いつもと同じように食堂に着き先に居る奴等と挨拶を交わす。
藤はもう既に自分の分の料理を作り自室に戻ったらしい。
しかし俺の頭の片隅には【超高校級の愉快犯】の事や百澤が持ってきた本の写真。
いくら考えても分からない。そもそも今俺達が置かれてる状況も分からない謎だらけだ。
「…砂糖君、ボーッとしてるけど大丈夫?」
「あ?あー大丈夫だ、少し寝不足なだけだ」
「何だ砂糖夜更しでもしてたのか?健康に悪いから早寝早起きしないとだぞ?」
「そうだぞ砂糖!沢風の言う通り早寝早起きから体は作られそして健康な肉体を保つことが出来っからな!」
瀬戸内は朝からテンション高いな…昨日の事は全く気にしてない能天気ぶりだが見た目に反して健康に気を使ってるんだな。
まあ服の上からでも分かる筋肉質な体だしな。それに何て言ったって超高校級の僧である瀬戸内が不健康な生活を送ってる分けないか。
「あー…ねみぃしだりぃのに腹減ってくるのムカつくぅー…」
「ちょっと鷹倉あんた半分寝ながら食うんじゃないよ、行儀が悪いね」
「鷹倉さん、頬にソース付けたままですよ?」
「んあ?」
「ひょおお!!鷹倉君なにそんな羨ましい役得な事されてるんだよ!
影山さん僕の頬にもソース付いてます!」
「え、ご自分で取ってはいかがでしょうか?」
「が、がーん!!おのれ鷹倉君め~」
「いや何で鷹倉を恨むのさ」
鷹倉の頬に付いたソースを拭き取ってやってる影山を見て百澤が興奮し出していた。
お前は欲望に忠実に生きてる奴だな。だが結構いつもの調子の皆を見てると安心してくるな。
そうだな、今考えてても分かる訳じゃあるまいし気持ち楽に考えていくか。
根の詰めすぎは良くないからな。
「とりあえず今日も各々自由にここを調べておこうか」
「まあ、今開放されてる所は全部調べたけどなあ」
「まあ~何かしら変化があるかもだし~?気長に調べてようよ~」
「猫屋敷はのんびりし過ぎなんやけどな、なあ砂糖!」
「……」
「さ、砂糖?」
「んあ?…お、おうそうだな」
和良井に再度呼び掛けられ慌てて反応するが和良井や周りに居る奴等にも怪訝な顔で見られた。
思ったより昨日の事に思考が引っ張られてるな。
「な、なんやお前まだ寝惚けとるんか?」
「いやいや大丈夫だ!さあ腹減ってるし飯食おうぜ!」
俺は皆に悟られないよう誤魔化しながら目の前の飯に意識を持っていった。
すると俺の朝食の光景を見て百澤が口元を引くつかせていた。
「さ、砂糖君何で目玉焼きにイチゴソースかけてるの?」
「ん?なんかおかしな所でもあんのか?」
「いやおかしいとか言う次元じゃない気が…」
「げげ!!?シュガー昨日の白飯砂糖事件を超えることまだしてくる気!?これはもう災害だよ!」
「…これはもう笑うしかないかな」
周りで見ている奴等にドン引きされているがこれが俺の普通だしうめーしな。
瀬戸内なんか白目剥きながらこっちに顔を向けている。ムカついてくるな。
「砂糖って他にもそういう甘い調味料付けたりするのか?」
「当然だ、味噌汁にチョコソース、寿司には練乳と醤油を足したら一番だな。
あれは最高の味だ。だけどどこの回転寿司にも練乳置いてなくてな」
「そりゃそうやろが!置いてあったらこっちがびっくりするわ!」
「だから今では鞄にいつも入れてるぞ」
「マジモンの化け物やないかっ!!お前舌溶けてなくなるんちゃうか!?」
和良井は失礼な奴だな。あんなに美味いもん食ってて舌が溶けてなくなるわけないだろ。
まあ美味すぎて舌がとろける事はあるがな。
「はろはろー愉快かい?そうかい壮快!!」
「ミナサマおはようござ……ってぎゃああ!!?さ、さささ砂糖の野郎目玉焼きにイチゴソースってそんな自殺行為よく出来るな!?お前ら止めてやれよどんな罰ゲームだよ!」
皆と談笑をしているといきなりモノクマモノソノがやって来るがモノソノが俺の方を見て絶叫を上げた。
「いやこいつは自分でこれやってんの、だから止めれねーしもう手遅れ」
「おいこら手遅れって何だよ!試しに瀬戸内食ってみろよ!」
「嫌じゃ!お前俺の味覚殺す気か!?」
「何だよ!口にしないと分からねーだろ!」
「そんなもん聞くだけで不味いって分かるわ!」
なんだこいつは!しかも周りの奴等まで全員首を縦に振って肯定するって酷くねえか!?
くそ…一口ぐらい誰か食ってくれても良いじゃねえか。
「…さ、砂糖君、僕一口貰っても良いかな?」
「龍野!お前は食ってくれるのか!?」
「ハァ!?ちょちょっと龍野君それ食べるの!?死ぬんじゃないの?こんな所で死んでもらっちゃ学級裁判開くまでもなくクロ丸わかりじゃんか!」
モノクマが喚いているが関係ない!
「ちょ、思い直しぃ!?お前最近砂糖に甘過ぎやぞ!」
「そうだってりゅうとん、シュガー甘やかすと良いことないから!」
「龍野君無理する必要ないよ、ほら砂糖君が拗ねてるからこんな事になるんだよ?」
「お前ら大概にしろよ!?俺は子供か!」
「…み、皆大丈夫だから。それに一口食べてみないと分からないしね」
「龍野ぉぉ!お前は分かってくれるのか!!ならほらあーん」
「…え"!?」
俺は食べやすいように一口サイズに切り取り龍野の前にイチゴソースたっぷり目玉焼きを持っていく。
すると龍野は顔を赤くしてフリーズしてしまった。
一体どうしたってんだよ?
