艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP88 山風、覚醒

それからしばらく、空母水鬼と山風の2人はとても楽しそうにミッションモードをプレイしていた。ミッションをクリアするごとに腕を上げていく空母水鬼と、笑顔が増えていく山風。そして今回も―――

「Battle Ended! Mission Completes!」

「やったやった!今回も大勝利だよ山風ちゃん!」

「水鬼があそこで敵を引き付けてくれたおかげ…あ、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとうね山風ちゃん!」

「うんっ」

笑顔で話し合う山風と空母水鬼を見て、時雨と夕立、そして遅れてきた涼風がとても驚いていた。

「凄いね…山風があそこまで笑顔なのは初めて見たっぽい」

「あれも空母水鬼さんの力なんだろうね…周囲を自然と明るくさせる……凄いよね」

「初めて会った時から、あたいも驚きの連続だよまったく!」

そして深海もまた、あそこまで楽しそうにしている空母水鬼を見て、小さく笑みを浮かべていた。

「楽しそうで何よりだよ…母さん」

そんな深海の元に山風の手を引いて空母水鬼が駆け寄ってきた。

「ねえねえ深海!次のミッション、ボスみたいな相手と戦ってみたい!」

「ボスみたいな相手?」

「うん!何かこう…とにかく強くて大きい奴!」

「な、なるほどな…ちょっと待ってろ」

深海はミッションリストに目を通していく、すると丁度よさげな機体を見つけた深海。

「これでどうだ母さん?」

「えーっと、さいこがんだむ……なんて読むの…この…英語?」

「サイコガンダムMk-Ⅱ……」

「……な、なんかおっかない顔してる…何かボスっぽくていいね!深海、この相手でお願い!」

「わかった…アリアスを少しいじってくるから貸してくれ」

「うん!ありがとっ深海!」

深海にガンダムアリアスを渡した空母水鬼。深海はそのまま製作ブースの方へ歩いていった。それを見送った空母水鬼は深海の背中を見て呟いた。

「本当、大きくなったね深海…お母さん、とっても嬉しいよ」

そして少しだけ俯いてしまった。それに気づいた山風が、どうしたの?と尋ねた。

「…ホントはね…あと娘が2人いるんだ……でもきっと、もう死んじゃってる……」

「ど、どうして?」

「私が深海と離ればなれになった後、夫といた鎮守府に隠してきた双子が見つかった。って海軍の連中が言ってたの聞いたんだ……深海棲艦との間に生まれた子供。深海がずっと殺されそうだったんだから…きっとあの子たちも……」

「す、水鬼…」

「あ、ごめんね山風ちゃん!いけないいけない…しっかりしないと私っ」

「無理したら、駄目だよ?」

「うんっ、ありがとうね」

 

それからしばらくして、深海が製作ブースから戻ってきた。

「待たせたな母さん。ほら」

そう言って深海は元の状態に戻したガンダムエグザアウェリアスを空母水鬼に渡した。

「何かさっきのアリアスより、翼が付いてカッコよくなったよ!」

「ガンダムアリアスを元の姿に戻したんだ。そいつは「ガンダムエグザアウェリアス・対MA仕様」元のエグザアウェリアスと違って、実弾武装を少し増やしてある。両腰のビーム砲をレールガンに変えて、両脚には12連装ミサイルを装備した。今回の相手は、ビームを無効にする防御帯を持っているからな」

「そうなんだね深海!わざわざ準備してくれてありがとう!」

「ああ………なぁ、母さん」

「ん、なに?」

「どうして作り笑顔なんだ?」

「っ………あはは…やっぱり私が教えただけあって、大した観察眼だよ。深海」

「何かあったのか?」

「まあ、ね……あとで話すから、今は気にしないでほしいな…ほらいこっ!山風ちゃん!」

そう言って空母水鬼はバトル台へ歩いていった。深海はそんな空母水鬼を少し心配そうな目で見送った。すると山風がポツリと言った。

「水鬼の事、何かあったら…」

「わかってるさ…」

「…うん」

そう言って山風は空母水鬼の後を追いかけていった。

 

