夜明けへと向かう航路 (旧 クソッタレな世界の中で)休止中 作:KP 八神
「敵襲でございます!」
女中がその言葉を発した瞬間、目の前の鉄扉が吹き飛ばされ、五人の男女が中へ入って来る。
女中と爺を隠れさせてやる余裕もないので、次の一手を打つために不審者達の観察を始める。
先頭は右手に青竜刀を持った切れ長の目をしたチャイナドレスの女。
後ろに続くのは黒のスーツに黒のサングラス、黒のネクタイと全身真っ黒な護衛のような男達、武器は全てmp5だろうか。
あれ、コイツらどこかで見た気がするな
<<アイデア:80-->81 失敗>>
どこで見たんだったか、忘れてしまったな。
「へー、オオサカ1の男の工房って言ってもこんなものなんだ。これなら私達のとこの方がよっぽど良さそうね。」
「いきなり人の家に乗り込んできて家主への一言目がソレか、随分と教育がなっとらんようじゃな。」
「これはこれは大和の翁、あんまりにも貧相な姿をしているものだからてっきり迷い込んだ浮浪者が何かだと思ってたわぁ。あら、それにボロ船の船長サンまで居るじゃない、手間が省けるわぁ。」
ボロ船とは言ってくれるなぁ。安い挑発と分かっていながらも、小憎たらしい顔も含めて少し苛立つ。
「手間だあ?」
「ええ、貴方達にはここで死んでもらうわ。」
チャイナドレスが、こちらへ青竜刀の切っ先を向けると、背後に控えていた男達が一斉に銃口を向ける。
こんなところでやる気かよ、随分と血の気が多い事で。
「へ?なんじゃと?すまんのぉ、最近耳が遠くなってしまって聞きづらいんじゃ。
なあ、八神やわしの聞き間違いじゃ無ければ、わしらを殺すとか聞こえたんじゃが。聞き間違いかの?」
「ああ、ここまで清々しい宣戦布告は久し振りに聞いたなぁ。」
殺害宣告をされたと言うのに笑顔を浮かべるほど余裕な態度の俺たちに、思わず困惑し、苛立った様子でチャイナドレスが口を開く。
「何故笑っていられるの?貴方達は私達にここで殺されるのよ?まさか気でも狂ったのかしら?」
その言葉に爺は堪えきれなくなったようで、腹を抱え、目に涙を浮かべる程に笑う。
爺の様子にチャイナドレスだけでなく、後ろの男達にも困惑が広がる。まさかとは思うがこいつら、誰に喧嘩を売ったのか理解していないのだろうか。
「ここに来たのが私たちだけだから油断でもしているのかしら、今この屋敷には私たちを含めて50人が貴方達の命を狙っているのよ?それでも笑っていられるのかしら。」
「50人かそりゃあ良い、たった5人じゃ退屈しないか心配してたんだ。」
その言葉で頭に血が上ったのか、顔を真っ赤にして、男達へと射撃の指示を出そうとした瞬間、工房に4発の銃声が響き渡った。
仁義なき戦い発動!
先制0ターン目
二丁拳銃により技能値-20%
<<拳銃:75-->01 クリティカル!>>
以降3発全て成功にて命中
顔に新しい穴を開けられた黒服四人は、銃声の出所が俺の手に握られている二丁の"ソレ"だと気づくこともできず、糸が切られたかのように床に倒れ赤い水溜りを作る。うん、やっぱりこの二丁が一番だな。
突然の攻撃にチャイナドレスは目を丸くし、口をパクパクと開くだけで何もできなくなってしまっている。最近襲撃者の質が下がってる気がしてならない。
「おお、さすがじゃなぁ全部眉間のど真ん中じゃった。」
「これでもガンマンやってるんでね、このくらいは出来ないと。さて、メイドと自分の安全は頼むぜ。」
「どこへ行くんじゃ?」
「決まってんだろ?殲滅戦さ、今回は特別にタダでいいぞ。」
新しい弾を二丁の"ソレ"に装填し直していると、ふと視界の端で何かが動いた。
<<目星:60-->21 成功!>>
おいおい、冗談だろ?なんで眉間をブチ抜かれた人間が動けんだ?
