ハイパーダンガンロンパ   作:ゲップ助かります

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思ったより長くなりました。


第三章 (非)日常編4

☆~~~モノクマ&モノソノ劇場~~~☆

 

『物語はその人の主観でしか見えないよね』

 

『ええ、そうですね』

 

『でもさ、他の人達はそれぞれの主観で動いてるんだよね?』

 

『そうですね。Aクンがどこかで何かをしていた時、Bサン、Cクンはそれぞれ別の場所に居るかもしれませんし、同じ場所に居るかもしれません』

 

『そうだよね!結局さ、自分の範囲でしか行動出来ないなんて、生物って惨めでちっぽけな存在だよね!』

 

『確かにその通りですな!』

 

『でもさー人間は生物の中で一際、邪魔くさい思考回路で行動してるよね!その癖して、何も出来ないで騒ぐだけ騒ぐよね!何て愚かなんだろうね!』

 

☆~~~~~~☆

 

 

 

「…砂糖君」

「お?どうしたよ龍野」

「…今日は僕と図書室で読書しない?」

「おう!良いぞ!」

 

お昼、何をして過ごそうかと思っていたら龍野に誘われた。まだお互い薦める本を決めれてないからな。

なんかこれってもんが決まらねえんだよな。まあ案外すぐに決められるかもだし、と思いながら俺達は図書室に行く事にした。

 

ーーー図書室ーーー

 

早速席に座り、読み掛けの本を取り出して読み始める。この静かな図書室に、俺と龍野だけで本を読むってのは落ち着くし俺は結構好きなんだよな。

ふと横に座っている龍野を見てみると穏やかな表情で読み進めていた。

しかし龍野の読書スピード早いよな…あっという間に読んで次の本を探しに行きやがるから。

そんな事を思いながらも読書をして、しばらくお互い無言だが落ち着く時間が流れた。

 

「ふう、読み終わった」

「…あ、僕も丁度読み終えたよ」

「相変わらずお前の詠むスピード早いよな」

「…そうかな?」

 

いや十分早えよ!お前一頁詠むのに十秒位で読んでねえか?ちゃんと読めてんのか不安になるぞ。

 

「…砂糖君の方はお勧め出来そうな本決まった?」

「まだ全然決まってねえな」

「…そうなんだ。僕もまだなんだ」

 

まあまだ俺は読み終えれた本自体が少ねえんだけどな。龍野はもう数十冊は読んでるみてえだけど龍野もまだ決めれてないみたいだな。

 

「大体ここ本の数が多すぎるんだよな」

「…確かにそうだよね」

「読書自体そんなしねえし、友達に勧めるってのも初めてだからなぁ。やっぱり心から気に入ったもんを勧めてえし」

「…と、友達。えへ、えへへへ」

「あ?どうしたよそんなにやけて」

「…な、何でもないよ!?」

 

何だよおい、顔も心なしか赤くなってねえか?というか最近、龍野の奴は、顔が赤くなる頻度が高くねえかって思う。白い肌してっから余計に目立つしな。

なんか病気にでもかかったとかじゃないよな。

 

「…さ、砂糖君。僕の顔ジーッと見てどうしたの?」

「あ、や、何でもねえ。んじゃあ次の本でも選んだ来るか」

「…う、うんそうだね」

 

いつの間にか俺は龍野の顔を凝視していたらしい。龍野もジロジロ見られてると、いい気はしねえよな。

俺は誤魔化しながら席を立ち、本を選びに本棚に向かった。

 

そして本を選んでいる最中、図書室の入り口の扉が開く音がし、そちらを見た。

入ってきたのは鈴木崎とハクの二人だった。俺は一旦本選びをやめて、二人の元に向かい、話し掛ける事にした。

 

「よう」

「ん。やっほ」

「奇遇ですね、たろう」

 

軽く手を振りながら声を掛ける俺に鈴木崎は小さく手を上げ、ハクは俺の動きを真似して手を振りながら答えた。

 

「どうしたよ二人して」

「ハクに色々な事を知ってほしいから、連れてきた」

「それネットに繋いでの方が早いんじゃねえか?」

 

せっかくネットに繋げれるようになったんだし、ハクにはもってこいだろ。

 

「いえ、最初はそうしようとしたのです。ですが、くま校長がろっくを掛けてました。

外そうと試みましたが時間が掛かりすぎると判断し、ますたーがならば図書室に行こうと提案して下さいました」

「そんなにロックばっかなのかよ」

「モノクマ達は余程、私達に外の情報を与えたくないっぽい。でも下らない、必要ない情報は簡単に知れる」

「マジか、嫌らしいあいつらのやりそうな事だな」

 

俺らに役立たない情報はロックなんか掛けずにいる所とかムカつくよな。入手できた情報の中にはモノクマの一日なんて下らねえもんがあったが誰が知りたいと思うんだよ。

そんな事を思っていたらハクはおもむろに近くにあった本を手に取りパラパラと捲り始めた、と思いきやあっという間に本を元の場所に戻し始めた。

 

「あんま興味湧かなかったか?」

「いえ、この本の事は全て覚える事が出来ましたので」

「はぁ!?覚えたって!?」

「?、言葉の通りです」

「いやだってほんの数秒だったろ…」

「ハクは高性能、私が造ったから」

 

ふんと鼻を鳴らしながら、若干誇らしげにしてるように見える鈴木崎、最近やっと鈴木崎の僅かに変わる表情とかが分かるようになったけど、鈴木崎って意外と天然な所があるな。

 

「この本も読破完了。こちらも、この本も…」

「す、すげえ…ドンドン読み進めて覚えてやがる!」

「ふふふふふふ」

「無表情で笑うなよ」

 

やめろ、無表情なのに体を揺らすなよ。初対面の奴が見たら軽く恐怖だぞ。

なんて思っていたら龍野がこちらに近付いてきた。

 

「…こんにちは。鈴木崎さん、ハクさん」

「ん」

「りゅうと、こんにちはですね」

「お前もこっちに来たか」

「…うん。砂糖君の大きな声が聞こえたから何かあったのかなって」

 

あー、ハクの読み進めるスピードの早さに驚いた時に大きな声出したっけ。

俺は龍野にハクの高性能な超速読破機能を話した。

 

「…確かに、今も本を取っては捲って戻してをしてるね」

「これで覚えてんだってんだから凄いよな」

「ふふふふ」

「…鈴木崎さん嬉しそうだね」

 

無表情だけどな。

 

「流石に今日一日でここにある本を読むとかじゃねえよな?」

 

無駄に広く、無駄に品揃えがよくて沢山ありすぎるここの本を全部読むってなったら、流石のハクでも大変だぞ。

 

「それならハクには知識より他の奴等と話したりする方が良いんじゃねえか?」

 

まだ皆の中にはハクと話してない奴が居るかもだしな。

 

「む…ハクはどうしたい?」

「そうですね……ハクは皆様とお話ししたいです」

「よし、なら行こう」

 

鈴木崎はそう言ったらさっさと図書室からハクを連れて出ていこうとする。

 

「いや待て待て鈴木崎!」

 

慌てて呼び止めると止まってくれた。

 

「なに?」

「いやなにじゃないだろ。お前、動き出すの早すぎだろ!」

「そう?」

「…言い終わる前にハクさんの手を取ってたからね」

 

こいつハク大好きじゃねえか!いやそりゃ自分で造り上げたロボットだから好きなのは分かるけど、鈴木崎がまさかこんなになるとは思ってなかった。こいつ子供とか出来たらすげー甘やかしそう。

てか今の見たら鈴木崎一人に任せんの不安になってくるな。

 

「なあ龍野、俺もあの二人に着いていっても良いか?」

 

不安だし俺も着いていこうと決めたが先に龍野の読書してたからな。龍野の了解を得なきゃだよな、申し訳ねえけど。

 

