第三章 (非)日常編1
第三章
【トキメキは我が身を穿つ乙女心】
「おーい、和良井?出てこいよぉ!!」
「瀬戸内!もっと力強く叩くんだよ!ほら和良井、居るのは分かってるんだよぉ!」
激しく和良井の部屋をノックするのは瀬戸内、その瀬戸内を鼓舞しているのは熱宮だ。自慢の筋肉で、迷惑極まる轟音を鳴らしながら扉をノックと言うか殴っている。
俺は今、瀬戸内、熱宮、鈴木崎と一緒に和良井の部屋に来ていた。
「ねえ砂糖」
「どうした?」
「これ和良井出てくる?」
「……逆効果だよなぁ」
鈴木崎から疑問が飛んでくるが確かにこれで出てくんのかな~?まあ迷惑がって出てくるかな?
何故今、俺達が和良井の部屋の扉を破壊しそうな程、迷惑行為をしてまで和良井を引っ張り出そうとしているのかは、先程朝食を食べ終えた後にある事を話し合ったからだ。
学級裁判を乗り越えた次の日の朝、食堂では藤、そして俺達を信用しないと言った和良井が来なかったのは予想が出来ていたが、沢風までもが来なかった。
流石に今の状況でバラバラになるのは危険だと判断した俺達は今後の事を話し合う事にした。
そして話し合った結果、個人行動を取っている藤と、一人で行動すると言った和良井を説得する事、沢風の様子を見に行く事にした。
そこでチームに分かれてそれぞれ説得や様子を見に行く事にした。
俺、瀬戸内、熱宮、鈴木崎が和良井を説得しに、龍野、桃瀬、影山、木枯は藤の説得を、猫屋敷、鷹倉、嶋野は沢風の様子を見に行く事にした。
そして俺達は今こうして和良井の説得をしに来ていた。ついでに朝食に来ていなかったので、お腹が減っているだろうと朝食を持ってきている。
「なんっやねん!お前らうるさいねんド阿呆が!!」
煩くノックを続けていた事が功を奏したんだろう、和良井がキレながら出てきてくれた。
「よう和良井!」
「よう和良井!ちゃうねんハゲ!お前ら昨日の俺の話聞いてたんか!?」
「聞いてたに決まってるじゃないか。だからこそ、ここに来てるんだからね」
「うん、それとこれ」
「あ?なんやねんこれは?」
鈴木崎が持っていた朝食が乗っているトレーを和良井の前に差し出すと、訝しみながら聞いてきた。
「お前朝食に来なかっただろ?それじゃ腹減るだろうし持ってきたんだよ」
「いらんわそないなもん」
「ちょっと和良井!その言い方はないんじゃないかい!?」
「言ったやないか、俺はお前らを信用せん。だからお前らが作って持ってきた食べ物を信用して食うわけないやろが」
「待てよ和良井、今俺達が疑い合ってたらそれこそモノクマ達の思う壺だぞ!」
何とか和良井の警戒を解かねえと。今は俺達全員が協力し合わないといけねえ。
俺の言葉を聞いた和良井は鼻で笑いながら俺達を睨み付ける。
「はん!腹で茶を沸かす事を良くぬけぬけと言えるもんやな!」
「な、なんだよその言い草は…」
「疑うに決まっとるやろ?猫屋敷は殺人鬼、龍野は才能も教えんし愉快犯かも知れん、剣の奴は意味不明な理由で百澤を殺した。こんな事があれば疑い、信用せんくなるやろが!!阿呆か!?」
「た、確かに龍野は才能を言ってねえし猫屋敷は殺人鬼だ。だけど今二人が俺達に何かしたか?」
「そうだぞ!龍野は毎日俺達に飯作ってくれる優しい奴だし猫屋敷の奴は気の良い面白え奴なんだ!」
「うん、瀬戸内の言う通り。もう少し信用して」
俺の言葉に続いて瀬戸内、鈴木崎が続いて援護してくれる。剣だってモノクマ達の罠がなけりゃ、殺人なんて犯さなかった。
「そんなんですぐ信用出来るかいな!」
「それで今一人で動いても良い事あるわけないじゃないか」
「喧しい!俺はそんな気休めの口車に乗るか!」
「和良井!?」
「俺はもう信用出来ん!猫屋敷は現に人殺ししとるやないか!あいつをどう信用しろ言うんや?お前ら頭おかしいんちゃうか!?」
「ね、猫屋敷は俺達を殺したりしねえよ!」
猫屋敷は約束してくれたんだ。俺達を殺したりしねえって!ならそれを俺は信じるだけだ!
