艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
部室を飛び出した時雨と夕立を追って電は走った。校門を抜け、時雨と夕立を必死で追いかけ2人が信号につかまったところでようやく電は2人に追いついた。息を切らし膝に手をつきゼェゼェと言いながら電は口を開いた。
「し、時雨さん。夕立さん。ゼェゼェ、ま、待ってほしいのですぅ~」
背後から聞こえた電の声に、時雨と夕立はようやく電を置いてけぼりにしていたことを思い出した。2人が慌てて電に駆け寄る。
「い、電!…そっか、僕たちが置いてけぼりにしちゃったんだね…ごめんよ電」
「電ちゃん、大丈夫っぽい!?あ、お水飲むっぽい?」
「あ、ありがとうなのです…ゼェゼェ…」
夕立が鞄に入れていたペットボトルを差し出し、電はそれを受け取るや否や、グビグビと物凄い勢いで飲み干した。そしてしばらくしてようやく落ち着いた電に、夕立が声をかけた。
「電ちゃん。落ち着いたっぽい?」
「はぁはぁ…大丈夫なのです」
丁度その時信号が青に変わった。それに気づいた時雨は電に手を差し伸べ、電もゆっくりとその手を掴んだ。時雨に起き上がらせられる形で、電は体を起こした。そして、信号を渡って更に歩を進める。
「そう言えば、そのネリタ模型店には何があるのですか?」
「ん?ああ、話していなかったね…実は―――」
「バックパックの神様がいるっぽい!」
「…え?」
夕立の言葉に、電は首をかしげることしかできなかった。
電と時雨、夕立の3人は小さな2階建ての建物の前に立っていた。
「ここがネリタ模型店なのです?」
「うん、そうだよ」
きっちり掃除された店頭と、「ネリタ模型店」と書かれた大きな看板、そして店頭のショーウィンドウに飾られたガンプラと―――
「これは…バックパックなのです?」
多数のバックパックがそこには飾られていた。原作に登場する機体が装備するバックパックばかりではあるが、その出来栄えはどれを見てもかなりの高さであった。しかし、電は気になることがあった。
「あれ?でも、なんでここにバックパックが飾られているのです?」
「それは中に入ればわかるっぽい!」
「そうだね。とにかく入ろう」
「な、なのです」
ネリタ模型店へ入っていった3人。ピンポーン、とお客の入店を伝えるチャイムが鳴り店員が奥の扉から出てきた。
「いらっしゃいませ―――あ、時雨に夕立じゃない。またパーツ買いに来たの?」
出迎えてくれたのは右目が隠れるほど真っ白の長い髪を右側でサイドテールで纏め、黒色のノースリーブワンピースと同じ色のロングブーツ、そして「ネリタ模型店」と書かれたエプロンを着けた青白い目の店員だった。
「こんにちはネ級さん」「こんにちはっぽい!」
彼女の名前は「ネ級」元々は艦娘たちと戦争をしていた
「相変わらず元気だね夕立。ん?初めて見る子が混じってるね…」
少し低い声のネ級に指摘され少しビクッとした電であったが、何とかビクつくだけに留まった。時雨がネ級を紹介する。
「この人はネ級さん。ちょっと低い声で怖そうだけど、いい人だから安心していいよ電」
「い、電です。どうか、よろしくお願いします」
「電ね。ネ級よ、よろしくね…ところで、今日は何の用で来たの?」
ネ級の言葉に、本題を思い出した時雨が口を開く。
「実はこの電のガンプラについて相談があって来たんだ。ほら、電?」
「なのです」
電はそう言うと鞄からイナヅマガンダムを取り出してネ級に見せる。ネ級はイナヅマガンダムをジーっと見て、やがて口を開いた。
「インパルスガンダムのカスタム機だね。見た感じだと、機動性がかなり高いみたいだけど…シルエットが装備されてないのはそういう理由なの?」