「…うん。僕も少し心配だったから。砂糖君が着いていくなら安心だよ」

「そうか、ありがとな。この埋め合わせは今度する」

「…そんな、良いのに」

「そうはいくか、俺が納得いかねえから絶対に埋め合わせはするぞ」

「…うん、分かった。じゃあ僕はまだ少しここに居るよ」

 

龍野からの了承も得て、俺は鈴木崎の方に向かった。

 

「なあ、俺も一緒に行ってもいいか?」

「私は別に大丈夫」

「歓迎します、たろう」

「んじゃあ最初はどこに行くか」

「上の階で良いんじゃない」

 

鈴木崎の提案により、俺達は上の三階にまず行くことにした。

 

「ここが三階ですか」

「ハクはまだ来たことなかったのか?」

「はい。ハクが行った所は本館一階二階と別館一階のみです」

「大体は技術室に居たからね」

 

でもここの地図は入っているらしいから全体図は知っているとハクは付け加えた。

なら迷ったりする事はないか。

俺達は三階上がってから一番近くにある教室、美術室に行くことにした。

 

ーーー美術室ーーー

 

中に入ると瀬戸内と猫屋敷と桃瀬の三人がなにやら彫刻を見て話していた。俺は近付いて話し掛ける事にした。

 

「よう、何してんだよ」

「あァ?おゥ砂糖ォ。それに鈴木崎にハクじャねえかァ」

「ん、やっほ」

「いちごにたいようにこまい、こんにちは」

「お~よよ~こにゃにゃちは~」

「よっす。何してるって言われたらこの彫刻の話をしてたんだよ」

 

瀬戸内が指差すのを見れば、先程まで瀬戸内が話していた彫刻があった。

それは誰なのかは知らねえけど、どこかのギャルの彫刻だった。タイトルを見れば【超高校級の絶望】と書かれていた。

絶望…だけどこの彫刻のギャルは明るく笑ってるけどな。

絶望なんてタイトルとは程遠いけどどこが絶望だってんだ?

それに超高校級って事はこのギャルも希望ヶ峰学園に居たってのか?なんかどこかで見たことあるような気がするが思い出せねえな。

大体、超高校級の絶望ってどんな才能だよ。

 

「このギャルの彫刻がどうしたってんだよ」

「分からねえか?砂糖、お前なら分かるだろ?俺らがこれを見て何を話していたのかを」

 

淀みない瀬戸内と猫屋敷の眼差しと若干二人を呆れた目で見ている桃瀬。

そして超絶可愛いギャルの彫刻…しかも…うん、でかいな……という事は!

 

「おっぱいの話か!」

「ビ~ンゴ~」

「さっすがだな!!そうなんだよ、胸元大胆に開けてやがるこのすんばらしいおっぱい!これは熱弁するしかあるまい!!」

「…………」

「鈴木崎ィ…無言になんのはァ分かるぞォ」

 

桃瀬が表情に加えて目も死んだ鈴木崎を気遣う。いや、うんまあ……悪い鈴木崎…。

 

「たいようとこまいはこちらの彫刻の胸部を話していたのですか?」

「おうよ!ハク、お前にもおっぱいのすんばらしさを語ってやろうか!」

「絶対にやめろ」

「ひぃ!!?」

 

鈴木崎が無表情だがキレていると分かるオーラを放ちながら瀬戸内を怒る。ハクの事を溺愛してる鈴木崎なら全力で止めるよなぁ。

 

「ま、まあまあ!ジョークだって、安心しろよ!」

「………本当?」

「そりゃ勿論ですとも!!」

「………次はない」

 

首が取れそうな程頷く瀬戸内を見て、ハクにはちょっかい、いらない知識を教えんのはやめようと俺はこの時密かに誓った。

 

「たいようとこまいは大きい胸部が好きなのですか?」

「あったりめえ……す、鈴木崎?今の俺が悪かったか?ハクから質問されたから正直に答えただけなんだが?だからその手に持ってるトンカチはしまえ、な?」

「……問答無用。次はない、警告はした」

「や、やめ…ちょ、ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!?」

「逃げる、なっ!」

 

美術室で突如、鬼の鈴木崎と命懸けで逃げる瀬戸内の楽しい楽しい鬼ごっこが始まった。

流石はマッチョな瀬戸内、足が速いなと思ったけど鈴木崎が徐々に追い付いていってるな。

 

「あれは時期に捕まるな」

「僕の方に~振られなくて良かった~」

「自業自得ってやつだァ」

「何故ますたーとたいようは鬼ごっこを?」

「おぉぉぉまぁぁぁえぇぇらぁぁぁぁぁ!!助けろよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

小首を傾げているハクに癒されながら、瀬戸内の奮闘をのんびり見る事にした。

 

そして数分後、鈴木崎に全力土下座をしてなんとか許しをもらえた、ボロボロの瀬戸内がそこに居た。

まあどうなったかと言えば結局捕まった瀬戸内が鈴木崎にボコボコにされていた。

そこを「仕方ねえなァ」と助けに入ったのが桃瀬だった。

 

「ありがとな、桃瀬……」

「おゥ、良いッて事よォ。目の前で怪我されんのはァ保険委員として見過ごせねえからなァ」

「ハク、砂糖。他の所行こ」

 

瀬戸内から離れたいのだろう、鈴木崎は若干早足でハクを連れて出ていく。

 

「んじゃあ俺も行くわ」

「またなァ」

「ばいにゃら~」

「あー怖かったぁ」

「あ、瀬戸内」

「あ?」

「面白かったぞ」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

瀬戸内の絶叫を聞きながら俺は鈴木崎達の後を追い、美術室から出た。

 

「ハク、瀬戸内の言う事は信じない」

「どうしてでしょうか?」

「瀬戸内だから」

「たいようだから…ですか?」

「うん、そう」

 

酷い扱われ様の瀬戸内に多少同情するが、まあ瀬戸内だし良いか。気を取り直して俺達は廊下を歩き始めた。

三階は上がってすぐに美術室で一番奥にお化け屋敷がある。そして途中の道に超高校級のネット配信者とアルバイターの研究教室、そして死体保管室がある。

 

お化け屋敷が大きめに造られてるからか、空き教室とかはない構図になっている。

そして俺達はネット配信者の研究教室前まで来たので、入ってみる事にした。

 

ーーー超高校級のネット配信者の研究教室ーーー

 

入ると鷹倉が居た、ゴロゴロしながら寝そべっていた。

 

「鷹倉、邪魔くさい」

「んだよいきなし入ってきといて」

「ハクに悪影響なものを見せない」

「え、何で俺は寝転がってるだけで、んなひでえ言葉を言われにゃならんのだ?」

 

鈴木崎は本気で言ってやがる…目を見れば分かるぞ。こりゃ重症なハク溺愛だな。

 

「なあハク、あの二人っていつもあんな感じなのかな?」

「はい。ますたーとお兄様はお互い話しますと、ああなります」

「そうなのか」

 

まあ、悪い空気じゃねえし、意外とお似合いの二人なのかもな。二人ともどこか似てるしな。

 

「鷹倉は自分の研究教室でなんかするつもりだったのか?」

「うんにゃ、ここが落ち着くからダラダラしに来ただけだ。こんな所で配信なんかする気力もねえし」

 

それは少し、いや凄く残念だな。超高校級のネット配信者である鷹倉…ヴィクトの生配信が見れるかもと思ったんだがな。

やっぱ超高校級の才能を生で見てみたいんだよな。それを見たいが為に希望ヶ峰学園に来たって所もあるし。

 

「ハクー、お兄ちゃんを助けてくれー」

「ハクに近付こうとするな」

「俺に癒しをくれー」

「何をすれば良いんですか?」

「膝枕」

「っ!!!」

「ぶべっ!?おっまえは顔面パンチは駄目だろが!」

「うるさい。お前は重罪、罪深い」

 

