ワンピースの世界をはったりで乗り切る   作:にーと

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ひたすらだまし討ち

 青髪のポーラ、赤髪のジーナとのカラフルで淫らな夜を過ごして、翌日の昼。

 ジーナは俺のプルプルな肉体と交わって感激したそうな。元気いっぱいやる気満タン。「一生ついていく」「船大工にして」などと言っている。了承しておいた。この手の女はどうせ浮気するけど俺もやるから問題ない。

 

 ところで俺達にはストロングから盗んだ大きな船があった。あれをリフォームしたり解体して材料を再利用したりすればカフェ付きの船を作るにしても安くなるだろう。というわけでジーナとポーラには船を泊めた4番ドックへ向かってもらった。俺とカポーティは個人行動で賞金首探し。

 という名目を得たところで、俺はトムに会いに行くことにした。世界政府がいつ来るか分からないし、アーロンと違って政府と敵対すればまず死ぬから、直接守ることはできないが、情報提供とか工作活動はやってあげるつもりだ。

 3時頃にトムの会社についたのだが、おやつ休憩らしくちょうどいた。毎日おやつを食べているのだろうか。デブだし。

 

「トムさん、実はあなたに重要な話が」

「客じゃないのか?」

「私、先日まで海兵だったものですが……」

 

 俺はトムの耳に顔を近づける。

 

「なんだ? 男にキスされても……」

「実は、妙な噂が海軍で流行ってましてね。あなたが、プルトンの設計図を持っていると」

 

 俺がささやくと、トムの丸い目が一瞬ギョッと飛び出た。すぐさま真顔に戻ったが。

 

「なんだ? その、プルプルタン? つーのは。初めて聞く名だな」

「政府があなたを逮捕しに来るかもしれないので、伝えておきました」

「たっ、たっはっは。そんなわけの分からん話で政府が動くとは思えんな」

「時期も予想できますよ。おそらく海列車が全線開通した直後になるでしょう。逃げる準備はお早めに」

「たっはっは、冗談の好きな海兵だ。いや、元海兵か」

 

 トムは演技しているが、俺は原作で知っているのでな。そういう態度は無駄なのだよ。

 俺はトムから顔を離し、手のひらにゼリーを集める。ゼリーは巨大化し、トム程の大きさになる。

 

「な、なんだ?」

 

 さらに、俺はトムの姿を見ながら、ゼリーの形状を、トムそっくりに変えていく。形が整うと、着色も。

 

「す、すごいな。わしそっくりだ」

「死んだフリがしたければ、手伝います」

 

 俺はそう言いながら、ゼリートムを動かしてみる。できるだけトムの仕草を真似ながら。

 

「た、たっはっは。縁起でもねえことは言わないでくれ。だが、ありがとう」

 

 礼を言う時に、トムはやっと真剣な顔になった。死をも覚悟した、戦場にいる男の顔。

 

「このゼリートムくんは、差し上げます。もしもの時のために隠しておいてください。政府があなたを逮捕しに来た時に、私はできるだけ現場に駆けつけるつもりですが、間に合わないかもしれないので」

「そうかい」

 

 もう演技は辞めたのかな? 真剣な表情のままだ。

 

「ところで、魚人のアーロンをご存知で?」

「フィッシャーの所にいたアーロンなら、もちろん知ってるが」

「実は彼が、釈放されるという噂がありまして。というのも、政府は魚人達の解放を条件にジンベエに対して七武海の加入を要請しているからです」

「ジンベエに!? そりゃあ、驚いたな」

「アーロンは釈放された途端に、人間にキバを向くと思います」

「……予想はできるな」

「あなたが死んだフリをしている間、しばらく暇になるでしょう。その時に、アーロン討伐に手を貸していただきたい。無論、アーロンを殺す気はありません。人間の魚人に対する仕打ちが酷すぎましたからね。復讐されても仕方ない。しかし、復讐の相手が問題です」

「政府や海兵相手なら無視するが、一般人相手に手を出すようなら止める。それでいいんだな?」

「はい」

 

 うむ。まあこれでいいだろう。あとは運だな。トムがアーロン戦に間に合うかどうか。政府に死んだフリが通じるかどうか。両方とも運次第だ。

 

 トムの会社を出て、少しだけ賞金首を探し、見つからないまま船を泊めてあるドックへと戻る。

 

「何の成果も、あげられませんでしたぁ!」

「う、うん。そう」

 