「何でそないな事が言えるんや?根拠でもあるんか?」
「猫屋敷は俺に誰も殺させねえって言ってくれたんだ!」
「は?まさかそれだけやないやろな?」
「それだけだ!!」
「阿呆か!?頭にウジ虫でも湧いとんのかお前は!」
「なっ!?」
何だよその言い草は!?人が真剣に言ってるのに和良井の奴は!!
「それがなんか文句でもあんのかよ!」
「あるに決まっとるわ!大アリに決まっとるわ!そんなもん根拠でも何でもない!ただ盲目に信じてるだけやないか!」
「おう!それがどうした?」
「はぁ!?」
「俺は猫屋敷が心から誰も殺さないって、そう言ってくれた言葉を信じるだけだ!」
「そ、それが嘘かもしれんやろ…」
「嘘じゃねえよ!猫屋敷は俺達を殺す事はしねえ!頼む和良井!信じてくれ!」
和良井は顔に汗を滲ませながら苦悶の声を漏らし歯を食い縛っている。
何とか和良井に届いてくれねえか!?
「ぅぅぅ…俺は…俺はそれでも信用出来ん!」
「なっ!和良井!?」
「俺はもう騙されん!お前らと話してても時間の無駄や!ほなさいなら、もう二度とけえへんとってくれ!」
和良井は逃げるように俺達を拒絶し、扉を激しい音を鳴らしながら閉めてしまった。
後に残るのは何ともいえない空気だけだった。
「み、皆すまねえ…俺が勝手に熱くなったばかりに失敗しちまった」
「良いって事よ、気にすんな砂糖!」
「うん。そんな簡単に説得出来るとは思ってないし」
「鈴木崎の言う通りだねえ、諦めずにまた来て説得すればいいじゃないか」
「…ああ、ありがとな。明日もまた来て話せば良いよな」
とりあえず今日は一旦諦めて明日来ることにし、俺達は食堂に戻った。
食堂に入ると既に猫屋敷、鷹倉、嶋野の三人が居た。鷹倉はテーブルに突っ伏してだらけていたが、猫屋敷と嶋野は俺達に気付いて声を掛けてきた。
「おう!シュガーご一行の帰還だね、おかえり!」
「みんな~おかえり~」
「おう、ただいま」
「ちょっと鷹倉、何をだらけてんだい。ほら、シャキッとしなよねえ」
「うむぅぅ…止めろよ、俺の今日一日の活動限界はとうに超えてるんだよ。もう今日は働かねえぞ」
熱宮に叱られた鷹倉は渋り、だらけるのを止めない。熱宮も世話焼きだしな、鷹倉の怠け体質を見てしまうと世話を焼きたくなるんだろうな。
「ちょっと鷹倉?」
「あん?」
「まだ今日やる事あるよね?分かってる?」
鈴木崎が鷹倉に威圧しながら問いかける。恐らく例のロボット造りだろうな。
ロボット造り…始めは百澤が提案して始まったのに、今は百澤が居ないんだ。その事にまた俺は気持ちを暗くしてしまう。
「…………」
「こっち見ろ」
「………ん」
「それで何か言う事は?」
「…………待て、悪かった。俺が悪かったからその取り出したスパナはしまえ」
「なら今日…まだやる事あるの分かるよね?」
「……は~い分かりましたよ」
鈴木崎が凄く怖かった。あまり普段と変わらない口調だったが雰囲気がピリピリしていてキレているのが丸わかりだ。
鷹倉も少し顔色を悪くしている。
「百澤が出来なかった事なんだから…私達で完成させなきゃ」
「……へいへい」
そうか、鈴木崎は百澤の為にも完成させたいのか。鷹倉も面倒くさそうに返事を返しているが、何となくやる気にはなってくれた気がする。
「なあお前ら二人最近なんか造ってるの見るけどよ、何してんだよ?」
「ん?あー…これ言っちゃ駄目だよな?」
「うん。今はまだ言わない」
「何だよそれ、今はっていつになりゃ言ってくれんだよ?」
「……後少しで出来るからその時までのお楽しみ」
サプライズ的な奴か?鈴木崎もそんなお茶目な事するんだな。そう思ってたら鈴木崎と目が合い、俺の元に近付いてきて耳打ちしてきた。
「百澤がこういう時は出来てからお披露目した方が良いって言ってたから」
「なるほどな」
百澤なら言いそうな事だな。ならまあ完成まで待っとくか。鈴木崎と鷹倉の二人ならすぐに完成してお披露目してくれるだろう。
「それであんたらは沢風のとこまでちゃんと行ったのかい?」
「あったり前のめりんぐ!しゅんやくん所にちゃんと行ったし会ったよ!」
「それで、沢風の様子は?」
「えっとね、しゅんやくんすぐに出てきてくれたけど、顔色悪くてげっそりしてたんだ」
ずっと思い詰めていたからな、それが剣のオシオキで限界に達してしまったんだろうな。