鷹倉の右頬に鈴木崎の素早く力強いストレートパンチが飛んだが、わりかし鷹倉も平気そうだな。なら大丈夫か。

 

「お兄様、このパソコンで配信は出来るんですか?」

「一応は出来るっぽいけど…なんかモノクマが作った配信システムしか、利用出来ねえからやりたくねえ」

「そうですか…それは仕方ないですが、お兄様の生配信、見てみたかったです」

「……ほう?」

 

顔を少し暗くさせ、しょんぼりした雰囲気を漂わせるハクを見て、鷹倉は目を光らせた。

……なんかろくな事言わないだろうなって俺の直感が言ってる。

 

「我が妹よ、生配信が見たいならー……耳掃除をおねがイップバァッガッハ!!?」

 

結末はまたもや鈴木崎の二連続ストレートパンチだった。見事に鷹倉の頬に刺さった。

ぐでーんと体を投げ出して、ピクピクとしている鷹倉をゴミを見る目で見下ろす鈴木崎に恐怖で背筋がブルッとなった。

 

「行くよ」

「お兄様…あ、待ってくださいますたー」

「も、もう少し心配してくれやー……ハクー…」

 

何で瀬戸内も鷹倉も殴られるって分かってんのに言うかな…。明らかにハクを溺愛してる今の鈴木崎に、ハクが悪影響を与えられそうっぽい事を言ったら怒るに決まってるだろ。

俺は絶対に鈴木崎を怒らせたくないと思いながら、鷹倉の元を後にした。

 

「そういやよ、ハクはプールに入っても大丈夫なのか?」

 

廊下を歩いていて俺はふと、そんな事を聞いてみた。

 

「なに、藪から棒に」

「プールで遊ぶとか出来んのかなって思ってよ」

「ハクをいやらしい目で見たら駄目だから」

「いや見ねえよ」

「つまりハクに魅力がないって言ってる?」

 

うっわ、めんどくせえ!!どれを選んでもアウトじゃねえか!

 

「そ、それでどうなんだよ!?」

「ん、防水機能ある」

「なら大丈夫なんだな。ならハクって更衣室はやっぱ女子の方なのか?」

「あ"?」

「そんな怖い顔すんなって!ただ気になったんだよ!女子の容姿だけどロボットだしって思ったんだって!」

 

怖っ!どれが地雷になんのか分かんなくて怖いわ!

 

「それでしたら、ハクも気になりましてくま校長に聞いてみました」

「ハク、いつの間に……流石自慢のハク」

 

鈴木崎も知らない事なのか。本当に自分で考えて行動出来るんだな。

 

「どうやらハクは男子、女子。どちらの更衣室も利用出来るとの事です」

「どっちも入れんのか」

「はい。確認の為、検証した所くま校長の言った通りなんの問題もなく入れました」

「でもハク、入るなら女子の方にして、分かった?」

「ますたーが仰るならそうします」

 

まあ鈴木崎ならそう言うだろうな。その後、死体保管室では、ハクが躊躇なく死体が入った引き出しを開けて一人一人に手を合わせ黙祷をした。

お化け屋敷では俺は流石にもう一度入る気にはならず、外で二人を待つ事にした。

 

二人とも出てきた時は全くビビった様子もなく、無表情で本当にお化け屋敷に入っていたのか疑問に思った。

そんなこんなでこの階のめぼしい所は行ったし、次は別館の方に行ってみようという事にした。

 

別館の二階、カラオケルームでは特に誰も居なかったので軽く見回った位で終わった。

ハクもカラオケにはさほど興味を示さなかったので、さっさと三階に上がる事にした俺達は、三階に着くと先ず目に入るのが、三階全体を彩るホログラムエリアの鮮やかな映像だ。

 

「いつ見ても綺麗だなぁ」

「これがホログラムエリアですか、鮮やかですね」

「無駄に高設備」

 

鈴木崎の言う通り、この設備がここに要るのかって疑問に感じる。

特に深い理由はなさそうだけどな。薄暗いからコロシアイが起こりやすそうとか考えても付けたとかだろうな。

 

「先ずはそこの研究教室に行くか」

 

ーーー超高校級のリア充の研究教室ーーー

 

扉を開け、入ると中には既に人が居た。この研究教室の才能の主である沢風とやたら騒いでいる嶋野がサッカーコートに居た。

沢風はもう大丈夫なのか?嶋野と楽しそうに喋っている沢風を見ると、その心配は杞憂そうだなと思った。

 

「およ?シュガーにメカ子、それにシロ子!」

「よっ、沢風は立ち直った感じか?」

「やあ。あはは、まだ完璧には立ち直れてないけど……ずっと部屋に閉じ籠ってるより、体を動かした方が良いかなって思ってな」

「そうそう!それでウチはここに行こうとしてたしゅんやくんと会ってさ!ウチも最近運動してないしって思って着いてきたんだー!」

 

なるほど、言われてみたら二人とも若干汗をかいてんな。

 

「いやー、思いっきり体を動かすと晴れやかな気持ちになるね!まあ、しゅんやくんの動きが異次元ワールド過ぎてヘトヘトリンだけどね!」

「そんな事言って、嶋野さんが全力できてって言ったんじゃないか」

「それはそうだけど、あんなに凄いとは思わないじゃんかー!」

「そりゃ元々は超高校級のサッカー選手としてスカウトされてた沢風だからな」

「言ったの後悔したし!」

 

しかしいつの間にかこの二人は距離が縮まった様に感じるな。

落ち込んでいた沢風に底無しに明るい嶋野は気分が晴れ晴れするんだろうな。

 

「シロ子と話すのこれが初めてだね!よろしくちょりっす!」

「すみません。気になったのですがしろ子とはハクの事ですか?」

「ふへ?だってシロ子、白って名前じゃん!ならシロ子だよ!」

「よく分かりませんがするーします」

 

それが正しい判断だと思う。嶋野のあだ名に毎回反応してても無駄だからな。

唯一、藤だけは抗おうとしているけど、それも聞き入れられず未だプリンセスって呼ばれてんだもんな。

 

「良かったらだけどさ、砂糖達も一緒にサッカーしない?」

「それ良いね!ウチ一人じゃ太刀打ち出来ないから、是非全力でお願いしちゃう!」

 

他愛ない話をしていたら沢風からサッカーをしようと誘われたので、折角だしと俺達は沢風、嶋野と一緒に軽くサッカーをする事にした。

 

「俺一人とそっちは全員で対戦で良いよね?」

 

なんて、沢風は平然と言ってきたから俺達の闘争心は刺激され、お言葉に甘えて全力で挑んだ。

結果は惨敗、サッカーボールを奪う事は一回も出来ず、沢風に良いように遊ばれて終わった。

 

「ハァハァハァハァ……マジバタンキューノスケだしっ!!」

「くやしい」

「ハクもです」

「あははは、でも皆良い動きだったよ」

「あ、あんなに余裕な笑いを浮かべながらよく言うぜ」

 

悪態を言っても沢風はお得意の爽やかな笑みで躱しやがった。

 

「皆、付き合ってくれてありがとう」

「良いって事よ。お前もずっと部屋で塞ぎ込んでるより体を思いっきり動かしてた方が気分は良くなるだろ」

「うん、そうだね。部屋に一人で居ても、嫌な考えしか浮かばないからね。このままじゃ駄目だって思ったよ」

「しゅんやの役に立てましたか?」

「うん、大助かりさ」

「それは良かったです」

「ぜぇ、ぜぇ。しゅ、しゅんやくんの笑顔が守れたならウチも嬉しいよぉ~!」

 

荒く息を吐きながらも満面の笑みを浮かべて、嶋野は言った。

それから俺達は、気分が乗った沢風に付き合わされ、へとへとになるまでサッカーを する事になった。

だが、沢風の楽しそうな顔を見て、そんな疲れも吹っ飛んだ様な気が……いや、やっぱ疲れたぞ!

