ガールズ&パンツァーwithナイトメア   作:tubaki7

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第二話 ~戦車、乗ります!~

「ンで、どこを探す?」

 

 戦車が足りない。戦車がなくては、いくら人員が居ても意味がない。だから探す。それはわかるが、この広い学園艦のどこを探せばいいと言うのだ。

 

「確か、〝ナイトメアフレーム〟の・・・えっと・・・・」

「ファクトスフィアですね。超高性能レーダーって言えばわかりやすいかと」

「ありがとうございます。秋山さん」

 

 華の疑問に答える優花里。大和がパイプとなりあっという間に打ち解ける事が出来た。それをチラリと見ながら、先頭を歩くみほに問う。

 

「とりあえず、山岳地帯かな。そこならあってもおかしくないし」

「ない方が、自然なんだがな」

 

 皮肉を込めた言葉にみほが苦笑いする。そもそも戦車が学園艦内にあるという事自体確率が低い。この船・・・というより学校は、資金面的にも苦労していた時期があったらしい。それを乗り切る為、戦車と〝ナイトメアフレーム〟の装甲だけでなく武装まで売り払ったと会長は言っていた。ここに残っている、とは考えにくい。地図片手に探しに来たはいいものの、一体どこにあるのか・・・ただでさえ無謀な策な上に、さらにテンションが落ちてきた時。

 

「・・・・花の香りに混じって、油の匂いがしますね」

 

 クンクンと鼻を動かしながら華が言う。

 

「華道やってるとそんな事もできるようになるの!?」

「わたくしだけかもしれませんけど・・・」

 

 鼻を動かしながら、匂いが漂う方向へと歩いていく。何も手がかりがないよりは、今は彼女の嗅覚だけが頼りになる。なら、異見を唱える必要はないと後に続こうとした時だった。

 

「パンツァー・フォー!」

「パンツのアホぉ!?」

 

 思わぬ号令と空耳に、思わず吹いてしまう。

 

「専門用語で、戦車前進って意味なの」

「ぱ、パンツのアホ・・・・クックック・・・・!」

「わっ、笑わないでよォ!」

 

 顔を真っ赤にしながら講義する沙織を後目に、奥へと進んでいく。すると、先に歩いて行った華の姿があり、その視線の先には油と鉄錆で汚れた戦車があった。

 

「戦車あった!」

「38t・・・」

「なんかさっきのよりちっちゃい。ビスだらけでぼつぼつしてるし」

 

 難色を示す沙織とは逆に、優花里は対照的に心底嬉しそうにする。それも、汚れた車体に頬ずりしてしまう程に。

 

「そこがいいんですよ。38tといえば、ロンメル将軍の第七装甲手団でも主力を務め、初期のドイツ電撃戦を支えた重要な戦車なんです!」

「秋山さん、汚れてんぞ」

 

 大和の声にハッとなり、我に返る。顔を赤くしながらあたふたして顔を俯かせてしまう。

 

「めっちゃ生き生きしてたよ」

「すみません・・・」

「俺が転校してきた時もそうだったな」

「そうなんですか?」

「ああ。自己紹介の後、HRが終わった途端に質問攻めにあった」

 

 その頃の彼女は、一言で表すなら犬だった。暫く帰ってこなかった主人が帰宅し懐いてきた、そんな感じだ。一体何をそんなに期待していたのやら。

 

「・・・まあ、その。なんだ。博識なのも、おまえのいいトコだと思うぞ?」

「うわっ、こっちはこっちで不器用・・・・」

「フォローにもなってませんね」

 

 そこまで言うか。ガックリと項垂れる人間がまた一人。それを見て苦笑するしかないみほであった。

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 学園艦内を調べた結果、発見できた車両は38t、Ⅳ号、八九式、Ⅲ号突撃砲、M3中戦車の5輌となっている。

 

「戦車5輌、それにイギリス式の〝ナイトメアフレーム〟が一騎・・・しかも素体」

「装甲やら武装やらはさっき母さんに型番連絡してきた・・・・けど」

 

 そこで言葉を切って機体に歩み寄り、そっと触れる。

 

「z01b・・・・z01って、ホントどこまで皮肉なのかねぇ・・・」

 

