艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP81 姉妹の真実

そして響は語り始めた。

「全ての始まりは終戦の前日……」

 

 

 

終戦の前日

遠征から返ってきた私の表情はとても暗かった。いや「私たち」と言った方がいいだろう。暁と雷はの2人は、低く抉付きながら涙で溢れかえった目を必死に拭っていた。そして暁が口を開いた。

「何で…何でぇ……」

暁の言葉に釣られてか雷が声を上げる。

「ウッウウウ……」

「………電」

遠征の帰り道――――

 

 

 

 

電は轟沈した

 

 

 

 

きっかけは唐突に現れた。潜水艦からの魚雷だった。一瞬の出来事、突然目の前に上がった水柱と爆煙が上がり煙に呑まれていく電。私の声は爆音にかき消され、暁と雷は動揺していた。黒煙が晴れるとそこに―――

 

 

電の姿は無かった

 

 

「電…電ぁ……」

暁が泣きながら電の名前を呼んでいた。通商破壊。私たちがまだ艦だった頃から存在していた物資輸送を狙った作戦。私たちが所属するこの鎮守府でも、何度も起こっている現象で被害に遭った艦娘は何人もいた。しかし、今までに轟沈した艦娘はいなかった。それ故の油断だった。

「暁、雷…」

「響?」

「先に部屋に帰ってていいよ。報告は…私がしてくるから…」

暁と雷は、うん。と低い声でそう言うと、寮へ向かって歩いていった。私はそれを見送ると、鎮守府の本庁舎へ歩いていった。

 

司令官の執務室に辿り着いた私は、少し言葉を詰まらせながらも遠征の結果を報告した。勿論、電が轟沈してしまった事も報告した。軍帽を目深に冠った司令官は一言、残念だ。と言って黙り込んでしまった。執務室がしばらく静寂に包まれていた。するとやがて、司令官が言った。

「響…しばらくは2人の傍にいてやれ。遠征の日程は、こちらで変えておくから」

「うん。わかったよ司令官………スパシーバ」

そう言って私は執務室を出た。そしてそのままの足で寮の自室に戻った。

 

室内は完全にどんよりした空気になっていた。2つの二段ベットに挟まれた畳3畳分のスペースには涙を拭いながら喘ぎ声をあげる暁と雷がいた。私はその光景を見て、しばらく動くことが出来なかった。しかし、いつまでも扉を開けたまま立ち尽くしているわけにもいかず、扉を閉め2人の元に歩み寄った。すると、俯いたまま暁が涙声で聞いてきた。

「司令官は……なんて、言ってた?」

「………」

私はすぐに答えを返せなかった。勿論嘘を言うつもりはない。でも、どうしてもすぐに口を開けることが出来なかった。だが、言わない訳にはいかなかった。

「残念だ。って言ってたよ……司令官も、凄く悲しいそうな表情をしていた」

「………」

そして暁は口を閉じてしまった。だが、私は言葉を続けた。

「しばらく…遠征は別の部隊がやってくれるって……」

しかし返答の言葉は帰ってこない。ただただ、2人の涙声が室内に響いてるだけだった。私は静かに暁と雷の間に座った。すると、雷が私に飛びついてきた。

「うわあぁぁ!なんで!なんで電なのよ!」

「雷……」

飛びついてきた雷は大声で叫んだ。

「あの時…1番資源を持ってたのはっ…雷だったのにっ!なんで…なんで電がっ!」

すると、雷の叫びに釣られて今度は暁が飛びついて泣き始めた。

「ううっ…旗艦は…暁だった!暁が1番っ…狙われる筈なのにぃ…うわああぁぁぁぁん!」

「暁……」

私は2人の頭を優しく撫でていた。でも……

「……うっ…うううっ……」

私も涙を堪えられることが、遂にできなかった。

「電ぁ……」

まただ。また私は、電を守ることが出来なかった。彼の大戦の時もそうだった。最後に残されたのは私と電だった。でも結局、本当の最後の時に残されたのは私だけだった。その事を思ってしまうと、涙が止まる筈はなかった。