「うわシュガーそれは攻めすぎ!って言ってもこれはしゅがー天然でやってるかな」
「龍野も恥ずかしがってるんやし止めたれよ」
「あ、そうかあーんは恥ずかしいよな。すまねえ食べてもらえるって分かって喜びのあまりな」
「い、いやいや!!全然大丈夫だから!それじゃ頂くね!?」
和良井から指摘されて分かったがそりゃ高校生にもなってしかも男同士であーんは顔が熱くなる程恥ずかしいよな。
龍野は素早く自分の箸で目玉焼きを取り口に運ぶ。
「…………ぐう"う"!!!?あ"あ"あ"!!」
龍野が目玉焼きを口に運んで数秒たつとすぐに悶絶し顔色が先程の赤から青色にあっという間に変わっていった。
腕を伸ばしコップを手に取りすぐさま口に運び流し込んでいる。
「…ん"、ん"、んんん!!はぁ、はぁ……」
「だ、だから言うたやろ!あんなもん毒と一緒やぞ!?」
「大丈夫か龍野!保健室行った方が良いぞ?おい桃瀬、助けてやってくれ!」
「おォ!!龍野の命救ってやらァ!!」
「あ"…いや大丈夫だ、…よ?」
「明らかに大丈夫じゃないですよ!?」
「龍野君よく生きてましたね…って校長これ我々忘れられてません?」
「ハッ!?そうだった。やい!注目だよオマエラ!」
周りが阿鼻叫喚の騒ぎになってしまった。何故こんな事になったんだ?美味しいのにな。
モノクマ達は痺れを切らし俺達に無理矢理注目を集めた。
「こほん、やっと大浴場が出来上がったので大浴場を開放しまーす!場所はマップ確認すれば分かると思うけどこの階にあるし食堂からは近いからご自由にどうぞ!」
「ちなみに混浴仕様になってますし着替える所も男女わけてませんから」
「ふおぉぉぉぉ!!マジかマジかよ!混浴OKなのかよ!」
「これは僕らの時代到来だね瀬戸内君!」
「おうよ!猫屋敷お前もそう思うだろ!?」
「混浴~それは~男の~ロマンだね~」
「分かってるじゃねえか!」
瀬戸内、百澤、猫屋敷の三人が盛り上がってるが周りの女子達は極寒の如く冷たい目で三人を見ていた。
「…あんたら分かってるだろうけど私らが大浴場使ってるときに覗いたりしたらタダじゃおかないよ」
「歯の一本二本は無くなるの覚悟」
「なにぃ!?それは殺生なぁぁ!」
「ば、ばかな!?」
「わぁ~お~、バイオレンス~」
「当たり前じゃないか!」
「逆に大丈夫だとよく思えましたね」
危ないな…瀬戸内に話ふられてたら俺も乗ってたな。危うく俺も巻き込まれる所だった。
「…ってちょっとまたボクたちの事忘れてるじゃん!すぐに忘れるって酷くない!?」
「オマエラ校長を無視すんなよな!もっと敬えやぁ!」
「うるせェ!てめーら何か敬う価値もねェ!」
「ひぃぃ!?だからヤンキー怒鳴んなっての!」
「ああァ!?これが俺の普通なんだよォ!」
「ギャピィィ!!?校長助けて~!って校長が居ない!?ちょ、校長先に戻らないで下さいよぉぉ」
先に一人で戻ったモノクマに気付きモノソノも慌てながら消えていった。
とりあえずこの階の立ち入り禁止だった大浴場が開放されたらしいな。
「じゃあ後で大浴場に行ってみようかな」
「おう、じゃあ俺も行くぜ!」
「なら私も行ってみようかな」
沢風、瀬戸内、木枯の三人が大浴場に行くと立候補した。俺も特に用がないし行ってみるか。
「なら俺も一緒に行っても良いか?」
「勿論大丈夫さ」
そして俺達は朝食を終え大浴場に向かった。
ーーー大浴場ーーー
大浴場ののれんを潜るとそこは昔っぽい木造の作りのロッカー等があったり小型の冷蔵庫には牛乳やコーヒー牛乳等があったりと銭湯と同じような感じだ。
「おー!この昭和な感じ俺は好きだねー!しかもちゃんとコーヒー牛乳とかも用意されてるとは準備が良いじゃねえか!」
「ここって無駄に作り込まれてるよね、モノクマ達の性格ならこういう事はしそうだけどね」
「本当に男女分けてないんだね」
「奥の風呂も見てみようぜ」
俺は一番乗りで浴場に繋がる扉を開けて入る。
「あ、砂糖お前なに一人先に入ってんだよ!」
瀬戸内も続けて入ってき、続いて沢風と木枯も入る。
浴場は広く二階のプールみたいに様々な種類があった。
「へー俺が知ってる銭湯でも一番広さかもしんねーな」
「瀬戸内って銭湯よく行くのか?」
「おうよ!銭湯のあの雰囲気とか好きでな。あと風呂入ったあとのあのコーヒー牛乳飲むのが堪らなく好きなんだ」
「あ、私分かるな、いつもの倍美味く感じるよね」
それは確かに分かるな。
大浴場を調べてみたが特に怪しそうなものもなかった。とりあえず脱衣場に戻ると沢風が呼び止めてきた。
「ちょっと良いかな?」
「どうしたの沢風君?」
「気付いた事があってね、皆にも知ってほしい事だから」
「何だ?何に気付いたんだ?」
えらく真面目な顔で言う沢風に自然と気が引き締まる。
「んだお前真剣な顔で、緊張するじゃねえか」
「そんなに身構えなくても大丈夫だよ、皆監視カメラがあるのは分かってるよね?」
「うん、ここで気付いた時から色んな所にあるよね」
