異世界転生で現地住民が理解力が高い話   作:ぱっぱらぱ

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主人公は基本的に現地の住民を古代人だの未開人だのと呼ぶ差別主義のゴミです。
本作品中一番の無理解はこの人間でしょう。


王の理解力が試される

 生まれて飛び出ておぎゃぎゃぎゃ~ん。とそんな具合に異世界転生した。今の年齢は五歳で、すでに絶望している。

 

 なんたって異世界である。しかも文明レベルは現代に遠く及ばない。糞尿は桶にためて捨てに行くような文化レベルだ。上下水道完備が当たり前の現代人にはキツイ世の中だ。食べ物も味気ないうえに量も少ない。

 一応、我が家は貴族であるのだがそれでも少ない。別に宗教的に清貧が貴ばれているとかそういう事情もなく純粋に金がないのである。領地の主産業が農業なのに食糧難。それもこれも覇権国家である帝国のカツアゲが半端ないレベルだからだという。マジかよ許せねえな。

 

 とはいえ自分にできる事なんてたかが知れている。こういう時、理系の学部とか出てれば火薬作ったり肥料作ったり出来るのかもしれないがあいにく自分は経済学部出身の文系である。学校で学んだ経済学の基礎的知識はこの世界では役に立たない。今現在この国で行われている経済活動は現代で経済と呼べるほどの規模ではないし、そもそも税収などが明かされていないので推測でしか理論展開ができない。ギリ役に立つのは統計学くらいの物だろう。分析すべきデータの信憑性が薄いということを考えなければの話だが。

 

 まあ一番の問題はデータ云々環境云々ではなく、この時代の思考方法がまるで現代と違うことだ。

 現代人ならば、因果関係が理解できる。それは科学的手法による証明が信頼できると皆一様に考えているからだ。だがこの世界は違う。

 雨が降ってきた。という事実の原因は水蒸気が上昇し、冷やされて雲になり、雲の中で結合し、雨になって降ってくると説明されれば理解できるのが現代人である。だがこの中世っぽい文化レベルの古代人はこの説明もっともっと噛み砕いて説明したところで理解しないのだ。彼ら曰く、聞いたことがないだの神話に載っていないだのそんな論理である。

 

 つまりは俺の話をまともに理解できる奴がいないのでデータの必要ない法則や論理を説明しても意味はないし、何か実際にやってみようにもそもそも国自体が貧乏なので実践できない。

 詰んでるな。遠くない将来に近隣国家か件の帝国に飲み込まれて終わりだなこの国。という結論に達したのが四歳くらいの時である。それから一年間ずっと絶望しっぱなしだ。

 

 しかし、それも今日までかもしれないのである。五歳になると“スキル”とかいうスピリチュアルなサムシングが目覚めるらしい。五歳で一律目覚めるとかこの推定人類は絶対ホモサピエンスではないがそんなことは気にしちゃいられない。

 スキルは不思議なパワーだ。この異世界では魔法はないがスキルがある。ここで“火のスキル”とか手に入れば火の魔法を手に入れたようなもんである。個人的には一人で生きていけそうな“治癒のスキル”とか手に入ればいいのだが、多くは望まない。国が滅んだ後に独り立ちできるスキルに目覚めたら放浪ルート一直線である。

 

 そんなこんなで五歳の誕生日。俺が生誕しただろう時刻にスキルが芽生えた。これといった予兆があるわけでもなく唐突にスキルが使えそうな気分になり、実際に使ってみるとその詳細が頭の中に流れ込んでくる。うおぉぉぉ、情報量が多い!

 

「何のスキルに目覚めたんだろう? 私の血を引くなら“運搬のスキル”だ!」

 

 父が目を輝かせながら聞く。

 

「私の血ならば“通信のスキル”よ!」

 

 母も普段のおっとりした様子よりやや声を弾ませて問う。

 

「お、おお。うおおおおおおおお! やったー! “通販のスキル”だあああ!」

 

 そして俺はガッツポーズをしながら勝ったぞと雄たけびを上げた。

 

 

 

 そんな誕生日から一週間。俺は考えていた。もちろんスキルのことである。

 “通販のスキル”はその名の通り通販ができるスキルだ。発動させると某通販サイトのページが目の前に現れて、タブレットのように操作ができる。品揃えは現代社会並みであり、貨幣価値はこちらの世界で一般的に使用されている銅貨一枚が10円で、銀貨一枚が500円である。金貨は試していないのでわからないがこちらのレートだとおよそ銅貨の貨幣価値は100円前後なので普通に使うと損である。

 

 ただ、まあ普通に使った場合の話だ。この辺は後々利用していこう。

 

 俺のスキルはもちろん独り立ちしても余裕で生きていける。何せ通販で手に入るものは高品質で技術的にも優位なのだ。大量生産もされているので、市場を独占することも可能である。そうしてどこかに店舗を構えるもよし、行商人として大金稼ぐもよしで未来の展望は無数にある。

