艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
元来た道を走って引き返す時雨と夕立。そして先程素通りした「培養室」と「薬品投与室」の前まで戻ってきて、時雨は足を止めた。
「時雨、どうしたの?」
「まずはここにある部屋から調べよう。この施設の全体を知るには時間もかかるし、何より……」
「何より?」
「電を早く助け出さないと!夕立、扉に鍵がかかってないか確認しよう」
「ぽい!」
そう言って2人はそれぞれ扉を手に掛けて鍵の有無を確認した。
「むううう!……ダメっぽい。時雨、薬品投与室の方は鍵がかかってるっぽい」
夕立は薬品投与室の鉄扉を思いっきり引っ張り、更に押してみたが開くことは無かった。
「わかった……フッ!……っ!こっちはどうやら鍵はかかってないみたいだ」
一方、時雨が担当した培養室の方の扉が鈍い金属音をたてて開いた。夕立も手伝うっぽい。と言って夕立も扉の開閉を手伝い、何とか培養室の扉を開けることに成功する。
「ふぅ……ありがとう夕立。よし、中を調べよう」
「ぽい!」
そう言って培養室の中に入っていった時雨と夕立。部屋にはやはり薄暗くも照明があり、室内を照らしていた。時雨と夕立は部屋の中を見渡した。
「部屋中が機械だらけっぽい」
「うん。無人なのに動き続けているって言うのが不気味だよ」
部屋の至る所には、何の為の物なのかわからない背の高い機械が置かれ動いていた。そして、ゆっくりと室内を歩く時雨と夕立は、すぐに扉の正面にある機械の前まで辿り着いた。
「あれ?」
「夕立、どうしたの?」
「何かここの機械だけ背が低いっぽい」
「本当だ。……近くに椅子もある」
そこにあった機械。それは部屋の至る所で起動している機械と違い、腰くらいまでの高さしかなかった。そして近くには回転させる事の出来る椅子が数個置かれていた。
「この機械、もしかしたら何かの制御機器なのかも知れない」
「それはありえそうっぽい。ちょっと触ってみるっぽい!」
「あっ夕立!」
時雨が慌てて制止するが時既に遅し、夕立は自分の真っ正面にあったボタンを押した。すると、近くで何かが動き出す音が鳴り始めた。
「ちょっと夕立!勝って押したら駄目じゃないか!」
「ぽ、ぽいっ!?」
「もしそれが自爆装置のボタンとかだったらどうするのさ!」
「う……時雨、ごめんっぽい」
「まったく……あれ?」
時雨が夕立に怒っている間に、先程までの駆動音が鳴り止んでいた。そして時雨は、機械の上に位置していた壁がいつの間にか窓ガラスになっていたことに気づいた。
「これ、窓ガラスだ」
「時雨?」
「わざわざこんな仕掛けを作るなんて……いったい、どういう事―――っ!!」
窓ガラスを調べていた時雨が、その向こう側の光景を見て一瞬たじろいだ。それに気づいた夕立もまたその窓ガラスの向こう側を見た。そして―――
「……っ!?ひ、人が…液体の満たされたカプセルの中に……入ってる!」
そこには横に4つ並んだ謎の液体に満たされた円筒状のカプセルの中にそれぞれ人が入っている光景があった。
「……培養室。そう言うことだったのか……」
夕立は未だにショックを抑えきれず、時雨は額から汗が流れて真剣な表情でその光景を眺めていた。そして、ショックを受けた夕立が1歩後ろに後退りした時、夕立の靴が何かを蹴った。そのことに気づいた時雨が、ハッとしてその方を見た。そこには1冊の本が転がっていた。
「何だろう……この本」
「ヒャッ!し、時雨…いきなり脅かさないでほしいっぽい!」
「ごめんごめん」
時雨は本を持ち上げ、表紙を確認した。
「えっと……報告書……みたいな物かな?」
「―――て、時雨その本どうしたっぽい?」
「今そこで拾ったんだよ。ちょっと、中身を確認させてもらおうかな」
「夕立も見るっぽい」
時雨はそう言ってその本を捲った。
「……」
「×017年1月3×日 本日よりこの培×室の室長と××××で前任者に引××ぎ、この××書纏めることとする。しかし、×年前から始まっ×××画も×××××した事例はない。どうしたものか」
「2×17年×月11日 ××もまた成果を出せずに××××しまった。このままでは、××が危うくなってしまう」