「うわあああぁぁぁぁ……」

私たちはその日、ずっと泣き続けていた。

 

そして翌日の昼。食堂で私たちは昼食を食べていた。暁と雷の表情は相変わらず暗いままだったが何人もの仲間が私たちに気を使って話しかけてきてくれていつもの本調子が戻ってくるのも時間の問題だろうと思える程にはなっていた。私はそのことが嬉しかった。そして正午過ぎ、突然食堂に司令官が慌てて駆け込んできた。声を掛けようとした私だったが、司令官は足早に食堂中央にあるテレビを付けた。私たちは訳もわからずテレビを見た。そしてそこから流れてきたのは……

 

終戦を告げる深海司令官の声明だった

 

「………え」

私は…いや、その場に居た全員が同じように困惑していただろう。食堂は静まり返り、ただただ、深海司令官の声明が淡々と流れているだけだった。

結局、その日出撃していた艦隊は緊急帰投となり、司令官は1日中情報収集に追われていた。私たちは何も出来ず1日を過ごすことになり、そして翌日、全国の鎮守府に向け「艦隊の出撃停止と工廠施設の使用停止」が司令部から言い渡された。

「そん……な」

その話を司令官の口から聞いた時、私は思わずそう言ったのを今でも覚えている。戦い続けていれば、いずれまた何処かで電と会える。心の底で小さく願っていた私に突き付けられた現実はあまりにも残酷に思えて仕方なかった。そして司令官は、戦争終結に伴い艦娘を辞めてもいいと提示した。艦娘として鎮守府に残るか、人間として新しい人生を歩むか。答えはすぐに出た。

(もうここに居ても、電には会えない。会うことが出来ないのなら、私は……)

 

 

艦娘を辞める

 

 

心の中でそう決めた。そして部屋に戻った私は、暁と雷にその事を伝えた。私は止められると思っていた。2人は電との思い出がたくさんあるこの鎮守府から離れないと思っていた。でも違った。

「響が艦娘を辞めるなら、私も艦娘を辞めるわ!」

「雷…でも――」

「今1番辛いのは響でしょ?」

「っ!」

「私知ってるわ…電が居なくなったあの日から、響は毎晩夜中に部屋を出て行って海を眺めてるって…」

「何で…それを」

雷の言う通りだ。私は電が轟沈してしまった日からこっち、夜中に起きては港から海を眺めていたのだ。ひょっとしたら電は沈んでいない。だからもしかしたら帰ってくるんじゃないのか。と、馬鹿馬鹿しいにも程がある事を繰り返していた。我ながら、かなり恥ずかしいと思っていたが止めることが出来なかった。すると雷は、驚いていた私をギュッと抱きしめてきた。

「そんな響を1人には出来ないもん…」

「い、雷…」

「暁も同じこと思っているのよ!」

「え?」

「響は問題事をいつも1人で解決しようとするんだから、たまにはの一人前のレディである暁の事を頼ってほしいわ!」

「暁…」

そう言い放った暁の目はいつも以上に真剣な目だった。そして雷が言う。

「私たちが初めて4人揃った時、約束したじゃない!姉妹の誰かが、辛い時、悲しい時は、お互いを支え合うって!」

「あ………」

雷の言葉を聞いた時、私はハッとした。初めて4人が揃った時にした約束。あの日、今いるこの場所で、私たち4人で決めた大切な約束。

「だから、響が辛いときは私が支えてあげる!」

「一人前のレディである暁が、妹が辛そうにしてるのを見て見ぬふりする訳ないわ!」

「暁……雷……」

私はそれを忘れて1人で電の喪失を背負い込もうとしていた。2人の気も知らないで。でも、2人が思い出させてくれた。そう思った瞬間、私の目からは涙が溢れていた。

 

 

 

ありがとう

 

 

 

私は涙を流しながら、2人に笑顔で答えた。

 