「しゅんやくんが言うには『今は一人で居たいんだ。ごめんけど一人にしてくれ』って…食事は受け取ってくれたよ」
「そうか…なら今は一人にしてた方が良い感じか?」
「うん~その方が良いよ~。沢風君は~数日したら~気持ちも落ち着くって~言ってたし~」
沢風自身、まだ気持ちがぐちゃぐちゃになってるんだろうな。今は一人で落ち着かせた方が良いか…。
「ご飯ならウチが持っていくよ!」
「なら放送女に全任せで良いだろ…俺はあんな暗い奴の相手はしたくねえ」
お前も結構暗いだろ…動画では明るかった癖に。まあとりあえず、今は沢風をそっとしておこう。
後は藤の説得をしに行った龍野達を待つだけだな。
「てかさー、ぶっちゃけ折り紙女の説得とか無理じゃね?」
「何だよ鷹倉、そんな事言ってたら何も始まんねえだろ?」
「いやいや、あの女にゃ諦めずに説得して協力するとか言う奴じゃねえだろ」
「んむ~確かにね~」
猫屋敷までそんな事を言うのかよ。まあ確かに強情そうな藤だしな。だがここで諦めんのは違えだろ、藤だって話していけば分かり合える、俺はそう信じてる。
「あー、和良井の奴はどうすりゃ良いんだか」
「今はひたすら諦めず説得するしかねえかな」
「そもそもあいつは何で引き込もって敵意剥出しなん?」
鷹倉が疑問を口にしたので簡単に和良井が引き込もった理由を説明した。
聞き終えると鷹倉は背伸びをし、欠伸をして気怠そうにこう言った。
「ようするに、そこの殺人猫と真っ黒ピアスの才能不明って所が怖い、探偵が訳分からん理由で殺人をしたから信じれねえって事か?」
「ざっくり言うとそんな感じ」
「そもそもちゃんと確認してなかったけど猫屋敷は本当にあの『ライトキリング』なのかい?」
「にゃっは~、そうだよ~。巷では~そう呼ばれてるらしいね~」
熱宮からの問いに猫屋敷は間を置くことなくスッと答えた。あまりにも普通に答えたので質問した熱宮はポカンとした顔をした。
「あんた…そんな簡単に認めても良いのかい?」
「え~だって僕、学級裁判でも~言ったよね~」
「確かに言ってたけど…それでああ、そうですかなんてすぐには信じきれないねえ」
まあ学級裁判では猫屋敷が皆に告げて、俺が肯定しただけだしな。それなら俺のモノフォンには確たる証拠として猫屋敷の秘密があるし、それを見せる事にした。
俺は自分のモノフォンを操作し、猫屋敷の秘密が表示されている画面を皆に見せた。
「ほら、これが猫屋敷が超高校級の殺戮者だって証拠だ」
「ほわー、確かに書いてあるね」
「これで分かったかな~?」
「まあ、これで認めるしかないって事だねぇ」
「だけどよ、猫屋敷は約束してくれたんだ。俺らには危害を加えねえって。それを信じようぜ?」
「今の所は…私には無理だねぇ」
「同じくー、殺人鬼なのは変わらねえしな」
「ウチも……まだちょっと様子見かなぁ」
皆の反応は…あまり芳しくなかった。そんな簡単には無理か…。
「俺は信じるぜ?」
「私も…特に何もされてないしね」
そんな中、ニカッと白い歯を見せながら笑う瀬戸内と何でもないように言うのは鈴木崎だ。二人は信じてくれるようだ。
「ほ~思ったよりは~批判されないんだね~」
「まあねぇ、信じる事は出来ないけど…鈴木崎の言うとおり何もしてないし、今まで猫屋敷は協力してくれてたからねぇ」
「日頃の行いのお陰だね~」
「ワンニャンが言うのは違うと思うな!?」
「むしろ日頃の行い悪いだろ」
それはまあ…確かにぐうの音も出ねえ…と思っていたら食堂の入口から龍野達が帰ってきた。
「おゥ、帰ッたぞォ!」
「おっかえりー!!」
「ありがとうございます、嶋野さん」
「よう龍野、お疲れさん」
「…あ、砂糖君。ありがとう」
龍野に声を掛けると微笑みながら返してくれる。しかし俺の側に猫屋敷が居るのを見て途端に顔をしかめさせ、猫屋敷をにらみ始めた。
「…砂糖君、離れて」
「何だよ龍野、何で猫屋敷睨んでんだよ?」
「…猫屋敷君はあのライトキリング何だよ?」
「その事なら大丈夫だ。猫屋敷は誰も殺さねえって」
「…何で?」
俺は先程熱宮達に話した事を龍野達にも伝えた。桃瀬、影山、木枯は一応納得はしてくれたが龍野は聞いてもなお、猫屋敷をキツく睨んでいた。
「…ごめんけど僕は猫屋敷君は信用出来ないや」
「何でだよ龍野!?」
「ん~何となく予想は出来てたけどね~」
何だ?この二人の間になんか合ったのか?そう言えば龍野は初めて猫屋敷と会った時も睨んでなかったか?