「2017年3月2×日 今××めて成功体を生み×××とに成功し×。×えは簡単だった。××1から作れない××、今まで××わ×た物を利用すれば××のだ。艦×の×××ステムを×××た成功体として、この2体の×××をそれぞれ「×」「×」と名付けた」
「20××年×月31日 まず×××になった。×××である×の1体が×設か××亡した。早く、別の×××を生み出さ××れば!」
「2×17年5月×日 解××はす××完成した。逃亡した×××「×」の遺伝×からク××ン体を作ること××功した。これで万事上手く×××××。」
「………この後は白紙みたいだ」
「え?」
本を読み終えた時雨の言葉に夕立が違和感を覚えて口を開いた。
「時雨。この本の最後のきじゅつ?だっけ、それ3年前だよね。何でそんな昔に終わってるっぽい?」
「僕もそこは不思議に思ったんだよね。今もこの施設は稼働している。そう考えると不思議だ」
時雨は本を閉じながら考えを巡らせた。
(施設が稼働している。でも本の記述が3年前で終わっている。物凄く気がかりだけど、まだ情報が少なすぎて何とも言えないな)
「夕立、この部屋をもうちょっと調べよう」
「了解っぽい!」
その後数分、時雨と夕立は室内を調べたがこれ以上の手掛りが出て来ることは無かった。
「夕立、何か見つけたかい?」
「ううん。さっきの本以外何もないっぽい」
「そっか……よし、ならこの部屋はここまでにして次に行こう」
「ぽい!」
時雨と夕立は部屋を後にし、廊下に出た。
廊下へと戻った時雨と夕立は更に元来た道を引き返し、「死体廃棄室」の前へと戻ってきた。そして戻って来て早々に立ちが震えた声で時雨に尋ねた。
「し、時雨……この部屋…は、入るっぽい?」
「………」
時雨はすぐに答えることが出来なかった。それもそうだ、こんな名前の部屋は誰だって入ろうとは思わない。それが普通だ。時雨はしばらく死体廃棄室の扉を見つめていた。やがて、何かを決心したのかゆっくりと扉の取っ手に手を添えた。
「ちょっ!し、時雨本気っぽい!?」
「……うん。もしこの部屋にあの1番奥の扉を開ける鍵があったとしたら……後に入るより、今入ってしまった方がっ」
「………」
時雨の言葉に口を閉じた夕立。時雨はそんな夕立を気遣い、言った。
「この中には僕だけで行くよ。夕立は外で―――」
「夕立も行くっぽい!」
「え?」
夕立の言葉に驚く時雨。すると夕立は真剣な表情で時雨に言った。
「時雨を1人だけ行かせる事なんて、やっぱり出来ないもん!いつも時雨は夕立を支えてくれてるから……今度は、夕立が時雨を支える番っ!」
「夕立……うん。ありがとう」
「じゃあ、2人で協力して扉を開けるっぽい!」
「うん!」
そして扉は鈍い金属音を響かせ開いた。
室内へと入った時雨と夕立。あちこちに血が飛び散り、血生臭い悪臭が漂う空間を想像していた2人は入って早々に驚くことになった。
「あ、あれ?思ったより……綺麗っぽい?」
「ほ、本当だ。血生臭さも感じない……」
部屋の中はいたって普通だった。血が飛び散ったような痕跡も無ければ血生臭さも感じられない。それを知った2人は一気に緊張が途切れ、ぐったりと立ち尽くしてしまった。
「はぁ……緊張して損したっぽい」
「うん。僕もだよ……」
しかし、今はのんびりしている状況ではないことを思い出した2人は早速室内を調べ始めた。しばらくして、夕立が時雨の名前を呼んだ。夕立の呼びかけに気づいた時雨は夕立の元に駆け寄り、何か見つけた?と聞いた。
「時雨、これ何の袋っぽい?」
「黒くて大きいチャックが付いた袋………っ!これ、死体袋だよ!」
「し、死体袋!?あ!そう言えば、鉄血のオルフェンズで見たことがあるっぽい!」
「いくら部屋を綺麗にしても、やっぱりこの部屋はそういう部屋なんだ……そして死体袋があるってことは……」
時雨は脅える夕立をよそに周囲を見渡した。そして見つけた。
「やっぱりあった」
時雨の視線の先、そこにはゴミを捨てる時などに使用されるダストシュートが口を開けていた。しかし、ここは
「……確かにこの方法なら
時雨は汗を流しながら皮肉の笑みを浮かべていた。そして時雨は視線の更に先である物を見つけた。
「ん?あそこにあるのは…本棚?」
「時雨、どうしたの?」
「本棚みたいなのを見つけたんだ。ほらあそこだよ」
時雨はその方向を指差してみせた。夕立も時雨が指差した方を見ると、本当だ。と呟いた。そして2人は本棚の元へ歩を進めた。時雨の予想通り、それは本棚でそこには黒い背表紙の本が収められていた。
