アインズ魔導王の外戚 シース結晶公爵   作:すべすべ

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第3話

『ふむ、材料としては鮮度が命とは言うが。

やはり亡者では満足できる結果にはならんな』

 

…死闘、フォーサイトの面々にとってそれは正に死闘という他は無かった。

「くっ!なんて馬鹿力なんだよ!」

ヘッケランが亡者と化した限界知らずの膂力で刀を無理矢理に振り回す。

本来なら刀とは例え名刀と云われる代物でもその繊細さゆえに力任せに振り回せばすぐに刃毀れ、最悪は折れてしまうだろう。

エルヤーは性格は性悪であったがそれを物ともしない技量によって速く鋭い一撃を与える剣士では無かったか。

今やハムスケとの戦いによって欠け、ボロボロの刀は結晶によって覆われ、刀の形をした鋭い棍棒となっている。

「GuuuaaaAAA!」

悍ましい呻き声を上げながらエルヤーは眼前のヘッケランに切り掛かり続ける。

力任せの我武者羅な攻撃だが、速さは失われていない上に単純な膂力ではむしろ向上している。

シース公爵の実験では結晶を埋め込まれた生物の神経を刺激することによって限界を超えた筋力を発揮させることが可能だという結果を出した。

火事場の馬鹿力による筋骨の損耗も単純な回復魔法によって許容範囲内に抑えられる。

この世界の材料にほんのすこしの手を加えただけで大量生産可能な結晶兵はナザリックの自動POPモンスターの上限限界を補助するだろう。

エルヤーにしても今の戦闘力はカタログスペック上はデスナイトにも匹敵するものになっている。

それがフォーサイト相手に攻め切れていないのは単純に亡者が手近な相手に突っ込むだけの馬鹿だからである。

フォーサイトの面々の連携は個々の性能は亡者の攻撃をかわしながら、狙いを一つに絞り込ませず戦う見事なものだった。

「くっ!なんて固さなのこいつ!」

イミーナの矢が次々と亡者のそれに向かって飛んでいくがことごとく結晶に弾かれて終わる。

ロバーデイクもヘッケランがあしらっているうちに背後からエルヤーを攻撃するが結晶の鎧には罅一つ入らない。

「この硬度!まさかアダマンタイト並だとでもいうのですか!?」

シースの結晶の出来損ないだとしても、たかがアダマンタイトごときと比べるとは。

もっともただの人にとっては天が高いか、山が高いかの違いだろうが。

公爵は4体の材料の適性について判断を下す。

レベル的には最低水準にすら達してはいない、しかし多少なりとも可能性がある以上は実験材料としての使用も吝かでは無い。

すると突然亡者の動きが途端に鈍くなる。

ふむ、先のハムスケとの戦闘で千切れた脚部が取れたようだ。

絶叫を上げながら倒れこむエルヤー、全くどこまでも期待外れな材料だ。

いや、さっきからの僧侶・弓兵・魔法使いが接着の不十分な脚部に攻撃を集中したためか。

やはり回復薬のペストーにゃを呼ぶのを面倒がって、そこらへんに置いてあったホチキスでくっつけたのがまずかったか。

「今です!ヘッケラン!」

「ウオォリャヤァぁぁぁぁぁ!」

ヘッケランの全身全霊での攻撃が倒れこんだエルヤーの脳髄と心臓を突き刺し首を切り離す。

「グガ!ううあぁぁぁぁ!」

だが急所を貫かれてもなおエルヤーは動く、脳がほぼ死んでいるエルヤーは今やGなみにしぶとい。

切断された首は生者を求めガチガチと歯を噛み、体は手と一体化した刀を砂の上で無意味に振り回す。

「どうだ!思い知ったかこの野郎!人間を嘗めるんじゃねぇ!」

ヘッケランがシースに向かって息巻くが、気にも留めない。

これが観客席で控えるモモンガなら見事だともか、感動したとかそういう古典的な魔王らしい感傷めいた言葉を返すのだろう。

だが彼らが相対しているのは冷徹さではアンデッド以上の白竜なのだ。

彼らの戦いも言ってみれば化学実験のサンプル以上でも以下でもない。

原典のダークソウルにおいて、名も知らぬ小人の子孫たる人は火の陰りとともに姿形精神すら変えて言った。

それこそ竜にすら…

そしてシースは竜であり、妄執を得た蟲でもあった。

モモンガ以上に精神が妄執のシースのそれとなるのに時間はかからなかったのだ。

演じた者だと自分を思い込む、それは精神病の一種であろうが

狂気と正気を隔てるものないダークソウルでは正常なのだろう。

『ふむ、サンプルを破壊した程度で急に強気になるか。

精神構造的には常に希望を見出すのか…あるいは単に先が読めないだけか』

エルヤーとの戦いで四人は、血塗れで全身に傷を追っているのをロバーデイクが魔法で癒していく。じっと四人を見るだけの公爵をみて、ヘッケランは勘違いをする。

(ご自慢の僕がやられて呆然としてんのか?なら今しかチャンスは無い!)