 

「はぁはぁ…んじゃあ俺達は行くわ…」

「うん、そんなに疲れるまで付き合わせちゃってごめんね?」

「次は、俺が勝つからな!」

「あはは、うん。楽しみにしてるよ」

 

結局、沢風から一度もボールを奪えなかった。悔しいが次にリベンジを誓い、俺達は沢風達と別れた。

嶋野は疲れすぎて動けないとの事で、沢風が部屋まで連れていくと言ってくれたので、任せる事にした。

 

そして、リア充の研究教室を出て、廊下を歩いていると、目の前に見える映写室の扉が開き、そこから和良井が不機嫌そうに出てきた。

そして俺達の顔を見や否や、早足で離れていってしまった。

 

「何だよ和良井の奴…んなすぐに行かなくても良いじゃねえかよ」

「しょうへいのハク達を見る目、あれは嫌悪と疑いですね」

「特に砂糖に向けてたね」

「あー、やっぱり俺中心にだったか。まあ理由は分かってるけど」

 

俺はちゃんと毎日諦めずに和良井の部屋に行ったりや和良井を見掛けたら話し掛けるをしてたからな。

最近はよく深夜に出歩いてる様で、俺がお気に入りのジュースを倉庫から取りに行くとちょくちょく見掛ける事があるから、その度に話し掛けている。まあすぐにどこかに行っちゃうんだけどな。

 

でも俺は諦めねえぞ。どんなにウザがられ様とも話し掛けていくんだ。

でもさっきの和良井…なんか様子がおかしかったような?どこか緊張してたような…顔が強張ってた感じがしたけど…気のせいか?

 

「和良井が映写室から出てきたって事は多分もう誰も居ないだろうな」

「誰とも関わらないって言ってたしね」

 

なら映写室はスルーして、お次の部屋に向かった。

 

ーーー超高校級の氷彫刻家の研究教室ーーー

 

「おや、なんだいあんたら揃って」

「おーう熱宮。相変わらずここは寒いな!」

 

いつもと変わらない薄着の熱宮と死体保管室みたいな極寒の寒さを放っている氷彫刻家の研究教室を見ると、自分の感覚がおかしいんじゃないかと思ってしまう。

 

「あんたらは寒いだろうさ。私は普通だよ」

「本当にあんたの感覚って起動してんの?」

「ますたー、りんかは平常に稼動されていますよ」

「いやいや、どっかにバグがあっかもしれねえぞ」

「あんたら失礼過ぎじゃないかい?」

 

悪い悪いと全く悪くも思わずに謝っておく。熱宮もさして気にした様子もない。

 

「悪いけど、私は今作品作りに忙しいんだけど」

「凄い綺麗」

「そうだろう?氷彫刻家の本領発揮だよ」

 

鈴木崎の感想は俺も思った。熱宮の目の前には様々な氷彫刻が作られていた。

鮭を口に加えた熊や、椅子やテーブルと氷で出来た家具等多種多様な彫刻が透明に透き通り、鮮やかに出来上がっていた。

 

「もうこんなに出来上がってんのか」

「まあねえ。ここが解放されてからずっと籠りっぱなしだからねえ」

「ずっとかよ」

「だってねえ、やっと好きな作品作りが出来るってんだから。体がウズウズしてたからもう楽しくて楽しくてねえ」

 

そう話す熱宮の顔は心底楽しいって顔で輝いて見える。さっきの沢風も同じ様な顔をしてたな。

自分の好きな事をしてるから無意識になってんだろうな。

 

「む。ここの所、良い」

「お、分かるかい鈴木崎!そうなんだよねえ、そこは特に手を加えたからねえ!」

「職人の腕、流石」

 

意気投合してるな。鈴木崎と熱宮の二人は職人気質っぽいから馬が合うんだろうな。

そんな事を思って二人を見ていたら視界の端にハクが映り、視線をハクに移す。

 

ハクは熱宮の作った氷彫刻を見ていた。

 

「なんか気に入ったもんでもあったか?」

「たろう…全て、ですかね」

「全部綺麗だもんなぁ」

「はい。今にも動き出しそうです」

 

確かに、見ていて俺もこの犬とか猫の氷彫刻なんて、今にも駆け出しそうな程だ。

無表情だが、何となくハクも感動しているように感じるな。

 

「ますたーはりんかと話し込んでますね」

「ハクも入ってくれば良いじゃねえか」

「ハクが入っては邪魔ではないんですか?」

 

そう言うハクだが、チラチラと何度も二人を見ている事から話に入りたいんだろう。

 

「鈴木崎なら喜んでハクを受け入れるだろうよ、ほら行ってこいよ」

 

軽くハクの背を押してやる。おずおずとハクは二人の元まで歩いていく。

俺の想像通り、鈴木崎はハクを喜んで話に入れ、三人で話始めた。俺はもう少しこの綺麗な作品を見ていたいから、そちらに目をやる。

 

「砂糖」

「ん?」

 

ふと呼ばれ、聞こえた声の元を辿るとそこには声の主、鈴木崎にハクと熱宮が居た。なんだ、三人して?

 

「何度も声掛けた」

「え、マジか」

「そんなに夢中で見られてると作った甲斐があったってもんだねえ」

 

照れながらも嬉しそうに頬をポリポリと掻きながら熱宮は言う。ボーッと見てたらまあまあ時間が経っちまったみたいだな。

 

「そろそろ夜ご飯の時間だからねえ。食堂に行くよ」

「もうそんな時間なのか、なら早いとこ行くか」

 

研究教室から出て歩き、食堂に着き入る。既に料理は並ばれており何人かは食事を始めていた。

 

「何だよお前ら。もう食ってんのかよ」

「待ってくれても良かったんじゃないかい?」

「んあ?んな事言われても腹減りが限界だったのよ」

 

そう言う瀬戸内の前には空の皿が何枚も積まれていた。もうそんなに食いやがったのかよ。

 

「あっはは~ごめんね~。俺も我慢出来なくてさ~」

 

猫屋敷が笑いながら謝る。先に食事を始めてんのは瀬戸内に猫屋敷と沢風だった。

木枯はちゃんと全員集まるまで待ってくれていて嶋野は机に体をぐでーと突っ伏してダウンしていた。

気になった熱宮が嶋野の隣に座っていた木枯に声を掛ける。

 

「嶋野は何で燃え尽きてんだい?」

「疲れすぎてて、参ってるみたい」

「まだサッカーの疲れが残ってんのか?」

「あったり前ですけど~…ウチは結構な時間しゅんやくんに付き合ってたんだからぁ~……」

 

そういえば嶋野は俺らが来るよりも早くから沢風とサッカーしてたんだよな。

そこまで運動神経悪い訳じゃない嶋野だが沢風相手は通常の倍以上疲れが出るよな。

俺も腹減ったし、全員集まるまでまだ掛かりそうだし適当な席に座り、食べようとしたら厨房から龍野、影山、桃瀬の三人が出てきた。

 

「…あ、砂糖君」

「おう龍野!」

 

毎日毎回、料理を作ってくれる三人には感謝しないとだな。俺もたまに手伝ったりするがいつも自分の分ばっかだし、デザートを作る事が多い俺には慣れねえ料理と、数に多少疲れちまうんだよな。

 

「おらよォ、追加の料理だぜェ」

「おっほ!美味そう!!」

「ばッかやろうォ!美味そうじャァなくて美味いんだよォ!」

「うん~三人の料理は頬っぺた落ちちゃう程の~美味さだよね~」

「そうだね、いつも凄く美味しいよね」

「へッへへェ、そいつはァありがてェなァ」

「何言ってんだよ。ありがとうって言うのは俺らの台詞だ」

 

日頃の感謝は言葉にしてちゃんと言っとかねえとな。そうしていたら、鷹倉がのっそりとやって来た。

 

「……俺で最後かー」

「お兄様、遅刻ですよ」

「悪い悪い、いつの間にか寝ててよ」

 

これでいつも集まるメンバーが揃ったが、やはり今日も藤と和良井は来てくれないか…。

 

「……絶対に信じさせる」

「え?砂糖君、今何か言った?」

「ああ、腹へったって言ったんだよ!さあ、腹ぺこだし食おうぜ!」

 

無意識に声に出てたか。こういう時に敏感に反応すんのが木枯なんだよな。なんか妙に鋭いっていうか、いつもはふんわりした印象なのにな。

まあ、腹へってんのは本当だし、俺は龍野達が作ってくれた料理を口に運んだ。うん、今日もスゲー美味いな!

