それは何度かの魔物を退治した後のことだった。
「へぇ~。お前は剣とか使えるんだな」
言われてティーダはワッカの恰好を改めて見直してみる。
ラフな服装は戦闘用というよりかはブリッツのウェアに似ている。
……というよりはそのものというべきだろうか。
正直、戦闘に適した恰好だとは思えない。
もっとも、戦闘に相応しい恰好というものがそれほど理解できているわけでもないのだが。
そもそもが魔物など居ない街中で暮らしていたのだし。
ザナルカンドではよほど沖合にでも行かない限りは、見ることのない存在だったくらいだ。
「俺はなぁ、どぉ~にも合わなくてなぁ」
ワッカは頭を掻きながら恥ずかしい打ち明け話のようにぼやいた。
「結局よぅ、一番長く続けたこいつが俺には一番合ってるってもんよ!」
そう言ってワッカはブリッツボールを掲げた。
確かに魔物へ投げるのを初めて見たときは面食らったが、威力は申し分ないようで魔物にはそれなりのダメージを与えているようだった。
少なくとも素人のティーダの剣技と同等以上の威力はあるらしかった。
考えてみれば当たり前で、ブリッツの投球は水中でも推進力を損なわない程度の球威で投げられるものだ。
これをぶつけて気絶させたり吹き飛ばしたりが当たり前にあるスポーツなのだから、地上でも攻撃として充分に扱える威力がある。
多少の慣れは必要だろうが、ブリッツ選手は全員が戦えるくらいのボールが投げられるということだろうか。
……いや。さすがにそれは考えすぎか。
地上では勝手も違うし、敵を倒しきるにはそれ以外にも工夫が要るはずだ。でなければアーロンも慣れない剣ではなく、ボールを渡していたはずだ。
それはつまり、ただブリッツ選手がボールを持つよりも、剣を持ったほうがまだ戦えるということなのだろう。
まぁ、アーロンの行動だけで全てを決めるには早すぎるかもしれないけど……。
「それに剣を見るとどうしてもキツイことを思い出しちまうしなぁ……」
「……キツイこと……?」
ティーダは首を傾げるが、ワッカはそれには気づかずボールを手のひらの上で跳ねさせる。
ボールは生き物のように跳ね上がる。ワッカはそれを柔らかい肘のクッションで受け止める。
「コツはいろいろとあるんだ。回転を掛ける。魔物のウィークポイントを狙う。それに、スフィア盤もある」
ワッカはボールを一段と高く放り投げる。
それは試合でも見られないようなロングボール。
ボールは強い勢いを伴ったまま、なかなか落ちてこない。
「スフィア盤の装着も許されるなら、全敗なんてことにはならなかったはずなんだが……。まぁ、ちょっとズッコイよなぁ」
「……うん、ズッコイッスね」
「そッスね」
猛烈な勢いで戻ってきたボールを、ワッカは腕一本で受け止め、余った勢いを回転に変換させると指の上でクルクルと遊ばせる。
ティーダもまだ良く理解はしていないのだが、通常スフィア盤は召喚師やガードくらいにしか支給されないので、一般競技であるブリッツボールでは反則事項に定められているらしい。
まだスフィア盤を成長し切れていないティーダにはその恩恵もほとんどないので、反則だなんて言われるほどなのだろうかと、少し半信半疑ではあるのだが、少なくとも世の中はそういうふうに出来ているらしい。
「……それにボールのほうも改善の余地があるんだよなぁ。やっぱりオフィシャルボールのままじゃあ、今後は辛いだろうし……」
どうやらワッカにはボールの魔改造の構想もあるらしい。
ティーダとしては複雑な心境である。
そんな新種のボールなら見てみたい気もするし、何処となく神聖なスポーツを汚された気にもなる。
まぁ、魔物と戦うためなら手段を選んでいられないのだろうが……。
「それにしても、お前は何処でスフィア盤なんぞ手に入れたんだ? ガードってわけでもないだろうし……」
「えぇ? いやぁ……えっと……」
ティーダは答えに窮してしまう。
使い方はリュックたちに教わったが、もらったのはもっと前だ。
アーロンに渡された謎のスフィア。
それがスフィア盤だったなんて、このスピラに来なければ一生知ることもなかっただろう。
「って悪ぃ。シンの毒気で何も覚えてないんだったな……」
「あ、ああ……。そうなんだ……」
ティーダは歯切れの悪い言葉でそう返したのだった。
乱雑な感じになりましたが、ワッカの戦い方ってどう考えてもおかしいよな。絶対誰かツッコむべきだよな。そう思ったので書きました。