艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP89 2人の娘

「Battle Ended! Mission Completes!」

サイコガンダムMk-Ⅱを撃破し、ミッションを成功させた山風と空母水鬼。しかし、山風が先程行ったマニューバはバトルを見ていた時雨たちに驚愕を与えるのに十分だった。

「す、凄い…山風…あんなマニューバが出来るなんて……」

「あんな動き…夕立でも出来ないっぽい…」

「アタイも驚いたよ…あれが、山風の姉貴の本気……」

そして山風は―――

「す、水鬼!大丈夫だった?」

先程までの激しい表情は消え、オドオドしながら空母水鬼に駆け寄った。

「ごめんなさい!すぐに助けられなくてごめんなさい!だからっ…お願い!言わないで!」

「………」

必死に謝る山風。しかし空母水鬼は一言も喋らず、ただ山風の顔を見つめていた。

「す、すい…き?」

自身の顔を見つめるだけの空母水鬼を見て山風は不思議そうな顔になった。すると空母水鬼はゆっくりと右手を山風の顔へと伸ばし、山風の前髪の下から生えてきた黒い小さな角に触れた。先程まで蒼白い炎を纏っていた角はその炎を消し、ただそこに存在していた。すると、空母水鬼が小さな声で何か言った。

「……ら」

「え?」

そして空母水鬼はハッキリと言った。

深空(みそら)…」

「………?」

 

 

深空(みそら)

 

 

空母水鬼の言ったその言葉の意味が山風には分からなかった。だが、そんな山風をよそに空母水鬼の目には涙が溢れてきていた。その涙を見て焦る山風。

「す、水鬼!どうしたのいきなり!?」

「良かった……良かった……深空…生きてた……うっうう……本当に…良かったよ……」

「水鬼?」

「母さん!」

そこに事情を知らない深海が駆け寄ってきた。すると空母水鬼は駆け寄ってきた深海と山風をギュッと抱きしめた。

「ちょっ!何するんだ母さん!」

「す、水鬼!?」

「本当に……ありがとう…深海も…深空も…本当にありがとう…」

空母水鬼は深海と山風をギュッと抱きしめたまま、ずっと「ありがとう」と言い続けていた。深海と山風は、何が何だかわからず顔を見合わせていた。

 

その後、その場にいた深海と山風、空母水鬼と時雨、夕立、涼風、そして電の7人が旧執務室に集まり先程の事を話し合っていた。

「で…母さんは、山風が自分の娘だって言うのか?」

「そうだよ!額に生えたこの黒い角、双子の妹の深空の物とおんなじだもん!」

空母水鬼は、山風の事をギュッと抱きしめたまま大声で言った。

「す、水鬼…苦しいよ」

「あ!ご、ごめんね深空!」

思わず山風を強く抱き締めてしまった空母水鬼は、慌てて腕を離した。山風の額には依然として黒い角が生えたままだった。それに目をやった深海は、今度は姉妹である時雨たち3人に質問を投げかけた。

「お前たちはどうなんだ?何か思い当たることはあるか?」

「うーん……僕と山風は、同時にあの鎮守府に着任になったんだよね…」

「確かそうだった気がするよ…いつの頃か忘れたけどさ……」

「あ、夕立憶えてるっぽい!確か、2010年の3月だったよ!」

「2010年に同時に……か…(俺と母さんが逃亡生活を始めたのが2年前の2008年だったな…)それ以外に何かあるか?」

するとまた夕立がある事を思いだし、口を開いた。

「そういえば時雨!鎮守府に来た時、練度がまだそんなに高くないのにもう今の格好してたっぽい!」

「あれ、そうだっけ?」

「そう言えばそうだ!時雨の姉貴、練度高くないのに改二の格好してた!」

「うん…山風も、憶えてる…」

「うう…ここまで言われると否定できないよ…でも、それと山風の話に何か関係あるかな?」

「今の情報量ではあまり関係ないな…あるとすれば…母さんが言ってた「2人の娘」にお前が入ってるかもしれない…って事にはなるかもしれないが」

「そ、そっか…(深海提督と兄妹か…ちょっと嬉しいかも…)」

(時雨も深海提督さんと兄妹?……あれ、何かが引っかかるっぽい…)

すると夕立が難しそうな顔をした。電がそれに気づいて、夕立に話しかける。

「夕立さん。どうしたのです?」

「ううん。何でもないっぽい!それより電ちゃんはどう思うっぽい?」

「うーん…電は皆さんとちょっと違うから何とも言えないのですが……」

「電。何か考えでもあるのか?」

唐突に深海に声を掛けられた電だったが、驚くことはなく、なのです。と言って話し始めた。

「電は艦娘の細胞に深海棲艦の細胞を埋め込まれて生まれたのです。だから、その逆もあるんじゃないかな…って」

「逆……深海棲艦の細胞を持つ奴に艦娘の細胞を埋め込む、か…ありえなくはない話だな……山風の額にある角は、完全に深海棲艦の物だろうし…旧体制の海軍ならやっていてもおかしくないか…」

(角?………あれ?何処かで聞いた気がするっぽい…)

