ハイパーダンガンロンパ   作:ゲップ助かります

26 / 39
前回投稿から結構空いてしまいました!すみません!


第三章 非日常 捜査編

誰かが俺の名前を呼んでいる。呆然とする頭で俺は思いながらそちらへ顔を向けるとそこには俺を心配そうに見て声を掛けてくる沢風の姿があった。

 

「沢風…俺に何か用か?」

 

俺がそう聞き返すと眉をひそめて辛そうな顔をする。何か俺は駄目な事でも聞いたのか?

 

「砂糖…今は捜査時間だよ」

 

捜査?……捜査時間だって?…何だよそれ、捜査時間ってまるで誰かが死んだみてえな…………あ、そうか。

 

「龍野、木枯…死んだのか?」

「ああ、殺されたんだ」

「……ああ…」

 

夢でも幻でもなく二人は殺されたんだな。これはもしかしたら夢で俺は悪夢を見ているんだ。なら早く起きねえかと思っていたが、これは現実だった。

 

「君が辛い事は痛い程知ってる…だけど他の皆も同じ位辛いけど、捜査をしてるんだ。砂糖も…二人の無念を晴らすためにも捜査をしよう」

「……それは分かってるけど…分かってんだけどよ」

 

思うように体は動いちゃくれねえよ…気が狂いそうだ。龍野とはここで初めて会ったが気が合い、仲良くなったし木枯だって一緒に黒幕に立ち向かおうと誓い合ったばかりなんだぞ?なのにこんなのってねえよ…。

 

「君が立ち止まってちゃ駄目だ!しっかりしろよ!?」

 

沢風に肩を掴まれ揺さぶられる。肩を掴む手は力が段々込められていくのが伝わる。

 

「君がここで捜査もせずに、学級裁判でもしクロを見付ける事が出来なかったら死ぬんだぞ!?二人の死の真相も分からず死ぬんだ!二人は君がここで何もせずに死ぬ事なんて望んじゃいないぞ!」

「二人が…望んでねえ…?」

「今は辛いけど、気持ちを切り替えろとも前を向けとも言わない!二人を喪った絶望も、後ろ向きな気持ちも抱えてでも足は進めるんだ!」

 

沢風は必死に訴えてくる。気持ちが沈みきった俺を引き上げようとしてくれている。俺の心も徐々に引き上がる。

 

「俺も泊を剣を、今まで死んだ皆を思うと辛く今すぐに逃げてしまいたい!その気持ちを抱えながら死んでしまった皆の分も生きるんだ!」

「生きる…あいつらの分も…」

「ああ。まずは今からある学級裁判に備えるためにも捜査だ」

 

沢風は…強いな。強くて優しい。そりゃ超高校級のリア充にも選ばれるわな。

そんな凄い奴に言われたら俺も歯を食いしばってあいつらの思いを背負い込んで進んでやる!

 

「分かった…俺も進むぜ沢風。絶対にクロを見つけ出してやる」

「砂糖…!俺も協力するよ」

 

そうして、皆より遅れて俺と沢風も捜査を開始した。

 

 

ーーーーー捜査開始ーーーーー

 

 

俺はとりあえず辺りを見渡す。今居るのは女子更衣室だ。既に桃瀬が木枯の前でしゃがみ込んで検死をしてくれている。

桃瀬の近くには鈴木崎と鷹倉の二人が立っている。恐らく見張り役なんだろう。

 

「砂糖、まずはモノクマファイルを見てみよう」

 

沢風の提案でまずはモノクマファイルを見る事にした。モノフォンを操作してファイルを開き、読み進める。

 

 

ーーーモノクマファイル④ーーー

 

被害者となったのは【超高校級の???】龍野 竜斗

死体発見現場は本館二階にあるプールの一番大きな水泳場。

死亡時刻は夜時間の間、死体には身体中至る所に複数の傷痕があり、脳や心臓等を貫通している。

薬物投与の形跡なし。

 

 

コトダマゲット!《モノクマファイル④》

 

 

ーーーモノクマファイル⑤ーーー

 

