艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
翌朝、時雨はすぐに深海をホテルに呼び夜中に起きた事を伝えた。電は気を失って以来未だに目を覚ましておらず、3人に見守られながらベットで眠っていた。すると夕立が深海に尋ねた。
「深海提督さん。電ちゃんは一体どうしちゃったのかな?」
「……」
深海は少しだけ考えて口を開いた。
「恐らく、前に植え付けられた深海細胞が本性を現し始めたんだろう。時雨の話を聞く限り、電の行動は深海細胞…もとい、かつての深海棲艦に見られた基本的な行動と同じだ」
「それって……」
「ああ…電の人格が消えてしまうのも、そう遠くないだろうな」
「深海提督さんが電ちゃんに渡した薬でも駄目っぽい?」
「あれは進行を遅らせるだけだ。完治は出来ない……ん?」
その時、深海の頭の中で何かが引っかかった。深海は右手を顎に当ててしばらく思考を巡らせた。
「深海細胞の進行……あの研究施設……母さんの証言……ブツブツ………」
「どうしたの深海提督?」
「………なるほどな。何で電がこうなったのかわかった」
「ほ、ホント!」
「ああ。長い話になるかもしれないが聞いてくれ」
「わかったよ」「ぽい!」
深海は語りだした。
「電がこうなったのはやはりあの吹雪のせいだろうな。恐らく奴はそこで電に深海細胞を更に植え付けたんだろう。俺の薬を飲んでいたのなら、容姿は変わってしまっても1年は人格を維持出来るからな。体内の深海細胞が増えれば、その分進行も早まる」
「でも電が吹雪に鷲掴みされた時、深海提督がすぐに攻撃して防いだ筈だし…僕たちが見つけた時に電に外傷なんて無かった…」
「俺たちが着く前に注射か何かでやったんだろう。それに母さんが言ってた。あの施設には私から採られた深海細胞が山ほど保管されてる。ってな。母さんは、深海棲艦の研究の為に旧海軍の連中によって捕獲されたんだろう。それがまわり回って、あの施設に連れていかれたんだろうな」
「……つまり、どういう事っぽい?」
長々説明を聞いていた夕立の頭上には幾つもの「?」が浮かんでいた。深海は夕立の表情から思考を読み取って答えた。
「電がこうなったのは、吹雪のせいだってことだ。難しい説明を省けばな」
「把握したっぽい!」
深海は続いて時雨に目を向けたが、時雨はハッキリと理解を示すように頷いていた。すると深海は2人に尋ねた。
「それでどうするんだ?決勝戦は」
「……電ちゃんがこの状況じゃあ…」
「うん。棄権した方が良いと、思う」
「………そうか」
そして室内に静寂が訪れた時だった。
「……時雨さん…夕立さん」
「「!?」」
ベットで眠っていた電が薄く目を開け、時雨と夕立の名を呼んだ。2人はハッとして電の傍に駆け寄り声を掛けた。
「電!気が付いたんだね!」
「大丈夫っぽい!?お腹空いてないっぽい!?」
「大丈夫…なのです」
電はゆっくりと体を起こした。
「時雨さん、夕立さん…」
「何だい?」
そして時雨と夕立に向け、言った。
決勝戦。電は…戦うのです
「……え?」
「電、こんな事で諦めたくないのです。時雨さんと夕立さんと電とで掴んだ日本一への切符、放したくはないのです!」
「でも電、また君が意識を失って暴れてしまったらどうするんだい!」
「そうだよ!安静にしてた方がいいっぽい―――」
「安静にしていたら治るのですか?」
「「っ!?」」
電の放った言葉に時雨と夕立の2人は絶句した。電は淡々と続けた。
「電の今の身体は、安静にしてても治らないのです。それはもう、今日までの日々で分かったのです……薬は飲んでいても、髪も肌もどんどん白くなっていくのです」
「電ちゃん……」
「そしてきっと、もうそう遠くない日に…電は……電は、電じゃなくなってしまう。ならせめて、電は時雨さんと夕立さんと優勝して日本一になりたいのです!」
