仮面ライダージオウ【ANOTHER AKASHIC RECORDS】 作:レティス
リアルの方で忙しくて手がつけられずにいました。
長らくお待たせいたしました。それではどうぞ!
OP[Blow out]
*2/28 次回予告の内容を一部修正。
side:トーマ
「………ん?…ここは…?」
俺が目を覚ました時、そこはカフェの店内だった。けどそこはいつも通う『カイロスの庭』ではない。店内の装飾を見てみるに、誕生を意味する“『nascita』”というのが店の名前のようだ……どうしてこんなところに…?
「俺は確か…ルミアを助けて、そのまま気絶したような…。」
俺は気絶するまでの経緯を思い出す。転送法陣と【サクリファイス】を止めるために無理をしたんだったな。テロリストの目的を阻止してから気絶したから、恐らく精神世界か何かだろう…それにしても、俺がこの場所に立っているのにはどういった関係があるんだ?確かにサクヤさんの店にはよく通うけども………ん?
「あれ…ウォッチが光ってる…?」
俺はふと何かに気付き、懐からビルドウォッチを取り出すと、何故かウォッチが光っていた………もしかして、ビルドウォッチがこの場所と何か関係があるのか…?
「よっ、トーマ。」
「!」
この声……もしかして……?
俺は“聞き覚えのある人”の声を聞き、後ろへ振り返る……。
「セント…さん…?」
そこには紛れもなく、俺を救ってくれた命の恩人・“桐生戦兎”がそこにいた。
「久しぶりだな、あの時以来か。」
実に8年ぶりの再開…もしかして、セントさんがくれたビルドウォッチが俺をここに…?
「俺があげた“それ”、随分と役に立ってるようだな。」
「はい。俺、仮面ライダーになって皆を守れたんです。もちろん、仲間達やセントさんの力もあってですけど、俺はこの力で必ずヒーローになってみせます。」
俺はジオウになってテロリストが起こした事件を阻止できた事をセントさんに語る。
「その意気だトーマ。けど気をつけるんだ。“力ある者には大きな代償”が伴う。仮面ライダーになった以上、それはトーマもその責任を負わなければいけない。力を持ち過ぎる事は、それこそ正義が悪に傾いてしまう事にも繋がるんだ。」
セントさんが言い放った警告。力にはそれ相応の責任を背負っていく必要がある。幼き頃から持っていた“仮面ライダージオウ”という力、使い方を誤ればそれこそ世界の破滅を招く未知の可能性にして危険性。魔術の存在するこの世界でジオウの力を使う事は魔術の世界へのアンチテーゼのようなものだ。だけど、与えられた力の使い方は決して間違ってはいないと思う。現にジオウの力が無かったら、俺は生きてはいないだろうし、何より皆を守ることは出来なかったのだから。
「分かってます。たとえ生まれながらに不条理を背負わされたとしても、俺はこの力を使います。ラブ&ピースのために!」
「!…トーマ…。」
俺の決意を聞き、セントさんは感銘を受けた。するとセントさんは右手を俺の頭に置いた。
「ずいぶんと“背が伸びた”な。」
俺はその言葉を聞いて自然と笑顔になった。
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「……ん…。」
再び目が覚めると、俺は病室のベットに横たわっていた。やっぱりあれは夢だったか…いや、夢じゃない。あの感覚は確かに現実だった。
起きた時、夜になっていたために病室の視界は暗かった。隣には同じく入院したグレン先生が熟睡していた。
俺はベッドの横のテーブルにドライバーとウォッチが置いてあるのが見えた。俺は起き上がると、そこからビルドウォッチを手にとって見つめる………背が伸びた…か…。
「ふっ…見た目だけですよ…今はまだ…。」
俺は誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。
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side:?
『タイムマジーン!』
時空転移システムでこの時代にやってきた俺は、街外れの草原にタイムマジーンを着陸させる。ウィンドウを操作して機体のハッチを開くと、俺はタイムマジーンから降りる。この街に、この時代にオーマジオウがいる……俺のいた世界を荒廃させた…最低最悪の魔王が…!