 

「だからよォ!お前はすぐにィ砂糖をかけんじャァねえよォ!!」

「なんだよ桃瀬!これが美味しいんだって言ってんだろ!」

「そうはいくかよォ!ンなに糖分とッてたら体に悪いだろうがァ!」

「桃瀬君って毎日諦めずに注意してくれてるね」

「…でも砂糖君には通じないよね」

「あいつは甘味の化け物だからねえ」

 

飯の時間の恒例行事となりつつある桃瀬と俺の争いをしつつも、構わずに食べ続ける。大丈夫だっての、この位は全然平気なんだ。

桃瀬は疲れた様子で重苦しい溜め息を吐いて、食事を再開した。今日はあっさり引いてくれたな。

 

「…あ、そう言えば僕、砂糖君にお薦め出来る本を決めたよ」

「お、マジか!」

 

食事も食べ終わり、一息ついていると龍野が話し掛けてきた。お薦め本を決めたらしい。

これは俺も少し読むスピードを早めなければな。

 

「ちなみにどんな本なんだ?」

「…それなら僕持ってきてるから見せるよ……あれ?ない…」

 

龍野は席を立ち、少し離れたテーブルに歩いていった。しかしそこに置いていたという本が無いらしい。

 

「違う場所に置いたとかじゃねえのか?」

「…いや、確かにここのテーブルに置いたんだけどな」

「なら誰かが持っていったとかか?」

「…うーん、そうかもね」

 

そう返しながらも龍野は食堂を探す。俺はまだ食堂に居る奴等に本の事を聞くが知らないと言われた。

 

「…あ、あった」

 

どうやら見付かったらしい。別のテーブルの椅子に置かれていた。

 

「…どうしてこんな所に?」

「お前の記憶違いとかで本当はそこに置いたんじゃね?」

「…そんな筈はないと思うんだけどな…でも見付かって良かったよ」

「そうだな、そいつは良かったぜ!」

 

俺も後で図書室から数冊持ってきた本を読むか。

その後、いつもしている事である瀬戸内と木枯と共に和良井の様子を見に行き、説得を試みたが、和良井は扉を開けてくれる事はなく、俺達は諦め、解散した。

 

俺は自室に戻り、お薦めする本選びの為に読書に勤しんだ。

それなりの時間が経ち、読み掛けの本を読み終えた。次の本を読むかと入れている引き出しを開ける。

本を手に取ると、視界の端に百澤の部屋から持ち出した小さい金庫が目に入った。

 

「そういやこいつ…結局開けれてねえな」

 

一応この金庫の事は皆にも伝えている。どうやらこの金庫は百澤以外にも部屋に置いてあるらしい。

沢風、鷹倉、鈴木崎、熱宮の四人には同じ様な両手に収まるサイズの金庫があるらしい。

それぞれ部屋に初めからある机の引き出しを開けたらあったとの事。未だどの金庫も開けられていない。

百澤の金庫は初めに見付けたからと俺が持つ事になった。

 

「つっても全然開かねえんだよな」

 

たまに気になり、適当な番号を回すが開く様子は微塵も感じられない。

ベッドの上に寝転がり、ガチャガチャと金庫のダイヤルを回す。これで開けれたら良いんだけどな。

しかし五桁のパスワードが簡単に揃うわけもなく、時だけが過ぎていった。

 

「………くっ………だあぁぁぁぁ!!こんなの開かねえよ!!モヤモヤしやがるぅぅ畜生!」

 

イライラしてきたから気分転換を兼ねて外に出て散歩する事にした。

手持ち無沙汰な手には、金庫を持ち歩く。歩きスマホならぬ、歩き金庫をしながら目的もなく歩く。

 

「あー…これ開いたら脱出ボタンとか出てこねえかなー」

 

モノクマ達の用意した物だしどうせ録なもんじゃねえだろうと思いながらも、希望は捨てずに諦めずダイヤルを回し続ける。

 

「あれ、砂糖君?」

 

開いたらモノクマの人形とかだったらキレる自信あるな。

 

「おーい砂糖くーん!」

 

………これ開けれそうな奴って居たっけかな?鈴木崎とか開けてくれそうだけどあいつも持ってる金庫は開けれてねえって言ってたからなぁ。

 

「え、無視?私の声聞こえてるでしょ?」

 

何で五人だけに配られてんのかねー?

 

「むー…これは聞こえてないね。仕方ないなー……」

 

モノクマの事だ、テキトーに配っただけだよ!とか言いそう「無視するなー!!」

 

「うおおおぉぉぉ!!?」

 

いきなり背中に衝撃が走り、驚き、倒れてしまった。何だ何だ、何が起きたっていうんだ!?

 

「いってーな…誰だよぉ」

「それは砂糖君が私を無視するからだよ」

 

俺にタックルをしてきた犯人は少しご立腹で頬を膨らましている木枯だ。

確かになんか聞こえてたなってぼんやり思ってたけど、金庫の事で頭一杯だったからなあ。

 

「悪かったよ」

「なんか影山さんの気持ちが分かった気がする…まあ良いけどね。それで熱中してたけど危ないよ?」

「いや、タックルしてくる方が危ねえだろ…」

「それは気にしない!」

 

いや気にするだろ。驚いた拍子で金庫投げ落としちまったし…ちょっと離れた場所に落ちていた。

木枯は金庫を拾いに行く。

 

「金庫は壊れてな……あれ!?さ、砂糖君金庫が開いてるよ!?」

「はあ!?んな馬鹿な!」

 

木枯の言葉を聞き、すぐに立ち上り駆け寄る。確かに地面に落ちている金庫は開いていた…これはどうしてだ?

 

「もしかして、私のせいかな?」

「……って事はこれは幸運にも落ちた拍子に番号が揃って開いたって訳か?」

「多分?」

 

愕然…改めて木枯は歴とした超高校級の幸運なんだなと思い知らされた。

 

「今日は色々不運な事があったから…だからかなーでも結果的には良かったかな」

「と、とりあえず中身確認しようぜ!」

 

俺はすぐに金庫を拾い、中身を見てみる。すると中には俺達が持っているモノフォンそっくりなモノクマの形をした半分側が黒、半分側が白色の新たなタブレットだった。

 

「私達のとは違うね…」

「ああ、これは点くのか?」

 

試しに電源を触ってみると、起動したようで画面が点いた。

ホームには一つだけモノクマの形をしたアイコンがある。他には何もなかったのでそのアイコンをタップし、開く。すると動画が流れ始めた。

 

真っ暗な画面に文字が表示されていく。

 

【予備学科生徒ノ研究教室、黒板ノチョーク入レニ入ッテイル白色ト黒色、二ツノチョークヲ折レ】

 

「白色と黒色のチョークを折れ?」

「それも何で俺の研究教室の何だよ…」

「分からないけど…とりあえず行ってみる?」

「ああ…まだ夜時間まで時間はあるしな」

 

なんかモノクマ達の悪戯の香りがするけど一応行ってみるか。

 

ーーー予備学科生徒の研究教室ーーー

 

久々にここに来る気がするな。やっぱりどこをどう見ても何の変哲もない普通の教室だな。

ええっと、チョーク入れにある白と黒のチョークは…あったあった。

 

「確かに入ってたね」

「流石にチョーク入れまで調べてはなかったな」

「これを折るんだよね」

「んじゃあ折ってみるか」

 

俺と木枯は勢いよくそれぞれが持つチョークを真っ二つに折った。すると中からは小さいボタンスイッチがそれぞれのチョークに入っていた。

 

「お菓子に付いてくるような玩具みたいだね」

「そうだな。これは押すのか?」

 

押してみるが……特に何も起こらねえな。木枯の方も押しても何も起こらねえ。これは本格的にモノクマ達の悪戯か?