 

被害者となったのは【超高校級の幸運】木枯 苗

死体発見現場は本館二階にある女子更衣室。

死亡時刻は夜時間の間、首から大量の出血をしている。

薬物投与の形跡なし。

 

 

コトダマゲット!《モノクマファイル⑤》

 

 

二人のモノクマファイルを読み終えた俺は不思議に思った。今までのモノクマファイルと書き方が違っているからだ。俺の様子を見て何に疑問に思ったのか分かったんだろう沢風は苦笑を浮かべた。

 

「砂糖も気付いた?」

「やっぱりこれおかしいよな」

「うん。読んですぐに気付いたよ」

「これは…モノクマに聞いてみた方が早いか?」

「あまり気は進まないけどこのファイルを用意したのはモノクマだからね」

 

そうと決まればさっさとモノクマを呼ぶ事にした。監視カメラに向かってモノクマに呼び掛ける。すると天井からやった来たのはモノクマではなくモノソノだった。

 

「おい何でお前が出てくんだよ」

「何ですかその言い方は!校長はとてもお忙しいお方なのです!ですからワタクシが来たのですよ!それでご用件は何ですか!」

 

何が忙しいだ。お前らスペアが山程ある癖して何をケチってんだよ。

まあ別にこいつでもモノクマでもどっちでも出てくればそれで良いけどな。早く聞く事聞いて捜査しねえと。

 

「このモノクマファイルのどうしてこんな書き方にしてんだよ」

「あー何かクレームですか?」

 

そう言うモノソノはニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべてクネクネと動き回る。こいつ…絶対に俺の聞いてる事分かって煽ってんだろ。

ぶん殴ってやりてえ衝動をぐっと我慢して苛つきながらも語尾を強くしながら聞く。

 

「前まで書いてた死亡時刻と死因は何で書いてねえんだよ!」

「これってわざとこういう書き方をしてるんだよね?」

「おや沢風クンは分かってますね。そうですよ、その書き方には理由があるのです」

「じゃあ何だってんだよ」

 

ただの嫌がらせとかじゃねえのか?こいつらならやりかねねえからな。

 

「良いですかな?モノクマファイルとはあくまでもキミタチとクロが公平に学級裁判を行われる様にする為に配っているのです。最初は初めての学級裁判ですしとサービスをしてたりしましたが今回で三度目なのです。

甘えは許されませんし、今回ハッキリと書くとクロにとても、とても不公平になるのです!」

 

つまりどういう事だよ。んな言い方じゃわかんねえし。しかし沢風は何か納得がいったようにうんうんと頷いていた。

 

「なあ沢風、お前分かったか?」

「まあ大体はね。つまり死亡時刻と死因がハッキリと書いてしまったらクロに不都合な事があるんだね」

「例えば?」

「例えば、クロが分かっちゃうとかね」

「おやおや…沢風クンは鋭い子ですねえ…それではワタクシも忙しいのでね!ここで失礼しますよ!」

 

そう言ってモノソノはひゅんと消えていった。いつ見てもこいつらはどうやって来てどうやって消えてるんだか。隠し部屋があるから隠し通路とかもあってそっから通ってんのかね。まあ今はどうでもいいか。

 

「とりあえず聞きたい事は聞けたしそろそろ捜査始めっか」

「そうだね、次はどうしようか」

 

桃瀬は検死に集中してるし鈴木崎と鷹倉に話を聞くか女子更衣室を調べ回るか。

俺は女子更衣室をざっと見渡す。特にこれと言った変化はない。目立つのは木枯が横たわっているベンチから廊下に繋がる扉までに引きずった様な血の痕がある事だ。

 

「それはきっと木枯さんの首から出た血だろうね」

「何でこんな痕が…後でこの痕辿ってみるか」

 

目立つのはこれ位だな。

 

「じゃあ鈴木崎と鷹倉に話聞きに行こうぜ」

「うん分かった」

「死亡時刻がざっくりしてっけど夜時間直前から今までの事を聞かないとだしな」

「それならまずは俺達が共有しないか?」

 

確かにそれもそうだな。なら昨日の俺は…。

 

「昨日は夜時間を少し過ぎた位まで木枯と居てそっから二人で部屋に戻って別れてから俺はすぐに寝たな」

「木枯さんと会ってたの?」

「あ、ああ」

 

そりゃ疑うのも無理ねえよな。殺された木枯と死亡時刻に該当する夜時間の間も少し会ってたんだからな。

でも俺だって疑問に思ってんだ。どうして木枯は部屋に戻ったのに夜時間に外に出たんだ?

