艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP68 正体と真実

時雨と夕立は実験観察室の前まで戻ってきた。2人は口を開くことなく、ゆっくりとお互いの手を握り合った。そして時雨は、握りしめたカードキーを扉の横にある認証装置に通した。認証装置がピー!と音をたてると、その数秒後に正面の扉が天井へと吸い込まれるように開いた。2人はゆっくりと部屋の中へと入っていった。

 

部屋の中は今までの部屋同様の電灯で照らしていて、少し薄暗かった。そして部屋に入ってすぐ、時雨と夕立は部屋の中央の椅子に座る電を見つけた。

「「電!」ちゃん!」

急いで駆け寄る時雨と夕立。

「電!大丈夫かい!」

「電ちゃん!早く起きて一緒に逃げるっぽい!」

しかし電は意識を失ったままで、2人の呼びかけに答えることはなかった。すると、部屋の扉が閉まる音がした。それに気づいた2人は慌てて後ろを振り向こうとしたがしかし、時雨と夕立が首を動かすよりも先に2人を衝撃が襲った。

「うわっ!」

「きゃっ!」

2人は中央から少し離れた場所まで弾き飛ばされていた。急いで起き上がった2人がさっきまでいた方を向くと、そこには黒いフードを被った人物が立っていた。

「ごめんごめん!ちょっと、強かったかな?」

「誰だっ!」

「あはは!怖い顔しないでよ時雨ちゃん。一応手加減したんだし、許してほしいなぁ」

「そんなことは聞いていない!」

「名乗るほどの者でもないよ。それより、見つけることは出来たの?電ちゃんの秘密」

「っ!」

黒フードの人物の言葉に、ピクリと肩を震わせた時雨。それを見た黒フードの人物は、口元に笑みを浮かべて言った。

「そっかそっか!で、秘密を知った感想はある?」

「「………」」

黒フードの人物の言葉に黙り込む時雨と夕立。そんな2人を見た黒フードの人物は、まあ仕方ないよね!と言ってから更に言葉を続けた。

「でも、時雨ちゃんと夕立ちゃんが見つけた物は全部本物だよ。私面倒くさがりだから、あんな長い「実験体記録」なんて書けるわけないもん!2人も見たでしょ?死体廃棄室にあった記録」

「っ!……やっぱりあれはお前が書いたものだったんだね」

「まあね!ここで働いていた連中が書いた堅苦しい記録よりもわかりやすかったでしょ!」

依然として楽し気な口調で喋る黒フードの人物。時雨と夕立は、何も口を開くことなくただ黙って黒フードの人物の言葉を聞いていた。

「でも良いよね!あいつら、ここでの実験で作られた私たちを「道具」としか、見てなかったみたいだし!」

その言葉を聞いた時雨はふと、あることを思い出した。そしてそれが、自分の中で引っ掛かる感覚を覚えた時雨は口を開いた。

「なら何故、お前は僕たちの姉妹や翔鶴さんや照月を利用したんだ!」

「ん?」

「深海提督が言ってた。お前の目的は「復讐」だって!でも、お前を「道具」と見ていたここの研究員たちも、計画を立てた連中も全員いなくなった。なのに何でお前はこんな事をしているんだ!」

「………」

時雨の言葉を聞いた黒いフードの人物は、口を閉ざした。しばらく室内を静寂が包み込んだ。しかし―――

「―――フッ」

「っ!」

「フフフ……アッハハハハハハハ!!!」

黒フードの人物は突然大声で笑いだした。それは、狂気すら感じさせるほどの高い声で笑っていた。

「アハハハハハ!アーハッハッハッハッハ!!!」

「な、何がそんなにおかしいっぽい!?」

「ハハハハハ……ハハハ!だ、だって!まだ私の復讐終わってないんだもん!!アッハッハッハッハッハッハッハ!!し、時雨ちゃんって、面白い冗談言えるんだねぇ!アハハハ!」

「「――――」」

黒フードの人物はお腹を押さえながら笑い続けていた。時雨と夕立は衝撃を受け、笑い続ける黒フードの人物を眺めるしか出来なかった。やがて笑いが収まり始めた黒フードの人物は、再び口を開いた。