「うーん。かなりの量だ」
「1冊ずつ調べてたら時間がいくらあっても足りないっぽい」
「そうだね。と、背表紙に年が書いてあるね。一番古い物は………あった。2014年……終戦の2年後か……」
「夏のガンプラバトル全国大会なら2回目、夏と冬の全部ひっくるめれば3回目と4回目の年っぽい!」
「内容は……うん。やっぱりこの部屋に関する内容だね。廃棄した日付なんかが書かれてる」
「あ!時雨、こっちに1番新しい本があるっぽい」
「どれ?」
夕立はその
「えっと……2017年から……20…20年!?」
そこに記されていた年は「2017年から2020年」だった。
「な、何で……今年の本が……」
時雨はそこに書いてあった「2020年」に衝撃を受けていた。その事を不思議に思った夕立が時雨に尋ねた。
「ねぇ時雨。何でそんなに驚いてるっぽい?」
「………」
「時雨?」
「………夕立。さっき、培養室で呼んだあの本。最後の日付を覚えてるかい?」
時雨はビクビクした様子で夕立に問いかけた。夕立は、んー?と少し考えてから答えを出した。
「確か、2017年だった――――っ!?」
「そう。あの本は2017年5月で
「2017年の5月以降に本が書かれてないのに、今年の本がここにあるのはおかしいっぽい!」
「そういう事だよ。よし、中身を確認しよう」
「ぽ、ぽい!」
「2017年 半分廃棄します!」
「2018年 残り半分廃棄します!」
「2020年 今月にやっと計画の参加者を全員を廃棄出来ました!私、やりました!」
そこに記されていたのはその3文だけだった。これを見た時雨は先程よりも震えていた。そこに書かれている文字からは明らかに遊び心の様なものが感じられたからだ。
「し、時雨……」
「……そろそろ、外に出よう夕立」
「ぽ、ぽい………」
2人が部屋を出て行こうと本を閉じたかけた時、本の間から何かが落ち、チャリン!という音をたてた。その音は静かな室内で大きく響いた。時雨が足元を確認するとそこには1つの鍵が落ちていた。
「鍵か……きっとこの本に挟まっていたんだろう」
「時雨、それ何処の鍵っぽい?」
「えっと…プレートには「会議室」って書かれてる」
「なら次はそこに行くっぽい?」
「そうだね。恐らく反対側の未探索エリアにある筈だ」
「じゃあ早く行くっぽい!」
そう言って夕立は足早に部屋を出て行ったが、時雨は手に持ったカギを見て考えを巡らさせていた。
(この本からこの鍵が落ちてくるってことは、きっと仕掛けた奴がいる。それは恐らくあの犯人だ………もしかすると、僕たちは………)
そこまで考えた時、入口の方から夕立が時雨を呼んでいた。時雨は、今行くよ。と言って部屋を後にした。
廊下へと出た2人は更に廊下の先へと足を進めていった。目を覚ました部屋を通り過ぎ、未探索のエリアへと足を踏み入れてからしばらくすると、2人の前に3本に分かれた分かれ道が現れた。1つは右に向かって曲がり、もう1つは直進、最後の1つは左斜め前へと続いていた。
「どっちに行くっぽい?」
「とりあえず真っ直ぐ進もう」
「了解っぽい」
2人が最初に選択したのはそのまま直進する道だった。廊下には相変わらず等間隔で電球が吊るされていて廊下を照らしていたが、2人の表情は暗かった。しかし、その道はすぐに行き止まりとなっていた。
「あれ?行き止まりだ」
「時雨、ここにも扉があるっぽい」
「本当だ……「検体保管室」か……」
「またヤバそうな名前の部屋を見つけたっぽい」
「鍵は……駄目だ、かかってて開かない。仕方ない戻ろう」
「ぽい」
2人は元来た道を戻り、先程の分かれ道のところまで戻ってきた。時雨は、今度は右に行こう。と言い、夕立も了承して先へ向かった。するとやはり、1分も経たない内に道は終わりを迎え、そこにはまた扉が現れた。
「また扉だ……あ!ここが会議室みたいだ」
「早速鍵を使ってみるっぽい!」
「………よし、開いたよ!」
鍵はぴたりと鍵穴に一致し、カチャン!という音をたてて鍵を開けた。時雨と夕立は2人係で扉を開け、会議室へと足を踏み入れた。
部屋に入るとすぐ正面に巨大な机が現れ、その周囲には幾つもの椅子と書類が散乱していた。
「なんか、とっても散らかってるっぽい」
「普通ならキチンと整えられてる筈なんだけど……まあ今はいいか……」
