自分はわがままだ。
私はいつもそう思う。
自分のわがままに他人を巻き込んで、大切な人たちも巻き込んで、迷惑ばかり掛けてしまう。
それならやめればいいのにと、思うこともしょっちゅう。
だけど、私はやめることができない。
なんて、私はわがままなんだろう。
夜のビサイド島は、本当に静かだ。
私は昼のカンカンに照らされる太陽も好きだけど、夜の静かな雰囲気も好き。
こうして涼しい夜風に当たっていると、逸る心を宥めてもらっているような心地がする。
召喚師の装束が風に揺られてカラカラと音を立てる。
まるで、音楽隊が曲を奏でてくれているよう、……なんて言ったら少し大げさかな。
でも、気持ちはそれくらい前向きになる。
ふと油断すると胸の中をいっぱいにしようとする恐怖とか焦燥なんて、軽々と吹き飛ばしてくれそうな、そんな気持ち。
しきたりとか伝統とか、この装束にはいろいろな意味が込められているけど、もしかしたらそんな単純な理由もあったりして。
そう考えると少しだけ。ほんのちょっとだけあったかい気持ちになれる。
ああ、好きだな。私はここが、ビサイド島が大好きだな。
そんなふうに独りごちる。
「ユウナ、こんなところにいた。……眠れないの?」
「……ううん。ちょっと夜風が気持ちよくて……」
少しだけ嘘を吐いた。
本当はあまり寝付けなかった。明日の試練のことを考えると、いろいろなことを思い返してしまって、どうにも落ち着かなかった。
だから、落ち着こうと外に出たんだ。
私は少しだけ、胸が痛んだ。けれど、ルールーはゆっくり頷いただけだった。
たぶん、言わなくてもバレちゃっているな。
でも、それを指摘したりはしない。
ルールーはいつも優しい。
ううん、普段は結構厳しいことを言う人だけど、それが彼女の優しさから来る発言だと、今なら充分分かってる。
だから、黙っていてくれることが嬉しい。
ビサイド島は私に優しいし、ルールーも私に優しい。
世界が全部おなじように巡っているとはさすがに思わないけれど、この優しさを守りたい。私はそんなふうに思ってしまう。
思えば、私が召喚師になりたいと言ったとき、一番に承諾してくれたのはルールーだった。
召喚師のほとんどがどんなふうに旅を終えるのか。
終着点まで辿り着いたとき、どんな結末が待ち受けているか。
それらを考えれば、普通は応援なんてしてくれない。
だって、どれだけ立派で大切な役割だったとしても、その最後には必ずお別れがやってくるから。
だから最初はみんな聞いてくれなかった。
ルールーだって最初はそうだった。
でも、ルールーは私の話をちゃんと聞いてくれた。
最後まで私の気持ちを受け止めてくれた。
そうして、自分がガードを務めるなら――という条件で承諾してくれた。
あるいは言い換えるなら――私のわがままに、巻き込んでしまった。
何が正しいのかなんて、私にはまだ分からない。
でも、〈シン〉は倒さなければならない。
絶対に倒さなきゃいけない。
私に分かるのは、それだけ。
たとえ、その戦いで命尽きることになろうとも、戦うんだって決めたんだ。
みんなが大好きだから。大好きな人たちを、守ろうって決めたんだ。
そのためなら、どんな辛いことだって頑張ろう。
明日のために、今日を生きよう。
〈シン〉のいない世界になって、みんながずっと笑っていられる世界。
そんな世界にしてみせる。
それが私のわがまま。
私が決めた、私の道。
「私、〈シン〉を倒します。……絶対に倒します」
――それは、彼が島を訪れるほんの二日前のことだった。
動画内では本編を小説化するとか言ってましたが、結局SS(ショートストーリー)に落ち着きました。