 大げさに謝罪し、表情を戻す。

 

「船の概算とかはどうなった?」

「それなんだけど、やっぱりリフォームがいいみたいなの。詳しくはジーナに聞いて」

 

 俺はジーナの方を見る。

 

「この船、ソニエさんが作ったんだけど、剛力のストロング? の力に耐えられるよう頑丈に作ってあるの。私じゃこんなの作れないわ。壊すのはもったいない」

 

 あのパワーに耐えられる? ちょっと考えにくいな。たぶん多少暴れたぐらいなら平気とかその程度だと思う。でも、いい船には違いなさそうだ。

 

「そうなんだ。じゃあリフォームの方がいいかな。海王類や海賊との戦闘も見越してさ」

「リフォームだったらお金も少なくて済むわ。これだけ大きい船だと、喫茶を立てるスペースも十分にあるし」

「でもこれ、100人くらい乗れる船でしょ? 俺達4人だけで動かせるの?」

「全部の機能は無理よ。動かすだけなら大丈夫。というのも、あなた1人で舵輪と帆を同時に動かせるそうね。しかも甲板から海を見ながら。だから4人でも動かせるわ。舵輪の位置をちょっと変えることになるけど」

「それでリフォームの料金は?」

「だいたい3000万ベリーかな」

「なんだ、足りるじゃん」

 

 賞金稼ぎしなくてもよくなるな。でも、一応商人として海を動くから、お金はあった方がいいけど。

 おっと、重要なことを言い忘れていた。俺はこの船で東の海に行くつもりなのだ。レッドラインを超えるかカームベルトを突っ切るかが必要だが、おそらく俺の能力ならレッドラインを超えられると思う。ジェルマ66がカタツムリで壁を登っていた要領だな。

 

「リフォームする時に、頼みがあるんだ。レッドラインを上れるように、こう、真っ直ぐになっても耐えられるように」

「レッドライン? え!? 正気!?」

 

 ジーナが驚いて叫ぶ。ポーラも初めて聞いたという感じだ。

 

「あなた、グランドラインから出るつもりだったの?」

「そりゃあ、冒険するからにはグランドラインだけでなく世界を回らないともったいないでしょ」

 

 俺はそれっぽいことを言う。

 

「まあ、分かるけど」

「うーん。強度を計算してみるけど、たぶんその機能を付けるとかなりお金がかかるわ」

「いいよ。元々賞金首と戦う予定だったんだ」

「そう」

 

 ジーナが机に紙を置き、何やら計算式を書き込んでいく。言っとくが俺はバカではない。大砲の計算や海流の計算はやってきた。頑張れば計算式くらい理解できるぞ。

 

「あなた、何か隠してる?」

 

 ポーラが聞いてきた。グランドラインから出ることについてだろう。まあ怪しいわな。

 

「隠してる方がおもしろいでしょ?」

「そうかしら? まあ、期待しておくわ」

 

 怪しまれても問題なかったぜ。ポーラはあまり詮索しない性格だからな。本人が言いたくなさそうなことは。

 しばらく待つと、ジーナが計算を終えた。

 

「あなたの機能をつけるなら、1億ベリーくらいかしらね」

「全部で?」

「違う。あなたの機能だけで1億ベリー。合わせて1億3000万ベリー」

「1億か。まあ賞金首狩れば難しくなかろ」

「本当にそうかしら? ストロングはバカで助かっただけだわ」

「簡単過ぎてもつまらないし、ちょうどいい目標じゃない?」

「それは、言えるかもしれないけど」

 

 その後、さらに細かい話を詰めていく。武器の場所。俺の能力で守りきれる範囲。守れない場所をどう防ぐか。俺の能力でオールを出して漕いだらどれくらいの速度が出るか。風呂や寝室をどうするか。ポーラの喫茶店を先に作り、後からレッドライン登頂用の改造をできるかどうか。

 結論としては、先にポーラの店を作り、後からレッドライン登頂用の改造はできた。よってそれをすることになった。賞金稼ぎをするにしても、海でカフェをやっていた方が情報が集まりやすい。今から3日ほどカフェの内装をポーラとジーナで話し合い、終わると早速リフォームに取り掛かるという。

 そんな話をしていると、カポーティが帰ってきた。血相を変えて。

 

「大変だ! ストロングがこの島に帰ってきた! しかもゲルマンの首を取ろうと探し回ってるぞ!」

 