「首を洗って待っていろ…オーマジオウ…!」
俺はオーマジオウに対する憎悪を抱きながら、フェジテに向かって歩き出す……オーマジオウを殺して、絶対に歴史を変えてやる……“どんな事”をしてでも…!
side:トーマ
魔術学院の自爆テロ未遂事件から一週間の月日が流れた。今回の事件の首謀者であるヒューイ先生、リドリーとエリック…もとい“ディブロス兄弟”を含めた四人が逮捕された。これは後にグレン先生から聞いたけど、どうやらグレン先生も学院に向かう途中でテロリストの襲撃を受けたらしい。グレン先生の場合は【愚者の世界】で魔術を封殺。その後“カラテ”でメッタメタにして亀甲縛りにして放置したらしい。だからグレン先生は俺よりも先に学院に到着したのか。ジオウに変身するまで一方的にやられていた俺とは対照的だ………けどやる事がえげつないな…。
俺は事件の後、グレン先生と共に病院に搬送された。グレン先生はシスティーナから【ライフ・アップ】による応急処置を受けていた事もあり、すぐに快復したが、俺はマナ欠乏症と貧血の反動で1週間の安静を余儀無くされた。そりゃそうだよな…【ブラッド・キャタライズ】で自分の血を解呪用の触媒に変えた事、【イレイズ】による大量の魔力消費とか…これでぶっ倒れないはずがない。以上の理由から、俺は言う通り安静にしていた。もちろん、システィーナやルミア、カッシュ達やサクヤさんも見舞いに来てくれた。おやっさんは多忙で来れなかったようだけど…。
エリックから拷問を受けていたカッシュ達も、事件後に一斉に診てもらったが、全員軽傷で済んだらしい。もしあの場面で侵入に失敗していたら、それこそ大惨事だったのだから。
俺が入院してる間、ルミアは授業用のノートを俺に見せに来てくれた。件の恩返しなのだろう。彼女の献身的な態度には見とれたの一言だ。
ある日、俺とグレン先生、そしてシスティーナは帝都に呼び出された。俺は重傷で無理に歩く事はできないため、車椅子に引かれながら帝都に行くことになった。
そこで聞いたのは、ルミアの素性だった。ルミアは…3年前に流行病で病死した“エルミアナ王女”だったらしい。だが病死というのは表向きの話。本当は彼女が異能者だからという理由だ。“感応増幅者”を含め、異能を持って生まれた者は悪魔として迫害される。王女様が異能を持っている事を世間が知ったらどうなるか、想像するのは難しくないだろう。そういった様々な政治的事情が絡み、彼女は帝国王室から捨てられ、フィーベル家に引き取られたらしい。
確かに異能を持つ者の中には、その力に溺れて悪事を働く輩だっている。けど異能者全てが完全に悪って訳じゃない。現に俺はルミアのおかげで皆を守る事ができた…けどぱっとしない点もある…あれは本当に“感応増幅”だったのか…?マナ欠乏症と貧血で倒れた俺が、ルミアから“感応増幅”を受けた時、俺の中で“何か”が動いた気がした。まるで長く放置されて古びた時計が“その時だけ動いたのような感覚”が………あれは一体何だったのだろうか…?
あの時の謎を考えながらも、俺達は自爆テロの顛末を聞かされた。襲撃者の目的、ヒューイ先生の裏切り、エリックによる拷問など、あの日起きた事を話した。けどあの場ではジオウの力に関しては話さなかった。ジオウはまだ俺でも完全には把握していないのと、信憑性が薄いからだ。これを話すのはしばらく先だ。
俺達は真実を知る数少ない人物となり、今後ルミアを守るために協力するよう要請された。断る理由なんてない。俺だって、ジオウの力を持つ者として天の智慧研究会に狙われている存在だ。だから俺は、魔王と謳われた力を…皆を守るために使う。ヒューイ先生が呟いていたリベレイターって連中も気になるけど、それは後回しだ。