「その監視カメラ何だけど大浴場のこの場所には全く無いんだよ。ちゃんと確認したけど何処にも見当たらなかった」
それは衝撃の事実だった。だが沢風に言われてから俺も周りを見てみた。
だが確かに監視カメラは全く無かった。
「ああ、あれか。風呂の湯気で見えなくなるとかか?」
「砂糖の言う通りだよ。カメラが湯気で見えなくなるし壊れるだろうからね。でもこれであいつらに知られずに話せる」
「それなら他の皆にも知らせないとだね、でも食堂とかで話したらモノクマ達にバレちゃうよね、どうしようか」
「それなら俺達がそれぞれ会った人にここに連れて来て話せば良いんじゃないかな」
「なら早速俺は誰か探して来るわ」
言うが早いが瀬戸内はさっさと脱衣場から出ていった。行動力があるな。なら俺も暇だし誰か探してくるかな。
沢風に探しに行くことを伝えて俺も脱衣場を後にした。
さて、どこに行くかな…。まあ適当にぶらついてたら誰かと会えるだろ。
とりあえず俺は誰かに会えそうな食堂に向かった。
ーーー食堂ーーー
食堂に入るとそこには龍野、鈴木崎、影山、猫屋敷が居た。テーブルには大きなパンケーキが置かれていた。
「よう、スッゲーでかいパンケーキだな、龍野が作ったのか?」
「…あ、砂糖君、ううん、猫屋敷君が作ったらしいんだけどちょっとおっきく作りすぎちゃったんだって。
でもこの人数じゃ食べきれなさそうだから誰か来てくれないかなって思ってたんだ」
「私は残念ながらそんなにいっぱい食べられなくてどうしようかと思ってました」
「私も少食だし」
「へえ、猫屋敷も料理出来たんだな」
「ん~、たまにする位だから簡単なのしか出来ないけどね~」
しかし俺が来た所で食えるかどうか…。後二、三人は来てほしいんだがな。
「お?なんだオメーらそんな所で…って何だよそのばかでかいパンケーキは!?」
「うおお!これは驚きだね、誰が作ったの?」
「そないなもん砂糖やろ、それでどうせ甘々にする気やろ?」
やって来たのは瀬戸内に百澤、和良井だ。
なんか和良井にしれっと馬鹿にされた気がするんだが。まあ良いか。
「これ作ったの俺じゃねえよ、猫屋敷が作ったんだってよ」
「へえー、何でまたこんな大きなパンケーキ作ったのさ?」
「いや~小腹減ったし何か簡単に作れる物~って考えてたらパンケーキが思い浮かんでさ~。
それでボヤ~っと作ってたらいつの間にかこんな大きさのが作っちゃっててさ~」
「料理中にぼんやりするんは危ないやろ!お前普段からぼんやりし過ぎなんやから料理中位は気いつけえ!」
「は~い」
気の抜けた返事を返す猫屋敷を見てこれは話聞き流せてんなと思う。
まあ猫屋敷ののんびりやは早々直せないだろうな。
とりあえず俺達は大きなパンケーキを食べる事にした。俺はすかさずお気に入りのジュースとパンケーキにはホイップにチョコソース、イチゴソース、練乳の三種の神器にあんこにきなこ等々をパンケーキに付けて食べる。
うん、美味いな、舌が幸福で満たされていくこの感覚は最高だ。
だが周りを見てみると驚愕の顔で見られていた。
「何だよお前ら、そんな目で見てもやらねーぞ?」
「いやくれって事やないわ!お前のそのありえへん食い方にドン引きしとんねん!」
「甘党の怪物じゃん」
「…ホイップ付けすぎでパンケーキ見えないね」
「それに加えてイチゴとチョコソースがたっぷりかかってて沼のようですね…」
影山よ、そこが良いんじゃねえか。このホイップとソースに付けられたパンケーキを見てみろよ。
幸せそうじゃねえか。
「う、うぷっ。見てるだけで気持ち悪くなってくるぜ」
「ちょ、しっかりしてよ瀬戸内君!ここで吐いたりはなしだからね!?」
「一応バケツ用意してるから」
「鈴木崎さん用意いいね!?」
「もうこれってさ~一種のテロだよね~?甘々テロリスト砂糖君の誕生だよ~!」
なんか騒がれながらも俺は構わず自己流の美味しい食べ方でパンケーキを食べた。
というか結局ほとんどのパンケーキ俺が食べたことになったぞ。なんか皆途中から全然口に運んでなかったんだけどな。
「ううう、うぷっ。もう当分パンケーキ見たくねえ」
「なんかトラウマになりそうだよね。あ、そういえば瀬戸内君、なんか用があるんだよね?」
「あ?ああ。忘れてた。砂糖、お前もあの事言おうとしてたんだろ?」
いまだ気持ち悪そうにしている瀬戸内から聞かれたが恐らく大浴場のカメラの事だろうな。
「あの事って大浴場のやつだよな」
「おうよ。一気にこんだけの奴等に伝えられたら他の奴等に広まるのもあっという間だろ?」
案外瀬戸内も考えてんだな。能天気なだけじゃないんだな。
そうして俺達は皆を連れて大浴場に向かった。
ーーー大浴場ーーー
「ここが大浴場かいな。広いねんな」
「覗きポイントは…ないかなー」
「百澤さん、本気で覗く気ですか?なら熱宮さんに言いますよ?」
「あ、止めて!熱宮さんに言われるとまた殴られる!」
「…もう既に殴られ済みなんだね」
「俺と猫屋敷もあの後殴られたんだよ!そんな事よりお前らよく聞けよ?
