アインズ魔導王の外戚 シース結晶公爵 作:すべすべ
きっとジルクニフならわかってくれる
シース「禿げは病気!つまり拙者は病人だから働かなくて良いでござる!」
アインズ様「いい加減お前も働け!この禿げニートドラゴンが!」
我輩は王の外戚、シース公爵である。
鱗が無いとか言った奴は原始結晶の実験体にしてやるから前に出ろ。
我輩は鱗が無いわけでは無い、ただ出来上がるのが遅いだけだ。
そういうロールプレイのプレイヤーであったらしい。
現在はナザリック大墳墓の公爵の大書庫に間借りしておる身である。
かつて、我輩はただのプレイヤーだったらしい。
今はもうかつて我輩が人間だった頃の記憶もうすらぼんやりとしている。
まるでどこまでも灰色がかった記憶を思い出そうとするようで現実味がない。
そもそもこの脳を焦がす使命感以外に重要な事なぞそんなにはあるまい。
我輩は今日も今日とて原始結晶の高みを目指すべく実験を繰り返すのだ。
この異世界?とやらに来てからは大家のモモンガ王どのはなにやらあれこれと労働に勤しんでいる様子だ。
冒険者なる仕事に就いてみたり、近場の村の人間を支援してみたりとなにやら忙しいご様子。
すると我輩の書庫があるナザリックの従業員のデミウルゴスが我が書庫の門前にて謁見の許可を申し出てきた。
実に律儀な悪魔だ。
デミウルゴスは至高の御方の御一柱、シース公爵閣下の大書庫に入る前には必ず身だしなみに気を使う。
無論、ナザリックの僕として身だしなみを疎かにする者などいるはずもないが
それでもナザリックに最後まで残ってくださった慈悲深き公爵の前でいかなる失敗も許されるはずがないのだから。
「公爵閣下にお伝えください、牧場の実験結果のご報告にデミウルゴスが参りました」
書庫の番人たる金色のクリスタルゴーレムが門を開き、彼を書庫へと案内する。
書庫はナザリックでは宝物庫に次いで立ち入るものが少ない。
掃除当番のメイドですら立ち入ることを許されておらず公爵の”道具”たる六目を除けば階層守護者では現在立ち入ることを許されているのはデミウルゴスのみである。
公爵本人は別に誰がどこに入ろうと構わないらしいが、ナザリックのシモベが濫りに立ち入るべきではないという暗黙の了解があるらしい。
デミウルゴスは書庫の静謐さと、天井高く聳える膨大な魔術書の質と量に圧倒される。
いずれも公爵本人がかつて神々の大地、ユグドラシルにおいて探索と発見に明け暮れていた時代に収蔵した魔術書。
本人曰く、玉石混同らしいがシモベにとってはこの膨大な書物の収められた場所に居るというだけで至高の御方の英知と栄光の一翼に触れられた気分になるのだ。
デミウルゴスは階段を登り、至高の御方。
シース公爵の居室に歩みを進める。
公爵本人の居室ともなると収められた魔術の書物は最低でも第8位階以上。
それが目も眩むほど高い塔としか思えない書棚という名前の巨塔にびっしりと詰め込まれている。書棚は書棚という名前の魔界か異界と成り果てていた。
この書棚にあってはかの名高いネクロノミコン原典すらごくありふれた本にしか思えなくなって来るであろう。
『デミウルゴス…近くへ…』
「はっ!ただいま!」
『そなたの献上したる実験体…余は実に満足しておる。
そも、低質なる標本では啓蒙を得ることはおろか逆に貴重な時を無為に浪費するのみ…
其方のような目利きをシモベに持つことができ、実に幸運であった』
「勿体無いお言葉でございます!」
公爵はデミウルゴスの献上した人間や亜人の実験材料に想像以上に満足し、彼に褒賞として結晶の錫杖を下賜された。
至高の御方自らからアイテムを賜る…シモベにとってはこれ以上ないほどの栄誉である。
『さて、今回そなたに足を運んでもらったのは外でもないモモンガ…
今はアインズ殿と呼ぶべきであるな…
そして外のワーカーとやらをこのナザリックで迎え撃つという計画についてである』
デミウルゴスは不安になる、もしや公爵閣下の御不興を買うようなことにでもなりはしまいかと。
『余の管理領域外で何をしようともかの御仁の自由…余がとやかく言うことではない。
だが試してもらいたいことがあるのだ』
公爵は手元のレバーを操作すると檻に入った何かが床からせり上がって来る。
『これは余がこちらで新たに作った新作のトロールやゴブリンなどをベースにした結晶亡者…
結晶亜人亡者とでもいうべき物であろうな。
これを例のワーカーとやらにぶつけて実力を測ってもらいたいのだ。
この世界の冒険者とやらにこの世界の材料で作ったモンスターがどの程度通じるか…
第3者の目で推し量ってもらいたいのでな。
このモンスターの実力、様々な角度からそなたら階層守護者達に検証してもらいたい』
デミウルゴスは喜びで震える、至高の御方自らから更に任務を任せられるなどこれ以上ないほどの信頼を受けることができる。
『次に例のワーカーとやら…なるべく殺さず生かしたまま余の実験材料として供するのだ。
アルベリオンの実験体ではあまりにも性能が均一すぎる…
余はいわゆる尖った性能を持つ冒険者などで試してみたい』
脳を弄る、四肢を切断して代りに結晶義肢をつける、ゴーレムのコアにしてみるetcetc
公爵の狂った、それでいて冷静な頭脳から生み出される冒涜的人体実験の数々…
デミウルゴスは改めて自身の人間種などを使っての魔法や交配実験など子供の遊戯同然だと思い知らされる。
『よろしい…退出せよ。書庫では沈黙を尊ぶべし』
「はっ!」
デミウルゴスが退出すると、公爵は肩の荷を降ろすように…
(やれやれ…威厳のある上司を演じるのも楽ではないなぁ…)
同じ地位にあるモモンガと同じような肩こりを感じるのであった。
沈黙を尊ぶべしとかいうのも言葉少なめにして自分の至らなさを誤魔化す方便に過ぎない。
しかし彼のそんな気分に水をさすように同僚からのメッセージが飛んできた。
「あっ、シースさん?ちょっといいですか?」
「うん?どうしました?」
「実はですね、帝国の筆頭魔術士のフールーダって老人の件なんですよ。
あってみてもらえればわかるんですけど、あの人ってシースさんが昔話してたビッグハットローガンって魔法使いに凄く似た感じなんですよ。
それで今度転移魔法でそっちに一度行ってもらおうと思ってましてね。
魔法の深淵を極めたいとか言ってましたし、シースさんの方がなんか論理的・体系的に魔法を説明するの上手そうですし」
無論、モモンガの真意は色々とめんどくさそうなフールーダを押し付けようという魂胆である。
帝国内部に有力な協力者は欲しい…しかし
『おお!あなた様こそ我が神!靴でもなんでも舐めます!
何卒!何卒、私めにご教授を!』
(えぇ…)
シワシワのジジイに靴を舐められて喜ぶアンデッドなぞいない。
ゆえに同僚のくせに書庫に引き篭もってるニート禿げドラゴンに全て押し付けるのだ。
シースは内心(このカルマ値-500の骨が!)と怒りを覚えたが
これまで面倒くさそうな事は全部モモンガに丸投げしてしてしまった後ろめたさもあったので了承してしまった。
まさに至高の御方の纏め役、深謀の王アインズの勝利である。
ツァー「君がドラゴンだって?だが…鱗が…」
だが白金の竜王の不用意な一言が逆に公爵の逆鱗に触れた!