 そうか。やつは死んでなかったのか。あのレベルの相手はしんどいな。作戦を練って、搦め手を使って海に落とすしかないだろうな。

 

「どうする? この船の入港が見られてるし、逃がした捕虜もいるから、その内ここに来るよ」

「うーん、俺が海に誘き出すより前に、船に来られる可能性もあるのか。どうしよう」

 

 海に呼ぶか、こちらから攻め込むか……。

 いや、もう1つ手があるな。俺の得意技が。やはりピンチこそ自分の最も得意な舞台で戦うべきだよな。しかも、この島は水路がそこら十に溢れている。ならばあの技も使えそうだ。いける。いけるぞ。

 俺は変装用の服とカツラを手に取り、カポーティの誘導に従って駆け出した。

 

「どこだぁああああ! ゼリー野朗ぉおおおお! 出てきやがれぇええええ!」

 

 巨体、筋肉達磨、かわいい顔。ストロングは町を壊しながら確実に俺達の船の方向へ進んでいた。付近に地図を持つ部下がおり、「4番ドックはあっちですぜ」などと説明している。やはり海におびき出す時間はなかったか。ドックも海と言えば海だけど、船を壊したくないからな。

 

 俺はゼリーを身に纏い、女人魚の格好をする。そして水路にチャポン。その水路から、ドバーッとゼリーを出し、波のような形でストロング達にぶつける。

 

「こいつは!?」

「ゼリー攻撃! 近くにやつがいますぜ!」

 

 ゼリーがストロングにぶつかる瞬間、ストロングが腕を振るい、ゼリーを弾き飛ばす。ストロングの周囲の部下達はそれで助かるが、やや離れていた部下達は波に巻き込まれて流されていく。

 

「小細工は無駄だ! 出てきやがれ!」

 

 舞台は整った。ストロングの周囲には無造作に散らばったゼリー。少し固めれば、流れずに残る。その一部を、俺そっくりの人に形作っていく。

 

「ほう? そこにいたのか」

 

 ストロングは人型のゼリーを見て、俺だと思い込んだ。俺はゼリーを操り、煽るように手招きする。

 

「舐めやがって! 死ね!」

 

 ストロングはすさまじい速度で突進し、ゼリーに拳を叩き込む。俺はその直前にゼリーを崩しておく。

 また、ストロングの後ろのゼリーを操り、ハンマーのような形にする。そのハンマーで、ストロングの膝裏を攻撃。膝カックンのような形になり、しかも地面のゼリーが滑るので、ストロングは豪快に転んだ。

 この間にも、俺は新しいゼリーの人型を形成する。ストロングに見えにくい位置。そして人型ができたら、また煽るように手招きする。

 

「チッ、避けやがったが。だが、てめえの攻撃なんざ痛くもかゆくもねえんだよ。ダメージゼロ。対して、お前は一撃で死。絶望しろ。この無敵の筋肉に楯突いたことを」

 

 などと言い、ストロングは再びゼリーに突進。だが、殴られる手前に俺は人型ゼリー解除する。ストロングが地面のゼリーを叩き、後ろから膝かっくん。ストロング転ぶ。人型作って手で煽る。

 以下、その繰り返し。ストロングは「ダメージゼロ対一撃で死」などと言っているが、間違いだ。ストロングは自分のパンチと転ばされたことで疲労するし若干体が傷つく。力が強い人間は自分の力に耐え切れず肉離れや疲労骨折を起こすものだ。そういうダメージが必ず存在し蓄積していく。対して、俺は真のダメージゼロ。ゼリーを動かすのに集中力を使うからちょっとは疲れるけど、ストロングの比ではない。この勝負、俺の勝ちなのだよ。

 何度も何度も転ばされるストロング。カウンターを見定めるとか言って、手を叩きつけるタイミングを変えたりするが、ゼリーはただの人形で俺は水路にいるから何の意味もない。

 

「はあ、はあ、はあ。ふ、ふははははは! お前の戦法、見破ったり! ぜえ、ぜえ。目で、追うから、失敗するんだ! 耳を使えばいい!」

 

 などと言って目をつぶるが、それも意味無し。俺は一部のゼリーをあわ立てて音を出し、その横にハンマーを作る。

 

「死ね!」

 

 ストロングは音を立てたゼリーをパンチ。横からのハンマーを食らい、また転ぶ。

 

「ぜえ、はあ、はあ。ちっ」

 