「いえ、シルエットは元々装備するつもりだったのですが。どのシルエットにするか、決められなくて…」
「なるほど。それで
電たち3人はゆっくりと頷く。そして、ネ級は腰に手を当てるとニコリと笑って言った。
「わかった。じゃあ付いてきて!」
そう言うとネ級は店の奥にある部屋へと向かった。そこの扉には「使用中」と書かれた看板が吊るされていたが、ネ級はそんな看板を気にする素振りも見せずに扉を開けた。真っ暗な部屋の奥に明かりが1つだけ灯っていて、そこに1人の髪の長い女性が背を向けて座っている。
「タ級姉さま。お客さんですよー」
「……」
「タ級」と呼ばれたその女性はネ級の言葉に全く反応を示さなかった。ネ級がもう一度声をかける。
「タ級姉さま~」
「……」
やはり反応がない。
「お昼寝中なのですか?」
電の心配そうな言葉をよそに、ネ級は普通にまじめな口調で返答する。
「ううん。部屋は暗いけど、タ級姉さまはこの部屋では絶っ対に寝ないから……仕方ない。時雨、夕立」
「うん」「ぽい」
ネ級の合図に時雨と夕立は、これから何をやるのかすぐに察しが付いたのかネ級に返事を返す。そして―――
「コホン。あー!時雨のガンプラのバックパック、新調したんだ~!」
と、超わざとらしい口調でネ級が時雨のガンプラのバックパックについて話し始めた。それに時雨が答える。
「うん。そうなんだよ~今まで遠距離で攻めてたから近距離用のバックパックに変えてみたんだ~」
しかし、当の時雨の口調もどこかいつもの冷静さを欠いていた。そして夕立だけはいつも通りの口調で―――
「ねぇねぇネ級さん!夕立の機体のバックパックも見て見てー!」
会話をしている。この話の内容は完全に嘘であることは話の意味が理解できていない電でもすぐに分かった。何故なら―――
(時雨さんも夕立さんもガンプラ出してないのです…なのになんで?)
「お、凄い凄い~タ級姉さまの作ったバックパックに引けを取らない作りこみだ~」
ピクッ―――
(あ!ちょっと、反応したのです!)
少し肩をピクリとさせたタ級。しかし、まだ動く気配はない。ダメか!という顔をして、ネ級は話を続ける。
「あ~よく見たらこのバックパック分離して飛行できるんだ~」
「ぽいー!じゃあじゃあ、そこのショーウィンドウに飾られてる飛行できるバックパックとバトルするっぽいー!」
ピクピクッ――
(また反応したのです!)
話はさらに続き―――
「名案だね~じゃあ、ダメージレベルはAでいいんじゃないかな~」
「賛成っぽい!夕立のバックパックで素敵なパーティー見せるっぽい!」
「よーし!ネ級が相手するよ~」
ガタガタガタッ!
(お、来てる来てる!)
(もう少しだね)
(じゃあ、ラストスパートっぽい!)
傍で見ていた電もようやくこの会話の意味を理解して、ちょっと大げさなのです。と思った顔をしたがネ級が笑顔で首を横に振ってみせる。そして―――
「タ級姉さま~!バックパック借りますね~あ、聞こえてないから勝手に借りちゃお~」
「駄目だぁー!!」
ガッタン!と物凄い音と声を立てて、部屋の奥に座っていたタ級が遂に立ち上がった。そして、あらぶった声&ハイスピードで喋りだした。
「駄目に決まってるだろネ級!あれは展示用に作ったものであってバトルのために作ったんじゃないぞ!あれ1個作るのに1ヵ月以上掛かるのはお前も知ってるはず!それをましてや、操縦スキルのないお前がダメージレベルAでバトルするなどこの私が絶っ対に……あれ?」
「タ級姉さま?全く、呼ばれたらすぐに返事してください。姉さまを起こすのって大変なんですよ?」
こうして、タ級はようやくこちらの世界に帰還したのだった。
続く