怪我を治して退院した俺は後日、魔術学院の学院長室に呼び出された。部屋には俺、グレン先生、システィーナ、ルミア、アルフォネア教授、そして学院長がいた。その要件はもちろんジオウの力に関する事だった。
俺は皆にドライバーとライドウォッチを出してその機能を説明した後、実際に変身し、ビルドアーマーやエグゼイドアーマーの姿も見せた。
これを聞いて皆は当然驚いた。俺自身記憶がないとはいえ、魔導器を持っているのだから当たり前だろう。だけどアルフォネア教授だけはドライバーとウォッチを一目見た時、“思い当たるような反応”をしていた。
それはともかく、あの場で分かった事がいくつかあった。まず一つはジクウドライバーは“俺だけしか装着できない”事だった。グレン先生やアルフォネア教授が試しに装着しようとしたが、ドライバーが反応しなかった。この事から、ジクウドライバーは俺にしか装着できないようだ。
次に、ドライバーとウォッチが“今の時代では作れない代物”だという事。最初は超古代文明の遺産かと思っていたが、アルフォネア教授曰く「構造も材質も何もかも新し過ぎる。」と言った。光る数字で時間を示す時点でただの時計じゃないとは察していたが、超古代のものでも、現代のものでもない。そうなると、“未来の技術”の産物かもしくは平行世界の物という事になる。
そしてもう一つは、ドライバーとウォッチは“魔導器ではない別の何か”という可能性だ。その証拠として、グレン先生が発動した【愚者の世界】の範囲内にいるにも関わらず、ドライバーとウォッチが機能したからだ。ジオウに魔術を強化する機能があるとはいえ、本来の用途は別にあるという事だ。
俺自身もジオウに関してはよく分かっていないが、話せる範囲は全て話した。ドライバーやウォッチを孤児院に預けられる頃から持っていた事もだ。
……と、以上のように、大分快復した俺は入院から退院後もいろんな意味で忙しかった。
いつもの朝、俺は制服に着替え、タンスの上に置いてあるジクウドライバーとライドウォッチ各種を忘れずに鞄に入れる。
「よし、行くか。」
俺は支度を終わらせると、自宅の外へ出る。道路に向かい、そこでライドストライカーを起動する。ジオウに変身できるようになってから、移動手段が楽になった。“バイク”という新しい乗り物をこのウォッチ一つで召喚・具現化できるからだ……魔術全然関係ないけど…。
俺はライドストライカーのハンドル部に出現したヘルメットを被ると、バイクに跨がる。ヘルメットのズレを直すと、エンジンを噴かして発進させる。
まずはサクヤさんの店へ行くか。見舞いのお礼を言いたいし、何より腹が減っては戦は出来ぬ…だしな。
数分走り、『カイロスの庭』に到着した。俺はヘルメットを外し、ライドストライカーから降りると、ウォッチ状態に戻す…………ん?
「あれは…バイク…?」
俺はふと見ると、店の横にバイクが停車されているのが見えた。俺のようにコンパクトに持ち歩けるようなものではないらしいが、スマートなデザインから走破性能は良さそうだ。全体的に銀色だが、所々“青い稲妻”のようなラインが走っている……それにしても、俺以外にバイクに乗る人がいるんだな…。
ライドストライカー以外のバイクを目の当たりにした俺は店内に入ろうとすると
「…。」
内側から扉が開き、そこから一人の青年が出てきた。旅人の服装に身を包み、金髪の長髪を三つ編みにして、灰色のリボンで結んでいるが、何故か三つ編みの先端が紫色に変色している。染めたのか、もしくは遺伝的なものなのかは分からない。
青年はそのまま俺の横を通り抜けると、店の横に停車してあるバイクに乗ると、ヘルメットを被り、バイクを起動した。どうやら彼が持ち主だったようだ。
青年はエンジンを噴かし、そのまま走り去っていった。
「っ…?」
俺はその青年を見届けた際、“何かの幻影”が青年についていくのが見えたような気がした………空腹のせいでとぼけているのかな、俺…?