ここにゃあの憎っくき監視カメラがないんだよ!」
瀬戸内が高らかに伝えると皆各々驚いて周りを見だした。
「…そっか、湯気とかの関係で監視カメラ設置できないのか」
「ふーんそっか、なら内緒話する時はここでする感じだね」
「おうよ!あのくまやらそのやらの奴等にバレずに脱出の計画ここで立てりゃあ良いじゃんか、なあ!」
モノクマ達にバレないって利点は重要だ。これであいつらに話が筒抜けで対策をされる心配はない。
ただ長居をしていると勘づかれるよな。一応言っておくか。
「だがよ、あんまりここに長い時間居るとあいつらに気付かれるかもだからそこんところは気を付けろよ?」
「気付かれると面倒くさい事になる」
鈴木崎の言う通りだ。ろくなことにならないしウザく絡んでくるだろうな。
「よし!俺から伝えたい事は終わりだ!んじゃまだ伝えてないやつにも言ってくるわ!」
また瀬戸内は素早く出ていった。ほんとに一直線に動くやつだな。
残された俺達も脱衣場から外に出ていこうとすると、百澤が鈴木崎を呼び止めていた。
「あ、ごめん鈴木崎さん。ちょっと良いかな?」
「別にいいけどなに?」
「ん~何々~告白でもするのかな~?」
「違うよ、僕は早速カメラもないしちょっと鈴木崎に話したい事があるからさ。
皆は先に戻っててよ」
そう言われ俺達は百澤と鈴木崎を残して外に出た。
さてこの後はどうするか。ぶっちゃけて言えば後は瀬戸内に任せておけば今日中には全員に伝わるだろうし。
俺は適当にブラブラしておこうか。
そして気の向くままに足を運んだ場所は図書室の書庫だった。
やっぱりあの写真や【超高校級の愉快犯】が気になる。それにあの新聞に書かれていた物も何故か気になった。
もう少し詳しく調べてみよう。
ーーー図書室、書庫ーーー
書庫に入り俺はすぐに例の新聞を見た。詳しく読んでいくと噂でその高校生殺人鬼は希望ヶ峰にスカウトされたかもと書かれていた。
いやでもあくまで噂だしな。もっと読んでいくとそいつは惨殺した死体の近くにあるマークを付けていってるらしい。
それは稲妻のようなマークだと言う。何故こんなマークを残しているのか調査しているが未だ分からず仕舞いらしい。
それ以外は目ぼしい情報はない。次に【超高校級の愉快犯】についてやあの写真を見たりしたが情報は少なく特に何も情報は得られなかった。
すると後ろから扉が開く音がし、振り向いた。
「あ、砂糖君か、ビックリしたよ。全然姿が見えなかったし」
「何だよ木枯か…ん?姿が見えなかったってそんなに長い時間居た訳じゃないんだけどな」
「え、でも結構長いこと見てなかったし…あと少しで夜ご飯の時間だよ?」
「…マジでか?」
モノフォンで時間を確認してみると確かに俺が書庫を訪れてから数時間は経っていた。
どうやら調べものに熱中していて思ったより時間が経っていたようだ。
木枯は俺の方に歩いて来て、途中で本に足を躓かせて派手に転んでしまい辺りに埃を撒き散らせてきて俺達二人は大きく咳き込んだ。
「ゴホッゴホッ、お、おい大丈夫か!?」
「ううう、ゴホッゴホッゴホッ!痛い…けど大丈夫だよ」
「いや全然大丈夫そうには見えないが」
転んだ拍子に顔を思いきり地面に打ち付けていたから痛いだろうな。
ふらふらになりながらも立ち上がる。
「いててて、それで砂糖君は書庫で何してたの?」
「俺か?俺は…あの写真の本を読んでた」
「ああ、そりゃあんなに怪しい物なら気になるよね」
「おう、それで気になって見に来ただけだ」
まあそれ以外にも理由はあるが今は言わない方が良いだろう。
すると木枯は怪訝な表情をし、俺を見つめてきた。
「本当にそれだけ?何か悩んでる事でもあるんじゃないの?」
言い当てられドキッとした。何で分かったのだろうか?
「クスッ、その顔は当たってるね?」
「な、何で分かんだよ」
「エスパーだからかな、なんちゃって」
「エスパーってお前…大体お前は何でここに来たんだよ」
「私は何となくここに来なくちゃいけないかなって思ったんだけど当たってたかな?」
木枯は真剣な眼差しで俺を見つめてくる。女子に慣れてねえから結構ドキドキするな。
「私ってね、超高校級の幸運として入学したけど違うんだよね」
「何でだよ、くじで当たった歴とした幸運じゃねえのか?」
「うん、勿論くじで当たったんだけどね。私としては幸運なのかどうか疑問に思っちゃうんだよね」
「何でなんだよ?」
「私ってね、昔から何か良いことがあるとその日の内に同じ度合の悪いことが起きちゃうの。逆に先に悪いことが起きるとその日良いことが起きるんだけどね。
大体は小さい事なんだけどね、時々おっきな良いことと悪いことが起きるの」
それはまた特殊な体質だ。今まで選ばれた超高校級の幸運はその才能に相応しく道を歩けば大金拾ったりやら事故に遭っても一人だけ無傷だったりという体質を持っている。
だが木枯の体質は聞いた事のない超高校級の幸運の中でも特殊だ。
小さい幸運の後に小さい不運が、大きな不運が起こると大きな幸運がと奇妙な体質だ。
「今日はもう不運な事があったから良いことが起きるだろうって思ってたんだ。多分今砂糖君に会えた事が幸運だったかな」
「な、何だよ俺と会った位で幸運は言いすぎだろ、それに不運な事って何だよ?」
「あ、それはね。さっき危うく死にかけちゃって」
「はぁ!?何だよそれ!」
木枯は気楽に話してるけど今この現状は死と言う言葉に敏感にならざるを得ない。
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。こうして生きてるんだし。
ただ大浴場のサウナに入ってたら鍵が壊れちゃって閉じ込められたんだ。
何とか一緒に入ってくれてた影山さんがモノクマを呼んで助けてもらったんだけどね。
何故か鍵が中々開かなくってかれこれ一時間以上閉じ込められたかな?意識が朦朧としてて危なかったよ」
「お前よくそんなのほほんと喋ってられるな」
「だって結構よく起きる事だしね」
普段の感じで喋る木枯だがこいつには今まで悲惨な事に色々巻き込まれたりしたんだろうな。
「それで何で俺と会って幸運なんだよ、どうやってもお前の不運と釣り合わねえだろ」
「ううん、そんな事ないよ。だって砂糖君昨日から思い詰めたような顔してるよ?