「もしかして二人はここで出会う以前もどこかで会ってたとかか?」
「なんだいあんたら、知り合いだったのかい?」
「いや~俺はしらにゃいな~」
「…僕は知ってたよ」
「おや~やっぱりそうだったんだ~。それはどこで~?僕には記憶がないんだけどな~」
「…君とは直接会った事はないよ。…君の情報を知ってただけ」
龍野はどこで猫屋敷の事を知ったってんだ?聞いてみたが龍野は「…その事はまだ言えない」と返された。
龍野は話してくれそうになかったのでとりあえず、藤の説得がどうだったかを聞く事にした。
「藤さんは図書室に居ました」
「藤にャァすぐに俺達と協力するよォ言ッたんだがよォ」
「何を言っても拒絶されちゃってね…結局藤さんの説得は出来なかったんだ。ごめんね」
「そうか…いや、良いんだ。俺達も和良井の説得に失敗しちまったしな」
今日の所は沢風の安否だけは確認出来たし良かったかな。和良井と藤の二人は根気よくいくしかないか。
その後情報を共有し、沢風には嶋野が様子を見に行き、和良井は俺、猫屋敷、龍野を連れて説得を、藤には鈴木崎と熱宮、木枯の女子三人が行く事になった。
そうして三人についての話し合いは終わり、次に猫屋敷の今後の事を話す事になった。
「殺人猫には見張りか部屋に監禁でもした方が良いんじゃね?」
「鷹倉の案に賛成だねぇ」
「いや監禁なんて駄目だろ!」
「でも…やっぱりウチはワンニャンが怖いな」
「ん~監禁は嫌だな~」
「お前は…何でんな呑気なんだよ」
議題の中心人物である猫屋敷は、焦る様子もなくいつも通りの平常運転だ。
というかこいつが焦ってアワアワしてる姿を見た事がねえな。肝っ玉が強すぎるだろ。
「せめてさ~見張りを~お願いだよ~」
「って言ってるけど、どうするのさ?」
「猫屋敷が言うなら…見張り付けるでいんじゃね?」
「…皆が賛成するなら特に異論はないよ」
「ウチもそれで良いかな…」
「でも誰が見張るの?」
「ならよォ、俺がするぞォ」
猫屋敷には見張りを付けるという事で話が進み、誰が見張りをするかとなった。そこに立候補したのが桃瀬だった。確かに桃瀬は腕っぷし強いしな。
「なら俺もするわ。猫屋敷の事は信頼してっし見張りってか一緒に居るだけになるな!」
「瀬戸内君~嬉しいな~」
瀬戸内も志願し、猫屋敷には桃瀬と瀬戸内が見張りとして一緒に居る事になった。俺はあんま納得がいかねえけどな。
話し合いはひとまず終わり、自由時間としてそれぞれ自由に行動する事にした。
さて、俺は何をするか…と思い席を立ち食堂から出た。すると龍野が俺の後を着いてきた。
「何だ龍野?なんか用か?」
「…あ、いや用はないんだよ」
「なら何で着いてくんだ?」
龍野は恥ずかしそうにモジモジとしながら俺をチラチラ見てきた。…何だ?
