のわゆで好きなのは、郡千景なんです。
ただ、話をぶん回すのに一番適してるのは乃木若葉なんですよね。
主人公力を感じます。
sn組だと、圧倒的に遠坂凛がやりやすいですね。
機転が利いて手札が多い、衛宮士郎はその辺不器用なので。
とりあえず、ここまでが諏訪編の導入になります。
最後まで読んでいただけるととても嬉しいです。
二〇一八年 一月二十八日 夜。
「……以上が、私が聞いた諏訪の現状だ」
消灯時間はとっくに過ぎた時間。
いつもなら一番に電気が消える若葉の部屋で、勇者たちは大社に内緒の『女子会』を開いていた。
懐中電灯の薄明かりに照らされた室内で、若葉は説明用のノートを皆に見せながら丁寧に説明をしていた。
聞き手には四人の勇者の他に、ひなたの姿もあった。正直に言うと、本当は説明の確認等でひなたの協力を得てから準備を進めていきたかったのだが、手間取って日を跨いでしまうよりは都度説明した方がいいと若葉は判断した。
「助けに行かなきゃ……!」
「そうだ、今のタマたちならどんな所だってすぐ行ける! 助けられるんだっ!」
前のめりな友奈と球子の反応、は予想通りだ。
若葉は他の二人の様子を窺う。千景は若葉の予想以上に乗り気な様子だが、杏は不安げな表情を浮かべている。まだ自信が持てていないのだろうか。
そしてただ一人、巫女として参加しているひなたは、
「ひなたは、どう思う? 私は助けに行きたい。彼らの恩に報いたい」
「若葉ちゃん……」
思い立ったら迷わないのが、幼なじみの美徳だとよく知っている。
諏訪の話はひなたが一番よく聞いていた。手を貸せない歯がゆさも、冬木に協力できたことでついた自信の、いずれは諏訪もと強く抱いていた強い意志も、全部を共有してきた。
だからこそ、今日この時ばかりは自分の立ち位置が疎ましい。
ひなたが若葉と同じ勇者の立場だったなら、諸手を挙げて彼女の提案に賛同できたのに。
「皆さんの、諏訪の人たちを助けたいという想いは、よく分かります。私も若葉ちゃんから諏訪の話は色々と聞いていたので、叶うのなら諏訪の人々を護り続けた勇者と巫女の、助けになりたいです。けれど、」
続きを言葉にするのが苦しい。
だが、言わなくてはならない。それが大社の巫女、上里ひなたのお役目である。
「大社は、諏訪の人々の救援を行わないと決めています。諏訪の防衛と遠征のリスクを考慮し、静観を貫くつもりである、と」
「……つまり、見殺しにするってことね」
「千景、そんな言い方は、」
かばう声にも普段の力がない。それだけ、若葉も失意の念が強いのだろう。
それは他の勇者も同じのようだった。
「大社の考えも分からなくはないです。ただでさえバーテックスと戦うことのできるのは勇者五人しかいない中で、勇者を失うかもしれない作戦は採りたくない、と考えるのは普通だと思います」
「前の作戦の時は、私たちは待ってるだけだったもんね。みんなで向かうのはまた難しさが違うのかな」
うーん、と悩みつつ理解を示す杏と友奈だが、諏訪救援の課題は他にも多くあった。
常識で考えれば、実際リスクとリターンが見合っていないのも事実だ。
諏訪を助ける事で得られるものは、諏訪の人々の命と巫女・勇者の保護、そして諏訪の土地神の協力。
だが、現状の諏訪を考えると、土地神の力が得られるかは怪しい。巫女と勇者も神樹に選ばれた存在ではなく、四国でも同じように力を発揮できるかは未知数だ。
もちろん、人口が増えることでメリットはある。
神樹の力の源は人々の信仰心であり、人口が増えればそれだけ信仰も多く集まる事に繋がる。
神樹の力が強まれば、結界の強化や勇者システムの強化に繋がり、より安定して四国防衛、そして人類の反抗に結びつくはずだ。
しかし、仮に勇者一人でも失うことになれば、その損害は計り知れない。諏訪の人々の命と天秤にかけても、勇者の一人の命ですらそれより重いと大社は結論づけていた。
大社の保守的な姿勢に、先の作戦で勇者に負傷者が出たことが大きく関わっていることを、この場の誰も知らない。圧倒的に優位なはずの場所で、バーテックスに優位なはずの勇者、それも四国の勇者筆頭である乃木若葉が行動に支障を来すほどの怪我を負った。