 しかし、そんなちっぽけで労力のかかることをするよりはもっと楽で大それたことができる。それをしないのは機会の損失だ。

 

 俺はこの国を強くする。生活が苦しいのも強大な帝国が弱小国である我が国を搾取しているからだ。なぜ搾取されるかといえばこの国が弱いからだ。

 技術もなく、社会制度も未熟で経済の規模も小さなこの国をどうにか立て直せる展望があるならば、そうしたほうが楽なのだ。立役者になれば商人のように強盗その他襲撃におびえる心配もないし、それ以上に大きなもうけが出る。この“通販のスキル”ならば、一つの条件さえクリアできれば勝ったも同然なのだ。その為にすることがいくつかある。

 

 まずはこの国の王と仲良くなる。それが最初の課題だ。

 

「父上! 私の登城はいつごろになりそうですか?」

 

「おやおや、スキルを発現してからずいぶん積極的になったなあ。えーっと、次の報告の時だから三週間後だね。そんなことを聞いてくるなんてどうかしたのかい?」

 

 結論を出した俺は父のいる書斎に突撃した。厳格な家ならば怒られるだろうが弱小国の中の中堅貴族の家ならばこの緩さだ。優しい両親でよかった。

 

「はい、そこでスキルのお披露目も予定されていますよね? そこで出し物をするために少々お金を貸していただきたいのです!」

 

 俺が天真爛漫っぽい演技をしながらそう言うと、父は顔を若干曇らせながら金かあとつぶやいた。

 

「……ちなみにいくらくらい必要なんだい?」

 

「銀貨十枚ほどです」

 

「銀貨十枚? 金貨じゃなくて? いやまあ金貨十枚なんて言われても出せないけど、銀貨ならまあ私のお小遣いから捻出しよう」

 

 そういって父は約五千円ほどの価値のある銀貨十枚を渡してくれた。

 五千円あれば通販で何が買えるのか。結論だけ言えば、バッテリー型の3Dプリントペンと乾電池型のUSB充電器と本が一冊が買えるのである。

 

 そして当日。父の政務の報告に合わせて俺も一緒に登城した。我が家の領地はさほど広くない領地で王都からも近い。歴史をたどると、そもそも王に使える騎士の一人が手柄を立てたので王領の一部管理を任され、そのまま長く管理していたので割譲してくれたらしい。中央集権の逆を行く采配である。土地ぐらいしか褒美がなかったのかな。

 そんな歴史だけ長い中堅貴族の我が家はもともと王領の管理を任されていた時からの慣習でそこそこ頻繁に王城に出入りし、政務その他の報告も頻繁に上げているので王からの信頼は厚いようである。状況に追い風だ。

 

「紹介いたします。こちらが愚息のエコでございます。先日、スキルが発現しましたのでお目通りを願いました」

 

「ご紹介にあずかりました、ノミー子爵の長男であるエコでございます。陛下へのお目通り、大変光栄なことに恐悦至極にございます」

 

 へへーとひれ伏す気分は時代劇である。言葉は現地の言葉を日本語に再翻訳したものを表記しているので変な敬語があったとしても誤翻訳である。

 

「ふむ。格別のスキルを発現したと聞いておる。いかなスキルであるのか」

 

 王は髭を撫でながらもにゃもにゃと話した。正直に言うとこのおっさんまるで威厳がない。髭はサンタクロースのようで頭髪はバッハのようである。威厳よりは親しみやすさのようなものが強い。

 

「私の発現したスキルは“通販のスキル”でございます。通販とは通信販売の意味で、つまりはどこに居ようとも品物の購入が可能なスキルでございます」

 

 俺の言葉を聞いた王は何とも微妙そうな表情である。

 

「ふーむ、そうであるか。して、そのスキルはいかにして格別であるのか」

 

「品物が、格別なのでございます」

 

 そう言って取り出すのは先日購入した3Dプリントペンである。ペンで空中に絵を描きながら話す。

 

「このペンは3Dプリントペンというもので、何ができるかといえば今実演しているように立体的なモノを描くことができます。これは銀貨十枚ほどの価格で購入が可能です。

そして何より、これは科学と呼ばれる論理によって生み出されており、誰でも作ることができて誰でも使うことができるそんな理論こそが科学なのです」

 

 理系じゃないので科学については適当だがそんなもんだろう。営業は多少の誇張なら許されるのだ。あとでバッシングを大いに食らうがまあコラテラルダメージである。

 

「陛下。今日は私がこのスキルで購入した本をプレゼントとして受け取ってはいただけないでしょうか」

 

「ふむ! とても興味深い時間であった。その本というのも先ほどの科学に基づいた書物であるのか?」

 

 反応は上々で、思わず笑みがこぼれる。王も笑顔で、父もうまくいったと笑顔である。

 

「はい。『君主論』という本でございます」

 

 あとはこれが受け入れられるかどうかだ。




基本的にこの主人公は国家に対する帰属意識などはありませんがとりあえず生まれ故郷を発展させていく予定です。

サクサク進行してさっさと終わらせる予定です。
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