「…砂糖君が、心配でね?…猫屋敷君の事もあるし」
「俺を心配って…んな事気にしなくて良いんだけどなぁ」
「…そうはいかないよ。砂糖君は無防備過ぎるんだから」
そんなにか?龍野にそんなに心配されてんのかよ?まあ別に良いか。丁度良いし龍野とまた図書室で本でも読むかな。まだお互いおすすめの本を探せてねえし。
龍野にそれを伝えると見て分かる程顔を綻ばせ喜んでいた。
そして俺達は図書室で読書をする為、図書室に向かった。
ーーー図書室ーーー
図書室に入るとそこには桃瀬と鈴木崎、鷹倉が居た。
「よォ、砂糖に龍野かァ」
「よう桃瀬、それに鈴木崎と鷹倉も居んだな」
「おっす…」
「何だよ二人揃って、デートか?」
デートって…男二人に向かってデートはねえだろ。鷹倉は時々突拍子もない事を言うよな。
呆れながら隣の龍野を見ると顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた…いや照れる所か?
「…そ、そそそそんなデートだなんて、僕達は別に、そんな、鷹倉君は何を、何を言ってるのさ」
「……いや、冗談のつもりだったんだが」
「…ふぇ?」
「え?何なんその反応は?間違いじゃなかったんか?」
「…い、いやいや!?そんな知ってたよ冗談だって事は!話に乗っただけさ!ねえ砂糖君!?」
「ええ!?そこで俺に振るのかよ!?」
俺に振られてもどうすりゃ良いんだよ…ここは話を変えるか。
「それでお前らは何しに来たんだよ?」
「俺は医療関係の本をォ借りに来ただけだァ」
「私達はあれを造るのに役立つ本を探しに来た」
「まあ後少しで完成ではあるがな。余裕が出来たしなんか他に役に立つもんがあるかもなって思ってな」
そうか、桃瀬は医師を目指してるんだしな。鈴木崎達は後少しで完成なのか。どんなロボが出来るか楽しみだな。
「砂糖と龍野は何しに来たの?」
「俺ら?俺らは読書しに来たんだ」
「そんなドヤ顔でェ言う事かァ?」
「…ふふ」
何笑ってやがる龍野おい…まあ良いか。俺は恥ずかしさを誤魔化す為にさっさと本を読む事にした。
とりあえず本を選ぼうと本棚をじっくり見る。すると近くに鈴木崎が居た。
少し鈴木崎と話す事にした。
「よう鈴木崎、ロボ造りは後少しなんだってな」
「うん。鷹倉も意外と頼れる。あっという間に完成まで進んでる」
「そうか。どんなロボが出来るか楽しみだな」
俺がそう言うと鈴木崎は途端に顔を暗くした。
「うん…だけど一番張り切ってた百澤が見れないのが悲しい」
「…ああ、そうだよな。あいつが提案したんだしな」
俺達の為に、ここから出れるかもしれない可能性を探し、それを実行しようた頑張ってくれていたのに…もう百澤は居ないんだよな。
「でも、だからこそ私は頑張る」
「鈴木崎…」
「百澤の分も頑張る。あいつの想いの分も頑張って必ず完成させる。だから待ってて」
見ると鈴木崎はいつもと同じ無表情だったが、やる気が満ちた顔をしてるように見えた。
鈴木崎は百澤の想いを受け取り、俺達の為にも頑張ってんだ。
なら俺もまずは和良井の説得をし、皆で協力出来るよう頑張るぞ!
「ああ…待ってるな!だけど俺も待ってるだけじゃなくて、和良井を説得するぞ!」
「あんま無茶しないでね…砂糖すぐ無茶しそうだし」
「そ、そんな無茶しねえよ…気を付けるけどよ」
「うん。なら良し」
そう言って鈴木崎は少し微笑んだ…顔をした気がする。え?今…笑ったか?いつも無表情だし表情筋動いた所なんて見た覚えがねえし、俺の気のせいか?
「砂糖…ジロジロ見過ぎ」
「うえ!?あ、すまねえ!」
「全く、デリカシーないよ」
うっ!無表情な鈴木崎から圧を感じる。まあ今のは俺が悪いか。だが何となく鈴木崎との距離が縮まったかな?