「アハハハ……ハハハ……ふ、ふぅ……こ、こんなに大笑いしたのは、ここの奴ら殺し回った時以来だよ!時雨ちゃんって、冗談のセンスは最高だね!恐れ入っちゃったよ!」

「………」

「さてと!」

すると黒フードの人物は、椅子に座る電の方へ振り向いた。そして――――

「これも、復讐の1歩!」

黒い服から、魚のヒレの様なものがついたおぞましい左腕を出した。

「なっ!」

「なに…あれ?」

その異形な左腕を見た時雨と夕立は恐怖した。しかし、黒フードの人物はそんな2人を気にする素振りも見せず、その腕で電の頭を鷲掴みにして持ち上げた。

「………ん」

そこで電は少しだけ意識を取り戻したが、今だ完全には戻っていなかった。黒フードの人物は、狂気を纏った笑みを浮かべながら言った。

「電ちゃんがいけないんだよ?勝手に逃げだしちゃうから、私がこんな身体になっちゃったんだもん……だからさ――――」

 

 

 

沈んでしまえお前もッ!光も、望みも、未来もない。私と同じ、絶望の水底へッ!!

 

 

 

黒フードの人物は突然狂気に満ち溢れた叫びをあげた。そしてその左腕から幾本もの真っ黒な触手が現れると、それは徐々に電を包み込み始めていった。

「やめろぉー!!」

それを見た時雨はいてもたってもいられず、飛び出した。そしてそれを止めようとした夕立もまた時雨を追って飛び出していた。しかし、間に合う筈はなかった。時雨は頭の中で、間に合わないと理解していたが、無意識がそうさせなかったのだった。

(駄目だ!間に合わない!)

そして、時雨の無意識に思考が追いついた時だった。

 

 

ドゴォーン!!

 

 

大きな爆音と共に、閉じていた扉が爆発したのだ。激しい爆風が室内に吹き荒れ、時雨と夕立は慌てて身を護った。

「な、何だ!?」

「きゃっ!」

「っ!?」

そしてその爆風を切るように1人の人間が黒フードの人物目掛け、目にも止まらない速さで飛びこんできた。咄嗟に黒フードの人物は左腕から電を離すと正面に向けた。電はそのまま床に倒れ、その衝撃で完全に意識を取り戻した。

「はにゃっ!」

「「電!」ちゃん!」

ガキーン!という金属音が鳴り響き、それに続いてギシギシという金属が軋み合う音が室内に響き続けていた。

「………」

「また、私の邪魔をするのか―――」

 

 

黒野深海ィ!!

 

 

そこには右の額に青白い炎を纏った黒い角をはやし、血の様に真っ赤な右目を光らせた深海が、黒フードの人物の左腕にナイフを突き立てていた。

「深海提督!?」

その深海の姿を見た時雨は驚きを隠せなかった。今まで見たことのないその深海の姿はまさに、ある種の深海棲艦と同じに近かったからだ。

「クッ!」

左腕を大きく振り払った黒フードの人物。その行動に合わせるようにバク転し、少し離れたところに着地する深海。深海は体をゆっくりと起こし、黒フードの人物を見据えた。

「何故私の復讐の邪魔をする!」

すると黒フードの人物は荒げた声で、深海に向かって叫んだ。

「国の為かっ?平和の為かっ?」

「………」

深海は黒フードの人物の言葉に何も答えなかった。そして地面を1歩踏み出すと、再び目のも止まらない速さで黒フードの人物に斬りかかった。しかしその攻撃は黒フードの人物の左腕に防がれたが、深海はそこから更にナイフを振り左腕に連撃を加えていく。ガキンガキン!と高い金属音がしばらく室内に鳴り響いていた。

「電!大丈夫かい!」

「電ちゃん!しっかりするっぽい!」

そんな中で、時雨と夕立の2人は床に倒れた電を何とか起こそうとしていた。

「え?時雨さんに、夕立さん?」

やがて時雨と夕立の存在に気づいた電。時雨はそれに気づいて、すぐに夕立に指示を飛ばした。

「夕立、左から電を支えるんだ!急いでここから出るよ!」

「わかったっぽい!急ぐっぽい時雨!」

電の両腕を肩で支え、時雨と夕立は部屋からの脱出すべく歩き出した。そして深海は連撃を止め1歩下がるとそこから黒フードの人物目掛け飛び上がった。

「しつこいっ!」

黒フードの人物は左腕で深海を叩き落とそうとした。しかし―――

「………シッ!」

「なっ!腕を踏み台にした!?」

深海はその腕を踏み台にして更に飛び、黒フードの人物の背後へ回った。そして空中で方向転換すると、天井を蹴って勢いを乗せ上空から斬りかかった。

「いい加減にしろぉー!!」

「っ!」

「あっ!!深海提督さん避けるっぽい!」

黒フードの人物は慌てて左腕を後ろへ向けた。深海は何とか体を横に逸らして左腕を回避したが、ナイフは左腕に沿うようにして当たると、切っ先が黒いフードに引っかかった。そして互いがすれ違い、深海は床に着地するとその勢いで前転し少し離れた場所で立ち上がった。その場にいた全員が黒フードの人物に振り向いた。そしてそこには――――