 

「うーん…二つあるって事は同時に押すとか?」

「んな事しても無駄っぽいけどな。こりゃただの玩具だろ」

「えーそういうなら私が二つ同時に押してみるよ」

「おう、物は試しだな。ほれ」

 

俺からスイッチを受け取った木枯は、二つ同時に押した。

 

「………?」

「何も……起こらないね」

「一応どっかが変わってたりするかもしれねえし、調べてみようぜ」

「うん、分かった」

 

俺と木枯は予備学科生徒の研究教室を調べ回った。それほど広くはないから何処かが変わっていたらすぐに分かるだろう。

 

「机は全部調べたが…何もねえなー」

「…うーん……黒板も特には…あ!ね、ねえ砂糖君!こっちに来て!」

「なんか見付かったか!?」

 

木枯に呼ばれ、教室の黒板の方に向かう。木枯が指差し見ている方は、教卓の中だった。

見てみると教卓の中、地面に人一人入れるような穴がぽっかり空いており、はしごが掛けられていて降りれるようになっていた。

 

「こんな穴…なかったよな?」

「うん、これがスイッチを押したからかな」

「……降りてみるか」

「ええ!?お、降りるの?危ないんじゃ…」

「大丈夫だ。危なくなったらすぐに出れば良いんだ。それにこんな怪しいもん放っておけねえよ」

「…ぅぅ、仕方ないなぁ。心配だし、私も行くよ」

 

この先に何かここから出られる様な手懸かりがある事を願いつつ、俺ははしごを使って降りていく。

 

「砂糖君、上は見ないでよ?」

「大丈夫だっての、んな瀬戸内みてえな事はしないって」

「砂糖君もえっちだからあんまり信用は出来ないよ」

「ええ…んな辛辣な事言う?」

 

軽くショックを受けながらも少し長いはしごを降りきった。

降りてみると、そこは狭い通路だった。明かりはあるはあるが節電でもしてんのか、ほの暗い感じだ。

少し先には扉が見える。俺達は気を付けながらも歩いていき、扉の前まで来た。

 

「この先に何があるか…開けるぞ?」

「うん、気を付けてね?」

 

恐る恐るドアノブを握り、回してみる。鍵は掛かってない様だ。

ゆっくりと開けていく。すると見えてきた光景は…。

 

「なんだここ?」

「うわー…凄いね」

 

目の前にはモニターが所狭しと配置されていた。何か映ってるな…写されていたものは、ここの食堂だった。丁度そこに居たのであろう猫屋敷、桃瀬や熱宮が寛いでいた。

ここは何だ?なんて思っていたら、目の前にある椅子から音が鳴った。誰かいる!?と俺は咄嗟に、木枯を守れるようにして、警戒をする。

 

「あれー?何でここに居んのさ!?びっくりするじゃーん!」

「……は?」

「……え?」

 

椅子に座っていた謎の人物は、立ち上り、振り向いて俺達の姿を見て驚いていた。

だが俺達の方が遥かに大きく驚いているだろう。驚きすぎて口をパクパクさせ、思考がグチャグチャになっている感覚だ。

 

「……な、おま、は?……ぇ………は?」

「え?………ええ?」

「ちょっと二人ともどうしたのさ?」

「い、いや…どうしたのは…俺らの台詞だろ……」

 

何でお前はここに居るんだ?なあ…。

 

「嶋野……ここで何してるんだ?」

「…あは」

 

軽い笑い…今まで何回も見てきた明るい笑顔と笑い声。だが今は重苦しく聞こえる。

 

「いやーびっくりしたよー。誰も来る筈ないって思ってたのにさー。完全に油断してたら二人とも後ろに突っ立ってんだもん!」

 

いつもと変わらない口調で喋る嶋野に言い知れぬ不安が襲ってくる。

こいつは本当に嶋野なのか?と疑問が頭を埋め尽くしていく。

 

「あーシュガー今、こいつは嶋野なのか?とか思ってない?」

「え?そ、それは」

「あっはははは!図星だー!大丈夫だってー!ウチは歴とした超高校級の放送部の嶋野 恵子ちゃんだよー!」

「な、なら…何で嶋野はここに…」

「え?んーこれは言い逃れ出来ないっぽいしな……うん!それはウチが黒幕だからに決まってるからだよ!イエイ!うぷ、言っちゃった!」

 

真顔で言い放つ嶋野の言葉が俺の聴覚を撃ち抜いた。受け入れたくないが無理矢理音となり、俺の脳内を侵食していく。

 

「……………し、嶋野さん…がくろ、く、くく黒幕?ってどういう事?」

「もーう!ナエトンその年で耳が遠いの!?それは驚き桃の木三丁目ー!!

良い?もうワンチャンスあげるからちゃんと聞いてね?ウチが皆をここに閉じ込め、コロシアイを強要させてる憎っくき黒幕であり、

ここ、監視カメラから皆の行動を監視したり、モノクマを動かしたりする秘密のコンピューター室に、何故居るのかって疑問はウチが黒幕だから黒幕専用のマスターキーを持っているからって事なのですよー!

まーあ、長く喋れたよー!」

 

絶句、その言葉が正に今俺の身に起こっている。言葉が出てこない。

ニコニコと楽しそうに無邪気に話す嶋野だが、内容は俺達の思考を停止させるには十分の破壊力を持っていた。

 

「嶋野さんが…黒幕…」

「今度はちゃんと聞けたね!偉い偉いよ!それで何で二人はここに来れたのってウチの疑問があるんだけどー、多分だけどナエトンの幸運力のお陰なり?」

「……待てよ」

「ん?どしたのシュガー!」

「ちょ、待て…待ってくれ。まだ、考えが、まとまらねえ…う、嘘だよな?嘘なんだよな!?」

「…………これなら信じるかな?」

 

そう言い、嶋野の後ろにあるキーボードを早く慣れた手つきで操作すると、目の前からモノクマがいきなり出てきた。

そして嶋野はいつも身に付けているインカムのスイッチを点けた。

 

「やっほー!うぷぷぷ、ウチが黒幕の嶋野 恵子ちゃんだよー!」

『やっほー!うぷぷぷ、ウチが黒幕の嶋野 恵子ちゃんだよー!』

 

嶋野の言った言葉をそのままモノクマも言った。

 

「もの、モノクマも同じ事を?」

「そうだよナエトン!このインカムはモノクマと連動してるんだよ!どうどう!?びっくり仰天の昇天しちゃったかな!!」

 

……落ち着け、いや落ち着けるかよ!!まさかこんな事が起こるなんて想像出来るかよ…嶋野が黒幕?ならこいつが俺達を…なら、なら今ここで嶋野を……。

 

「シュガー!」

「……ぁ?…あがっ!?」

「砂糖君!?」

 

木枯の叫ぶように呼ぶ声を聞きながら俺は床に落とされる。

嶋野に呼ばれ、鈍く反応してみたら顔面を思いきり殴られ地面に倒れたっぽい。殴られた顔と倒れた衝撃の痛みが俺を襲う中、嶋野は倒れた俺の上に乗っかり体重を乗せてくる。

 

「今さ、シュガーイケナイ事考えたでしょー?ウチを脅してとかそんな感じ?でもご覧の通りウチは強いよー!少なくともシュガーよりはね!」

「ぐっ…く、くそがぁ…テメーが、テメーのせいで!!」

 

痛みなど気にならず、俺は叫ぶ。

 

「ウチのせいでー?それってウチのせいであいつらは死んだんだーとかって事?」

「当たり前だろうが!!」

「うっひゃー…シュガーガチ切れ千パーセントなイノセントー」

「うるせえ!お前、ずっと俺達を影で笑ってやがったのか!コロシアイなんてふざけた事、テメーが、許さねえ!」

 

冷静な思考なんて出来る筈がない。俺は感情のままに叫ぶ。

 

「んーこのままガチ切れシュガーを煽っても良いけど…話を先に進ませないと飽きてきちゃうからね!