ーーー鈴木崎との新密度が1上がったーーー
鈴木崎と別れ、本を探していると桃瀬が本を立ち見していた。
見た目は厳ついヤンキーだが顔付きは真剣で見ると医療の本を熱心に見ていた。
「ん?何だよォ、砂糖かァ」
「おう、邪魔したか?」
「そんな事はァねえよォ」
「やっぱ桃瀬は将来医者になんのか?」
「まあなァ。親父の跡を継ぐのが夢だからなァ」
「そうか、俺は希望ヶ峰に行く事が夢ってか目標だったし、一応予備学科として入学出来たからな…叶ったっちゃ叶ったかな?」
「それならァ、次の目標でものんびり考えらァ良いじャねえかァ」
「あー…次の目標か。ならここから出る事だな」
出来れば全員で出れたら良かったんだが…だが今はそんな事を言ってられねえよな。
今生きてる奴等で出る事が目先の目標だ。
「良い目標だなァ。俺も協力するぜェ!」
「おう!ありがとうな!」
桃瀬はニコッと笑い、俺の肩をポンと叩いてくれた。頼もしいな。
流石は暴走族のトップでもある桃瀬だ。
ーーー桃瀬との新密度が1上がったーーー
「んじャあ俺は目的の本を見付けれたしィ、そろそろ猫屋敷の見張りに戻るわァ」
「あ、そういや桃瀬は見張りがあるんだったな」
「おゥ。今は瀬戸内が着いてくれてんだよォ」
「そうか」
「力自慢の瀬戸内ならァ安心だしなァ」
確かに俺らの中で一番力がある瀬戸内だしな。それに瀬戸内は猫屋敷と仲が良いんだ。あの二人なら何も起こらねえだろ。
「じャあなァ」
桃瀬は本を片手に歩きながら俺に手を振り、猫屋敷の元に向かった。
俺は面白そうな本を選び、席に着こうとすると席には既に龍野が座っていた。その横では鷹倉がテーブルに突っ伏しながら龍野に何か話し掛けている。
龍野を見ると嫌そうな顔をしていた…が俺に気付くと顔を綻ばせた。
「おい鷹倉、龍野に迷惑かけんなよ?」
「ああ?別にかけてねーよ。なあ、龍野く~ん?」
「…うう。砂糖君…」
「見るからに迷惑そうじゃねえか!」
少し涙目だし鷹倉は何をしたんだよ。とりあえず龍野と鷹倉の間に入っておこう。
「うおっと?何だよー邪魔なんですけどぉ?」
「お前が龍野に何かしてるからだろ。んで何をされてたんだ?」
「…えっとね」
「真っ黒君の才能は何なのかって聞いてただけだよ」
「お前…んな無理矢理聞こうとすんなよな」
「だってよぉ、やっぱ気になんじゃんか?愉快犯なのか、じゃねえのかって事は」
やっぱり龍野が超高校級の愉快犯って疑われてんだな。だけど俺は違うと信じてるぞ。
「んな事今は気にしなくても良いだろ?」
「お前は気になんねーの?」
「おう!いつか言うって龍野が言ったんだ。なら俺はそれを信じて待つだけだ!」
「…砂糖君…ありがとう」
「良いって事よ!俺と龍野の仲だろ!」
俺がグッと親指を立てサムズアップをし、笑いながら言うと途端に龍野の顔が朱に染まった。
「やっぱそういう仲なん?」
「は?仲良しってだけだぞ?」
「こいつは天然かー」
「どういう事だよ?」
「何でもねえよ…放っといた方が面白そうだし」
最後の方は鷹倉の声が小さくて聞こえなかったがまあ別にいいか。
とりあえず俺は鷹倉が龍野の事を聞かないよう別の話題を出すことにした。
「そう言えば鷹倉は鈴木崎と一緒に本探してたんじゃねえのか?」
「お?真っ黒君の才能を詮索しないよう別の話題を出して注意をそらすって訳か?」
鷹倉にはお見通しだった…。
「ま、まあ良いじゃねえか!それで鈴木崎は!?」
「強引だなー…てか話さねえと駄目な感じ?」
「興味あるしな!」
鷹倉は頭を掻きながら怠そうに話始めた。
「メカ女がな?メカの本に夢中になりすぎて俺の事無視し始めたんだよ。だから暇になったし椅子に座って待ってようと思ったら真っ黒君が居たわけ」
「そうなのか、ならそろそろ戻ったらどうだ?」
「まだ大丈夫だろ。それで真っ黒君は愉快犯なん?」
だあぁぁぁ!また龍野に興味が行っちまった!?
「所で鷹倉はどうして配信者になったんだよ!?」
「中々なパワープレイだな…」
「…ぼ、僕も興味あるなぁ」
「真っ黒君…棒読みだけど」
「…そ、そんな事ないよ!?」
いや、今のは誰が聞いても棒読みだったぞ?