 

「ごめんな。どうしても疑ってしまうんだ」

「いや、しかたねえよ」

 

そう、これはしかたねえんだ。命が懸かってんだし被害者と会ってたら疑いに決まってんだ。

 

「じゃあ次は俺だね。俺は夜時間になる少し前位まで自分の研究教室で日課の自主トレしてたんだ」

「自主トレって毎日してんだな」

 

何てったって沢風はサッカー部でもあるんだしな。

 

「小さい頃から日課で癖になってるからね。でも昨日はおかしい事があったんだよね」

「おかしい事?何だよそれって?」

「うん、それが急に重たい眠気に襲われてさ…とても自主トレ何て出来る状態じゃ無かったんだ」

 

重たい眠気って…それってただ単に夜だし眠くなっただけじゃねえのか?そう俺は口にした。

 

「いやそれが変なんだよ。眠気が来るのは普通なんだけどその眠気が体は鉛の様に重くなって瞼も気を抜けば閉じて眠ってしまいそうな位酷くてね…」

「そんな酷かったのかよ」

「うん、想像を絶する眠気で片付けもせずにすぐに部屋に帰ろうって思ったよ。別に研究教室では眠っても大丈夫だけどそれは俺が嫌だからさ」

 

まあ俺も自分の研究教室で寝たいかと言われたら嫌だと答えるけどな。て言うか寝るのに最適なのって鷹倉の研究教室位じゃね?

 

「それで部屋に戻ってる最中に夜時間になって、途中で嶋野さんと会ったんだよ」

「…嶋野と」

 

今一番聞きたくない奴の名前が出て一瞬言葉を詰まらせてしまうが特に変には思われなかった様で沢風は話を続ける。

 

「嶋野さんも俺と同じ症状が出てたみたいで俺と一緒に部屋まで戻って俺もすぐに寝ちゃったね。砂糖は俺が言った様な眠気みたいなのはあった?」

「え?いやー…そんなもんは無かったなぁ」

 

そういや嶋野の奴、急に眠たくなったとか言ってやがった気がするが…何か関係があったりすんのかもな。

 

「俺も木枯も特に眠たくなんて無かったけどな」

「うーん…他の人にも聞いてみてから判断しようか」

「ああ、じゃあ鈴木崎達の所に行くか」

 

情報を共有し、俺らは見張り役をしてくれている二人の元に行く。近付くと軽く声を掛ける。

 

「よう、見張りご苦労様」

「ん。砂糖はもう平気?」

「あー俺なら平気だ。心配かけたな」

「平気なら良かった」

 

鈴木崎に心配掛けちまったみてえだな。鷹倉は全然気にしてねえ様だけどそれが鷹倉らしいっちゃらしいな。

 

「何か聞きに来たんかー?」

「うんそうだよ。昨日の夜時間に何をしてたかって事を聞きに来たんだ」

「そんなら俺は寝てたなー夜飯食ってから眠くてすぐに寝ちまったんだよな」

 

鷹倉は腹一杯食って眠くなって寝たと…。

 

「私は技術室でハクのメンテナンスしてた」

「それって何時までしてた?」

「……10時半位までだった」

「なら後でハクにも確認するか」

「その方が良い。ハクなら時間も正確に覚えてる」

「て言うかハクとは一緒じゃねえのか?」

「ハクには捜査してもらいに行ってる。その方が成長出来る」

 

ハクの為を思ってって事か。

 