それはさておき、俺は店内へ入る。
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「ところでサクヤさん、さっきの人は?」
「ええ、普通の旅人だったわ。トーマ君達と同い年っぽかったけども。」
「俺達と同い年…?」
いつものモーニングセットを注文し、サクヤさんと雑談する俺。先程すれ違った青年の話をしていた。俺達と同い年なのか…旅人とはいえ、滅多にないバイクを所有してるなんて…。
「それにしてもさっきの子やトーマ君は変わった乗り物に乗っているわね。」
「あぁ…あれはつい最近手に入れたものなんですよ…俺自身あれがなんなのか詳細が分かってないですけど。」
サクヤさんは俺が所有しているライドストライカーや、さっきの青年が乗っていたバイクについての話題を話してきた。バイク自体、俺やさっきの青年以外に持ってる者は恐らくいない。たとえ古代のものだと推測しても、その構造は新しいものだ。
「もしかして、それも“ダイキさん”からの贈り物だったりして?」
「未だ音信不通なのにそれはありえないですよ…。」
ダイキさん、今何処にいるんだ?あの人、収集家として各地の遺跡で探検する仕事をしているらしいが、よく奇妙なものを土産として俺に見せてくる。
「あ、いらっしゃいませ。」
そう雑談していると、別のお客さんが来店したため、サクヤさんが業務に戻っていった。さて、俺も朝食を済ませて学院へ行くか。
俺が紅茶に手を伸ばそうとした…その時だった。
「っ!?」
突然、謎の波動と共に周囲の時間が止まった。物体の動きやサクヤさん達の動きが止まっているが、ライドウォッチを所持しているおかげなのか、俺だけはその影響を免れた……何だこれ…?誰かが時間停止の魔術を唱えたのか…!?けど魔力が一切感じられない……だとしたら異能か…!?
「あ~あ、せっかく“ゲムデウスの力”を与えたのに、やられちゃうとは情けないなぁ~…ま、試作ものだから仕方ないか。」
「!?」
俺の背後から少女の声が聞こえた。俺はすぐに立ち上がって後ろへ振り返ると、そこには黒と紫を基調としたパーカーとワンピースに身を包み、紫色の短髪には“懐中時計のような髪止め”が二つ付けられている少女がいた。
「誰だお前…!?」
「ん?私は“メルディ”。はっきり言うなら、“リベレイター”の一員ってところかな?」
そう気楽に名乗るメルディ……“リベレイター”…だって…!?
「リベレイター……ヒューイ先生やレイク、リドリーが言ってた連中か…!」
「ピンポーン!…という事は君がジオウなんだね。」
憤りを感じている俺とは対照的に、やけにテンションが高いメルディ。やはりというか、ジオウに関して何か知ってるんだな…。
「何故レイクにウォッチを…?」
「私達はある目的のために行動しているのさ。全てを破壊しかけた時空の魔王・“オーマジオウ”に代わる新しい魔王を擁立するためにね。」
メルディは目的を語った。新しい魔王を擁立するために動いている……いや待てよ、“オーマジオウ”…?
「オーマジオウ…?それは一体「君の事だよ。」…っ!?。」
「未来の君は、世界を支配する魔王になってるんだよ。だから私達は君に代わる魔王を擁立するために動いているんだよ。」
メルディは途中で険しい顔になってオーマジオウが誰なのかを語った……俺が…未来で魔王になってしまってる…!?ジオウが魔王の如き存在であること……ヒューイ先生は…レイクは…天の智慧研究会はこの事をリベレイターから聞かされていたのか…?
「…俺はお前らの言う“魔王”への道は進まない。俺は“正義のヒーロー”になる。何を言われようとも、俺はジオウの力を皆を守るために使う!」
「へぇ~…だといいけどね。」
俺の決意にメルディはそう言うと、俺のもとに近づいてくる。
「君がどんな風に力を使うか、見せてもらうよ。」
メルディはそう言い残すと、そのまま回れ右して出口に向かっていく。メルディが店から出ていくのと同時に、時は再び動き出した。
「…。」