まさか未来から来た殺人ロボットじゃあるまいし。まあ、今更死体が動いた程度で動揺したりはしないが、それでも驚くものは驚く。
爺や女中も気づいたようで、黒服へと警戒の視線を向けると、その隙を見計らったようにチャイナドレスは即座に工房から出て行こうとする。
「逃すかよ。」
<<拳銃:95-->65 成功>>
逃げる足を潰すために膝を狙い引き金を引いたが、黒服がチャイナドレスを庇うように立ち上がり防いでしまった。
「なんだぁ、ありゃ?まさか機械仕掛けだったりせんじゃろうなぁ。」
「それはそれで面白そうだが、血が出てるから多分違うぞ。さてどう殺したもんか。」
まあ、打つ手は大体決まっているんだがな。
チャイナドレスは諦め、改めて黒服達に意識を100%向けると爺達にしか聞こえないような声量で呟く。
「気が狂いたくなけりゃ、30秒くらい目と耳塞いどけ。」
「あ?なんじゃと?聞こえんぞ、もっと大きな声で言ってくれんか?」
「旦那様、八神様は目と耳を塞げと仰られました。」
「おお、そうか、ならしっかり塞いどくかの。」
二人が目と耳を塞いだのを確認すると、自分でも理解できない言語を紡ぐ。
確かこれは違う世界の化け物を呼び出す魔法だったはずだ、間違ってないといいが。
黒服達がゆっくりとこちらに距離を詰め、後数メートルで手が届く、と言ったところで床に大きな魔法陣のようなものが神々しくも禍々しく浮かび上がった。その魔法陣の中には黒い球体が浮いており、その球体はまるで心臓のように脈動している。
<<眷属の招集>>
MP:16-->8
召喚クリーチャー二体。
体から何かが抜ける感覚を覚えた瞬間、魔法陣は消え、球体がごとりと床に落ちる。
まるで魂が欠けたかのような感覚に襲われ、常人ならば悲鳴を上げながら嘔吐していただろうほどの恐怖感が脳を支配する。
自分が知らないはずだが知っている世界の人々が、人間の理解を超えた、生命体とは言い難い姿をした化け物に蹂躙され、虐殺され、凌辱されているイメージがいくつも、何度も、視界に浮かび上がってくる。
だが、それだけだ。
SAN:40-->39
視界が元に戻り、全身の感覚がハッキリとしてくると、黒い球体は脈動をやめ、ゆっくりと形を変えてゆく。
円柱に近い形の胴体に二本一対の腕、丸みを帯びた頭と、ここまでならば人間と言えなくもない形だが、そこからさらに醜悪で見るに耐えない姿へと変質する。
一対の腕の両肘からは新たな腕が三本ずつ生え、頭にはブーメランのような形をしたツノのような何か、胴からは10本程の蛸のような足が直接付いている顔のない二体の怪物が歓喜のように聞こえる産声を上げた。
エルドラージのドローンだとか何とかいう種族だったはずだ、時計塔で師匠にそう教えてもらったはずだ、多分、おそらく。
「さあ、そこの餌どもを親分達に持って帰ってやりな。」
そう言ってやると、二体の怪物は黒服へと腕を伸ばし二人ずつ拘束すると、まるで鯖折りかのようにギリギリと締め付ける。
<<キャッチ:50×2-->25,49 成功!>>
<<キャッチ:50×2-->34,6成功!>>
黒服達は必死に逃れようと対抗するが、力の差がありすぎるのかビクともしていない。
ミシミシと黒服達の体が軋み始めた頃、黒服の一人が口を開いた。
「貴様、"ウィザード"だったのか。」
「なんだお前、話せたのか。てっきり地獄で閻魔様に舌抜かれてるもんだと思ってたぜ。」
「なぜ"ウィザード"が工房にいるのだ、貴様らは相容れぬ存在ではなかったのか。」
「何か勘違いしてるようだな、俺は"ウィザード"じゃなくて"メイガス"だぞ、"ウィザード"は師匠の方だ。」
これ間違えると時計塔の奴らが顔を真っ赤にして罵倒してくるからなぁ、あいつら品性だの何だの言ってるくせにえげつないくらいの差別主義だし。ここ、テストに出てきたぞ。
「何が違うというのだ。」
「"ウィザード"というか"ワイズマン"は今こそ魔法使いって意味で使われてるが、本来は賢き者って意味だからな。
あいつらは過去、今、未来、あらゆる知識を持ってる奴らのことだよ。」
「俺たち"メイガス"とは全くの別物さ、"メイガス"は"ウィザード"の知識や技術から学んで新しい知識を生み出す魔法使いのことだ。まぁ、この説明だと俺は"メイガス"とは言えないんだけどな。」
ここまで教えてやる必要は無いのだろうが、俺を見ているのが黒服達だけじゃあ無い以上油断しているように見せてやるのが最善の手だろう。
覗き見とは趣味が悪いな、どうせなら堂々と乗り込んで来りゃあいいのに。
「おっと、喋りすぎたかな。そろそろお前達のお仲間も探さにゃならん、と言うわけで。死んでくれや。」
俺の一言に二体の怪物は黒服達を締め上げる力を強める。
黒服達は必死に抵抗をするが骨の折れる音とともにその抵抗は終わる。が、一応念のために、全ての黒服の眉間と心臓と股間に1発ずつ撃ち込んでおく。
「もう持っていっていいぞ。そいつらで足りないようなら、そいつらと同じ服の奴らは好きなだけ持ってきな。」
幸い、ここには爺の趣味で女中しかいないから巻き込まれる心配はないだろう。多分。
怪物達が黒服を担いだまま工房を出るのを見届けると、爺達の方に向き直る。
あいつらまだ目と耳塞いでやがる。
女中に至ってはしゃがんで嗚咽を漏らしながら、ガタガタと震えてしまっている。
さては、呪文を聞いたな?せっかく忠告してやったのに酷いやつだ。
というか、俺30秒って言ったはずなんだがな何でこいつらまだ目と耳塞いでんだ。
爺に声をかける前に、先に女中を正気にしてやったほうがいいだろうか。
そう思い、女中の前まで歩きしゃがみこむ。
女中は目の前まで来た俺に気づいたのかゆっくりと目を開いた。その目には俺が映ってはいるが、俺が見えてはいないようで目線はあらぬ方向に飛んでしまっている。
「いあ、我は、我は、いあ、いあ、……」
おっとこれはマズイ、急いで女中に落ち着くように暗示をかける。
「いあ、い、あ?あれ?私は一体?」
「まったく、耳塞いでろって言ったのに。大丈夫だったか?」
「あ、はい、ありがとうございます。大丈夫です。」
「そりゃよかった、爺は頼むわ、今度こそ外の潰してくるから。」
女中の返事を待たず、鉄扉の破片を蹴り飛ばし、工房から飛び出す。
すると、聞き覚えのある不愉快な声が俺の耳を撃つ。
「よおぉ、兄弟、久しぶりだなぁ、お前に会いたくて地獄から戻って来てやったゼェ?」
「おいおい、今日は厄日か?まさかテメェが出てくるなんてなぁ。」
そこにいたのは、俺が殺したはずの最悪の男、"黒髭"だった。