「ちなみに昨日夜時間辺りで変な事が自分の身に起こってないかな?」

「変な事…?ああ…あったよ」

「もしかしてそれって酷く重たい眠気じゃなかった?」

「…よく分かった」

 

微かに目を開き驚いている様子の鈴木崎。変化が微妙過ぎるだろ、ほぼ変わってねえわ。

 

「何だよその眠気ってー?」

「鷹倉は早くに寝ちゃったからね。俺も昨日酷い眠気に襲われたんだよ」

「沢風も…これは偶然?」

「いや、嶋野さんも同じ症状が出てたんだよ」

「なら怪しい」

 

三人が同じ様な重たく酷い眠気なんて症状に襲われるなんておかしいよな。

 

「私危うく寝かけた」

「お前それ校則違反になるぞ!?」

 

技術室は就寝可能場所外だ。寝たら即オシオキだろうな。

 

「そこは大丈夫。ハクに運んでもらったから」

 

ハクがその場に居て良かったと心底思ったぜ…全くヒヤヒヤさせやがるな。

 

「ハクさんなら夜時間どこかに出歩いてたりしないかな?」

「それハクを疑ってると?」

 

沢風の言葉に反応した鈴木崎はジロッと沢風を見つめ、怒気を孕ませて喋る。沢風はタジタジになりながら弁明する。

 

「い、いや違うよ!ただそれならハクさん何か怪しい人とか見てないかなって思ってさ!」

「……何だ、なら良いや」

 

怒気が収まり一安心する沢風。俺も怖かった。

 

「あーて言うかハクは夜時間中は動かねえぞ」

「は?何でだよ?ハクは睡眠とかしねえだろ」

「いやよ、それじゃあハクが長い時間可哀想だろ?一人でずっと居るなんて」

「お前そんな優しい所もあったんだな」

 

あの無気力グータラ鷹倉が…やっぱこいつもハクを溺愛してんだな。

 

「お兄ちゃんは妹を大切にするもんだろ?」

「まさか鷹倉からそんな全うな事を言われるとは」

「明日は世界の破滅」

「おーいそいつは言い過ぎじゃねえの?」

「まあそれは置いといて、ハクが夜時間動かねえってどうしてだ?」

「おー…置いとかれんのかーい……ハクはな?スリープモードが設定されてんだよ」

 

スリープモード?携帯とかのやつか?

 

「私と鷹倉で付けた機能」

「夜の11時から朝の5時まで動かなくなる」

「なるほど…ハクさんにそんな機能が搭載されてるんだね」

 

ならハクはその時間動く事が出来ないって事か。

 

 

コトダマゲット!《ハクのスリープモード》

 

 

「という事は鈴木崎とハクは朝まで同じ部屋に居たって事か」

「うん、そう」

 

なら鈴木崎とハクはアリバイがあるって事だな。でもこの眠気…調べる必要があるな。

 

「お前らの言う眠気?ってやつよー原因なんだろな」

「それは分からないね。でも一応後で保健室を調べた方が良さそうだよね」

 

保健室は可能性が高いよな。色々と怪しい薬品もある事だし。

 

さて、まだ桃瀬の検死は終わりそうにないし次はどうするかと思っていたら突然プールの方から怒号が聞こえてきた。

 

『だからよぉぉ!!止めろって言ってんだろぉぉがぁぁぁぁ!!!』

 

突然の声に俺達全員は驚きプールに続く扉を見る。

 

「今の声は…瀬戸内の声だよね」

「何かあったんかー?」

「心配だから行ってみようぜ沢風!」

「なら私と鷹倉は残っておく」

「動くのだるいしな」

 

いや鷹倉はいつも通りの理由だな。そして俺と沢風がプールに向かおうとすると桃瀬が近付いてきた。

 

「俺もォ気になッから一緒にィ行くぞォ」

「なら早く行こうぜ」

 

三人でプールに入る。そこには猫屋敷にオロオロしている影山にモノソノに詰め寄り怒っている瀬戸内が居た。

 