「なっ!」

「う、嘘……」

「………」

「そ、そんな……どう、して………」

真っ白な肌とセミショートの髪に真っ白なドレスを着て、首からは千切れた鎖が垂れ、額に2本の黒い角をはやし、魚のヒレの様なものがついたおぞましい左腕と、深紅の眼を持つ少女が立っていた。

 

 

 

吹雪………さん

 

 

 

そこに立っていたのは、吹雪だった。姿は違えど、そこに立っていた少女は明らかに吹雪だった。電が見間違えることなどなかった。

「久しぶりだね電ちゃん。驚いた?」

「何で……どうしちゃったんですか吹雪さん!どうしてそんな姿に!」

電は吹雪に向かって叫んだ。全国大会への出発日にあった時は、髪が白くなっていただけだった吹雪。それが、この短期間で肌は白くなり、額には角が生え、左腕は異形化してしまった。すると吹雪は一言呟いた。

「どうして、だって?」

そして次の瞬間―――

「うわっ!」「きゃあ!」

吹雪はとてつもない速さで電たちに向かい、その左腕で再び電の顔を鷲掴みにし壁に叩きつけた。その勢いで時雨と夕立は突き飛ばされ、地面に倒れた。

「あぐぅ!」

「よくそんなことが聞けるね電ちゃん……全部、電ちゃんのせいなんだよ?」

「!?」

「電ちゃんがこの研究所から逃げ出さなければ、私がこんな姿になることなんかなかったんだよ?」

「電!」

何とか起き上がった時雨が電の名前を叫んだ。しかし、顔を鷲掴みされた電は答えることが出来なかった。すると吹雪は、時雨に振り返って言った。

「邪魔しないでよ時雨ちゃん。これは私と電ちゃんの問題なの」

「何故なんだ吹雪!何故そこまで電を狙うんだ!」

「………」

時雨の問いに吹雪は時雨を見据えたまましばらく口を閉じていた。しかし、すぐにその口は開いた。

「なら、電ちゃんへの冥途の土産に教えてあげる。私と電ちゃんのこと……そして、私がこの世界でただ1人、全てを裁く権利があるってことをね!」

「なんだって!?」

そして吹雪は語りだした。

「ガンプラバトルを裏から操り、この国の主権を握ろうとした旧海軍の首脳たち。そして奴らの計画の為に艦娘と深海棲艦の細胞を合わせて生み出されたのが電ちゃんとレ級。でも電ちゃんは、その研究の途中でここから逃げ出した。でもここの奴らはすぐに解決策を出した。この施設にあった資料を読んだならわかるよね?時雨ちゃん」

「……脱走した実験体…電の細胞を使ったクローンの製造……か」

「そう。そして作り出されたのが私。でも上手くはいかなかった。実験に耐えることが出来たのは私ともう1人だけだった…私ともう1人以外は、みんな死んでしまった。そこまでなら良かった…そこまで(・・・・)ならねっ」

「……っ!まさか!」

「そう。時雨ちゃんも読んだよね、実験体記録。そこに書いてあったでしょ?」

「深海細胞への耐性が低い……」

「正解。そして深海細胞への耐性が低いとどうなるのか、答えはいたってシンプル。「ただ破壊を求めるだけの存在」に短期間(・・・)でなってしまう。そうなれば、制御は出来なくなり奴らの計画も意味を失う。それでも奴らは、計画を進めた。そしてこう言った」

 

 

 

所詮クローンだ。使えなくなったら廃棄して代わりを作ればいい。製造法が確立された今、いくらでも替えが効くからな

 

 

 

「!?」

「こんな事を言われちゃったら、もう怒りは爆発したね。手当たり次第にここの奴ら殺しちゃった!でも、それだけじゃ鎮まらなかったんだよね。そして私の怒りは、私をこんな体として生み出して捨てた旧海軍の首脳と、私のこの体を作り出した細胞の持ち主である電ちゃんに向けられた。でもその内、わかったんだよね」

「何が―――」

 

 

 

全ての元凶であるガンプラバトルが無くなれば良い。ってね!

