艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
同時刻。深海の部屋である旧執務室で空母水鬼はこれまでにない退屈な時間を過ごしていた。大好きな息子である深海はいないし、戦時中の逃亡生活時の様な緊迫感もない。ましてや、自身の夫がいるわけでもない。空母水鬼は退屈でしかなかった。
「ああー!退屈で退屈で仕方ない!こうなったら、深海の鎮守府の探検に出かけてこの退屈を解消するんだから!」
そう言って空母水鬼は子どもの様に部屋を出て行った。
「へー!ここが旧艦娘寮かー!」
空母水鬼は旧艦娘寮へ足を踏み入れていた。もっとも、今この寮に寝泊まりしている者はほとんど体育館へ出向いている為、廊下はとても静かだった。
「あの人と一緒に住んでた鎮守府の艦娘寮とよく似てるなー!………ん?」
廊下を歩いていた空母水鬼が廊下の先に開ききった扉と涼風の姿を目撃した。
「早く行こうよ山風の姉貴~いつまでも、ここに居ても仕方ないと思うけど…」
「嫌だよ!どうせ行ってもアタシ、誰にも勝てないもん!負けるのは嫌っ!そしたらみんなきっと―――」
「こんにちはー!」
空気を読めない空母水鬼はニッコリとした笑顔を見せ2人に話しかけた。
「うわっ!!く、空母水鬼じゃねぇか!」
「ヒッ!」
「あ!ごめんなさい!驚かせちゃったよね」
空母水鬼は慌てて山風と涼風に謝った。だが、目の前に突然現れた空母水鬼におびえて山風は余計部屋の奥へ引っ込んでしまった。涼風は、あちゃー。と頭を抱えたがしかし、空母水鬼はゆっくりと歩いて部屋の中へと足を踏み入れてしまった。涼風が慌てて制止しようとしたが、既に空母水鬼は部屋に入って山風の元へ歩いていってしまっていた。
「こ、来ないでよ!」
山風は脅えながら手をブンブンと振って、空母水鬼を拒絶しようとしたが相変わらず空母水鬼は気にする素振りを見せず山風に質問をした。
「ねぇねぇ!あなたって、ガンプラバトル?してるの?」
「…え?」
突然突拍子のない事をハイテンションで聞かれた山風は驚くあまり空母水鬼の顔をガン見してしまった。空母水鬼は笑顔のまま話を続ける。
「何か深海がね、今凄くハマってる遊びみたいなんだけど…教えてくれないの!」
「え?深海…?」
「だから退屈で仕方なくって鎮守府を探検してたら、あなたたちを見つけたって訳!」
「えっと…あ、えっと…」
「もしそのガンプラバトル?しているなら私に教えてくれないかな?」
「あ、あぁあっ……」
一方的に話を進められた山風の頭は混乱しかかっていた。気が付けば山風の目には涙が浮かび上がっていた。それに気づいた空母水鬼はまたしても突拍子な行動を取った。
「あっごめんごめん!いきなりペラペラ喋って怖がらされちゃったよね!ほら、泣かないで泣かないで!」
空母水鬼は泣き顔の山風の頭を優しく撫でると、続けてギュッと抱きしめた。山風は空母水鬼の抱き締めに目をパチクリさせ動揺してしまっていた。
「ごめんね…本当にごめんね。私、昔からどうにも空気読めなくって…お願いだから泣かないで…」
「…あぁぁ…あうう……」
空母水鬼はそれから山風が涙を流さなくなるまで優しく頭を撫でながら抱き締めていた。それからしばらくして山風は落ち着きを取り戻した
(や、山風の姉貴が…泣き止んだ!)
