところで、電たちも瑞鳳をベッドに寝かせた。全身包帯だらけの瑞鳳を見た皐月以外の全員はとても不思議に思っていた。昨日までガンプラバトルの準備に奔走していたのなら、まずこんな大怪我をどこでするのかが謎である。

「それにしても、何で瑞鳳さん。全身包帯グルグル巻きっぽい?」

「確かにちょっと変だよね……皐月、君は何か知らないのかい?」

「あ、えっと……昨日、突然知らない人たちに襲撃されて団長が倒れたってことしか……」

「しゅ、襲撃ですって!?」

皐月の言葉を聞いた雷が驚きの声をあげた。皐月は、驚くのも無理ないよね。と小さく言った。

「実際、ボクも驚いたんだ…いきなり、団長が倒れた!なんて信じられないしさ」

「そうだったのね……だから三日月も長月もあんな戦い方をしてたんだ」

「うん……団長の悲報で士気が落ちてたボクたちを奮い立たせてくれたのは………他でもない、三日月だったから…」

「………」

響はこの瑞鳳襲撃事件の首謀者が「暁の親衛隊」によるものだと確信を持っていたが、ここは言わなかった。

「でも……誰が瑞鳳さんを手当てしたのでしょう?」

「うん……ボクもそれが気になってたんだ」

「考えられるのは、襲撃された場所の近くに住んでいた人。かな……」

「それは無いかも……襲撃された場所。ここから結構離れてるし」

「そうなんだ……」

すると、室内が一気に静まり返った。瑞鳳と三日月、長月の呼吸の音だけが医務室内に響いていた。しかし、そんな時だった。

 

ガラッ!

 

不意に医務室の扉が開いたのだ。突然の事で驚く電たちは、一斉に扉の方へ顔を向けた。

「やれやれ……車に瑞鳳が居ないと思ったら、こんな所に居たとはな」

「あれ?深海提督さんなのです。何でこんなところに?」

扉に立っていたのは深海だった。深海は頭をポリポリと掻きながら、医務室に入ってきた。

「なんでも何も、瑞鳳が車から消えてたからこうして探しに来たんだよ……まったく、そんな身体で勝手に出歩きやがって……」

「ええ!?し、深海提督って…あの深海提督!!い、電!ちゃんと説明しなさい!」

「そ、そうよ!雷にも教えなさい!!」

「はわわ!お、落ち着いてほしいのです!」

「うわぁ!!ほ、本物の深海司令官じゃん!なんでこんな所に居るの!?」

と、若干の遅れはあったものの突然本物の深海が現れたことに驚く暁と雷そして、皐月。響だけはいたって冷静だった。深海は、やれやれ。と溜息を吐いた。深海は順を追って説明を始めた。

 

「なるほどね。倒れた団長と卯月、菊月を深海司令官の奥さんが見つけて、深海司令官の車に連れていった。ってことだね!」

「そう言うことだ。瑞鳳は全身に打撲と、頭に軽い切り傷があったが治療はしたから大丈夫だ」

「ありがとう深海司令官!みんなを代表してお礼を言うよ!」

「じゃあ、深海司令は何でここに瑞鳳さんが居るってわかったんだい?」

「簡単だ。痕跡を辿った」

「こ、痕跡を辿った!?」

「俺は昔からサバイバルをして生きてきた。だから自然と身に付いた技能だ。何より、瑞鳳は怪我人。痕跡がすぐに見つかったな」

「み、深海提督さんって半端なく凄いっぽい……」

「な、なのです……」

「そうだね……」

すると深海は、ふぅ。と息を吐くと皐月に声をかけた。

「ところで皐月。お前たちはこの後どうするんだ?」

「どうするって……大会の事だよね?」

「ああ。瑞鳳と長月は大丈夫だろうが……三日月はドクターストップをくらったんじゃないか?」

「え!?な、なんでわかったの!」

皐月の言う通り、電たちより先に医務室に来た皐月たちはその場にいた医師に三日月を見せた。そして医師は、再び三日月にロストシーボ現象が起こっていると言い、ドクターストップを言い渡したのだ。深海はその理由を淡々と答えていった。

「俺も一応アシムレイトが使えるからな…ある程度の知識は一応持っている。ファイターがアシムレイトを通じて過剰に機体とリンクした時、身体のある場所から血がにじみ出てくる……そして三日月の目元に血を拭った跡がある。ここまで言えば、わかるだろ」

「う、うん……」

「深海司令官。その場所ってまさか……」

「ああ。右か左、どちらかの眼だ」

「そ、そんな……」

驚愕し言葉を失う暁と雷。

「青葉から、県代表戦の時の事も聞いた。その時もこんなだったらしいな」

「うん。三日月は気にしてなかったけど、団のみんなは全員心配してた……水無月は特にね」

「そうか……それで、どうするんだ皐月?」

深海の言葉に沈黙する皐月。ただ黙って彼女の言葉を待っていた深海と電たち。

(今の戦力……みんなの力を当てにしてないって訳じゃないけど、三日月も長月も睦月もいないこの状況で、果たして電たちに勝てるのかな……)