何か悩んでる事でもあるんじゃない?私で良かったら話聞くよ?」
…確かに【超高校級の愉快犯】が龍野か猫屋敷かもしれないと思うとこのコロシアイの状況だと疑ってしまう。
だが二人と短いながら話して関わってたら癖があるが良い奴だし信頼してたい…が頭に掠めるのが愉快犯の事だ。
皆には話すべきではないと黙ったままで藤と俺しか知らないであろう情報だ。
知られないよう【超高校級の愉快犯】が載ってる本は人目のつかない書庫の奥側に隠している。
「…なに言ってんだよ。なんも悩んでねーよ」
「……でも砂糖君今も思い詰めた顔してるじゃない。私心配なんだよ?」
「なっ!?そ、そんなわけ…」
「ほら、自分でも分かってるんでしょ?今は一人で悩んでるよりも誰かに話した方が良いよ。」
ここで一人で悩んでいるよりも木枯に言ってみた方が心が幾分か楽にはなるか。藤の奴は自力でどうにかしようとするだろうが凡人の俺には荷が重い。
…よし、木枯に話してみよう。
「木枯、俺の悩み聞いてくれるか?」
「うん!是非聞かせてよ」
とその時書庫の扉がまた開き俺達二人は振り向いた。
「あらあなた達どうしたのよこんな所で」
俺が【超高校級の愉快犯】について喋ろうとしたら藤がやって来た。
だが愉快犯の事を知ってるしまあ良いか。
「ふーん、その手に持ってる本について話すのかしら?」
藤の視線が俺の手に持つ極秘レポートの本を射貫いていた。
藤って身勝手な我が儘な奴だと思ってたら案外周り見てんだな、なんて考えてたら藤が剣呑な眼差しで俺を射貫いていた。さ、寒気がしてくる!?
「貴方…何か失礼な事を考えてない?」
「め、滅相もない!!」
「……そう、なら良いわ。ならそこの幸運さんに話したら?」
言われて木枯を見ると俺同様体を震わせていた。見てただけの木枯までこんなに恐怖しているとは…藤を怒らせては絶対にいけないな。
俺は気を取り直して木枯に【超高校級の愉快犯】について知っている事を話した。
話終わると木枯は明らかに動揺していた。まあ俺達の中にそんな犯罪者が居るとは思わなかっただろうしな。
「それって確かなんだよね?」
「ええそうよ。確実に私達の中に居るわ」
「こんな事知ってたら砂糖君が悩んでた理由が分かるよ」
「黙ってて悪かった、今皆に言っても余計に疑心暗鬼に陥るだけだと思ってな」
俺の謝罪を木枯は首を振り優しく顔を綻ばせた。
「ううん。砂糖君は私達を気遣ってくれて黙ってたんでしょ?それなら責める事はしないよ。
私なんて今日まで色々辛い事があって怖くて自分の事しか考えられないもん。なのに皆の事を想えるなんて素敵な事だよ。
それと私に話してくれてありがとうね」
「木枯…すまねえ、ありがとうな」
木枯の言葉で気持ちがスッと楽になる。そうだよな。俺には木枯や他の皆、勿論龍野や猫屋敷も仲間なんだ。
それに【超高校級の愉快犯】が本当に希望ヶ峰学園にスカウトされてるかなんてモノクマ達が用意した俺達を惑わす罠って可能性もある。
まだこの本が本当かも分からないんだし心に留めとく位にしていけば良いかな。
「それで話は終わったかしら?」
「ああ」
「私は愉快犯を出来るなら見付けたいのだけど貴方はどうするの?」
どうするか…俺はどうするかな。
「…俺はあまり無理に警戒して神経磨り減らすよりは楽に居るかもって考えておく事にする。
あんまり考え込んでもすぐに爆発しそうだし今は愉快犯について分かることは少ないしな」
「まあそうね、情報は今のところそこの嘘か本当か不明の本だけだものね。
あのロボット達が惑わすためか本当の事か判断は今はしない方が安全かしらね」
「あ、私も二人と同じだな、それと砂糖君」
「どうした?」
「今はこの事についてはあんまり話さない方が良いかな」
皆に話すか…悩む所だな。今話しても良いものか……だけど俺達は仲間なんだし情報を共有しといた方がこの閉ざされた空間に居る以上はな…。
「私は話さない方が良いと思うけどね。可能性はあるのだし愉快犯にしろじゃないにしろ才能を秘匿するなんて疑わしい事をしてる二人には警戒していた方が良いわよ」
「俺は…ここで話さなかったらうだうだらしくもなく悩んでるだろうし話した方が良いと思う」
「……そう、まあ私が何か言う事はしないわ」
「そうか、俺は善は急げって言うし今日の晩飯の時に言う事にしたい」
俺は…皆を信じたい。それに敵はモノクマ達なんだ。俺達が疑い合う必要はないんだ。
「うん、分かった。それで皆と話し合ったらきっと良い方向に進むよ!」
木枯のお陰で気持ちが晴れやかになった。抱え込んでも良いことはないな。
俺の性分にゃ合わねえしな。
「なんか今日柄にもなく悩んじまったからモヤモヤしてるしちょっと気分転換にカラオケに行くかな」
「ストレス発散にはそれが良いよね、私も久しぶりに歌いたいし一緒に行って良いかな?」
「おう!良いぞ、藤もどうだ?」
藤も誘うと露骨に嫌な顔をされた。
「嫌よ。何であなた達と一緒に行かないといけないのよ。それに私はここに調べものが合って来たのよ。
行くなら早く行ってよね」