雷雲が空を覆う荒野で、ガンダムエグザアウェリアス・対MA使用とホロルドロッソ・イージスが、サイコガンダムMk-Ⅱと激しい戦闘を繰り広げていた。サイコガンダムMk-Ⅱは全身のメガ粒子砲をばら撒きながら2機を寄せ付けない戦いぶりだった。

「くそぉ…懐に潜り込むすきがないよ!」

先程より機動力の上がった機体の動きに少し驚きながらも何とかサイコガンダムMk-Ⅱのメガ粒子砲を回避する空母水鬼。何重にも張り巡らされたビームの網を掻い潜りながら、ヴァリアブルライフルの引き金を引くが、Iフィールドを持つサイコガンダムMk-Ⅱにはその光弾は届かず、機体の表面で何度もかき消されてしまっていた。

「深海の言った通り、ビーム攻撃がかき消されちゃってる……どうしよう」

「関節なら……そこっ」

ホロルドロッソ・イージスが左肘関節を狙ってスキュラを放った。しかしそこにリフレクタービットが数基集まり、スキュラのビームを弾き返してしまった。跳ね返ってきたスキュラを回避し、ビームライフルで牽制射をかけながらメガ粒子砲を回避するホロルドロッソ・イージス。

「これじゃあ埒があかないよ!」

「っ……」

サイコガンダムMk-Ⅱがメガ粒子砲の発射を止める筈はなく、隙を見せない弾幕で2機は完全に有効打を打てずにいた。

「ならこれで……山風ちゃん、胴体中央に!合わせて!」

「わかった」

空母水鬼はアウェリアスウイングを6基のみ射出させると、ヴァリアブルライフルを長銃身化し連結、そこにアウェリアスウイングを合体させた。アウェリアスウイングを連結させたヴァリアブルライフルを両手で抱え、照準を胴体中央に定めた。

「いっけぇー!」

「いま!」

バーストモードで撃ち出されたヴァリアブルライフルと、ホロルドロッソ・イージスのスキュラのビームがサイコガンダムMk-Ⅱに向かって飛ぶ。メガ粒子砲の出力を越えるバーストモードのヴァリアブルライフルは、サイコガンダムMk-Ⅱが放っていたメガ粒子砲を弾き消しながら飛びその僅か後方からスキュラがそれを追いかけていく。そして胴体中央に、命中した2つのビームによってIフィールドが激しくスパークした。その衝撃を受けて、少しだけサイコガンダムMk-Ⅱの体勢を崩すことに成功した。

「崩せた!今なら!」

体勢が崩れたサイコガンダムMk-Ⅱにビームサーベルを抜き放ち突撃した。サイコガンダムMk-Ⅱのメガ粒子砲を回避しながら一気に接近していくガンダムエグザアウェリアス。

「もらった!」

そして、ビームサーベルを掲げ斬りかかろうとしたその時―――

「なっ!?」

サイコガンダムMk-Ⅱの左腕が射出された。不意を突かれた空母水鬼は完全に回避が遅れてしまった。そして射出された左腕が、エグザアウェリアスを捉えた。

「母さん!」

思わず深海が叫んだ。

「し、しまった!」

「水鬼―――あっ!」

拘束されたエグザアウェリアスに気づいた山風だったが、サイコガンダムMk-Ⅱが再びメガ粒子砲をばら撒き始めた。目標が1機に絞られたことで、より熾烈さを増したメガ粒子砲の弾幕に、山風は回避するので精一杯だった。

(さっきより弾幕が濃くなってる!水鬼!)

「くうう!動いて!動いてよ!」

必死に操縦桿を動かし脱出を測ろうとする空母水鬼だが、サイコガンダムMk-Ⅱの手はビクともしなかった。それどころかその手は、エグザアウェリアスを握りつぶそうと段々と握りしめられていった。鈍い音をたてて潰されていくエグザアウェリアス。全身にヒビが入り、バキバキとあちこちのパーツが欠けていく。

「水鬼!」

メガ粒子砲を回避しながら何とかエグザアウェリアスの元へ向かおうとする山風。しかし、サイコガンダムMk-Ⅱはそれを許さない。尚も続く砲撃の嵐、突き放されていく距離、壊れていくエグザアウェリアス。

(やだ!やだよ!もう無くしたくない!あたしを初めて認めてくれた人を、無くしたくないよ!)