 型番をポツリと呟く大和。

 

「その型番って・・・たしか―――」

「〝ランスロット〟ォ!」

 

 大声をあげて、優花里が目を輝かせながら飛んできた。

 

「〝ランスロット〟と言えば、黒森峰女学園の大会9連覇を支えた超有名騎で、その白く気高い姿からかなりの人気を博しているんです!そしてその騎士として乗っていたのが何を隠そう、悠木殿なんですッ!」

 

 まるで効果音でも聴こえてきそうな雰囲気を醸し出しながら、それでいて讃えるような感じで声高々に説明する。それにみほはあわわと狼狽え、大和は頭を抱えて深く溜息をつく。それを見て自慢げな笑みから一変。やってしまったとまた顔を俯かせてしまった。

 

「うそ、悠木先輩ってそんなスゴイ人だったんだ・・・・」

「てっきり目つきの悪い不良かと思ってた」

「オイ聴こえてんぞ一年」

 

 遠慮なくディスりにきた後輩達を邪けんに扱い、落ち込む優花里の元に歩み寄る。目に見えて落ち込んでおり、先ほどとは違い今度は泣きそうなまでに気が沈んでしまっているようだ。それを見て、どうしていいかわからず頭を掻く。手に負えない。これがみほなら・・・・そう考えた時に、ふと手が動いた。ポン、と頭の上に置かれる手。自分よりも大きな、けれども父よりも少しばかり小さい手。身内以外なら、おそらく初めて触れられた髪。癖毛であまり好きじゃないけど、他に似合うような髪型があるわけでもない。

 

 そんな頭に、初めて。しかも同年代の男の子の手。一瞬にして頭が真っ白になった。少し高いところから、彼の声が聴こえる。

 

「言ったろ、そういう博識なところがおまえの良いトコだって。つい言いすぎちまうのは、その内治せればいい。でもその知識は、絶対に役に立つ時が来る。その時は、頼んだぜ。戦車博士」

 

 そう言って数回ポンポンと叩いてから、機体のコクピットへと昇って行った。

 

「・・・あれ、絶対恥ずかしくて逃げたね」

「みほ、さっき秋山さんが言ってたのってホント?」

「う、うん。〝ランスロット〟は前の学校に居た時の大和君の乗騎で・・・・最後の大会では、前の試合で不具合が生じたから修理の関係で別の機体に乗ってたんだけど」

 

 うん、絶対中でやっちまったってなってる。姿は見えないが、明らかに顔を真っ赤にして悶絶している大和の姿が想像できて、みほは小さく笑う。今日はなんだか、よく笑う日だ。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

「港はどっちかな?」

「あー、早く陸に上がりたいなぁ。アウトレットで買い物もしたいし」

 

 汚れていた戦車の洗車を終え、後の事を自動車部に任せて下校。今は5人で寄り道しながら帰っている。

 

「・・・あの!ちょっと行きたい場所があるんですが・・・」

「・・・遠慮せずに言えよ。行こうぜ」

 

 未だに顔を見れない。そう気まずそうに大和が振り返らずに言う。それから戦車ショップに移動し、店内を物色。中には制服や専門雑誌、マニアックなものに至っては車輪まである。

 

「戦車道も恋愛も一緒とはな・・・」

「沙織さんらしいといえばらしいよね」

 

 苦笑する二人。そんな二人の視線は、ふと店内備え付けのテレビへと向けられている。夕方のこの時間はニュースのスポーツ特集が放送されており、そこには高校生大会でMVPを獲得したまほのインタビューが映っていた。それを見て、そして彼女の言葉を聞いてすっかり沈んでしまうみほ。

 

  ―――逃げ出さない事。昨日、逃げないと決めたのに何故かこの言葉がまだ胸に刺さる。

 

「・・・・みほ」

 

 名前を呼ばれ、すこし心が軽くなる。

 

「そうだ、これからみほの家に行ってもいい?」

「え、私の家?」

「うん。ここから近いんでしょ?晩御飯作ってあげるからさ」

 

沙織の提案により、場所をみほの部屋に移す。彼女の指導の下、夕飯の準備を進める中、話は一度自室に戻った大和の事に。

 