「ああ、そうか。そういや藤はここに用事が合って来たんだよな。
なら俺達は行くわ、暇な時あったら一緒に行こうぜ!」
「絶対に嫌よ」
今はまだ冷たい藤だけど根は良い奴何だろうし誘い続ければ乗ってくれるだろ。
俺と木枯は藤と別れカラオケルームに向かった。
ーーーカラオケルームーーー
カラオケルームにいくとドリンクバーに飲み物を取っていた猫屋敷と影山が居た。
猫屋敷を見て少しドキッとしたが大丈夫だ。あいつはそんな奴じゃない。
俺は気を取り直して声をかけた。
「おう、お前ら一緒なの珍しいな。何だ二人でカラオケか?」
猫屋敷と影山の二人が歌う姿を全然想像つかないがここに居るって事は歌いに来たんだろうな。
影山は声をかけられると微笑み返してくれた。
「あ、砂糖さんに木枯さん。いえ私達二人だけではなく11号室に瀬戸内さんと百澤さんもいらっしゃいますよ」
「二人も歌いに来たの~?」
「そうだ、ちょっと歌いたくなってな」
「私も同じでちょうど砂糖君と居たから」
「ならさ~二人も一緒に僕達と歌う~?」
突然の猫屋敷の申し出に少し思案するがまあ人数は多い方が盛り上がるし木枯が良いなら乗ろうかな。
「俺は全然良いんだけど木枯はどうだ?」
「私も大丈夫だよ。沢山居た方が楽しさ共有出来て良いし」
「それじゃあ行こ~実を言うと俺歌う曲少なくてあんまり歌いたくないんだよね~」
「私もカラオケ来たことないですし知ってる歌もそんなにないんですよ」
「なら何で二人とも来たんだ?」
「それが…私は散歩をしていたら瀬戸内さん達に出会いましてその時は奇跡的に気付かれたんです。
それで誘われたんですけど最初は私断ったんです。
ですが何度もお誘いされて…」
影山押しに弱そうだもんな。
「僕は~食堂におやつ食べに来たら瀬戸内君と百澤くん居てさ~話してたら百澤君が歌いたくなったって言い出して~なら俺も~って瀬戸内君も行くってなってさ~。それで僕も強制的に~って感じだよ~」
猫屋敷も押しに弱いのか…いや瀬戸内と百澤が強引なだけだな。
あの二人妙に気が合うから一緒に居ること多いしな。
「そういや最近は猫屋敷も瀬戸内と百澤と一緒に居ること多いな」
「ん~なんか一緒に居てて気が楽なんだよね~」
それは分かるな。あいつらノリが良いし話しやすいからな。
まあ調子に乗りやすかったり下ネタになると騒ぎ出す事がたまに傷かな。
話ながら歩いていると目的地の11号室に着いた。中に入るとソファに座っている百澤と瀬戸内が居た。
俺達に気付くと笑いながら手を振ってくれる。
「よう砂糖に木枯!お前らもカラオケか!」
「そだよ~ちょうど二人が来たから俺が連れてきたんだ~」
「女子が増えるのは僕達としても嬉しいから猫屋敷君ナイス!」
「えっへっへ~ナイスでしょ~」
仲良しだな。この前初対面だとは思えない仲良しっぷりだ。
俺達も大きめのソファに座る。
「んじゃあ早速歌うか!誰からいく?」
「ここは言い出しっぺの僕からいくよ!」
百澤は曲を入れるタブレットを操作しマイクを取り勢いよく立ち上がった。
よっぽど好きなんだな。見るからに嬉しそうだ。
そして曲が流れてきて百澤が歌い出す。その歌声は驚くほど優しく上手かった。
これは聞き惚れるな、よくカラオケに行くって言ってたしな。
夢中で聞いていたらあっという間に歌が終わる。
「ふぅ、やっぱり歌うと楽しいね!」
「いやお前うめーな!?プロみたいだったぞ!」
瀬戸内の言うとおりプロの人みたいに上手かった。百澤は恥ずかしそうにはにかみながらそんな大したことないって言ってるが謙遜過ぎるだろ!
「お前歌手になれっぞ!」
「いやいや、それは言い過ぎだって。そんな事より歌お歌お!じゃあ次は砂糖君いっちゃってー!」
お、俺か。百澤の後で歌いにくいが楽しめば良いか。俺はマイクを手に取り曲を入れる。
歌い終わると気分は軽く晴れやかになった。やっぱ歌うとストレス発散になるな!
「砂糖さん、お上手ですね!力強くてかっこ良かったです」
「うん、聞いててスカッとするよ!」
結構褒められて思わず顔が綻ぶ。
「おおう、ありがとな…」
「砂糖君~照れちゃってるね~このこの~」
猫屋敷におちょくられ余計に恥ずかしさが増す。俺は恥ずかしさを消すように隣の木枯にマイクを渡した。
その後もカラオケ会は続いた。木枯は綺麗な歌声で猫屋敷はお経を読んでるような歌い方だった。
影山は恥ずかしそうに歌って瀬戸内は逆に堂々と踊り付きで歌った。
長い時間歌っていたらいつの間にか晩飯の時間になっていたからカラオケ会を止めて俺達は食堂に向かった。
ーーー食堂ーーー
食堂でいつも通り集まり皆で食べる。俺はいつ【超高校級の愉快犯】について話そうかタイミングを計っていた。
木枯もチラチラと俺を見ていた。
(ここで迷ってても始まらないな…よし、言うぞ!)
「なあ、ちょっと良い…」
俺が話そうとするとモニターが付きモノクマがアナウンスをしてきた。
『はいはーい!オマエラ食事してる中悪いけど大事な話があるから体育館に集合してもらえるー?