 

 

 

「「!!」」

「ガンプラバトルに全部を奪われた、この私にしか出来ないってすぐに分かったよ!」

「………だから艦娘を拉致した」

「まあね!1人じゃ何にも出来ないし、それに深海細胞を分け与えることは簡単だったからね!」

「………それが」

「ん?」

その時、今まで沈黙を貫いていた深海が口を開いた。深海はゆっくりと歩きながら吹雪に言った。

「それがお前の言う「世界でただ1人、全てを裁く権利がある」と言う言葉の意味か」

「そうだよ黒野深海。どうせ私は消えてしまう。なら、この世界も道連れにして消えてやる。それが、私の復讐」

「そうか……」

「また邪魔をする気?」

「まあな。俺たち家族の生活に影響があると判断したから…なっ!」

深海は1歩踏み出し、ナイフを構えて高速で吹雪に迫った。しかし吹雪は焦ることなくその場で振り向き、電を鷲掴みした左腕を深海に向けた。

「いつまでも邪魔できると思うなぁ!」

「………」

すると深海は吹雪の直前でナイフを捨てた。深海の行動に驚く吹雪。しかし、カラァン!とナイフが地面に落ちた音が吹雪の耳に届いた時、既に深海は吹雪の懐に入り込んでいた。

「っ!?」

「読みが甘いな」

そして深海は吹雪の腹部に拳を叩きこんだ。その威力は凄まじく、先程まで電を叩きつけていた壁に今度は吹雪が叩きつけられていた。

「グッ!ぐはぁ……」

「はわっ!」

吹雪の左腕から電が落ち、床に倒れた。電は何とか立ち上がろうとしていたが、身体に力が入らず上手く立ち上がれずにいた。

「時雨、夕立。電を連れて先に行け。俺はこいつを片付ける」

「うん!」「ぽ、ぽい!」

時雨と夕立は慌てて電に駆け寄り、2人で抱えて部屋を出て行った。深海は吹雪の腹からゆっくりと手を離した。吹雪は崩れるように床に倒れ、荒い息で深海を見据えていた。

「黒野……深海ぃ!」

「1つ教えてやる」

深海は倒れ伏す吹雪を見下ろしながら言った。

「俺がお前の邪魔をするのは、国の為でも、平和の為でもない―――」

 

俺と、俺の家族の為だ

 

「家族か……フッ、アハハハ!私には、わからない感覚だよ。でも、それが分かったなら私が今生き残れる道が出来たなぁ」

「なに?」

すると吹雪は懐から1つの棒を出し、その先端部を押した。すると、室内にアラートが鳴り響きアナウンスが流れた。

「自爆装置が作動しました。これを解除することは出来ません。職員は速やかに退避してください。繰り返します―――」

「自爆装置か……お前の言っていた生き残れる道の意味とはかけ離れているように感じるが?」

「いつ出口が1つしかないって言ったのかな?それに、良いことを教えてあげるよ」

「何だ。話半分に聞いてやるが、梅雨葉はもう救出済みだ―――」

 

 

お前のお母さんもここに居るんだよねぇ

 

 

「………なに?」

「言葉の通りだよ?ここにお前のお母さん「空母水鬼」がいる」

「バレバレの嘘を吐くか。俺の母さんは戦時中に死んだ。それを俺が知らないとでも言うのか?」

「嘘じゃないですよ。試しにそこにあるモニターを見て見なよ」

「………」

深海は黙って吹雪の言葉に従った。自分の母である空母水鬼は、自身の目の前で撃ち殺された。それを深海が忘れることはなかったが、吹雪の異常なまでの自信を見て自身で確認することを選択したのだ。そして深海は壁にあるモニターの1つに目を向けた。

「………っ!?」

モニターを見た深海の表情が一変した。先程までの静かな表情から打って変わって、明らかに動揺した表情だった。そしてそのモニターに映っていたのは、緑色の液体が入ったカプセルに収められた銀色のロングヘアーにカチューシャらしき物をつけ、黒と白の縦縞が入った袖なしのセーターを着て、3段に分かれるブーツに縦縞の入ったニーソックスを履いた白い肌の女性だった。しかし、深海が驚いたのはそこではなかった。

「………桜の花の簪」

その女性「空母水鬼」が右前髪に着けていた桜の花を模した簪。それが深海の表情を一変させた原因だった。そしてその簪は、その女性、空母水鬼が深海の母親である証でもあった。

「かあ……さん」

すると深海の背後からチャリン。という音がした。深海が振り返ると床に1つの鍵が落ちていた。

「空母水鬼がいる「検体保管室」の鍵。ほら、早く行かないと今度こそ本当にさよならだよ?」

「……クッ!」

深海は鍵を拾うと部屋を飛び出していった。深海が部屋を出たことを確認した吹雪は何事もなかったかのようにすくりと立ち上がり部屋の奥にある扉を開けた。そして、部屋の出口の方を振り向いて言った。

「それじゃ、また今度ね!」

吹雪は扉の奥へと消えていった。

 

続く

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