「おィ、一体何があッたんだよォ?」

「あ、も、桃瀬さん!砂糖さんに沢風さんも助けて下さい!」

「これは…瀬戸内はどうしたんだろう?」

 

桃瀬が瀬戸内に駆け寄り落ち着かせる様に瀬戸内の肩に手をぽんっと置く。

今にもモノソノを殴ってしまいそうな瀬戸内は、俺達の姿を見て少し落ち着いてくれた。

 

「おお!助かりましたよ桃瀬クン!まあ本当に助かったのは瀬戸内クンの方ですがね!」

「悪いな、危うく校則破りそうだったぜ」

「気ィ付けろよォ」

「んで何をそんなに怒ってんだよ?」

 

思わずモノソノを殴りそうになったって相当な事がないとないだろ。すると不機嫌になり、モノソノを睨み付けながら瀬戸内は語る。

 

「俺と猫屋敷が見張り役してたらよ、いきなりこの野郎が出てきて龍野を拐いやがったんだよ」

「はあ!?お前マジかよそれ!」

「私達で止めようとはしたんですが…残念ながら叶わず拐われてしまいました」

 

瀬戸内と影山から説明を聞いてすぐに龍野が浮かんでいたプールを見るが、そこには龍野の姿はなく赤く染まった水しかなかった。

俺は先程の瀬戸内の様にモノソノに詰め寄り睨み付けて叫ぶ。

 

「何で龍野を拐いやがった!お前ら俺達の邪魔して龍野を弄ぶんじゃねえよ!」

「ちょ、砂糖止めろ!」

「そ、そうです砂糖さん止めてください危ないですよ!」

「ち、ちょちょちょっと違いますぞ砂糖クン!?ワタクシは決してその様な意図で龍野クンを回収したのではないのです!」

「じゃあどんな理由があるって言うんだよ!」

「止めろって言ってるだろ?君まで暴走しちゃ駄目じゃないか!」

「…ぅ…分かったよ」

 

沢風に止められて少し頭が冷える。だけどそれでもムカつきは収まらねえ。

 

「ふー全く最近の若者は怖い怖い」

「いいから早く言えよ」

「そうだァ、まだ検死もしてねェ内にィ何してくれてんだよォ」

「分かりましたよ分かりました!言えば良いんでしょう?」

 

そう言うとモノソノは大きく溜め息を吐き心底めんどくさそうに答えた。

 

「これは出血大サービスですよ?先程のモノクマファイルの時と同じですよ。龍野クンの死体があのままあると大変面倒で困るんですよ」

「何でンな事にィ何だよォ」

「そこまでは言えませんよ!大体ここでワタクシが馬鹿正直に話しましたら龍野クンを回収した意味が無くなるじゃないですか!」

「ま~無駄にはなるね~」

「それってさっきも言ってたクロに不利に働くって事だよね」

「ギククゥ!?さ、さあそれはどうでしょうかぁ?」

「分かりやすい反応ですね」

 

またクロに不利になるからか…龍野を返してほしいがこいつらが言うことを聞く訳ねえよな。諦めるしかねえか。

 

 

コトダマゲット!《連れ去られた龍野》

 

 

「そ、そそそれではミナサマ捜査の方しっかりやって下さいね!」

「あ、待てコノヤロー!」

 

モノソノは逃げるように去っていきやがった。瀬戸内が止めるもさっさと消えて行きやがって…。

 

「はァ…龍野のォ検死が出来ねえのは痛いがァ仕方ねェ…俺は木枯のォ検死を再開するかァ」

「あ、ならその前に桃瀬が昨日の夜何をしてたか聞いても良いかな?」

「おォ、良いぜェ」

「瀬戸内達にも聞いて良いか?」

「おう!構わねえぞ!」

 

桃瀬、瀬戸内、猫屋敷、影山の昨日の夜何をしてたか順番に聞いていく。まずは桃瀬から。

 