それからしばらくして、私たちは鎮守府を出た。司令官は最後まで私たちの事を心配してくれていたが、それでも私たちの決意は変わらなかった。司令官はこれから住む家までも用意してくれたし、その他もろもろの手続きまでしてくれた。流石に悪いと思ったが、今回も甘えさせてもらうことにした。そして、新しい家の前で私たちは気持ちを新たにして新生活を始めた。

 

 

 

そして5年後…雨が降っていたあの日

 

 

 

私は夕食の買い出しの為に近くのスーパーに行っていた。そして買い物を済ませた私は傘をさして家を向かっていた。そして、家へと続く最後の曲がり角を曲がった時だった。

「ん?」

住宅街の道の真ん中に何かが倒れていた。私はゆっくりとその何かに近づいて行った。そして気づいた。

「人?」

そこに倒れていたのは長い茶髪の、私と同じくらいの背の人間だった。今にも衰弱死してしまうのではと思える程にか細い怪我だらけの体をボロボロの布1枚が隠していて、私はしばらくその人間を眺めていた。そして何を思ったのか、私は前髪で隠れていたその人間の顔を見た。そして私は―――

 

電!?

 

と、驚愕の声をあげたのだった。私の目に映っていたその顔はまさしく電だった。私は電の顔を見てしばらく固まってしまった。しかし、そのすぐ後に正気に戻り私は居ても立っても

居られず、電を抱えて家に向かった。気を失っていた電の身体はとても重かったが、私はそんなことを気にせず、走った。家に辿り着き、玄関の扉を思い切り開け玄関に転がり込む。その時になった大きな音に驚いて奥から暁と雷が飛び出してきた。

「ひ、響!どうしたのよ!」

「いきなり大きな音がしてビックリしたじゃなぃ……って、どうしたの響?その人」

電を担いでいた私を見て拍子抜けしている暁に顔を向け、私は言った。

「……電」

「「え?」」

「電がっ…家の近くで倒れていたんだ!」

「「!?」」

私は背負っていた電をゆっくりと床に寝かせた。そして気を失ったその少女の顔を見た暁と雷は絶句したまま、電の顔を見下ろしていた。

「「電……」」

そして2人が小さく呟いた。私もしばらく、その光景を眺めているしか出来なかった。

 

結局、電はそのまま1週間目を覚まさなかったが、私が電を助けてから8日目の朝、電はその目を開けた。金色のその目が、私たちを捉えた。

「こ、ここはぁ……」

「「「電!」」」

「……あなた、たちは―――ウッ!」

体をゆっくりと起こした電は唐突に頭を抑え込んだ。

「電っ!!」

「うっ…うあぁあ……」

「し、しっかりしてよ電!」

(いったい、どうしたというんだ!?)

そこからしばらく電は呻き声をあげながら頭を抑え込んでいたが、やがてハッとしたようになったかと思うと――――

「あれ?暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん。なんでそんなに慌ててるのです?」

「「え?」」(え?)

今まで苦しそうだったのが嘘のように元気を取り戻し、話し始めたのだ。

「も、もしかして電…お寝坊さんしちゃったのです!?はわわ!た、大変なのです!!」

「い、電?」

「早く起きないと―――あ、あれ?身体が旨く動かせないよ」

「………」

私はとてもその光景が変に思えて仕方なかった。恐らくそれは暁たちも同じだろう。

「動かないのも無理ないよ。昨日階段から落っこちて、気絶していたんだから」

私は思わずそんな嘘を言った。暁と雷が驚愕した表情で私の方を見ていた。私は2人に向かって小さく首を振った。すると2人は私の意思をくみ取ってくれたのか、話を合わせてくれた。

「そ、そうよ!あれだけ階段はゆっくり上らないと駄目って言ったのに!」

「まったく!電は本当にドジなんだから…心配したのよ!」

「ご、ごめんなさいなのです……」

「………」

私は黙ってその会話を聞いていた。明らかな嘘に、何の違和感も感じずに会話をする電。そして私は思ってしまった。

 

きっと、この少女は……電じゃない

 

でも、どうしてだろうか……

 

 

また電に出会えて、嬉しがっている

 

 

そんな自分がいる。と感じずにはいられなかった。

 

 

 

続く

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