その時の山風の脳裏には、空母水鬼から「いらない」と言われてしまう光景が浮かんでいた。

(助けられなかったら、きっと水鬼も………そんなのやだよ!)

「はっ!山風ちゃん前!」

「あ!?」

ホロルドロッソ・イージスの正面、メガ粒子砲が迫ってきた。山風の反応は完全に遅れてしまった。山風の視界が眩い光に包まれた。

 

 

諦めたくない

 

 

もう、無くしたくない

 

 

 

あたしは………

 

 

 

あたしはっ………

 

 

 

 

あたしはぁっ!!

 

 

 

 

その瞬間、山風の内からとても力強いものが溢れてきた。そして――――

 

こんな事で…あたしはっ

 

 

 

無くしたりするもんかぁぁぁー!!!!

 

 

 

山風の右へ大きく伸びた前髪の下から、黒い小さな角が現れ蒼白い炎を纏い、エメラルドグリーンの右目が深紅に染まった。その瞬間、ホロルドロッソ・イージスはサイコガンダムMk-Ⅱのメガ粒子砲を目にも止まらない速さで回避し、サイコガンダムMk-Ⅱの上空に現れた。そしてホロルドロッソ・イージスはビームライフルを右腰のサイドバインダーにマウントし、バックパックから左右に大きく伸びたスタビライザーユニットに格納された大型の剣「フラガラッハ改ビームブレイド」を抜き放った。

「水鬼を…やらせるもんかー!」

フラガラッハ改ビームブレイドを両手に握ったホロルドロッソ・イージスは、深紅の閃光となってエグザアウェリアスを捉えている左腕に迫った。そしてその刹那、深紅の閃光が左腕の前を通り過ぎたと思えば、エグザアウェリアスを捉えていた5本の指が一斉に爆散したのだ。

「きゃっ!」

地面に墜落したエグザアウェリアス。そして弧を描いてサイコガンダムMk-Ⅱに再び斬りかかるホロルドロッソ・イージス。

「よくも水鬼を……」

山風の額に現れた角の蒼白い炎が更に激しく燃え上がり――――

 

 

 

水鬼をやったなぁぁぁぁー!!!

 

 

 

(っ!?あの額の角は!)

更に速度を上げたホロルドロッソ・イージスは、サイコガンダムMk-Ⅱへ迫った。メガ粒子砲の嵐をかわし、サイコガンダムMk-Ⅱの足元から迫ったホロルドロッソ・イージスが一気に頭頂部まで登るとフラガラッハ改ビームブレイドを両メインカメラに向け投擲、狙いは寸分違わずサイコガンダムMk-Ⅱの両メインカメラを潰した。そしてそのまま上空へ飛び去るホロルドロッソ・イージス。距離を取って後退するホロルドロッソ・イージスをサイコガンダムMk-Ⅱはメインカメラを潰されても尚、メガ粒子砲で撃ち落とそうとした。

「全エネルギーを右手のビームサーベルに!」

そして再び弧を描いてホロルドロッソ・イージスが戻ってきた。サイコガンダムMk-Ⅱはホロルドロッソ・イージス目掛けメガ粒子砲を乱射、その内の1発がホロルドロッソ・イージスに迫った。しかし―――

「うおぁぁぁっ!」

ホロルドロッソ・イージスは左腕に装備した対ビームシールドでそれを受け止めた。スラスターが更に勢いを増し、メガ粒子砲は徐々に押し戻され―――

 

 

バチィィィ!!

 

 

弾き消された。そして――――

 

 

はああぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!

 

 

機体の全エネルギーを集約し、ホロルドロッソ・イージスの全長を越える程に巨大になったビームサーベルが振り下ろされ、サイコガンダムMk-Ⅱを頭から一刀両断。サイコガンダムMk-Ⅱの背後に着地し、その直後サイコガンダムMk-Ⅱは大爆発を起こして消滅した。

 

続く


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