「しゃあねえなー。別に大した理由はねえけど…楽に稼ぎたかったから」
「…それだけ?」
「そうだけどー?家から出たくねえ。でも金は居る。ならネットで配信してりゃ稼げるじゃんか」
そ、そんな理由でヴィクトが誕生したのか。
「俺はガキの頃に家族死んじまってな、それで親戚とかも居なかったんだよなー。んで金を稼がなきゃと思ったんだが家からは出たくなかった。
だからガキでも出来て家で稼げそうな配信に目を付けたってだけだ」
意外だ…鷹倉にそんな過去があったとはな。いつもグータラしてる奴だけど家族が居なかったのか。
「まあ配信する時に使うパソコンとかが俺の家族だなー」
「そうか…」
「何でお前らが暗くなるん?」
「い、いやだってよ」
「俺は別に寂しくもねえし悲しくもねえよ。だからお前らは余計な気を使うんじゃねえよ」
何でもないように言うが小さい頃に家族が亡くなるなんて…辛いに決まってる。それを鷹倉は平然としているなんて…鷹倉の意外な一面を知れたな。
ーーー鷹倉との新密度が1上がったーーー
「鷹倉」
「あん?」
鷹倉の話を聞いていたら背後から鷹倉を呼ぶ声が聞こえた。
見ると何となくむすっとしている様に見える鈴木崎が本を手に持ち立っていた。
「勝手に動くの止めて」
「い、いやだってよ…お前がメカに夢中になっから」
「なら一言頂戴」
「邪魔しちゃ悪いと思って…あの、何で俺怒られてんの?」
「うるさい」
「いで!?いででででで!み、耳を引っ張るなお前!おい!いてえって!」
「じゃあ砂糖、龍野。お邪魔した」
「お、おう」
「…うん」
鷹倉の耳を引っ張りながら図書室を出ていく鈴木崎。あれ凄く痛そうだな。
まあ何とか鷹倉の注意をそらせたしいいか。気を取り直して俺達は読書を始めた。
それから時間が経ち、本を読むのに夢中になっていたら突如アナウンスが鳴った。
『やあオマエラ!突然で悪いけど体育館に集まってー!』
『さあミナサマお早く!五分以内に集まって下さいね!』
耳障りな声を響かせ毎度お馴染み勝手な事を言うだけ言ってアナウンスは終わった。
「はぁ…また集まれってか」
「…行くしかないね」
俺達は渋々図書室を出て体育館に向かった。
ーーー体育館ーーー
体育館に着くと既に他の皆は揃っていた…と思ったら和良井と沢風が居なかった。
藤は部屋の隅に静かに佇んでいた。
心配になり、呼びに行こうかと思っていたら体育館の扉が開き、現れたのは沢風だった。
いつも整えられていた髪はボサボサで目は真っ赤に腫らして顔色は見て分かる悪さだった。
「ぁ…やあ皆」
「大丈夫かいあんた?」
「うん…心配かけてごめんね」
「気にすんなッてェ!何か体に不調がありャ俺に言えよォ?」
「うっはーイケメンが台無しじゃんか」
「鷹倉」
「だっから耳を引っ張るなって!」
「鷹倉の奴、鈴木崎に飼い慣らされてるぞ」
「あれはあれで~羨ましいね~」
皆それぞれ騒ぎながら沢風の事を気にして、気遣っている。
これで後は和良井だけだ…と思っていたらまたもや体育館の扉が開いた。
見るとモノソノが怒りながら入ってきた。手には紐を持っていて、何かを引っ張ってきた。
「全く君は言う事をちゃんと聞きなさい!校長を待たせるんじゃない!」
「うるさいねん!この首輪解けや!」
引っ張って連れて来られたのは和良井だった。首には首輪が付けられており、モノソノが持っている紐に繋がっていた。
「フム、これで全員集まりましたね?…校長!全員集まりましたよ!!」
モノソノが大きな声でモノクマを呼ぶと、壇上からモノクマが派手に飛び出してきた。出てこなけりゃ良いのに。
「イヤッホー!皆の心の癒し!モノクマ校長だよー!」
「うは~心が荒むね~」
「虫酸が走るわ。早く伝える事を伝えて終わってくれない?」
「テメーこの野郎!早く終わらせろこら!」
「おう!?な、何だよ!オマエラ何でそんなに反抗的なんだよ!?」
当たり前だろ!お前らは敵なんだ!誰が素直に従うか!