「………」
「それに…電は吹雪さんを止めなくちゃ駄目なのです!」
「…電、それは……」
「吹雪さんがあんな事になっちゃったのは、電のせいなのです!なら、電が止めないと駄目なのです!」
「………電」
「「っ!!」」
淡々と続けていた電の言葉を深海が遮った。その事に驚く時雨と夕立だったが、深海は気にすることなく電に尋ねた。
「それは、お前の心が決めたことなのか?」
「………」
電は深海の問いにしばらく口をつぐんでいたが、やがて真剣な表情で、はい。と答えた。それを聞いた深海はただ一言、わかった。と言った。そして―――
「決勝戦には俺が同行しよう」
と言った。
「「「……え?」」」
突然の深海の言葉に、3人はただ驚くことしか出来なかった。
そして電たちは、国立ガンプラバトル競技場の中心点へたどり着いた。つい数日前までは、「ただ楽しい」という感情のみで埋めつかされていたその空間。しかし、今の電たちにその感情は無かった。遠くない未来に消えてしまうかもしれない電。そして吹雪によって消えるかもしれないガンプラバトル。ここまで歩いてきた道で知った事実が、3人の肩に重くのしかかる。そして、バトル台を挟んで対峙するのは最強と言ってもいい敵「レ級」。3人は、レ級の放つ殺意に満ちた闘志を受けながらも、それぞれの手に握られた自分の愛機を握りしめた。
「いよいよ、だね……」
「Gun-pla Battle combat mode Stand up!Mode damage level set to A.」
システムが起動し、ダメージレベルが設定される。
「勝っても負けても、これが最後なのです……」
「Please set your GP base. Begining Plavsky particle dispersal.Field 01 space.」
3人がそれぞれGPベースをセットし、プラフスキー粒子が舞い上がる。そして、最後のフィールドである宇宙が形成された。
「でも、電ちゃんの為にも負けられないっぽい!」
「夕立さん……」
「Please set year Gun-pla.」
システムがガンプラのセットを指示した。レ級たちは早々にセットを済ませたが、電たちはすぐにはセットをしなかった。
「そうだね。僕たち3人で掴むんだ……」
「時雨さん……」
そして、しびれを切らしたのかバトル台の向こう側に立つレ級の殺意を纏った氷河のように冷たい視線が電を捉えた。それを見て肩を震わせる電。しかし、ここで諦めるわけにはいかない。残り少ない自分に力を貸してくれた時雨と夕立。2人の為にも勝つ。そう先程誓った。そして電はイナヅマガンダムⅡをセットした。それに続いて時雨はガンダムアサルトレインバレットを、夕立はユニコーンガンダムナイトメアパーティーをセットする。システムが機体を読み込み、各機のメインカメラが発光し、出現した操縦桿を握りしめる3人。
「Battle Start!」
5機のガンプラがそれぞれ発進体制に入った。
「駆逐棲姫。
「必ず貴様を倒して、俺が本物だと証明してやる……レ級。ガンダムレギュルス、出る!」
先に飛び立ったのはレ級たちだった。そしてその直後、電が叫んだ。
必ず、勝ちましょう!!
「うんっ!」「ぽいっ!」
電たちは発進の時を迎えた。
「時雨。ガンダムアサルトレインバレット、行くよっ!!」
最初に時雨のガンダムアサルトレインバレットが飛び立ち―――
「夕立。ユニコーンガンダムナイトメアパーティー、出撃よっ!!」
続いて夕立のユニコーンガンダムナイトメアパーティーが飛び立った。そして――――
(時雨さんと夕立さんには感謝してもし切れないのです。だから……ここで全部恩返しするのです!!)
電。イナヅマガンダムⅡ、出撃ですっ!!
イナヅマガンダムⅡが飛び立ち、決勝戦は始まった。
続く