今から五分以内ねー!それじゃよろしく!』
話そうとしたら出鼻を挫かれた…。周りは先程までの楽しい空気とは真逆の冷えきった空気になってしまった。
そんな中沢風が静かに言う。
「……皆、行こうか」
全員立ち上がり食事を出て体育館に向かう。絶対にろくでもない事だと予想がつく。
ーーー体育館ーーー
「ちょっとオマエラ遅いよ!亀の方がまだ早く着くよ!?」
「いや…それは亀より遅い事はないやろ」
モノクマからの言い掛かりを律儀につっこむとは流石芸人だな。
プンスカと口に出しながら地団駄を踏むモノクマを無視しているとモノソノがトコトコと呑気に歩いてくる。
「やあミナサマ方、本日も良きコロシアイ日和ですが中々殺人が起きない事にワタクシ共一同誠に遺憾です。
皆様にはやる気がないので?もっとコロシアイましょうよ!コロシアイこそあなた方の青春でしょう!」
…どこからつっこめば良いのやら、呆れすぎて言葉も出ないな。
こんなあほな事に噛み付く気力もない。
「…それで僕達を呼んだ理由は?」
龍野が先陣を切って聞いてくれた。するとモノソノは嫌な笑みを浮かべながら俺達を見渡して言い放つ。
「うっぷっぷっぷ。早く本題に入れってか?キミタチ教頭の話はお嫌いってか?これだから最近のオコサマは困るね…。
ならお望み通りさっさと本題に入ってやるよ!キミタチ!自分のモノフォンを見やがれ!」
言われてモノフォンを取り出し見てみる。何も変わりのないホーム画面だと思っていたら一番端に見知らぬアプリがあった。
モノモノと表示されているそのアプリをタッチすると起動する。
表示された画面にはドット絵のタイトルがありそこには『モノモノティーチャーズ』と書いてあった。
昔のゲーム画面のようで画面の真ん中にKとある黒い帽子を被ったモノクマとSとある白い帽子を被るモノモノがドット絵で佇んでいた。
「…これって某有名なあのゲームパクってない?」
ゲーマーの百澤が反応する。するとモノクマが分かりやすく焦りだした。
「な、なななにを言ってるのさ!?パクる?それって借りパクの事かな?ボク百澤くんに何か借りてたっけ?」
「うわー、クマロボ分かりやす…ダサっ」
「ガーン!?鷹倉くん!たまに喋ったと思ったら心抉る事言わないでよね!」
「あんたってメンタル弱すぎじゃないかい?」
いじけ始めたモノクマをどうにかしろと皆から責める視線を送るとモノモノがこほんと咳払いをして説明し始めた。
「このアプリゲームは今回の動機だ」
「ゲームが動機とな?これがどう関わってくるのかの?」
「剣くん、そんなに焦らない事だ。このゲーム画面をタッチしてみてくれ」
押したくはないが押さないと先に進まないから渋々と画面を押す。
するとタイトルが消えて次に項目が出てきた。
そこには《かんたん》《ふつう》《むずかしい》の難易度に加え《鬼》《絶望》と下に表示されていた。
「各々見たかね?その難易度のゲームを選択するとその難しさのゲームが始まる。クリアすると特典が手に入るぞ」
「何なのその特典って?」
「うっぷっぷっぷ。ミナサマ方には隠しておきたい秘密ってあるでしょう?
否、ミナサマだけでなく人は誰しも人生を歩んでいくと自然と秘密が増えていきますよね?これが不思議な事でどう善人に生きようとも大なり小なり人という生物は秘密を抱える。
そのミナサマの秘密がクリアした特典ですよ」
「…ほほう、主らの考える事でござるな」
「あー…なるほどな。デスゲームでありがちなやつか…」
「剣君も鷹倉君もピンときたみたいだね」
どうやら三人は分かったらしい。かくいう俺も他の皆も薄々理解し始めている。
…ただ一人を除いて。
「へ?なんやどういう事やねん?なんやお前ら全員分かっとんのか!?瀬戸内までもか!?」
「いや何となくは思い付くだろ?」
「嘘やああぁぁぁぁぁ!!瀬戸内に負けるんは大恥やあぁぁぁぁぁ!!!」
「そんな絶叫することかよ!!」
「ちょっと貴方達五月蝿い…口閉じて」
「「はい……」」
藤に睨まれ怒られぴたっと黙る二人。今はしょうがねえかな。
「分からない和良井くんの為に説明しようか。他の者もうっすら分かってるって者も居るだろうしね」
「瀬戸内の事やな?」
「うっ!確かにそうだけどよ…」
「黙っててって言ったわよね?」
「「はいすみません……」」
「懲りないねキミタチ。それでまずこのゲームの難易度を決める。そしてその難易度をクリアするとキミタチ全員の中から一人だけの秘密を難易度に分けて獲得できる。
《やさしい》をクリアすると誰か一人の軽い秘密を選んで知れる。まあ選ぶのが嫌ならランダムで決められますが。《ふつう》だと難易度が《やさしい》より難しくなり一人の少々重くなった秘密をランダムで。
《むずかしい》は一人の重い秘密を選んで知れる。
《鬼》をクリアすると誰か一人の誰にも言えない重大な秘密をランダムで知る事が出来る。
そして最後に《絶望》!これは他のどの難易度よりも一番かんたんでクリア出来、一人の秘密をランダムで知れるが嘘が入れ混じっている。確率的には本当の事が三割、嘘が七割だ。《絶望》は一日に一度しか出来ないので気を付けるように!」
その動機は余りに過酷だ。こんなゲームで俺達の秘密を知れるだと?