勇者の存在を人類反抗の要としてきた大社にとって、指針が揺らぐには十分すぎた。
もはや、神樹からの新たな神託が下されない限り、覆すのは難しいだろう。
「外のバーテックスの活動は今も活発なままですから、ヘリや船を用いた移動は難しいでしょうね。大人数の移動はどうしても小数での目立たないようにしないとただの的になってしまいます」
「……大橋はまだ使えるが、あそこも普通に通れば見通しの良い一本道だからな」
何かしらの工夫がなければ困難を極める、というのは若葉にも分かる。
そして、その困難を解決し得ると豪語できるほど、勇者たちも自分の力を過信してはいない。何かしらの協力は必要不可欠だ。
如何に、大社を説得するか。
話し合いはそこに集約され、めぼしい案が出ないまま──遂に夜明けを迎えてしまった。
翌日、午前の鍛錬は『休止』になった。
寝不足極まった勇者たちを一瞥するや、士郎が「今日は無理そうだな」とさっさと予定を取りやめてしまったためだ。
結果、午前中が丸々空いたため、各自の予定で動くことになった。特に眠気に負けそうだった杏は自室で仮眠を取りに行き、友奈と球子は「身体を動かしていた方が眠気覚めるから!」と丸亀城敷地内でジョギングをしている。
千景は夜更かしに慣れているのか、いつもと変わらない様子で訓練場に向かった。日が空いて、感覚を忘れてしまうのが嫌だという。
そして、若葉は、
「さて……どうしたものかな……」
木陰に座って、静かに思考を回していた。
考えるのは諏訪の話。
何とか救援に行ける方向で大社を説得したいが、交渉材料があまりに乏しい。
危機に見舞われている人を助けたい。それは本来、尊重されてしかるべきだが、四国の人々もまた同様に危機に苛まれている状況に違いはない。
逼迫しているか、していないか。自分の感情で諏訪に向かい、結果諏訪の人々も助けられず、仲間も失う最悪の結果になれば四国の防衛どころではなくなる。それは、四国の人々も見捨てたに等しいのではないか。
勇者の重責は、中学生の少女たちの肩にはあまりにも重くのし掛かっている。
「……不調みたいだな」
頭上からの声に顔を上げると、褐色の肌が目に付いた。
「隣に座っても?」
士郎は普段と変わらない調子で、若葉から少し距離を離して腰を下ろした。ほんのひと月前に四肢に重傷を負ったとは思えない動きに、その怪我を実際見ていた若葉は信じられないものを見るように目を向けてしまう。
「怪我は本当に治ったのですね。私より、よほど重傷だったと思うのですけれど」
「ああ、これか? 知り合いのお陰で動くようにはなったんだが、無茶をするなと大目玉を喰らったよ」
そう言って振って見せた左腕は、あの時千切れる寸前だったように見えていたのだが……そう簡単にくっ付いたり動かせたりするものなのだろうか?
それよりは軽傷だった若葉の足は、まだ怪我が完治できていない。
「そっちの方こそ、勇者が全員揃って体調不良なんて何かあったんだろう? 私に話せる事なら、話してみてくれないか」
「本当に、よく見ていますね……」
「それが私の役割だからな。こう見えて眼だけは良いんだ」
知っている。勇者にも視認できない目標すら捉えるその眼と広大な視野があるからこそ、五人の勇者を同時に指導できているのだろう。
実力的には勇者以上、そして大社の『神官』ではない人物。
しかし、それ以上は何も知らない。信じていいのか、頼って良いのか。
若葉は一つの岐路に立たされていた。
型月世界の治癒魔術について、自分なりに描写を見て分析はしているのですが、正直これが正しいって確証が持てている訳ではないので(ん?)と感じた方は助言いただけると助かります。
sn等の描写を見る限り、
〇傷の修復、接合程度ならば遠坂凛ほどの実力を持つ魔術師であれば可能
〇欠けた臓器の再生でも、莫大な魔力があればごり押しで可能(士郎の心臓修復)
〇死者蘇生は第三魔法の領域
という認識です。
とりあえず、今回の話までと、ちょっとした間話が載ったのが明日のコミケの新刊になります。
間話の方は多分こちらに載せるか微妙なので、読んでいただけたら感想貰えるとすごく嬉しいです。