という事で、黙らないとシュガーの大切な人が死んじゃうかもよ?」

「うるせ……ぁ、はぁ?……」

「きゃは…黙ってくれたぁ」

 

こいつ、今何て言った?俺の大切な人…浮かんだのは家族、そしてあのDVDに映った我が家の光景。

 

「ウチの采配で簡単に奪える命があるって知っといてね?忘れてない?ウチは黒幕なんだよー?

二人が来た事は驚いたけど、その対策はバッチリなんだよ!

だから今からウチの言う事を聞いてね!」

「い、言う事?」

 

不安げに顔を青くし、ガタガタと体を震わせて聞き返す木枯。

俺もすぐに問い詰めたいが、騒ぐと家族の身に危険がと思うと…ビビっちまって何も言えなくなる。

 

「そーんな怖がらないでよ!何も殺すとかそんなんじゃないんだからさ!」

「じゃあ……何なの?」

「簡単だよー!二人はもう知っちゃってるからね!他の皆にはウチが黒幕ってネタバレはNGの方向で!

ね、簡単でっしょー?」

「……もし破ったら?」

 

答えは分かりきっているが、俺は思わず聞き返してしまった。

すると嶋野はとびきり良い笑顔を浮かべた。

 

「えへへへ、そんなん王道の展開じゃんか!バラした瞬間、全員の大切な人がお空に片道ミサイルだよ!」

「ぜ、全員?」

「そ!しかもコロシアイ生活は続行されるからね!良い事なしじゃん!?ならどうするの?そう、言わないの!」

 

くそ!やっぱり…なら俺らの取れる選択は一つだけかよ!悔しいが、従うほかないようだ。

 

「……分かった…お前の事は言わねえ」

「おっほ!物分り良いじゃんか!んでナエトンはー?」

「ひぃ!…わ、私も言わない…です」

「んもー!そんなに怖がらないでって!そんな堅苦しい感じじゃなくていつも通りで接してよ!

……じゃないとバレちゃうじゃん?」

 

口調は天真爛漫、いつも通りの嶋野だが迫力があり、俺達は気圧されるしかなかった。

黙りきり、重苦しい空気が漂う中、嶋野はパン!っと手を鳴らした。

 

「聞きたい事とかあるだろうけど、めんどくさいしもう夜時間になるしーお開きって事で!」

 

と締めくくってきやがった。嶋野は俺の上から退いて、手を差し出してきた。

 

「はい!ごめんねシュガー」

 

俺はその手を取らずに自力で立ち上り嶋野を力の限り睨み付けた。

 

「うぷぷぷぷ!何だろうね!なんか快感だね!でもほら、さっさと出てってよ!ふぁー…眠いしぃー夜ふかしはお肌の天敵じゃーん…なーんか眠気が凄いわー…。

あ、戻るときは見付からないようにしてよね!バレたら分かってるよね?」

「分かってるよ……」

「うん!ならよろしい!それに安心してよ!ウチは黒幕だから皆を直接危害は加えないからさ!それじゃあまた明日会おうね!!」

 

眠たいと言いながらも、どこまでも明るく元気な嶋野に憤りよりもゾッとする恐怖が沸き上がる。

だがどうする事も出来ずに俺達は元来た道を戻り、誰にも見付からないように回りを伺いながら予備学科の研究教室前まで来た。

 

「…………」

「…………」

 

お互い無言。何を話せば良いやら、何も浮かばず。

 

『オマエラ、絶望ヶ峰学園校長が夜時間になった事をお知らせしてあげてるよ。一定の教室は閉鎖するからまだ中にいる人はすぐに退出する事!

それでは明日も良い絶望を~!おやすみなさい!』

 

立ち尽くし、膠着状態でいたら、夜時間のアナウンスが流れてきた。

 

「ああー…じゃあ戻るか?」

「……うん」

 

今は木枯の事を気に掛けれる状態ではなく、一刻も早く一人になりたかった。

ふらふらとした足取りで俺は歩こうとしたら、木枯が俺の服の袖を掴み止める。

 

「っと…どうしたよ」

「うん。ごめんね砂糖君」

「いや、大丈夫だ」

 

振り返り、木枯の顔を見ると今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

「私…こんな事知っちゃって凄くショック何だけどね…でも、だからこそ私達が前向きに話をすれば…説得出来るんじゃないかって思うんだ」

「説得って…和良井の事と問題は違うぞ?相手は…こんな狂ってる事をしでかす奴だ…」

「でも…それでも私は諦めたくないよ!ここで何もせず諦めたら…死んじゃった皆に悪いよ…だから、ね?一緒に戦おう?」

「木枯…」

 

強いな…泣きそうな癖に、怖かった癖にこいつは俺を少しでも安心させれるように無理して笑顔を作り、諦めずに戦おうと誘ってくれる。

なら、女にここまで言われたなら男として取るべきは一つだろ。

 

「木枯…ありがとな。今は頭ん中、グチャグチャになってっけどよ。これだけは言えるぜ……俺も諦めねえ。一緒に戦う」

「砂糖君!」

 

俺の言葉を聞き、さっきの無理した笑顔なんかじゃなく、心からの笑顔を浮かべてくれた。

 

「それじゃあよ、夜時間になってるし作戦会議は明日からにするか!」

「うん、そうだね!戦の前ならしっかりと睡眠取らなきゃだよね!」

「おう、その通りだな!それじゃおやすみだな!」

「うん!また明日ね!」

 

そうして、決意を新たにして俺と木枯は別れた。

俺は自室に入るとベッドに倒れ込み、目を閉じる。こんな事、俺ら二人で抱え込むには荷が重くねえか?

でも、俺が潰れちまったら木枯に迷惑かけちまうし、それでバレてまったらとんでもねえ事になる。

それに、戦うと決めたんだ。でも今んとこ良い案は浮かばねえ。

次第に俺は疲れから眠くなり、眠ってしまった。

 

……しかし、物語は知らぬまに進んでいき、終わる。

 

 

……………んん、あ?…ふあぁぁ。

……今は何時だ?…何だよまだ六時半かよ。結構早くに起きちまったな。

だけど眠気はすぐになくなり、目が冴えちまった。これも昨日の事のせいだろうか。

 

「……後少しで食堂が開くか…」

 

なら今日は朝食作りでも手伝うか。それまではのんびりと散歩でもして来るかな。

じっとしてるとモヤモヤしてくるしな。

 

そうと決まれば軽く準備を済ませ、俺は廊下に出た。

 

「誰かもう起きてんのかなー…木枯は寝れたかな……」

 

ブツブツと独り言を呟きながら歩いていると、猫屋敷の部屋の扉が開いている事に気付いた。

俺は嫌な予感がし、すぐさま駆け寄り、扉を開け放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねこやし…き?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開けた先、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には、

 

 

 

 

 

 

 

猫屋敷が、

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れていた。

 

 

 

 

 

「ね、猫屋敷!?」

 

嘘だ、そんな筈はないと言い聞かせるも嫌な汗は止まらずに流れ出る。

猫屋敷を呼び掛け、必死に体を揺する。

 