「良かった…泣き止んでくれて私嬉しいよ!」
「……うん。あなた…優しいんだね」
「悪いのは私だもん…あ!自己紹介忘れてたね!私は空母水鬼!気軽に水鬼って呼んでほしいな!」
「あ、え、えっと…アタシ、山風…よろ、よろしく……す、水鬼」
「うん!よろしくね山風ちゃん!」
空母水鬼は山風に向かって笑顔で応えた。すると空母水鬼は、あ!と何かを思い出した。
「そうそう!さっきの続きなんだけど、山風ちゃんはガンプラバトルしてるの?」
「う、うん……」
「そーなんだ!じゃあ、私にやり方教えてほしいな!」
「っ!」
空母水鬼の言葉に山風が肩をビクつかせた。それに気づいているのか気づいていないのか、空母水鬼は山風に言った。
「深海ばっかり楽しそうなことしてて、ちょっとずるいって思うんだよね私!」
「……楽しそうなこと?」
「うん!山風ちゃんはそう思わない?」
「………アタシは―――」
「そうだよ山風の姉貴!ガンプラバトルは楽しそうじゃん!あたい、久しぶりに山風の姉貴のガンプラバトル見たいな!」
そして、空母水鬼の言葉に便乗して涼風が話を盛り上げる。山風はキラキラとした目で自分を見つめる空母水鬼から目を逸らすと小さく呟いた。
「でもあなたも、アタシの操縦見たらきっと…「いらない」って言うでしょ」
「なんでぇ?」
空母水鬼の子どもの様な無邪気な言葉を聞いた山風は逆に驚いて、え?と思わず聞き返してしまった。すると空母水鬼は答えた。
「だって私、ガンプラ?がどんなものなのか、それ自体知らないんだもん!だから山風ちゃんの操縦が上手いのか下手なのかわかんないし!それに―――」
山風が2回目の、え?を言った時空母水鬼は言った。
「頑張ってる人を見てそんなことをいう人がいるなら、私がコテンパンにしてあげるからさ!こう見えて、体術には少し自信があるんだよ、私」
「そ、そうなの?」
「うん、約束する!だから、山風ちゃん!私にガンプラバトル、教えてくれないかな!」
「っ!」
その時山風は気づいた。
そしてその時、山風の心の中で何かが動きだした音がした。
「わかった、よ……じゃあ、ちょっとだけ…だから、ね?」
「ホント!ありがとう山風ちゃん!じゃあ、早く行こう!」
「わっ!」
そう言って空母水鬼は山風の手を握りしめると、部屋を飛び出し体育館へと向かった。その光景を涼風は嬉しそうに眺めていた。
そして体育館へと到着した山風と空母水鬼は早速散策を始めた。と言っても、山風は完全に空母水鬼に弄ばれている感じとなっていた。そして空母水鬼は、ガンプラショップのエリアでガンプラの箱を発見した。
「ねえねえ、山風ちゃん!この箱がガンプラって言うのっ?」
「ちょっと、違う…この箱の中にあるパーツを組み上げて出来上がったのが、ガンプラ」
「へぇー!じゃあガンプラ持ってない私は1から作らないといけないんだね!」
「時間、掛かっちゃうと思う……」
「そ、そっか……うーん、何かいい案ないかな………ん?あ、深海っ!」
すると空母水鬼は、遠くで電たちと話していた深海を見つけた。深海は、空母水鬼の声に反応して後ろを振り向いた。すると空母水鬼は、右手を大きく掲げてブンブンと振った。深海は心の中で小さく溜息を吐くと、ゆっくり空母水鬼の方へと歩いていった。
「母さん…こんな所で何してるんだよ?」
「深海が私にガンプラバトル教えてくれないから来たの!今から山風ちゃんにガンプラバトル教えてもらうんだよ。深海教えてくれないし…」
「悪かったな……というか、母さんガンプラ持ってないのにどうするんだよ?」
「だ・か・ら、深海のガンプラ貸して!」
深海は空母水鬼の子供っぷりに呆れながら、そんな事だろうと思ったよ。と呟くしかなかった。
「けど、俺のガンプラはかなりピーキーだ。少しだけ時間をくれ、母さんが動かせるように少しいじってくるから……」