「ねえ深海、信じてほしいなぁ~深空は可愛い可愛い深海の妹なんだよ?」

空母水鬼が山風をギュッと抱きしめて言った。しかし深海は難しい顔をした。

「信じてない訳じゃないけど、証拠がないからな…全部は信じきれないぞ?…今の現状で遺伝子検査なんてしてる暇もないからな…さて、どうしたものか…」

その時深海のスマホに着信が入った。深海はスマホの画面を見るなり、少しだけ驚いた。

「海軍本部だと?こんな時に一体何だ?…もしもし」

「久しぶりだな。深海よ」

「っ!その声、白河洋一(しらかわよういち)提督!?」

「え!白河さん!」

深海の言葉に空母水鬼も反応を示す。

 

白河洋一

 

深海の演説を後援した、深海の父ととても親しかった提督だ。戦時中に深海が接触してから、密かに親密になった唯一の人物でもある。勿論空母水鬼も、彼を慕っている。

「元気そうで安心したぞ。家族は壮健か?」

「はい。おかげさまで!白河さんもお元気そうでよかった!」

「お互いにな……で、早速本題なのだが。軍本部の秘密書類を処理していたら、面白い物を見つけてな…」

「面白いもの、ですか?」

「ああ。そのデータをそちらのパソコンに送った。確認してくれ」

「わかりました」

そう言って深海はパソコンを起動した。

(深海提督が敬語で喋ってるっぽい…)

敬語の深海に驚く夕立。そして1分ぐらいたって、深海がまた口を開いた。

「あっ。ありましたよ白河さん!」

「開いてみるといい。お前(・・)に関する面白い内容だ」

「え?俺に関して?」

深海は少し不思議そうな声をあげてそのデータファイルを開いた。内容に目を通す深海。そして深海が突然大きな声で、これって!と言った。

「深海深海、どうしたのそんな大声上げて?」

そう言って山風を連れて執務机に歩いてきた空母水鬼。それに釣られて、その場にいた残り4人も執務机に歩いていった。そして6人がパソコンの画面をのぞき込んだ。そこにはこう書かれていた。

 

 

○○鎮守府捜査報告書

反逆者である黒野海(くろのかい)が担当していた鎮守府の捜査が完了したことを報告します。敵と内通していた形跡は見受けられませんでしたが、今回の調査で、黒野海が隠していたと思われる女児の双子の確保に成功しました。確保した双子には深海棲艦の特徴である黒い角を確認しましたが、貴重な深海棲艦とのハーフであるこの双子は研究所へ移送し艦娘への改造を施すことになりました。 以上

 

艦娘改造報告書

先だって確保された深海棲艦とのハーフである双子の、艦娘への改造が完了致しました。両検体の適正は完璧に近いもので、完全に自身の事を艦娘であると認識しており今後は△△鎮守府へ2010年3月付で配属することと致します。つきましては、写真を同伴いたしますので確認をお願い致します。 以上

 

 

そしてそこの文章から少し下の写真に写っていた2人は「時雨」と「山風」だった。

「し、時雨姉ぇ……この鎮守府の名前……」

「……まさか…本当、に…」

鎮守府の名前と写真を見た時雨と山風は、息を吞み。

「どうだ?驚いたか黒野…お前には2人の妹がいたようだな……」

「「………」」

深海と空母水鬼は、この思わず絶句してしまった。

「黒野…黒野?」

「は、はい!その…あ、ありがとうございます」

「終戦から8年も掛かってしまってすまなかったな黒野…では、またな」

「あ、はい…失礼します」

深海は電話を切った。そして旧執務室は一瞬にして静寂に包まれた。その静寂は5分ほど続くことになったが、やがて夕立が言った。

「時雨…」

「うん。わかってるよ…鎮守府の名前……僕たちが前に居た鎮守府だ。って言いたいんだよね?」

「う、うん……」

「ははは……まさか、山風だけじゃなくて僕までもそうだったなんてね…」

「時雨姉ぇ……」

「………大丈夫、だよ…山風」

すると時雨は空母水鬼の隣にいた山風に微笑んだ。そして、空母水鬼に言った。

「空母水鬼さん。僕にも名前って、あるのかな?」

「………」

だが空母水鬼はすぐに答えることは出来なかった。先程までの子供のように明るかった表情は驚愕した表情になったままだったが、時雨の顔を見つめると大粒の涙を1粒流して、小さく言った。

 

 

夜空(よぞら)

 

 

と―――

「うん…ありがとう」

すると時雨は山風の手を握って旧執務室の扉へ歩いていった。思わず夕立が止めようとしたが、深海がそれを遮った。そして時雨は言った。

「少し、2人で話させてくれないかな?」

「…ああ。わかったよ」

「ありがとう…深海提督」

時雨と山風は部屋を出て行った。部屋は再び静寂に包まれたが、深海は夕立と涼風、電に席を外してほしいと言った。夕立は、うん。と二つ返事で2人を連れて部屋を出て行った。部屋には深海と空母水鬼の2人が取り残された。静寂が周囲を包んでいたがやがて空母水鬼が口を開いた。

「深海…」

「ごめん母さん…俺、ちょっと……泣きそうだ」

空母水鬼の隣に座る深海の目にはじんわりと涙が浮かんでいた。だが、それは空母水鬼も同じだった。

「ごめんね深海…私も、嬉しくて……う、ううう……」

その後しばらく、旧執務室で深海と空母水鬼はお互いを抱きしめ合いながら泣いていた。

 

続く

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