時雨はそう言うと部屋の至る所に散らばった書類を集め始めた。
「時雨……もしかして散らばってる紙集めるっぽい?」
「うん。会議室なら何か情報があるかもしれないしね」
「うへぇ~」
夕立から一気にやる気が消えていった。しかし、時雨はもくもくと書類を集めていく。それから数分が経過し、あらかたの書類を集め終えた時雨と夕立はそれを机の上に置いた。机の上にはかなりの量の書類で埋め尽くされた。すると時雨はその書類1枚1枚に目を通し始めた。読むスピードはかなり速く、流し読みの要領で読んでいく。
「時雨ぇ~夕立疲れたっぽい~」
「………」
夕立の甘えにも反応を示さないほど時雨は集中していた。しかし、集めた書類は黒い染みによって汚れおり、その殆どは判読出来るものではなかった。すると時雨は、その書類の中から判読が出来るものを発見した。
「これは染みがないから読めそうだ」
「備品移動報告書 ナンバー付き金庫 実験観察室→資料室」
「て、これだけしか書かれてないや。でも「資料室」があるってことはわかったから良しとしよう」
それから更に書類を読んでいく時雨。しかし、そのどれもがやはり黒い染みによって判読が出来なくなっていた。それでも黙々と読み続けた時雨は最後の書類に手を伸ばした。
「………駄目だ。これも黒い染みで読めない」
最後の1枚を虚しく机の上に置き、ガックリと項垂れる時雨。しかし、そんな時雨の耳に夕立の声が届いたのは丁度その時だった。
「時雨っ!」
「っ!?」
慌てて顔を上げる時雨。夕立はいつの間にか会議室の奥に居て、時雨の顔を見ながら壁を指さして立っていた。時雨は夕立の元に慌てて駆け寄った。
「時雨、これ見るっぽい!」
「………ん?この黒い染み……何処かで……」
そこにあったのは、まるで黒い水が跳ねた様な大きな染みがあった。不思議そうにそれを見ていた時雨に夕立が更に続ける。
「ほら!合宿から返ってきた日、家のあっちこっちにあったあの黒い染み!」
「!!」
夕立の言葉に誘導され、記憶を蘇らせた時雨。まさに記憶にあった通りの光景がそこにはあった。黒い水が跳ねた様に出来上がった黒い染み。時雨も夕立も見間違える筈がなかった。
「それに、この部屋物凄く散らかってるっぽい!」
そして、この妙に散らかった会議室。これだけの条件が揃っていれば、時雨が答えを出すのは簡単だった。
「あの時と……同じだ」
「し、時雨……てことは」
「うん。会議中にこの施設の研究員たちは襲われたんだ。村雨……深海雨雲姫と同じ力を持つ何者かに……そしてその日付は………」
「2017年の6月以降……ってこと?」
「恐らくね……」
「「………」」
2人は黙り込んでしまった。今まで見つけてきた情報から導き出された答えはいたって簡単だった。しかし、時雨はあることが気になっていた。
(あの犯人「ここは電の秘密を知ることが出来る場所」って言っていた。でも、今まで見つけてきた資料に電の情報はなかった。いったいどういう事なんだ………)
時雨はそこで一度考えが纏まった。しかし、数分と経たない内にあることを思い出した。
(そう言えば培養室で見つけたあの報告書。何かを完成させたって書いてあったっけ……そして、その内の1体が逃亡したって書いてあって…………もしかしてその完成した「何か」って………いや、まだ断定するには情報が足らないか……)
「あまりこの答えを推したくはないけど……」
「時雨?何か言ったっぽい?」
「ううん、何でもないよ。さて、そろそろ外に出て最後の道へ行ってみよう」
「ぽ、ぽい」
時雨の言葉に違和感を覚えた夕立だったが、時雨が考え込むことはよくあることだから。と思い出し、そのまま揃って部屋を出て行った。
部屋を出た時雨と夕立は、そのまま残った分かれ道の先へと向かった。そしてしばらく行くと―――
「あ、階段があるっぽい」
2人は上と下に続く階段を見つけた。その階段の前で2人はしばらく立ち止まり、この後の事を議論し始めた。
「時雨……どうするっぽい?」
「恐らく上に続いている階段は出口へ直通してる筈だ……でも―――」
「電ちゃんを置いていけないっぽい!」
「うん。僕もそう思ってた……となると」
「自動的に下に行くことになるっぽい」
「そうだね。急ごう」
「ぽいっ!」
2人は階段を降り、更に地下へと足を踏み入れていった。
続く