「わかったよ深海!じゃあ、急いでやってきて!」
「借り物だって自覚ぐらいしてくれよ……」
そう言って深海は製作ブースの方へと歩いていった。
それから20分くらいたって深海はブースから戻ってきた。深海の姿を見つけた空母水鬼は、山風を連れて深海に駆け寄った。
「もう!深海遅すぎだよ!」
「そんなこと言うなら貸さないぞ?」
「ごめんってば!それで、どんなのが出来たのっ!」
やれやれ、と深海は腰裏のポシェットからバックパックのウイングと腰のビーム砲が取り外されたヴァリアブルライフルも1丁のみ装備したシンプルな形状となったガンダムアウェリアスを取り出した。
「わあぁ~!なんかとってもシンプルだね!」
「武装が多すぎても初めてやる母さんじゃ重りになるからな…前は空母だったとは言え、艤装は10年以上使ってないんだろ?」
「さっすが深海!お母さんのことわかってるね!後でいい子いい子してあげる!」
「やめろ、恥ずかしい」
「水鬼って、深海提督のお母さんなの?」
「うん!さっき言わなかったけど、そうなんだ!」
「へぇー」
山風は少しだけ興味を示したが、それだけに留まった。
「そうだ深海!このガンプラの名前って何なの!何かあるんでしょ?」
「あ~そうだな……シンプルにしたガンダムアウェリアスだから………ガンダムアリアス……か?」
「おおー!なんかカッコよさそうな名前!これ、私が貰っても―――」
「ぶん殴るぞ?」
「ごめんなさい」
「深海提督と水鬼……楽しそう…だね」
「勿論だよ!何十年ぶりの再会だもん!ね、深海!」
「……まあ、な…そんなことより、ガンプラバトルするんだろ母さん?ついて来いよ」
「うん!了解了解!ほら行こっ山風ちゃん!」
「う、うん…」
そして深海に連れられて、空母水鬼と山風はCPU戦の台へ案内された。残念ながら、涼風はバトル開始までに間に合わず、空母水鬼と山風の2人での出撃となった。
「ミッションの設定はこっちでしておいた。まあ、楽しんできなよ母さん」
「ありがとね深海!」
「起動するぞ」
深海がシステムを起動し、音声が流れる。
「Gun-pla Battle mission mode Stand up!Mode damage level set to B.」
「わっ!ビックリしたぁ…」
「Please set your GP base」
「えっと…このGPベース?をここにセットして……」
空母水鬼は深海から渡されたGPベースをセットした。
「Begining Plavsky particle dispersal.Field 02 Canyon」
「わぁ~!凄い…綺麗な光…」
台から大量のプラフスキー粒子が舞い上がり、渓谷のフィールドを形成した。そして空母水鬼はそのプラフスキー粒子の光に思わず魅入られてしまっていた。今までの人生の中で、これほどまでに綺麗な物は見たことがなかったから、余計だった。
「Please set yuar Gun-pla」
そして、山風と空母水鬼はそれぞれのガンプラをセットした。システムがガンプラを読み取り、それぞれのメインカメラが発光し操縦桿が出現する。
「えっと、これがガンプラを動かす為の……何だろ?玉?…まっ、いっか!」
「Battel start!」
空母水鬼のガンプラと、山風のガンプラがそれぞれ発進体制に入った。
「ガンダムアリアス、はっしーん!」
(全く…子どもじゃないんだから、少しは自覚してくれよ)
そして山風はグッと操縦桿を握った。
「山風。ホロルドロッソ・イージスガンダム、行くよ」
山風のガンプラ、鋭利な肩アーマーと両前腕と両爪先に長い爪を持つ4本のアンテナと頭頂部の大きく上へ伸びたセンサーが特徴の深紅のイージスガンダム「ホロルドロッソ・イージスガンダム」は荒野へ飛び立った。
続く