艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP73 駆逐棲姫

会場へ降り立った深海は、周りの目を気にすることなく電たちの元へ向かった。幸いにも戦闘は一時膠着していた為、深海には少しだけの猶予があった。深海はその間に、電の元に辿り着き頭を押さえる電の肩を叩き、声を掛けた。

「電、大丈夫か!」

「……て」

「?」

「やめて!電…は、壊したく…ないのです!」

「!?」

電の悲痛な叫びから、深海は電に再び深海棲艦の精神に乗っ取られかけていると悟った。深海は電の片手が握っていた操縦桿を操作し、その場にいる時雨と夕立に通信を開いた。

「電、どうしたんだい?」

「時雨か!今すぐバトルを降参しろ!」

「み、深海提督!?どうしてそこに!?」

「いいから早く降参を宣言しろ!このままだと、電がまた深海棲艦になるぞ!」

「「!!」」

深海のその言葉を聞き、驚く時雨と夕立。時雨はすぐさま操縦桿を操作し、降参を宣言した。会場からは突然の深海の乱入と、暁学園の降参で一気に冷め切った。しかし、時雨と夕立そして深海はそのことを気にする素振りも見せず淡々と動いた。

「電、少し我慢しろよ」

そう言った深海は電の首の裏筋を、少し強めの力で叩いた。電は、うっ!と言ってそのまま意識を手離し、深海の腕に倒れた。その間に時雨と夕立は3人のGPベースとガンプラを回収し終え、深海の元へ来た。

「深海提督さん、電ちゃんは!?」

「少し気絶させた。しばらくは起きないだろうから、お前たちは電を連れてホテルに戻れ。俺は残ってここの連中に言い訳してくる」

「わ、わかったよ深海提督!」

「あと、ホテルに着いたら荷物を纏めておけ。終わったら連絡をくれ、迎えに行く」

「ぽ、ぽい!」

「行くよ夕立!」

深海はそう言って電を時雨と夕立に預け、駆け付けてきた係員の元へ向かった。深海はその係員に淡々と今起きた内容を話した。しかし、この状況下で唯一1人だけ納得がいかない者がいた。

「おい貴様!」

レ級だ。

「……レ級か。なんだ?」

「貴様、何故オレと電の戦いを邪魔した!!」

係員と話していた深海に向け声を荒げながら質問を投げかけるレ級。しかし深海はレ級の元へ向かうと冷静に答えた。

「電が深海棲艦になりかけたからだ」

「……なに?」

「精神をコントロール出来るお前ならわかるだろ。もしあのままバトルを続けていたら、間違いなくこの会場や観客に被害が出ていた。厄介な面倒事を増やしたくないんでな…悪いが邪魔させてもらった」

「………」

レ級は黙り込み、そのままその場を後にした。深海はそのレ級の姿を見たまま、係員と話を続けた。

それからしばらくが経ち、係員との話を終えた深海は改めて会場を見渡した。すると、深海の目に1人の少女が入り込んだ。バトル台の前に俯いたまま立ち尽くしていた駆逐棲姫だ。深海はしばらく駆逐棲姫を見ていたが、やがてゆっくりと彼女の元へと歩いていった。

「どうした駆逐棲姫」

「っ!!」

駆逐棲姫はハッとして深海の方を向いた。強張った表情で深海を見つめる駆逐棲姫。

「お前は、黒野深海!」

「おいおい。いきなり俺に殺意を向けるな…ま、吹雪の命令なんだろうからしょうがないんだろうが」

「………」

「それよりお前、どうしたんだ?さっき俯いてただろ」

「!?」

「さしずめ、時雨と夕立に攻撃する直前にお前の動きが止まったことが関係しているんじゃないか?俺は見ていたぞ」

「………」

「……その答えを知りたいのなら、俺に付いてこい。まあ、強制はしないがな」

そう言って深海はその場を後にした。そして、そのしばらく後に駆逐棲姫は深海を追って会場を出て行った。

 

その後、荷物をまとめた時雨たちの前に深海の車が現れた。時雨たちは先に電を乗せると、荷物を持って車に乗り込んだ。

「よし、行くぞ」

全員が乗ったことを確認した深海は車を発進させた。すると時雨は、乗っていたどこかで見たような少女を見つけた。

「あれ?君って確かレ級と一緒にいた…」

「………」

時雨はその少女、駆逐棲姫に尋ねた。しかし駆逐棲姫は黙って時雨を見つめているだけだった。すると深海が運転しながら口を開いた。

「ああ。レ級の隣にいた駆逐棲姫。2.12ガンダムのファイターだ」

「2.12ガンダムのファイター!?」

「じゃ、じゃあ!あの時夕立の事、姉さん。って言ったのって!」

「………」

駆逐棲姫は黙って頷いた。しかし、頷くだけでそれ以上は口を開かなかった。そしてしばらく、車内は静まり返っていたがやがて深海が再び口を開いた。

「黙っていたらわからないだろ、駆逐棲姫。なぜ、お前がここにいるのか時雨と夕立に教えてやれ」

「………」

駆逐棲姫はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「…わ、私は…あ、あの時こぼした言葉の意味を知る為に、ここにいる。それ以上でも、それ以下でもない」

「「………」」

時雨と夕立は黙って駆逐棲姫の言葉を聞いていた。車内は再び静まり返ったが、突然その静寂は打ち消された。

「もー!いつまで暗いお話してるの!」

「わっ!!」「ぽい!?」

突然声を張り上げて喋り出した者がいた。

「お、おばあちゃん、急に大声出さないでよ!」

「あ!ごめんなさい…びっくりさせて秋雨ちゃん」

「おばあちゃん。それ、皆に言うべき」

「あはは……ご、ごめんなさいみんな」

「雨葉まで驚いちゃったよ…」

空母水鬼だ。元々暗い話が苦手な性格をしている彼女にとって、こんな話は出来れば聞きたくはない内容だったのでつい大声をあげてしまったのだ。

「く、空母水鬼…」

「駆逐棲姫ちゃん。私は詳しい事情は分からないけど、暗いお話はそこまでよ」

「え?」

「そ・れ・よ・り!こんなに人数がいるんだもの、皆でババ抜きして楽しみましょう!」

「………!!」

 

 

 

え?

 

 

 

結果、やるやる!!と表情で告げた白以外全員が困惑しながら車内でババ抜き(ほぼ強制参加)が始まった。その会話を聞いていた深海は苦笑した小声で言った。

「こりゃしばらく終わらないな…」

そしてその言葉を聞いた助手席の時雨が言った。

「でも、元気になってくれて嬉しいそうだね。提督」

「………ああっ」

深海は少しだけニッと笑ってみせた。

 

続く

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