「そーいえば、みほって悠木君とはどういう関係なの?」

「えっと・・・」

「やっぱ恋人とか?」

 

 目をキラキラさせながら聞いてくる沙織。ぐつぐつと煮立つ鍋を優花里に任せ、みほに詰め寄る。コンタクトから眼鏡に変えた彼女はどこか知的な雰囲気を感じさせつつも、少し落ち着いた印象を受ける。

 

「こっ、こここ恋人だなんて!私と大和君は、その・・・・小さい頃からの幼馴染で。親同士が仲がいいのもあって、それで」

「確か、悠木殿のご両親は〝ナイトメアフレーム〟の整備を専門としてましたよね。以前雑誌で見た事あります」

「うん。お母さんが大和君のお母さんの後輩で。元々戦車道を受講してたって話も聞いたんだけど、その時の話をすると、何故かお母さんの顔が青ざめてたような・・・」

 

 今でも思い出せる当時の母の顔。冷静沈着、それどころか冷徹ささえ感じていた母の顔が、まるで絶望したかのように青ざめていたのを。理由を聞いても何も答えてはくれず、煙に巻いていつも逃げ居ていた。

 

「あの西住師範代が・・・・」

 

 一体どんな人物だったんだと考える。・・・・ダメだ、想像つかない。

 

「で!話は戻るけど、みほはどう思ってるの。彼の事」

「どう、って言われても・・・。いつも私の事を支えてくれて、守ってくれて・・・会長達に戦車道の勧誘の話を受けた時も」

「あー・・・・あの時の悠木君、怖かったよね」

「わたくし、殿方の怒ったところを見たのは初めてでした」

「・・・そういえば、悠木殿は黒森峰に居た頃は〝ランスロット〟の騎士でしたから、よく西住まほ選手と一緒にいましたよね。噂では―――」

 

 言いかけたところで、来客を報せるチャイムが鳴った。「はーい!」とみほが応えると、鍵が開いているのを知っているのかドアが開い

 

た。

 

「・・・・なんで、」

「いつでも野営できるように」

「それで毎回ガサガサ鞄が揺れる度に音がしてたわけか・・・ってみほ、おまえまだ片付けてなかったのか?」

「あ、うん。ちょっと―――」

「言い訳はいい。今度の休みに片付けるからな」

「うう・・・」

 

 あ、これ恋人じゃなくて親子だわ。そう当人たちの関係を位置づけつつ、沙織は自身の作業に集中するのだった。それから30分後、食卓に料理が並べられる。中央には華が活けた一輪の花、それを中心に置かれているのだが・・・・

 

「見事に茶色一色だな・・・辛うじて肉じゃがに色味があるくらいか」

 

 わかってはいたが体を動かした後に友達と作って食べるとなったらだいたいこうなる。しかし、そこは女子だ。何かしら彩りがあってもいいだろうというツッコミはこの際省く事にして、箸の行く先を肉じゃがへと向ける。沙織曰く、「自信作」らしい。箸でつまみ、口に入れ咀嚼。

 

「・・・・うまいッ!」

「ホント!?」

「味付けが完璧だ・・・・みほならまずこうはならない」

「わっ、私だって、できる・・・もん・・・」

 

 できない。どう考えてもその結論にしか至らないのが悲しくてふてくされてしまう。そんなみほを隣でフォローを入れる優花里。

 

「こんなに家庭的なら、さぞモテるんだろうな」

「いやぁそれほどでも・・・」

「沙織さん。それは皮肉ですか?」

「むっ・・・華って時々エグイよね」

 

その後もひたすら肉じゃがを頬張る大和。4人が会話に花を咲かせる間も一人黙々と食べている姿が気になり、沙織が話しかける。

 

「あの・・・悠木君、そんなに美味しい・・・?」

「美味い。かなり美味い。というか、ここのところ誰かの手料理なんて食った事なかったから余計に美味い」

 

 そんな大和の感想に気を良くしたのか沙織は少し頬を赤らめながら俯く。ここまで褒められるとは思ってなかったのもあるが、そもそもよく考えてみれば初めて異性に手料理を作った事に気が付き、より一層恥ずかしくなる。

 

