キボウノツボミ、いい歌ですね……のわゆのOPになるんでしょうか
エンドレスループが止まらない
『…………大社から公開された情報は以上です。■■■■さん、今回の作戦の結果を受けて今後どのような展開になると予想されますか?』
『そうですね……やはり、他地域と合流できたこと、犠牲を出さずバーテックスを退けられたことは非常に大きな成果といえるのではないかと……勇者が戦力として機能することも証明されましたし、』
テレビから延々流れる賞賛の言葉。
カチカチと無機質な音がチャンネルを切り替えていく。
『…………て! 今回は勇者様たちが寄られたというお店を取材しその人柄を、』
『…………なにより大きいのは、犠牲はおろか負傷者すらでなかったということです! 大社は情報を明かしていませんが、今後勇者部隊というものができれば本土奪還も夢では、』
『…………それでは、避難された冬木市の方々にお話を伺っていこうと思います。すみませ――ん!』
『…………勇者様とは何か。大社職員のAさんの話から、彼女たちの暮らしを、』
チャンネルが一周した所で、若葉は携帯テレビの電源を落とした。
「……今日も、どの局も代わり映えしなさそうだな」
この二日、どこのチャンネルも似通った内容の番組ばかり放送している。大社が犠牲ゼロの戦果を大々的に広報した結果らしい。
四国の人々は作戦の成功に歓喜し、冬木市からの避難住民を快く迎え入れた。勇者への戦力的な不安、バーテックスへの恐怖を払拭しようという大社の狙いはある程度達成できたと言えるだろう。
それは、さっき映っていた番組で興奮気味に喋り続けていたコメンテーターの様子からもよく分かった。疲弊していた人々にとって勇者の活躍は活力になるに違いない。
ただこうも同じ内容を繰り返されると、当事者としては何とも言えない気分になってしまう。
「まぁ、昨日の今日ですから……けれど、思ったよりも大騒ぎになってますねぇ」
丸亀城の食堂で勇者揃っていつもの昼食(元々は若葉発案)。
いつもは各々好きな話題に花を咲かせるが、今日は自然と前日の話で持ち切りになった。
「しっかし若葉さぁ、結局足は大丈夫だったのか? 包帯グルグル巻きだけど」
「骨には異常ないそうだ。問題ない」
心配そうな球子に、若葉は大丈夫だとギプスで固定された右足を持ち上げてみせた。
実際は十分重傷だが、後遺症の心配はないと言われている。
移動の不自由さはあるものの、それもすぐに慣れる。一週間程度で訓練にも復帰できるだろうと、若葉はそれほど重く考えていなかった。
直後、場の空気が急低下した。
「問題ない、じゃありませんよ? 若葉ちゃん」
カツン、と箸を置く音が響く。
薄っすら笑みを浮かべて、ひなたが若葉を見据えていた。声音も表情も優しいが、それは見かけだけに過ぎない。付き合いの長い若葉には見えない怒りを確かに感じていた。
「千景さんから聞きました。その怪我、若葉ちゃんの独断専行が原因だと」
「なッ……千景!?」
裏切ったのか! と視線を送るが、一つ年上の仲間はそっぽを向いたまま「事実じゃない」と取り付く島もない。
「……しかし、」
「しかしじゃありません!」
「あのタイミングなら最後尾の私が殿(しんがり)を務めるのが一番合理的だ」
「それは若葉ちゃんが一人離れていたからです! 連携訓練を呼びかけた若葉ちゃんが、単独
行動をとっては本末転倒じゃないですか!」
「む……むむむ、」
言葉に詰まる若葉。
友奈が仲裁に入ったもののひなたの『注意』はなかなか収まらず、三十分を要した。
「……タマは、いま決めたぞ。ひなただけはぜったいに怒らせないようにする」
「……タマっち先輩は難しいんじゃないかなぁ」
それは球子本心からの誓いだった。
その日の放課後、ひなたと若葉は共に放送室に向かっていた。
若葉は諏訪との通信をするため、ひなたはその付き添いである。
「……では、まだ衛宮さんの意識は戻らないのですか?」
「あぁ、遠坂さんの話では命に別状はないそうだが」
無理もないだろうな、と若葉は心の中で付け足した。
壁の外で士郎を回収した時、彼の負傷は若葉の比ではなかった。両足はねじくれ、腕は曲がり、特に左腕は辛うじて千切れていないような状態だったのだ。
一命を取り留めたのは奇跡に近い。
「……あの人がいなければ、神樹の結界は破られていたかもしれない。目が覚めたら、勇者としてお礼をしに行かなければならないな」
「えぇ。その時は私もついていきます」
ひなたの言葉に頷く。
そうこうしているうちに、二人は放送室の前に着いていた。
通信が終わったら落ち合う約束を交わし、若葉は一人通信機に向き合う。
前日は作戦後のごたごたもあって通信できなかったが、その分今日は歌野に話したいことが山積みになっていた。作戦の成功、聞いたことのない形状のバーテックス、自分たちの反省、冬木の勇者代行……等々、何から話すか迷うほどだ。
高揚する気分を自覚して、少し恥ずかしさも感じながら通信機を起動させ――――、
「…………出ないな」
諏訪との通信は、その日繋がることはなかった。
その日、諏訪の天気は快晴の予報だった。
諏訪の勇者:白鳥歌野の勘が根拠の予報だが、実はこれまで外れたことがない。
「……これは、なかなかデンジャーな光景ね……」
だから、地平線を埋め尽くす何かに初め、雪雲だ、予報が外れたと小さな騒ぎが起きた。
歌野が目視で確認して、すぐに間違いなことは分かった。
雲ではなかった。無数のバーテックスが、微動だにせずひしめき合っていただけだ。
「昨日は確か、乃木さんたちのミッション・デー……ってことはなるほど、冬木の次はここをターゲットにしたというわけね」
結界の外の高台で仁王立ちになって、歌野は笑う。
例え、どれだけ絶望的な戦いであっても。勝ち目など、初めからなかったとしても。
歌野は、皆の『日常』を守ると決めているのだから。
大変遅くなりました、今回は短め――合流編のエピローグみたいなものです
今朝ようやく同人誌に関する作業が終わりました……もう極道入稿コースですね、辛い
230ページ超えました、ビックリ
次回からはようやく新章ですね、「諏訪崩壊編」です
ではまたお付き合いいただけると嬉しいです、宜しくお願いします
感想たくさん欲しいです(発作)