夜明けへと向かう航路 (旧 クソッタレな世界の中で)休止中 作:KP 八神
レイレイにヴィクトーリアへの連絡を頼み再び個室へと戻ると、新人が捕虜のガキを膝に乗せ飯を食わせてやっていた。
「新田ちゃん、移動するぞ。準備しな。」
「へ?移動ですか?」
「おう、アジトに招待してやる。」
「は、はい!急いで準備します!」
すっ転ぶように立ち上がり新人は荷物をまとめ始めた。
新人を待つ間改めて捕虜を観察する。
140に満たないであろう背丈に、ボサボサに傷んだ極めて白に近い金色の長髪、枝のような手足に片目は眼帯をつけている。
手足には縫い付けたような跡や一部皮膚の色が違うところもある。
部屋の隅に置かれたライフルは、銃剣こそ付いているものの何がベースになっているのかわからないほどのお粗末なコピー品だ、一目見ればわかるような捨て駒だ。
などと思いながら観察を続けていると捕虜と視線があった。
「殺さないの?」
「殺して欲しいのか?」
「………わかんない。」
そう言うとこちらを見たまま黙り込んでしまった。
溜息を吐きながら尋ねる。
「名前は?」
「……十五番。」
「クローンか?」
「わかんない。」
「何のためにここに来た。」
「いっぱい殺せばお母さんに会えるって言われたから。」
「誰に。」
「わかんない。」
再び大きな溜息を吐き、煙草に火をつけた。
いざ吸おうとした瞬間、携帯から明るい音楽が流れる。
「こちらリーダー。」
『リーダー、こっち車回してビル前いるからいつでもいいぜ。』
「ああ、もう少し待ってくれ。」
『姐さんとリリィも先に事務所に行ってるってさ。』
「了解。」
根元近くが灰になり始めた頃に、新人が荷物を持ちこちらに歩いて来た。
「お、お待たせしました。」
「いや問題ない、そのチビも連れて来な。」
「はい!行こっか、カレンちゃん。」
聞き覚えのない名前を疑問に思い新人へ顔を向ける。
「そのチビの本名か?」
「あ、いえ、私が勝手につけたんですよ。赤い靴履いてましたし、境遇も似てるみたいですから。」
はて、どこかで聞いた話だったがなんだったか。
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「童話か。」
「ええ、どうしてかこの子を見た時からこの名前が頭にずっと残ってて。」
「悪くないんじゃないか、見た目もヨーロピアンっぽいしな。しかしよく童話なんぞ知ってたな。」
「小さい頃、母によく読み聞かせてもらってたので…」
「そうかい。」
個室の外へと踏み出すと、先程の襲撃なんて影すら見えない程になにもかも元どおりになっていた。
さすがと言うしかないな。
外に出ると気の沈むような真っ黒な雲が空を覆っていた。しまったな服を干しっぱなしだったかもしれない、降らないといいんだが。
などと考えながらカスタムし過ぎて原型のない装甲車へと二人を連れ歩く。
「これが俺たち幽霊船のフラグシップ、ゴライアスだ。まあ、船じゃねぇんだけどな。」
「なんというか、もはや戦車みたいですね。」
「ああ、説明は乗ってからしてやる。足下気をつけな。」
二人を後ろから持ち上げてやり、ゴライアスに乗せる。タラップを付けてやるべきか?
しかしまあ、二人ともとんでもなく軽い。
ガキの方は見た目からわかっちゃいたが新人がここまで軽いとは驚いた。胸もそこそこあるしもう少し重たいと思ったんだがな。
二人を後部に乗せてやった後助手席へと座る。
「おつかれ、リーダー、新田ちゃん。んじゃぁジェイルハウス発、事務所行きゴライアス発車しまぁーす。」
発車から数秒もしないうちにレイレイがガキの方をチラチラと見だした。
「お前の趣味じゃなかったと思うがな。」
俺がからかうようにそういうと、レイレイは口をへの字にしながら答える。
「いやそうじゃなくてな、そのチビ誰かに似てる気がしてさぁ。」
「カレンちゃんがですか?」
「お、早速名前聞き出せたのかお手柄だぜ新田ちゃん。」
「あ、いえそういう訳じゃなくてですね。カレンちゃん名前がないみたいなんで私が付けたんですよ。」
「そうだったかぁ、まあ呼びやすい名前でいいんじゃない?いやーでも誰に似てんだろ?どっかで見た気がするんだよなぁ。」
「その話は後でいいだろう、今はアジトについての説明だ。」
「あ、ちょっと待ってください。すぐメモを取り出しますんで。」
「メモを取るほどのことでもないが、まあいい。説明を始めるぞ。」
新人の元気な返事を聞き、説明を始める。
「今向かってるのは俺たち幽霊船のアジトだ。事務所って呼ばれることが多いな。」
「リーダーと俺はアジトって呼んでるぜ。」
「アジトには俺たちの使う武器や金、情報を保管してある。一応一人一つ部屋が用意されてるからそこで寝泊まりも可能だな。」