「俺はァ夜時間なる前はァ食堂に居たなァ」

「あ~それ俺も~居たよね~」

「あァ、俺とォ猫屋敷とォ後は熱宮が居たなァ。そこで駄弁ってたらよォ猫屋敷が急に眠たくなッたからァ帰るッて部屋にィ戻ッてッたなァ」

「何かね~今すぐに眠っちゃいそうで~大変だったよ~何とか~部屋までは行けたけど~」

「ああ、そういやそうだったな」

 

そういや猫屋敷は朝、俺にそんな事を言ってたな。食堂でだらけてたら急に眠気がきて急いで部屋に戻ったがドアを開けて入ったら力尽きて玄関で眠ってしまったらしいからな。

 

「それからよォ俺も眠気が襲ッてきてなァひでェ眠気でェフラついちまッたがァ熱宮にィ肩を貸してもらッてェ部屋まで運んでもらおうとしたんだァ」

「そこで俺の登場だぜ!偶々通り掛かったらよ、具合悪そうな桃瀬が熱宮に寄り掛かってたから羨ましいな!って近付いたら思ったよりヤバい事態だったから俺も手伝って桃瀬を部屋まで連れて行ったぜ」

「昨日はァありがとなァ」

「良いって事よ!それで熱宮に肩を貸してもらったという事はだな?熱宮のパイオツに触れたのか!?触れたよな!?」

 

そこは俺も多少は気になりはしたがそれ所ではないから瀬戸内を止める。桃瀬も「馬鹿野郎がァ!今ンな事言ッてる場合かァ!?」と怒鳴られた。

 

「んじゃあ継ぎは俺が話すぜ?俺も桃瀬を運んだ後で夜時間のアナウンスが鳴った後に眠気がきてなー」

「瀬戸内もかよォ?」

「おう、熱宮も同じタイミングでフラつきながら眠気がヤバいって言ってたしこりゃ危ねえってすぐに二人で部屋まで帰って俺は寝たぜ」

「なるほど…熱宮さんもなんだね」

「ありゃマジでヤベー眠気だったぜ。人生で初めてって程意識が朦朧としてたし実際ベッドに倒れこんだら即寝たぞ」

「お前も瀬戸内達と同じ様な眠気はきたか?」

 

最後に俺は影山にも聞く。そしたら瀬戸内達から不思議そうな声が掛かる。

 

「……誰に話し掛けてんだよ」

「僕ら皆~話したじゃないか~」

「なんか幻覚でもォ見てやがるのかァ?」

「いや違えよ!影山に話し掛けてんだよ影山に!」

「影山さん?」

「ほらここに居んだろ!?俺の目の前だよ!」

「はあ?…んー…ってマジで影山居た!!?」

「おォ…全然気付いてなかッたなァ」

 

皆驚いていく。影山が申し訳なさそうにしているのが見ていて心を締め付けられる。

 

「お前らマジで何でなんだよ!?逆に俺は何で気付けるんだよ!」

「あれじゃね?お前超高校級とか憧れてるからなんか気付くんじゃね?」

「好きだから~?」

「そう言う事だな」

 

ええー…そんな理由で?でも現に気付いてるしなー。

 

「まあ今はそれより影山にも話を聞こうぜ?それで影山はどうなんだ?」

「あ、はい。私も同じ様に酷く重い睡魔に襲われました。夜時間の数分前ですね、私は別館の方に居たんですけどすぐに戻らないとと思い部屋に帰りました」

 

影山もか…これで四人全員が沢風が言う眠気に襲われている。これはいよいよ事件と関係があると考えて良さそうだな。

 

 

コトダマゲット!《急激な眠気》

 

 

この眠気については沢風の予想で保健室にありそうだし次は保健室にでも行ってみるかな。

 

「皆ありがとうね」

「これ位犯人を見付けれるんなら大した事ねえって!」

「他になんか気になった事とかねえか?」

「気になる事でしたら…和良井さんを見掛けた事ですかね」

「和良井を?どこで見掛けたんだ?」

「私が急いで別館から自室に帰っている時に別館の一階にあります空き教室に窓越しに和良井さんがいらっしゃいました」

「そんな所で何をしてたんだか?」

「それは分かりません…ですが和良井さんは何かに酷く怯えていた様子でした」

 