「おい!猫屋敷!!起きろ!起きてくれぇぇ!!」

「んん~」

「猫屋敷!!?おい、生きてるんだな!起きろ!」

何度も呼び掛けていると、猫屋敷から声が聞こえ、モゾモゾと反応をし出した。俺がより強く呼び掛けると猫屋敷は目を覚ましてくれた。

 

「んにゃは~…あれ~な~んで砂糖君が居るの~?」

「何でじゃないだろ!お前、部屋の扉開けっぱなしで倒れてたら心配するだろうが!」

「え~?あ~そういえば閉めた記憶がないや~」

 

猫屋敷の話を聞くところによると、食堂でだらけていたら急激に眠気が襲ってきて、急いで自室に戻り寝ようとしたが、部屋の扉を開けて入った瞬間、力尽き、眠ってしまった様だ。

 

「お前、それ危なかったんじゃねえのかよ!」

「あっはっは~、ま~ラッキ~ラッキ~」

 

校則では自室以外で寝たらオシオキだった筈だ。なのに猫屋敷はのんびりとした調子で居る。

 

「気を付けろよな…全くよ」

「えっへへ~……ん~?あれあれ~」

「あ?どうしたよ?」

 

猫屋敷はいきなりクンクンと匂いを嗅いでるような動きをして、首を傾げた。

 

「いやね~なんか~血の匂いがしてさ~」

「は、はあ!?それどこからだよ!?」

「う、うわわ~ちょっと~落ち着いてよ~」

「すぐに案内してくれ!」

「あいあいにゃ~」

 

俺達は猫屋敷を先頭にして、匂いの元を辿る。本館を走っていると目の前からはハクが歩いて来た。

 

「たろうにこまい、おはようございます」

「ハク!」

「そんなに急いでどうしました?」

「ハクちゃ~んこそ~一人でどうしたのさ~?」

「ハクは睡眠を必要としませんから、暇でしたし散歩を」

「だあぁぁ!んなゆっくりしてる余裕はねえんだって!ハクも来い!ほら、猫屋敷も案内!」

「たろうは積極的ですね。まあ良いですけど」

「はいは~い、こっちだよ~」

 

ハクを加え、俺達は本館二階に上がる。猫屋敷から匂いはプールからだと言われ、全力で走り、急いだ。

 

「おい!これ何だよ!?」

「ありゃりゃ~これはド派手に~」

「真っ赤、ですね」

 

二人の言う通り、プールの更衣室の扉前には猫屋敷の言っていた血の匂いの元、派手に血が飛び散っており、真っ赤になっていた。

血の鼻に付く匂いの他に焦げ臭いような匂いもしたが、それよりもこの血の元は!?

 

「この血の後…男子更衣室に続いていますね」

「行ってみるぞ!」

 

またなのか?否定したいがその材料は一切ない、むしろ逆の方の可能性が濃厚、ほぼ出揃っている。

俺達三人は男子更衣室に覚悟を決め、入る。しかし血の後はまだ続いていて、その先のプールに続いていた。

 

「この先だね~」

「……い、行くぞ」

 

体のあらゆる箇所から嫌な汗が出る。震えてくるが止まってはいけない。何があっても、辛いだろうが受け止めなくてはならない。

ゆっくりと、しかし時間的にはあっけなく、体感的には数時間に感じる程の感覚で扉を開くと……。

 

 

 

 

 

 

 

赤、

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

透明に透き通っていたプールの水は見る影もない、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番目立つ、一番大きなプール、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その中心に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポッカリと浮かぶ黒い影、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認めたくはないが……認める他ない、

 

 

 

 

 

 

 

 

超高校級の、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超高校級の……才能を知ることはなかった…。龍野 竜斗は真っ赤に染められた紅のプールに静かに浮かび、漂っていた。

 

 

 

 

 

ピンポンパンポーン!

 

 

『死体が発見されました!一定の捜査時間の後【学級裁判】を開きます!オマエラ、死体発見現場の本館二階プールまで急いで集合してください!』

 

 

絶望の鐘がまた鳴らされてしまった。

 

 

何でお前が?あんなに元気そうで…おま、お前が……。

 

 

目の前が真っ暗になってしまった。猫屋敷とハクが何かを言っている気がするが反応する余裕なんてない。

 

数秒、数分、数十分、数時間流れたのか知らないが、誰かが入ってきて騒ぐ、だが俺は反応しない、出来ない。もう何もしたくない。

 

 

 

ピンポンパンポーン!

 

 

『死体が発見されました!一定の捜査時間の後【学級裁判】を開きます!オマエラ、死体発見現場の本館二階女子更衣室まで急いで集合してください!』

 

 

 

「…………ぇ……?」

 

しかし、無理矢理に意識を戻される。俺を待つなんて事はしてくれそうにない、深い曇天が俺を覆う。

 

「砂糖ォ!!しッかりしやがれェ!!」

 

呆然とする俺の肩を掴み、激しく揺するのは…桃瀬だった。しかし桃瀬のお陰で意識がハッキリと戻った。

見渡してみると猫屋敷、ハクに加え、瀬戸内、熱宮、影山が居たが、全員表情は暗い。

 

「あ…桃瀬……」

「砂糖、あんたまだ女子更衣室の方は見てないんだろ?今は捜査時間だからって男子も女子もどっちの更衣室にも入れるってモノソノが言ってたよ」

「おらァ、俺がァ支えとくからよォ。行くぞォ?」

「…ぁぁ、悪い」

 

ふらつく足取りの中、桃瀬に支えられ歩いていくと女子更衣室の扉が開き、藤が入ってきた。

 

「……あら、才能不明さんが二人目なのね」

「藤……」

「何よその酷い顔は。そんな調子でこの先にある死体を耐えられるのかしら」

 

そう嘲笑まじりに藤は言いながら、自身のモノフォンを取り出して何かを見始めた。

きっとモノクマファイルだろう。そんな事は今はどうでもいい。早く、この先を見なければ。

 

ふわふわとした気持ちのまま、女子更衣室に入ると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ああ、嫌だ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この感覚は慣れない、慣れたくない、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流れ出ていた赤は、地面に血だまりを作り上げていた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力なくぶら下がっている全身は二度と動くことはない、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超高校級の、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超高校級の幸運、木枯 苗は女子更衣室にあるベンチに寝ていた。二度と起き上がる事ない……永遠の…。

昨日の前向きで心強く照らしてくれた笑顔は、もう見れない。黒幕の事を知っているのは俺しか居ない……。

 

 

ーーー続くーーー

 

 

 

ー登場人物ー

 

【予備学科生徒】砂糖(サトウ) 太郎(タロウ)

 

【超高校級の芸人】和良井(ワライ) 笑平(ショウヘイ)

 

【超高校級のリア充】沢風(サワカゼ) 俊也(シュンヤ)

 

【超高校級のメカニック】鈴木崎(スズキザキ) 美佳子(ミカコ)

 

【超高校級の放送部】嶋野(シマノ) 恵子(エコ)

 

【超高校級の殺戮者】猫屋敷(ネコヤシキ) 狛犬(コマイ)

 

【超高校級の氷彫刻家】熱宮(ネツミヤ) 燐火(リンカ)

 

【超高校級の僧】瀬戸内(セトウチ) 太陽(タイヨウ)

 

【超高校級のモブ】影山(カゲヤマ) 琥珀(コハク)

 

【超高校級のネット配信者】 鷹倉(タカクラ) ルゥ ヴィクトー

 

【超高校級の折り紙講師】 (フジ) 織姫(オリヒメ)

 

【超高校級の保険委員】 桃瀬(モモセ) 一護(イチゴ)

 

【超高校級のロボット】(ハク)

 

生存者 15 ➡ 13人

 

 

 

 

 




渇望せよ、絶望せよ!!望めばその分襲いくる
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