「静粛に!キミタチ静粛にしたまえ!校長がショックを受けるだろうが!」
「構わねえよ!」
「ショボーン…生徒の反抗期に心をヤられちゃうよ…身も心も犯されちゃうよ!」
「今の教師の発言ならセクハラで訴えれんじゃね?」
鷹倉は何を呑気な事を言ってんだよ!
「何だよ!オマエラにせっかく本館と別館の三階が解放されたって知らせてあげようとしたのに!」
「別に直接言わなくても良いだろ?」
「…アナウンスで言えば済む事だよね」
「無駄な事をするねぇ」
「流石は~ポンコツだよね~」
各々が好き勝手モノクマの悪口を言うと流石にモノクマも怒ったのか顔を真っ赤にさせ、地団駄を踏み怒ってますアピールをしてきた。
「プンプン!もう怒ったよ!」
「怒ったからどないしたってんや」
「うぷぷぷ!怒ったのでついでに動機も発表しちゃいます!」
「はあ!?」
モノクマからの言葉に俺達は大きく驚いた。
「おお!それは良いですな!今までの流れを変えると言う訳ですな!」
「そう言う事!新しい風を吹かすんだよ!」
何が新しい風だ!そんなもんいらねえよ!
「んじゃあサクッと動機発表するね!」
「待てよ!」
「ん?どうしたのさ沢風君?おっきな声出して」
「動機何て俺達は聞かないぞ!動機を聞くから疑心暗鬼になるんだ!」
「んもう!それが狙いなんだけど!それに今聞かなきゃオシオキだよ?」
「くっ…下劣め!」
沢風は悔しそうに佇む。聞かなければオシオキ…黙って聞くしかないか。
「それじゃあ邪魔もなくなった事だし!言っちゃおー!ズバリ!今回の動機は『学級裁判に勝ったクロは残っている人の中から一人選んで一緒にここ絶望ヶ峰学園から卒業』が出来ます!」
「は?一緒にだって?」
「その通り!キミタチはそれぞれ仲良しこよしになった人が一人は居ますよね?死んでいる者も居るでしょうがね!」
「そんなオマエラの為に!誰か一人だけ選んで卒業が出来るんだよ!」
「そ、そんなんで俺らが殺すってのか?」
「うん!オマエラなら釣られるだろうね!うぷぷぷ!」
「うっぷっぷ!楽しみですねえ!それでは良いコロシアイ生活を!」
モノクマとモノソノは俺達を馬鹿にしたように笑いながら突然目の前に出来た穴に飛び込み消えた。
「……それでよ、どうするよ?」
静まった空気を破ったのは瀬戸内だった。普段の自信満々な顔は伺えず、おずおずと言った。
「とりあえずさ~三階の探索しようよ~」
「猫屋敷の言う通りだねぇ。今は動機の事は置いて、解放されたって言う三階に行ってみようかねぇ」
「ここの館と別館の三階…手分けして行ってみるか」
「あ、和良井、藤!どこに行こうとしてんだよ!?」
探索に向かう事で話が進んでいる中、和良井と藤はさっさと出ていこうとしていた。
藤は俺の言葉に反応せず、黙って体育館から出ていった。和良井は立ち止まり、俺達の方を振り返り睨み付けた。
「俺は部屋に戻んねん!探索何て今せんでも後で出来るな!」
「一人で探索するより皆で行った方が良いだろ?」
「アホか?俺はお前らと一緒になんか行かへんわ!勝手にしとけ!」
そう言って和良井は体育館から出ていってしまった。
「和良井…」
「しょうがないねぇ。和良井と藤は抜きで探索に行くかい?」
「まあ…今無理に二人を追い掛けてもな」
「藤さんは恐らく三階に行ったんでしょうね」
「ああ、なら藤とは会えるか」
そうして俺達も新しく解放された本館、別館三階の探索をする事にした。
続く。
ー登場人物ー
【予備学科生徒】
【超高校級の???】
【超高校級の芸人】
【超高校級のリア充】
【超高校級のメカニック】
【超高校級の幸運】
【超高校級の放送部】
【超高校級の殺戮者】
【超高校級の氷彫刻家】
【超高校級の僧】
【超高校級のモブ】
【超高校級のネット配信者】
【超高校級の折り紙講師】
【超高校級の保険委員】
生存者 14人
ギスギスしてきましたかね?