大体何で俺達全員の秘密を知れるんだ?ますますこいつらが分からない。
お互いの顔色を伺いながら自分のモノフォンと誰かの顔を交互に見る。
「こんなのやらなければ良いんだ…」
ぽつりと沢風が言葉を溢す。そこから他の皆も次々と濁流のように言葉を流し始める。
「そ、そうやで!こんなもんやらなければええんや!」
「うん!皆の秘密を盗み見るなんてしちゃいけないよ!」
「うぷぷぷ。言っておくけど秘密の共有とかは自由にやって良いよ?そこに超高校級のゲーマーってうってつけの子が居ることだし」
言われて一斉にモノクマから指名された…百澤に目が向いた。
百澤は顔を俯かせながら画面を見ていた。
耐えかねて瀬戸内が声を掛ける。
「お、おい百澤…お前」
「大丈夫だよ瀬戸内君」
「へ?」
瀬戸内の言葉を返した百澤は真っ直ぐに俺達に目を向ける。その目は固い信念を感じた。
「僕は誰の秘密も見ないよ。こんな卑劣な罠に掛かってゲームオーバーになるほど僕は落ちぶれちゃいない!」
「百澤!お前って奴は!」
「そ、そうであるな…しかし秘密とやら……知りたいであるなぁ…」
「うぉい剣ぃ!?今良い感じで纏まっとったやないか!水を指すアホが何処におんねん!」
「い、いやしかし秘密や謎を知りたくなる性分ゆえ許して欲しいぞ!?」
少し剣が心配だが百澤の意思は強く決してやらないと信じきれた。しかしそんな俺達を嘲笑うかの如くモノクマは笑い出す。
「うぷぷぷ。うぷぷぷぷぷ!良いこと思い付いた!折角作ったのにやってくれなきゃ勿体無いしオマエラにはこのゲームで誰かの秘密を一日に最低一つは知らないとオシオキだよ!難易度はこっちが指名するからやさしいばっかりとかにしないでよ!
まあどうしてもクリア出来なかったら誰かに…それこそ百澤君に頼んでも土下座してくれればボクがクリアしてやっても良いよ!」
「はあ!!?」
それは余りにも暴虐な命令だった。続けてモノソノがおまけに最悪な提案をする。
「では校長、こういうのはいかがですかな。次の殺人が起きるまでにこのルールは続き、もし殺人をしたクロが出たらクロに全員分の秘密を知れるなんてのはどうでしょうか?」
「お!それ良いね!採用!じゃそういう事になったからよろしく!」
「あ!ちょっと待ちなさいよ!コラー!」
嶋野が怒鳴って文句を言うが奴等はこっちの話も聞かずに去っていった。
残ったのは静かな…しかし確実に憂鬱な気分で沈みこんだ空気だけだ。
耐えかねて俺は自然と声を溢す。
「それでどうするか?」
「どうするも何もあのロボが言った通りゲームするしかないだろ…」
俺の空言葉に鷹倉が現実を叩き付ける。
「皆、今日は休もう、今は冷静に考えられないしもうすぐ夜時間だ…」
言われてみれば時間は大きく経っており後もうすぐで夜時間になる。
俺達はやるせない気持ちでどんよりとしながら自室に戻った。
俺は部屋に戻るとすぐにベットに倒れこんだ。モノフォンから映っているゲームアプリを見てまた気持ちが沈む。
纏まりかけた空気を叩き壊しグチャグチャにして否が応でも俺達に秘密を知れるように余計な事をしやがって。
「はろはろー!さっきぶりだね砂糖くん!」
「おわあぁぁ!?」
いきなりモノクマが俺の目の前に出てきやがった!だから勝手に部屋に入るなといきなり出てくんなよな!
「んー!良い反応だね。敏感なのかな?そういうお年頃なのかな?かなかな?」
「うるせえ!それで何だよ!」
「あれー?さっき言った事忘れちゃったの?そ、の、ゲームの事だよ」
嫌らしく惨たらしく笑いながら俺のモノフォンを指差す。
分かってはいるが認めたくもやりたくもない、しかしやらなければ死んでしまう…。
「分かってるよ…このゲームやれば良いんだろ?ならさっさと難易度言って消えろ」
「話が分かってお利口さんだって褒めようと思ったらこれだよ…最近の子は反抗的でやになっちゃうね!
それじゃあ砂糖が今日やらないといけない難易度は…《鬼》です!まあ今日は後少しだから難易度下げといてあげるよ!ボクってルールは守るけど優しいからさ!
でも明日の朝からはこんな事しないからね!
それじゃあちゃんとやるんだよ!」
モノクマは他の奴等にも言いに行くためだろう。素早く去っていった。
「…くそ!やるしかねえのか…《鬼》か」
俺は仕方なくモノフォンを手に取り難易度《鬼》を選択した。
ゲームは至ってシンプルな横スクロールのゲームだ。土管に入ったりキノコを食べてでかくなったりと丸パクリのクソゲーだ。
だが苛つく事にクオリティは高く認めたくはないが面白い…。
難易度も確かにむずいがゲームは得意な方だしクリア出来ない程ではない。まあ難易度は下げられているらしいがな。
ボスに辿り着くとボスの姿はモノクマをピンクにしたような頭にリボンを着けおむつを履いている奴だった。
だが苦戦しながらも何とか長い時間を掛けてクリアした。
その後どこぞの見た目ギャルの姫を助けエンディングが流れ終わると画面は真っ暗になり文字が出てくる。
『クリアおめでとうございます。それではサトウくんに特典を授けます』
と出てきてルーレットが回りだし秘密を知ることになる奴に止まった。
そいつは……。
そいつの名は……………。
『サトウくんの特典はネコヤシキくんの秘密です』
……猫屋敷か。恐らく才能の事だろうな。俺は恐る恐る画面をタップする。
表示された文字は……。
『ネコヤシキくんは巷で有名な老若男女問わず殺戮を楽しむ残虐非道の殺人鬼、【超高校級の殺戮者】である』
ーーー続くーーー
ー登場人物ー
【予備学科生徒】
【超高校級の???】
【超高校級の芸人】
【超高校級のリア充】
【超高校級のメカニック】
【超高校級の幸運】
【超高校級の放送部】
【超高校級の名探偵】
【超高校級の殺戮者】
【超高校級の氷彫刻家】
【超高校級のゲーマー】
【超高校級の僧】
【超高校級のモブ】
【超高校級のネット配信者】
【超高校級の折り紙講師】
【超高校級の保険委員】
生存者 16人
お読み頂きありがとうございました。