未来では魔王となっている俺、その代わりとなる魔王をつくるために動くリベレイター……短期間のうちに関係が複雑になっていった。天の智慧研究会もそうだけど、これからはあのリベレイターにも気をつけないとな…。
俺は戦うべき相手が2つに増えた事を心の中で苦悩する。だけど俺はまだ知らなかった……もうすぐ、“3人目の相手”が現れる事を…。
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俺は朝食を終えて店から出ると、今度は徒歩で学院に向かう。このままバイクで学院へ直行したいという気持ちもあったけど、ルミアの護衛という任務を依頼されたからそういう訳にはいかない。しかも俺とさっきの青年以外にバイクを所有している者がいないため、非常に目立つ。とはいえ、バイクを手にしたから馬車に頼る必要がなくなったため、バイトや長距離の移動は多少楽になったのは間違いない。“あの場所”へ行くのに馬車代が必要なくなるのは嬉しい事だ…同時におやっさんの馬車に乗る機会も減るけれど…。
噴水のところまで歩いていくと、そこには眠そうな表情のグレン先生の姿があった。
「おはようございます、グレン先生。」
「ん?ああ、トーマか…おはよう…。」
欠伸をしながら挨拶を交わすグレン先生…といっても、もうすぐ非常勤講師としての期間が終わるから、グレン“さん”と呼ぶのが正しいか…。
「そんな眠そうな顔してると、またあの時のように遅刻しかねないですよ?」
「んなこた分かってる…というかお前、ついこの前まで重傷だったじゃねぇか。無茶しやがって全く…。」
「そりゃ、無茶をしなかったら全て消えてましたからね…。」
「…どうしてなんだ?」
「…はい?」
「どうしてそこまでして今回の事件に首を突っ込んだんだ?いくら巻き込まれたとはいえ、無理に関わる必要はなかったはずだぞ?」
「…。」
皮肉の言い合いから一転、グレン先生は真剣な表情で、俺が事件に関わった理由を尋ねてきた。グレン先生の言っている事も正しい。普通だったらここまで関わる必要はない。リドリーに襲われたら、その時点で逃げ出してしまえばいいだけの話だ。けど俺は違う。奴らは俺から大切なものを奪った。住む場所も、家族同然だった孤児院の皆も、何もかもだ。今回の事件だって、ルミアを連れ去ろうとしたり、学院の皆を消し飛ばそうとしたり、そして俺自身のジオウの力を奪おうとしたりと、魔術を極めるために外道の限りを尽くしている。だから俺は事件に自ら首を突っ込んだ。
「…無駄にしたくなかったんです。俺に生きる意味を教えてくれた皆や、俺を助けてくれた恩人の想いを。」
俺はそう言いながらビルドウォッチを取り出すと、それを見つめる。
「これ以上皆が犠牲になるのなら、俺はこの力を使って皆を守りたい。孤児院の皆と約束した、正義のヒーローになるために。」
「そうか…けど、この世界じゃお前が抱いてる夢は、ただの幻想に過ぎないぞ?」
「そうだとしても、俺は常に理想に向かって突き進む…託された想いがある限り。」
魔術の世界は表裏一体。理想が通用しないなんて百も承知だ。けど、俺は皆から託された想いを背負って突き進む。皆を守るために。
「それに、嬉しいんですよ。」
「…何がだ?」
「誰かの力になれると、心の底から嬉しくなって、顔がつい“くしゃっと”なるんですよ。」
「…まぁ、気持ちは分からなくはないけどな…。」
グレン先生はそう言い返すと、小声で何か呟いていた。誰かの力になれるとくしゃっとなる気持ち、これはセントさんが教えてくれた言葉だ。
「そう思いますよね、グレン先生…あ、そうか…もうすぐ先生じゃなくなるんだったっけ…。」
俺はグレン先生がもうすぐ非常勤講師じゃなくなる事を思い出しながら立ち上がる。
「あんたの授業は殆ど成り立ってないものばっかりだったけど、まあまあ楽しかったですよ。学院から去っても、元気にやってる事を願ってますよ。」
「いや、俺“講師続ける”ぞ。」
「…え?」
突然の発言に首をかしげる俺。
「あれ、けどもうすぐ一ヶ月の期間が切れるんじゃ…。」