公爵はそれを見逃す、材料は新鮮な方が良い。

「アルシェ!奴に一撃を食らわせてその隙に逃げるぞ!

奴の弱点か何かはわかるか!?」

「魔力はほとんど感じないから肉弾戦とブレスに注意して!

それとドラゴン種の弱点は喉元の逆鱗だって聞いたことがある!

喉元が弱点だからそこを守ってる鱗が重要なんだって!」

ピク…逆鱗だと…

アルシェは知らない、それから先は絶対に言ってはならないことだと。

「なるほど逆鱗だな!みんな、奴に鱗は無いが喉笛なら掻っ切ってやろうぜ!」

ヘッケランが調子に乗って絶対に踏んではいけない地雷を踏む。

…プツン…ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ

切れた、公爵の中で何か決定的な何かが切れた。

『キィイィぃ様ぁぁぁぁっぁ!今なんと言ったぁぁぁぁl!

俺の肌が着色料で鮮度を誤魔化した白子みてぇだとぉぉ!?』

公爵は今までの冷徹さを捨て、リーゼントを馬鹿にされた東●仗助のように突然ブチ切れる。

モモンガと違ってアンデッド特有の精神沈静化効果が無いために、怒りは火薬のように突然爆発しても治らない。

そして言葉遣いも突然柄が悪くなる。

『いいだろう…』

公爵は自らの魔力係数秘匿の術式を解く。

その瞬間、アルシェは

「オエえぇエェぇ!」吐いた。

更に下半身から女の子なら絶対に人の前で漏らしてはいけない何かが二つの穴から漏れ出す。

これがホントのダークリングから漏れ出す穢れ(意味深

「アルシェ!?な、何をした?」

「みんな!逃げてぇ!そいつには絶対に勝てない!勝てるはずがない!」

 

アルシェは涙や鼻水、そして漏れた汚物で酷い顔と臭いをさせながら仲間に必死に逃げるように言う。

だが、『いいや、逃げられんよ』

『魔術:感覚遮断』

次の瞬間、四人の首から下がまるで突然自分のものでなくなったかのように。

操り糸が切れた人形のように崩れ落ちる。

「えっ?」

アルシェは唐突に仲間たちと自分の四肢が動かなくなったことに戸惑う。

『お前たちの運動神経の伝達を阻害した。

今の貴様らはもはや指一本自分の意志では動かせん。

だがな…』

シースはヘッケランの足をつまんで持ち上げるとそこに軽く力を入れる。

メリメリと嫌な音を立てて枯れ木が折れるような音とともにヘッケランの足が折れる。

「グワァぁぁぁぁぁ!」

「ヘッケラン!?いやぁぁぁぁ!」

 

『痛覚は残しておいた、反応を観察するのも生物実験には重要だからな。

誤解するな、余はお前たちに対し今や全く怒りを覚えてはいない。

実験動物がキィキィ煩いからといって当たりちらす学者がいるか?』

 

「わ…私たちをどうする気…」

アルシェが恐る恐る首すら動かせずに白竜に問いかける。

『実験内容をモルモットが知る必要はない』

 

ピクリとも動けないフォーサイトの四人をナザリックのしもべ達が運んでいくのを見ながら墳墓の王。

モモンガが公爵に話しかける。

「ふむ、相変わらず見事であるな。シース公。

それで、あの四人はどうするつもりかな?」

『当初の計画通り、有効に使う。

あの信仰系は貴公が知りたがっていたとおりに記憶を改竄し、神々の実証照明に使用する予定だ。番の二匹は結晶を埋め込んでの繁殖実験に使用する。

気づいていたか?あのハーフエルフの雌は孕んでいる。

もしも母体が結晶を宿した状態で出産した場合、幼体にどのような影響があるかどうか興味がある。

雄の方は徐々に結晶の量を増やし、結晶がどの程度で生産性と作業量のバランスが取れた効率的なドローンになるかの実験に使用する。

最後に、あの魔法詠唱者の雌はタレント持ちだ。

魔法系のスキュラに改造することによって肉体・精神にどのような影響があるか調査する」

 

「おお!それは素晴らしい計画だ!

ふむ、こうなると私としてもアンデッド系の実験の参考になる。

それにしても随分立腹された様子だが…」

(えぇーシースさん、いくら鱗を馬鹿にされたからって切れすぎでしょ。

まぁ土足でナザリックに踏み込まれたんで不愉快には思ってたけど)

『心配には及ばぬ、余の怒りなぞ叡智の探求の前には些事』

「そうか…さて我が友よ、今回の帝国からのワーカーの侵入。

皇帝に謝罪を求めるつもりだが使節にはアウラとマーレを行かせるつもりだが…」

『いや、余が赴こう。此度の件は余としても思うところあり…

このような不祥事、皇帝に直々に謝意を求めなければ公爵としての示しもつかないと思えばこそ…』

(…やっぱメッチャ怒ってんじゃん)

要するに禿げを馬鹿にされた八つ当たりに帝都で皇帝にクレームを入れに行くと言うことである。

 

 

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