 また最初からやり直し。ストロングがゼリーを殴り、転ぶ。またゼリーを殴り、転ぶ。

 その間、ストロングの仲間はストロングに指示を出そうとしていた。本物はいないとか。このゼリーフィールドで戦うべきじゃないとか。しかし、部下は俺のゼリー攻撃及びカポーティ、ポーラの攻撃により、ストロングに接近できなかった。たまに接近する部下もいたが、ストロングは頭に血が上ってしまって、部下の声を聞く余裕がなかった。

 

「何故だ。ぜえ、ぜえ、ぜえ。何故、攻撃が、はあ、はあ、はあ、当たらん……。ぐっ」

 

 フラフラになったストロング。俺はもはや人形も作らず死角からのハンマーで転ばせる。

 

「はあ、はあ、はあ」

 

 そして、ストロングはついに立ち上がることもできなくなった。

 仕上げと行こう。俺は水路から一際多くのゼリーを流す。それらをストロングの手前で一旦止め、巨人を形作っていく。さらには、巨人の右手を斧のような形にする。硬さもできる限り硬くしてみる。元がゼリーと侮るなかれ。豆くらいの硬さにはなる。

 出来上がったゼリーの巨人と斧の右手。それを、ストロングに振り下ろす。

 

「ぐはっ。ぐはっ。ぐっ。ぐふっ」

 

 何度も何度も叩きつける。いかに筋肉の鎧と言えど、巨大質量の衝撃は通る。また、疲れから、力を入れることができないので、防御力も落ちている。だから、ゼリー攻撃で止めを刺せる。

 やがて、ゼリーで殴ってもストロングは声を出さなくなった。死ぬか気絶かしたのだろう。これで、俺の勝ちだ。

 

 俺は水路から出て、ストロングの状態を確認する。息はしている。死んでいなかったか。だが、全身ズタボロだ。しばらく目覚めることはないだろう。この戦いを見に集まっていた見物客の中に職人がいる。

 

「ロープを貸してくれるか? 特別頑丈なロープだ」

「あ、ああ。いいが、お前、ゼリー男の仲間か?」

「ああ、そうだ」

 

 見物客は人魚姿の俺をゼリー男だとは思っていない。まあその方がいい。

 職人がロープを持ってくる。俺はそのロープでストロングの全身を念入りに縛っていく。縛り終えた頃、ポーラとカポーティも帰ってきた。2人とも傷だらけだ。やはり簡単な相手ではなかったか。

 

「やったのか。5000万ベリーの首を」

「まあね。と言っても、正面から戦ったわけじゃないけど」

 

 俺がそう言うと、カポーティは悲しそうな顔をした。

 

「やっぱり頭が悪いやつは何をやってもダメなんだろうか」

 

 カポーティも頭が悪い部類だと思うが、この場合に言及しているのはポルチェやフォクシーだろう。

 

「そんなことはないさ。ストロングには俺にはないパワーがあった。頭なんてのは、仲間が教えてやればよかったのさ。そこに敵はいないと」

 

 ポルチェやフォクシーにも頭以外の魅力がある。何の魅力のない人間も、探せばいるかもしれないが、あいつらはそうではない。絶望するにはまだ早い。

 

「でも、仲間の指示を理解するにも、頭が」

「いかにストロングと言っても、言葉を理解する頭はあっただろうよ。問題は、こいつが身勝手で、部下を信用しなかったことだ。自業自得だよ。その辺りはね」

「そうか。そうかもな」

 

 カポーティは少しだけ明るい表情になった。

 海兵は軍を辞めてからしばらくの間、予備役扱いになってしまう。賞金首を捕まえても懸賞金が極端に少なくなる。よって、俺ではなくポーラがストロングを捕まえた、という設定にする必要があった。実際、ストロングの引渡しもポーラにやってもらった。巨体が重いと愚痴愚痴言いながら、台車を引っ張っていた。

 引渡しの時、海軍はポーラを怪しんだ。ただの小娘にストロングを捕らえられるはずがないと。海軍は市民に聞き取り調査を行った。「人魚っぽい女が水っぽい何かを操っていた」「ゼリー? いや、あの動きは水かもしれない」等と返答があった。海兵は人魚や魚人が水を操ることができると知っていた。水っぽい巨人というのも人魚の技だと考えた。ポーラにこのことを質問すると、人魚はポーラの仲間らしい。ここまで来て、海軍はやっと懸賞金をポーラに手渡したのだった。

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