銀河酔人伝説   作:悠久なる書記長

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何とか投稿に漕ぎつけました・・・


第5話 酔っ払い、当選する

・政界動揺、思わぬ焦点浮上か

同盟民主党と社会改革党はこれまでも財政出動の調整で衝突を繰り返しながら与党自由共和党に対抗するため選挙協力を行ってきたが今回はついに破綻をきたしたようだ。このニ半世紀以上に渡る、イゼルローン・キャンペーンとセットで行われてきた選挙ではおおむね軍事費削減、社会保障の微増と減税で妥協を重ねてきたが、今回は“国境”と称される星域の防衛体制の整備が問題となったのである。ホアン・ルイ書記長は『こうした地域ではエル・ファシルのような悲劇が繰り返されてきました。そして被害を最も受けてきたのはここでしか暮らせない労働者の方々です。我々はその現実と対峙しなければなりません』と正式に党の公式見解として意見を表明したが、選挙における盟友である同盟民主党筋からは『エル・ファシルの惨状から学ぶべきなのは半端な戦力を疎らに配置しても帝国軍ではなく我々の国庫に痛打を与えるだけだという事だ。補助金で票を買っても後が続かないだろう』と冷ややかな声があがっている。一方、これを歓迎する声も上がっている。自由共和党青年局長のヨブ・トリューニヒト氏は「共和党は国民の生活と自由を守る為なら実務を優先する政党であるべきです。痛ましい専制政治による戦災から復興する為なら政策の為の協力も視野に入れるべきでしょう」とコメントしている。イゼルローン要塞によって生まれた政局体制はイゼルローンよりも早く陥落するかもしれない。

――フリーダム・ミラー紙より

 

社会改革党の方針転換は同盟議会の政局に大きな波紋を呼ぶことになった。これまで同盟民主党との共通政策であった軍事費削減による社会保障充実を取り下げ、選挙協力の解消を発表したのである。これにより同盟民主党はエル・ファシル選挙区に独自候補の擁立を決定、野党第一党と第二党の対決が決定的となった。また自由共和党は現職追放の禊が済んでいないと主張していたヨブ・トリューニヒト青年局長の言を受け、後継者擁立を断念する事になった。これによりエルファシル選挙区は同盟選挙史上初の野党同士の一騎打ちが行われることになったである。

 

「エル・ファシルには、軍備充実も社会保障充実も財政再建も全て必要なんです!削って良い所なんかない!ハイネセンの先生方はそこが分かってないんです!財源が有限なのはハイスクール中退である私ですら理解しています!ですが!ここエルファシルでは何もかもが足りていません!帝国軍が持って行ってしまったからです!この状況をハイネセンは本当に理解しているのでしょうか!皆さん!私と共に起ち上がりましょう!今こそ声を上げましょう!」

 

グレゴリー・カーメネフか主張しているように、エル・ファシルは先の帝国軍の略奪によってあらゆる物資が不足しており、彼の主張は瞬く間に支持を広げた。だが彼の主張は非現実的で夢想主義であると反発する勢力も多数おり、情勢は拮抗していた。

しかしここへきて衝撃的なニュースが流れる。

 

「グレゴリー・カーメネフ君の主張は我々自由共和党と通ずるものがあり、彼は同盟にとって非常に有益な人材であります。我々国家革新同友会はグレゴリー・カーメネフ君を応援しています。」

 

自由共和党青年局長ヨブ・トリューニヒト氏を中心とする若手議員グループ「国家革新同友会」がグレゴリー・カーメネフの事実上の支援を表明したのである。更にこれに反発した自由共和党主流派が同盟民主党候補の消極的支持を表明するなど、野党の一騎打ちだけでなく、与党自由共和党内の派閥争いにまで発展したのである。

 

そして選挙は混戦のまま投開票日を迎えた。

 

総選挙の開票速報は自由惑星同盟中央テレビ放送にて放送された。

 

「さあ、総数2250議席を巡り激しい選挙戦が行われた今回の代議員総選挙、未確定選挙区もあと1議席となりました!これまでの確定議席数は与党の自由共和党が1150議席、野党の同盟民主党が575議席、社会改革党が424議席、その他諸派・無所属が100議席となっております。与党である自由共和党の単独過半数の確保が決定的となりましたが、今後の政局に・・・おっとここで最後の選挙区の当選者が決まったようですね!」

 

 

 

自由惑星同盟議会代議員総選挙エル・ファシル選挙区得票率発表

 

グレゴリー・カーメネフ 社会改革党 → 51%

レフ・ジノヴィエフ   同盟民主党 → 46%

ケン・スター      憂国地球党 → 3%

 

 

 

「グレゴリー・カーメネフ候補の当選確実となりました。おめでとうございます!開票開始から長時間の放送となりましたが選挙速報は以上となります。ありがとうございました。」

 

 

 

開票速報終了後、グレゴリー・カーメネフ選挙事務所では万歳三唱が行われていた。

 

「それでは、グレゴリー・カーメネフ君の当選を祝って、バンザーイ!(バンザーイ!)バンザーイ!(バンザーイ!)バンザーイ!(バンザーイ!)ありがとうございました!(パチパチパチパチ)」

 

拍手のなか、支援者達と抱き合うグレゴリー・カーメネフ。彼の政治家人生の第一歩が踏み出されたのである。

 

 




次回も早めに投稿できるよう頑張ります。

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