皐月はただただ静かに考えていた。深海も電たちは彼女の言葉を待ち続けていた。すると、3つあるベットの内の1つから声がした。

「うう……さ、皐月ちゃ、ん」

「!?」

その声は瑞鳳のものだった。突然目を覚ました瑞鳳に驚く一同。何とか身体を起き上がらせようとしている瑞鳳に慌てて皐月が駆け寄る。

「だ、団長、無理に動いちゃダメだよ!」

皐月は起き上がろうとしていた瑞鳳を何とかベットに横たわらせた。すると瑞鳳は弱々しい声で口を開いた。

「無理を押し付けて、ごめんね…皐月ちゃん」

「な、なに言ってるのっ…ボクは…ただ…団長が……瑞鳳さんが心配でっ……」

「そんなことを言ってもらえるなんて、私は幸せ者……だなぁ」

「瑞鳳さんっうう……」

瑞鳳と話しているうちに目に涙を浮かべていく皐月。瑞鳳は皐月の髪を撫でながら告げた。

「皐月ちゃん。私は、しばらく前線に行けないから……月華団のみんなをお願いできるかな?」

「瑞鳳さん?」

「死ぬわけじゃないから、安心はしてほしいな……」

そう言って瑞鳳は精一杯作った笑顔を皐月に見せた。皐月はその笑顔見て、ようやく目に溜めていた涙を拭った。

「じゃあ、指示をお願いするよ。団長!」

皐月はいつものハツラツとした調子を取り戻し、瑞鳳に指示を仰いだ。瑞鳳は、わかった!と少しだけ元気を取り戻した声で言った。

「現在をもって…月華団は全国大会を棄権。深海提督の鎮守府に向かうことにします!」

「了解だょ―――え?ええ!深海司令官の鎮守府に行くの!?」

瑞鳳の出した指示に驚き声をあげる皐月。暁たちもそれは同じだった。

「ず、瑞鳳さんってそんな突拍子なこと言う人だったのね……」

「暁も驚いたわ……レディらしくは無いかもだけど」

「ハラショー」

「だ、団長。なんでまたそんな突拍子なことを言ったの?」

「深海提督の奥さんから聞いたんだ。「深海提督は月華団の力を貸してほしい。って言ってたことがある」って」

「え?月華団の力?」

瑞鳳の言葉に更にポカンとする皐月。すると、今度は今まで沈黙を保っていた深海が、俺が説明する。と、口を開いた。

「俺は今、この全国大会で戦っている奴らをスカウトして回っているんだ」

「スカウト?」

「ああ。そう遠くない未来、これからのガンプラバトルに大きな影響を及ぼす事件が起こる。と俺は思っている」

「これからのガンプラバトルに大きな影響を及ぼす事件?」

「そんなことが起こるっぽい?」

深海の言葉に不思議になる時雨と夕立。しかし数日前、加賀たちをキャンピングカーに連れていった時に、深海が「ガンプラを使った何かがある」といっていたのを思い出した。

「あ!深海提督、それってもしかして!」

「思い出したか時雨……つまりはそう言うことだ」

「ちょっと、ボクにもわかるように説明してよ!」

皐月がそう言うと、深海は、すまなかったな。と言って続けた。

「つまりはその事件が起こった時に、月華団の力を貸してほしいということだ。頼めるなら、暁たち3人もお願いしたい」

「え?暁たちも?」

深海の突然のスカウトに驚く暁と雷。すると響が深海に切りだした。

「深海司令、1つ聞きたい。その事件が起こるって確証はあるのかい?」

「………ある」

「ほぅ…その理由は?」

響の質問に、深海はすぐに答えた。

「この大会の中で、加賀たち百年記高校が奴らに襲われ、翔鶴が拉致されたからだ」

「………」

「瑞鶴の話によれば、本当に狙われたのは瑞鶴だったらしい。その時にそいつがこう言ったらしい「貴女がこの3人の中で1番強いからです」とな」

「………つまりその事件を企んでいる人たちも、戦力を集めているから深海司令もそれに備えてるってことだね?」

「ああ。そう言うことだ」

「なるほどね……」

と、納得する響だったが暁と雷は依然ちんぷんかんぷんな顔だった。それを見て頭をポリポリと掻く深海。すると響は依然ちんぷんかんぷんな顔をする2人に、簡単に説明をした。そして説明を聞き終わった暁と雷は、元気よく答えた。

「わかったわ!暁の力、深海司令官に貸すわ!」

「この雷様にかかれば楽勝よ!任せて深海司令官!」

「ああ。ありがとうな3人とも」

「暁が決めたことさ。私はそれに従うだけだよ」

少しだけ賑わう医務室。すると、今までの会話を聞いていた時雨が何かに気づいてか、口を開いた。

「あれ?と言うことはぁ………僕たちまた不戦勝?」

「「………あ」」

時雨の言葉に拍子抜けした声を放つ電と夕立。結果として、医務室は再び静寂に包まれた。

 

続く

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