「沙織さん」

「な、なに?」

「良かったですね。胃袋、掴みましたよ」

「・・・・何だか複雑ぅ・・・・」

 

 夕食を食べ終え、一通り後片付けも終わったところで時間的に解散となった。見送りの為、階段下まで降りて行き、三人の背中を見送る。最初は大和が送って行くと言い出したのだが、まださほど遅い時間でもないし学園艦の中だからという理由でみほと一緒に見送ることになった。

 

「・・・・ねえ、大和君」

 

 3人が見えなくなった後、みほがぽつりと呟く。

 

「私、ここに転校してきて良かった」

「・・・そっか」

「うん。・・・ありがとう。私を連れだしてくれて」

 

 そう笑顔でいうみほ。それを見て急にそっぽを向いてしまう大和。先ほどの沙織程ではないが、頬を赤らめ指でぽりぽりと頬を掻く。

 

「あ、明日も学校あるんだし、早く寝るぞ」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

「で、遅刻したのかおまえは」

「うぅ・・・それには訳があって・・・」

 

 翌朝、戦車道の授業で集まった時に開口一番、みほが遅刻したことを華から聞いた大和はみほにそう責めた。

 

「大方サークルKでボコの新しいグッズ出てたからソレ観てて遅れたとかだろ?」

「え、そうなの?」

「え?」

「え?」

 

 朝から何やってんだと苦笑いするのは優花里。その前で何やらしきりにブツブツ言っている沙織。どうやら未だに大和の顔をマトモに見れないらしく、顔をあげない。

 

  そして、彼女が独り言を言っている理由がもう一つ。それは先ほど空から飛行機で飛んできて、戦車で降りてくるというパフォーマンスで登場した、今回戦車道の教官をする事になった人物。蝶野亜美の存在だ。

 

「騙された・・・」

「いいではありませんか。素敵な方ですよ?」

 

 いや、そうじゃなくて。そう言いたいが、言う気力がない。再び項垂れる沙織。そんな中、ふと蝶野と目が合う。彼女もこちらに気が付いたようで「しまった」と表情を曇らせる大和。

 

「あら・・・西住師範のお嬢さんと、悠木さんのご子息の・・・」

 

 蝶野が興味を示したことにより、全員の視線が2人に集中する。外部から、しかも自衛隊から名のある教官が来るとは聞いていてまさかとは思っていたが、本当に来てしまうとは予想外だった。

 

「師範にはお世話になってるんです。お姉さまも元気?」

 

 何気ない、本当に悪気なんて微塵もないただの世間話程度の内容。だがその質問も、今は鬱陶しいことこの上ない。言い淀むみほ。周りが少しざわつき始めた。

 

「悠木大和君、よね?」

「・・・・ども」

「まほさんとは違う学校なのね。てっきり夫婦で同じ学校かと――」

「蝶野教官ッ!」

 

 叫ぶ大和。だが、もう遅い。零れたワードはしっかりと他の生徒にも聴こえており、ちらほらとその事についての話し声が聴こえてくる。これにはさすがにマズいと思ったのか、蝶野本人も狼狽える。

 

「・・・・その話は、親同士が勝手に決めたことです。それに今、俺もみほも西住の家には居ません。ですから、もう彼女とは関係ないです」

「そ、そう・・・・でも意外だったわ。〝死神〟と謳われた貴方が〝ランスロット〟を降りるなんて」

「色々あるんですよ。色々と」

 

 察してくれ。そう言わんばかりの視線を向ければ、沙織と優花里が話を逸らす為に手をあげ質問をする。その後一言二言会話をして、実践に移る。ただし大和は見学という形になった。各々が自身の担当車輌に進む中、2人に向かって言う。

 

「ありがとう・・・助かった」

「いえいえ」

「友達だもん。当たり前でしょ」

 

 笑顔でそう言う2人。いい友達を持ったな、みほは・・・・。そう思いつつ管制塔に行こうとすると、後ろから華が声をかけてくる。

 

「みほさんだけじゃ、ないですよ」

「そうそ!悠木君も・・・大和君も、もう友達だからね」

「・・・・健闘を祈るよ」

 

 振り返ってそう言い、大和はその場を後にした。 

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