「だから、正式に魔術講師になる事にしたんだよ。まぁ、セリカの奴が自分の金が自分で稼げってうるせぇからな。」
どうやら正式な魔術講師として続けていく決意をしたらしい。そうか、やっぱりグレン先生も正義の魔法使いを諦めていないって事か。
「これからもよろしく頼みますよ、グレン“先生”。」
「おう、これからみっちりしごいてやるから覚悟しとけよ。」
それはまたぐだぐだな授業のフラグかな?いや、もう十分慣れっこだな。
俺達がそんなやりとりをしていると…
「グレン先生、トーマ君、おはよう。」
「ん?ルミア、それにシスティーナも。おはよう。」
「ええ、おはよう。トーマ。」
ルミアとシスティーナがやってきた。俺は二人に挨拶を交わす。今までは一人で登校していたが、あの事件を機に、これからはこの四人で登校する事が多くなる。まぁ、人数が多い方が楽しいに越した事はないけどね。
「そういえば、さっきまで二人で何を語ってたの?」
「え?…別に?何でもないよな?トーマ。」
「あ~、はい。ただ世間話してただけですよね。」
「怪しいわね…。」
やっぱり生真面目なシスティーナは怪しんでいた。言えない…正義のヒーローを目指す夢をグレン先生と語り合ってたなんて恥ずかしくて言えない。
「あ~強いて言うなら、白猫のあまりの喧しさをトーマと語ってた。だよな?」
「あ~、そうですね。」
「何ですってぇ!?」
話をごまかした俺とグレン先生。だが、その内容はシスティーナの怒りを買うものだったため、当然システィーナは辞書を構えて…
げ ん こ つ
「ぐぉぉぉ……!」
「ぁぁぁぁぁ……!」
例の如く辞書チョップを放った…だからこれ、拳骨じゃないって…。
俺とグレン先生は強打した頭部を両手で押さえて悶絶した。この光景を見て苦笑いするルミア。
「自業自得です。大体、あれは二人がふざけた行動をとるのがいけないのよ。」
「そうか?…時計修理をしてた俺を“自覚なし”って言うのはちょい理不尽さを感じたけど…。」
「あれは学院に来てまでやる事じゃないからよ!」
「Oh…前にも言っただろ?学業と時計修理を兼ねないといけない身にもなってくれって…。」
朝っぱらから説教女神モードのシスティーナ。多忙にも関わらず理不尽を喰らう俺。多忙になったのは大体おやっさんが悪い…うん…。
「え?トーマって時計修理のバイトやってるのか?」
「あ、はい。時給そこそこ良いし、何より小さい頃からお世話になってますからね。まぁ、仕事内容忙しいけど…。」
「い~なぁ~、どうせならそっちに就きたかったなぁ~。」
「ちなみに先生、“時計修理”は出来ますか?」
「え?出来ないけど。」
「じゃあ無理だ。」
「( ´・ω・`)」
俺がきっぱり答えた瞬間、グレン先生はしょぼんとした顔になった…何処にも楽な仕事なんてないんだよ、グレン先生。
「えーと、そろそろ学院に行かないかな?」
「あ、そうだったわ!ほら、二人も早く行くわよ!」
「そうだな…ほらグレン先生、いつまでもしょぼんな表情にならないで、行きますよ。」
「( ´・ω・`)」
「“これ”で目を覚ます?」
「なっ!?お、俺は目覚ましてるぞー!?あはは!?」
俺が親指を立てると、グレン先生は汗を流しながら立ち上がり、すぐに歩き出した…【笑いのツボ】…相当トラウマになったのか…。
「あ、あんたも黒い所あるのね…。」」
「まぁ、俺なりの渇の入れ方かな。」
「あの様子、グレン先生すごくトラウマ持ってそうだけど…。」
システィーナとルミアも【笑いのツボ】の効能に引き気味なご様子だ…安心してくれ、二人には絶対やらないから…ってか、もしツボを突いたらそれこそ大変な事になりそうだから…。
そんなこんなで俺達は学院に向かって歩き出す。色んな災難に巻き込まれたけど、こうして学院生活を送っているのが何より心地いい。時は短いとはいえど、その短い時間で沢山の思い出を築きたい。俺はそう思っている。
だけど運命はそれ許さないだろう。魔王と謳われた仮面ライダージオウの力、それを持つ俺に幾度となく災難は立ちはだかるだろう。だけど俺は負けない。俺は皆を守るために戦うんだ…ラブ&ピースのために…!
