艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
翌日、決勝戦を翌日に控えた国立ガンプラバトル競技場は熱気に包まれながら前日祭の真っ只中だった。会場の至る所には食べ物やガンプラを扱う屋台が並び、ガンプラ製作ブースまでも設けられていた。そんな賑やかなお祭り会場内を、電たちは楽しそうに歩いていた。
「あっちにチョコバナナの屋台!こっちにはクレープとクロワッサンたい焼き!ふわぁー!迷うっぽーい!」
「ちょっと夕立はしゃぎ過ぎだよ……ま、こんな楽しい日は久しぶりだし、仕方ないっか」
「なのです!昨日のことは忘れて、お祭りを楽しむのです!」
「かなり重苦しい事だったけど…今日ばかりは僕も楽しもうかな…」
「時雨ー!今度はあっちに行くっぽーい!」
はしゃぎまわる夕立を見た時雨は、硬い表情を解して夕立の後を追いかけた。電も勿論その後を追い、3人はしばらく昨日のことを忘れてお祭りを楽しんだ。
「……今はそっとしておいてやるか」
その様子を遠くで見ていた深海は、静かにその場を後にし人混みの中へ消えていった。
そして日が暮れ始めた頃、電たちは海浜公園のべンチに座っていた。オレンジ色の夕陽が、3人を照らしていた。
「ふー、もうお腹いっぱいっぽい!」
「まったく、甘い物には目が無いんだから夕立は…でも、楽しかったね!」
「なのです!電もこんなに楽しい日は久しぶりだったのです!」
「またこの3人でお祭り行きたいっぽい!」
「あはは…気が早いよ夕立」
「でも、電も賛成なのです!」
「……僕も賛成だよ。また、行けるといいね」
「ぽい!」「なのです!」
3人はしばらく夕陽を眺めていた。するとそこに、深海がゆっくりと歩きながら近づいてい来た。
「楽しめたか?電、時雨、夕立」
「あ!深海提督さん!」
「その様子なら、大丈夫そうだな。明日の決勝戦、無理せず頑張れよ」
「ありがとうなのです!深海提督さん!」
「ありがとう、深海提督。…あ、深海提督のお母さんは大丈夫だった?」
ふと時雨が、昨日深海が助け出した空母水鬼の事を思い出した。すると深海は、苦笑いを浮かべて言った。
「あ、ああ……むしろ元気過ぎて、車から降りるのに30分掛かったな」
「「さ、30分!?」」
「いろんな意味で恐怖を感じたな…あれは」
「深海提督も、大変なんだね……」
「まあ、な…(俺も、母さんにまた会えて嬉しかったし)それじゃあ、俺は帰る。何かあったら、すぐに来るんだぞ」
「わかったよ深海提督」
そう言って深海は帰っていった。それからしばらくして、電たちも帰路についた。
光も差さないような真っ暗闇の空間で電は目を覚ました。
(……?…ここは…何処、なのです?)
何も見えないその暗闇の中、自身がゆっくりと下へ落ちて行くような感覚に気づいた電は、無意識に上へ上がろうと体を動かすが、電の身体はゆっくりと下へ向かって落ちて行くばかりで、何も変わらなかった。しかし体の向きは変えられた電。すると電の視線の先に白い何かが見えた。
(何だろうあれ?)
しばらくして電は、その白い何かへと辿り着いた。電がその場所に降り立つと、足元からふわりと白い粉が舞い上がり、ゆっくりとその場を漂って落ちていった。電はゆっくりとその周囲を見渡した。しかし、電が立っている場所以外はほぼ全て真っ暗闇で何も見えなかった。
(何も、ない……電は一体何処に来ちゃったの?)
――――タクナイ
(!?)
その時、電の耳が微かな何かの音を捉えた。電は再び辺りを見回したが周辺の風景は変わっていなかった。しかしやがて「その音」いや、「声」は鮮明に聞こえてきた。
シズミタクナイ…
(え?)
電の耳はその声をハッキリと拾った。低い女性の声。その声が「シズミタクナイ」と言った。すると―――
タスケテ…
(!?)
今度は違う言葉が聞こえてきた。声の音程も、先程より高かった。電は声のした方向に勢いよく振り返るが、やはりそこには暗闇が広がっているだけだった。
ドウシテナコンナコトニ…
更に聞こえてくる声。電は額に汗を浮かべながら戸惑いの表情で周囲を見渡すしかなかった。
コワイヨ…
不安と恐怖に満ちたその声は、次々に電の耳に届けられていく。しかし…
コンナハズジャナイ…
マダヤレルハズ…
ココデオワレナイ…
カエリタイ…
カエセ…
やがてその声は何処か怒りを纏った物へと変わった。電は聞こえてくる声に恐怖し、耳を塞いでうずくまった。しかし、いくら耳を塞いでも声は次から次へと聞こえてくる。
モウイチドアノバショニ…
タドリツキタイ…
カエルノ…
(やめてください!電は…電はそんな事知らないのです!)
電が心の底でそう叫んだ時だった。
コワレテシマエッ!
(!!)
先程までの声とは違う。怒りに満ちた声が響いてきた。更にその怒りに満ちた言葉は続く。
ツブレロッ!
ケシトベッ!
キエテシマエッ!
(いや!電は…そんなことしないのです!)
電の心が叫んだ。その時だった―――
今までいた白い場所が、一瞬で真っ赤に染まり、そこから伸びてきた真っ白な手が電の身体を掴むとその真っ赤に染まった場所の中へと引き込まれていったのだ。電は慌ててそこから抜け出そうともがくが、身体はみるみる吸い込まれていった。
(いや!電は…電はっ!)
その間も、電の耳には次々と先程の声が聞こえていた。そして、身体が半分まで沈んでしまった時、それまで聞こえてきていた別々の言葉が、一斉に同じ言葉へと変わった。
コワセ
(え、なに?)
そしてその「コワセ」という声は次第に連呼へと変わっていった。最初はゆっくりと間隔が開いていたが、電の首が飲み込まれる頃には間隔のない勢いだった。
コワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセ
(いやぁー!!)
ガシャーン!!
その音で時雨と夕立は目を覚ました。突然部屋の中に響き渡った衝撃音に2人は飛び起き、部屋を見渡した。そして目の前に見つけた。
「「電?」ちゃん?」
そこには真っ白な髪を下ろして猫背で立った電がいた。時雨は慌てて電気を付け、電に駆け寄って両腕を掴んだ。
「電、どうしたんだい?」
「………」
しかし電は、何も喋ることなく真っ赤に染まり青白い炎を放った両目で時雨を見据えた。その時、夕立が部屋の状態を見て驚いた。
「何でこんなに散らかってるっぽい!?」
「え?」
時雨が電の顔から眼を離し、部屋を見渡した。部屋の中は、自分たちの荷物や部屋の備品が散らかっていた。
「電!なんでこんなにも部屋を―――」
「……コワス」
「え――――うっ!」
時雨が電に尋ねようとした瞬間、電は時雨を突き飛ばした。時雨は壁に叩きつけられた。
「時雨!」
夕立が時雨を呼ぶと時雨は弱々しい声で、大丈夫だよ。と答えた。するとその時、電の眼がいつもの色に戻った。そして、慌てて室内を見渡した電。
「な、なに…これ……電、は……電が……これ、は……こんな…」
電はそう言うと、頭を両手で抱え込むと、絶叫した。
「ああああああああ!!!」
そして、そのまま意識を失って倒れてしまった。
続く