「足は今俺達が乗ってるゴライアスと超速いバイクのチーターがあるから好きに使って構わないぜ、ただリーダーのお気に入りの黒いバイクは使っちゃダメだぜ。万が一許可なく使っちまったらどうなるかは保障できないかもな。」
「そこまで酷いことはしねぇよ。」
「嘘つけ、俺ボッコボコにされたじゃんかよ。」
「お前が大きな傷こさえてきたからだろうに。」
「だからあれ俺悪くないって言ってるじゃんかよぉ〜」
「まあいい。足の説明だが、今乗ってるゴライアスはRPGを四、五発食らっても余裕で動ける装甲があるし、馬力も戦車を二台程度なら引き回せる程度にはあるから危険な仕事に向かう時に使うといい。チーターはケチャップが想定される時にぴったりだろう。」
「あの、質問いいですか?」
「どうした。」
「ケチャップってなんでしょう?」
ミスった、用語の説明を忘れていたな、最近は同業者ばかり相手にしていたものだから通じると勘違いしていた。
「ケチャップってのは追いかけっこをさすぜ。おっかない相手から逃げるときや、自分が相手を追い回すことを言う時に使うな。」
したり顔でレイレイが解説をする。
そういえばこいつは世話を焼くのが好きだったな。
「さて。アジトのほうの説明に戻るが、基本的にアジトにはレイレイかリリィが居るはずだから何かある時にはアジトに向かうといいだろう。」
「そうそう、大抵はアジトかジェイルハウスのさっきの部屋にいるぜ。」
「部屋はさっき言った個人の部屋と金庫室、会議室、資料室と尋問室に執務室、あとは依頼を受けるための応接室があるな。」
「依頼はジェイルハウスで受けるんじゃないんですか?」
「同業者や一般人からの依頼ならそっちだが、盟約やあまり表沙汰にしたくない奴らからの依頼は事務所で内密に受けることが多い。」
「なるほど。」
説明して初めて気づいたがアジトについて話すことがあまり多くない、というか殆ど話尽くしてしまった。
他に説明しておくことは何かあっただろうか。
次の話題を考えているとレイレイが思い出したかのように口を開いた。
「そういえばリーダー、新田ちゃんの仕事ってもう決まったのか?」
「一応は俺かリリィにつかせようと考えてるが、どうかしたか?」
「いや、それについては問題無いんだけど、カレンの方はどうするのかな〜、って思ってさ。」
「なんだ、やっぱり欲しいんじゃねぇか。」
「いやさ、そっちの意味じゃ無いからね?ただかなり"いいセンス"してそうだからさぁ。吐かせるだけ吐かせてポイはちょっともったいない気がするんだよ。」
レイレイからの戦闘以外の提言に驚きを覚える。レイレイの一生の憧れだという傭兵が言っていたという「いいセンス」を使ってまで捕虜の保護を求めたのだ、普段ならリーダーに任せるなんて言って全部丸投げするのに。
「やはり惚れたか?」
「リーダー、いい加減にしてくれよ、違うって言ってるじゃんかよ。とにかくぅ!そいつは新田ちゃんと同じで伸び代があるから俺らで育てたほうがいいって言ってんの!」
レイレイが肘で俺の脇腹を小突く。
「わーったわーったから、しっかり前見て運転しろ。」
「ったく。」
アジトまであと数分、と言ったところで唐突に新人が大声を上げた。
「ええっ!?そうなの、カレンちゃん!?」
「うおおっ!危ねぇ。急にどうした新田ちゃん、いきなりでかい声出されるとビビっちまうぜ。」
「ご、ごめんなさい。でも!カレンちゃんが大切な事を教えてくれたんですよ!」
興奮気味に話す新人の様子に、その大切な事についての期待を寄せる。
「なんと!カレンちゃん記憶喪失らしいんです。」
「ダメじゃねぇか。」
<<アイデア:80-->44 成功!>>
レイレイは呆れたようにそう言うが、俺はあることに気づいてしまった。
「いや、お手柄だ。チビ助の正体がわかった。」
「「え!?」」
「つぎはぎの体に記憶喪失と来りゃドール、だろうな。」
「ドール…お人形ですか?」
「あながち間違ってないだろうさ、悪趣味な奴らが自分の楽しみのために他人の体をいじくりまわして作ったお人形だな。」
確信を持ってチビ助に問う。
「チビ助、ネクロマンシーって言葉に聞き覚えがあるだろう。」
「…お母さんのこと。」
「やっぱりな。新田ちゃん、良くこのチビ助を捕まえたな、お手柄だぜ。予定変更、このチビ助も新人だ。レイレイ、スピード上げろ超特急だ。」
「良くわからんがりょーかい!全速前進だぁ!」
その言葉と同時に体全体に猛烈なGがかかる。
「うぅぅぅ、レイレイさん、圧が、圧が強すぎますぅ。潰れちゃうぅぅぅ。」
「おい、レイレイお前また増やしたのか。」
「おう、ロケットブースターとエンジンを一つづつ増やした!」
「新田ちゃん、チビ助、大丈夫か?」
「「………………………………」」
「あーらら、気絶してらぁ。」