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「かくしてジオウは目覚めた。彼自身は否定しているが、彼の魔王への道は始まったばかり。我が魔王、そしてその仲間達に天の智慧研究会やリベレイターは牙を向くだろう……ん?私が誰かって?名前の方はまた次回お教えしましょう。おっと、私が出たからといってまだ終わりではないですよ。あと少しだけ話が続くので、どうか読み忘れなく。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつもの授業が終わり、俺は学院からバイト先である『アキレス時計店』へ向かって歩き出す。それにしても、錬金術でのグレン先生の“あれ”、やば過ぎるだろ…錬金術で石ころをニセ金に変えてそれを悪徳商人に騙し売るなんて…グレン先生だから思い付く事だろうけど、いくら何でもダメでしょ…。もしかしてグレン先生も金銭面でピンチなのかな…?まぁ、そんな事したら捕まるのは火を見るより明らかだけどな。現にシスティーナの父親が魔導監察官やってる事を聞いた時のグレン先生、焦り具合が尋常じゃなかった訳だし…まぁあれだ、ご利用は計画的にって奴だ。
俺は今日の錬金術の授業の内容を思い出しながらバイト先に向かおうとすると
「トーマ君。」
「あれ、ルミア?それにシスティーナも…どうしたの?」
「トーマ君が通ってる時計屋、一緒についていっていいかな?」
「別に構わないけど、どうして突然?」
「実はこの前、家の時計が一つ壊れちゃったのよ。だから今日はルミアと一緒に時計屋に行く事にしたの。」
どうやら二人がついていく理由は、家の時計が一つ壊れたかららしい。修理を依頼するか、もしくは新しい時計を購入するかのどっちかだろう。
「なるほど…分かった、一緒に行こうか。」
「うん。」
「ええ。」
俺とルミア、システィーナの三人でおやっさんの時計屋へ向かう事にした。夕焼けの空、街の通りを歩く俺達。あの事件からこの二人と絡む機会が多くなった気がする。他の男子からは絶対に嫉妬買われそうだけど…。
「やっと見つけたぞ、“オーマジオウ”。」
「「「!?」」」
突如、後ろから声を掛けられた俺達は背後を振り返る。そこにいたのは黒と赤の強化服にハーネスをつけた青年がいた……ちょっと待てよ…?今あいつ、俺の事を“オーマジオウ”って言わなかったか…?
「…誰?」
「名乗る必要はない。俺はお前を殺しに来たんだからな。」
青年は冷徹にそう言うと、“ある物”を取り出す……っ!?それは…!
「あれって…?」
「ドライバー…?」
青年が取り出したのは、俺と同じジクウドライバーだった。青年はドライバーを装着すると、左腕に装着されているホルダーから赤いライドウォッチを取り外す。赤いライドウォッチのカバーを回し、ボタンを押した。
『ゲイツ!』
青年はゲイツウォッチをドライバーの右側に装填。ドライバーに右の矢印が表示された後、ロックを解除する。電子音の音と共に、青年の背後に同じく時計のエフェクトが出現するが、俺とは違い数字で現されている。
「変身!」
青年はそう叫ぶと、ドライバーを両腕で抱え込んで一回転させた。ドライバーには流れるように【GEIZ】と表示された。
『ライダータイム! 仮面ライダーゲイツ!』
音声と共に時計に黄色い『らいだー』という平仮名が表示され、青年の周りに多数のリングが展開、青年の体に時計を模した赤いアーマーが装着された。浮遊した『らいだー』の平仮名がマスクにくっつき、変身が完了した。
赤をベースに胸部、指に黄色い部分があり、ドライバーには【2068】という数字が表示されていた。
「嘘…?」
「変身しちゃった…。」
「……っ!」
二人が驚いている中、俺もその光景にいつも見る悪夢を思い出す………悪夢の中でジオウと赤い戦士・仮面ライダーゲイツが戦っていた光景を……同じドライバーを持つ者は惹かれ合うって事なのか…!?
「うおおおおおおおおっ!」
ゲイツは考える時間を与えず、俺達に向かって突撃してきた。
ED[GHOST]
トーマ「突如俺達の前に現れた仮面ライダーゲイツ。俺の事をオーマジオウと呼んで容赦なく襲いかかってきた。未来で魔王になっている事実に動揺を隠せない俺。そんな中…」
システィーナ「た、大変よ!ルミアが!」
トーマ「何だよ予告中だぞ…ってええ!?」
ルミア「皆、どうしたの?」(狐のお面着けてモザイク)
トーマ「…なぁルミア。お前今、絶対放送出来ない状態になってる…。」
ルミア「え…あれ、どうして私こんなにモザイクかかってるの?」
トーマ「俺も分からない…お面つけただけでこんなになるものなのか…?」
システィーナ「言ってる場合じゃないわよ!早く元に戻さないと!」
トーマ「そ、そうだなっ!…なぁ、お前も手伝ってくれ!」
?「ん?」(豹のお面着けてモザイク)
二人「「なんでさぁぁぁぁぁぁ!?」」
NEXT『舞い降りるG/蒼きF』
幽一「なんだこのカオスな図…。」
進也「分かんない。」
*この後、お面外したら元に戻りました。