怯えていた?それは事件と何か関係してんのか?和良井には話を聞きに行かねえとだな。

 

 

コトダマゲット!《影山の証言》

 

 

「そう言う事なら俺も思い出したぜ!」

 

瀬戸内はニコッと笑いながら言う。何かを思い出したようだ。

 

「昨日の夜時間になる前に図書室覗いたら龍野と珍しく藤が居たんだよ」

「え、それは本当かい?」

「おう!二人とも離れた席で本読んでたけど藤が先に図書室から出ていったぜ」

藤と龍野は夜時間間際に図書室に居た。その事は至って普通の事なのに今は変に疑ってしまう。聞く事が増えていくな。

 

「所で桃瀬は検死どれ位進んだんだ?」

「もう大体は終わッてるぜェ…死因はァ首をォ斬られた事によるゥの出血ッて事が分かッたしよォ」

「なら包丁とかか?」

「それはまだァ何とも言えねえなァ」

「他には?」

「あァー…血痕が気になるッて所だなァ」

「何かあったのか?」

「木枯はァ首を斬りつけられてンだァ。なら出血量は当然多いィ…だが女子更衣室にャァンな派手に血が飛び散ってねェ」

 

言われて思い出すとまあ確かに女子更衣室にはそこまで酷い血溜まりは無かった。木枯が横たわるベンチの下にある血溜まりと引き摺られた血痕位しかない。

 

「あの引き摺ッた血痕だなァあれを見りャァ分かるがァ木枯をォ引き摺ッたんだろうよォ」

 

考えてみればそうだよな。首から斬られてんなら更衣室前みたいに女子更衣室にも血が飛び散ってねえと変だよな。そこん所も話し合ってみないとだな。

 

 

コトダマゲット!《女子更衣室の血痕》

 

 

「ん~そう言えばさ~俺思ったんだけど~龍野君の死因さ~溺死じゃないの~?」

「プールで死んでるし確かにそう思えるな」

「いやァそれはねえなァ」

「ありあり~?」

 

猫屋敷からの考えを桃瀬がすぐに否定する。え?何でだ?

 

「お前らァ溺死ッてどうやッてェ出来るか知ッてッかァ?」

「いや…全然知らないね」

「俺もだなーんな事考えた事ねえや」

「僕も~溺死なんて殺し方した事ないや~」

 

猫屋敷からさらっと怖い事を聞いたがスルーしておこう。こうやってさらっと見せるこいつが殺人鬼って事実は時折恐怖を感じる事があるが、こいつ自身はいつも通りだからなー。

 

「もし龍野がァ溺死ならよォ発見した時にィ浮いてんのはァおかしいんだよォ」

「浮いてたらいけねえのか?ドラマとかで見た事あんだけどあれ嘘だったのか?」

「あれはァ溺死してからァ時間が経ッてるからだァ。だが龍野は殺されてから時間が経ッてねェ…陸で殺されたからァ肺に空気がァ残ッた状態になッからすぐに浮かぶんだァ」

「ふ~ん~勉強に~なるね~」

「いやそんな知識普通に生きれりゃ使わねえって…」

 

瀬戸内の言う事は納得するが、これで龍野は溺死じゃなく地上で殺されてからプールに浮かべられたって事が分かったな。

 

 

コトダマゲット!《死体が浮かぶ理由》

 

 

「それじャァ俺は木枯のォ検死に戻るぜェ」

「あ、私も別の場所に行ってみます」

「俺らは一応ここになんかあるかもだしここを調べとくぜ!」

「ここは任せといてよ~」

 

皆各々が出来る事をしに行った。俺らも次は保健室を調べに向かう。

その途中、男子更衣室に入ると目に付くのが女子更衣室よりも酷い引き摺られた様な血の痕だ。

 

「これはきっと龍野の血だよね…」

「二人の傷から見ても龍野の方って分かるな」

 

桃瀬から木枯は首からの傷のみと聞いてるし龍野は身体中に傷があるからな。

男子更衣室はそれ以外は何も変わっていなかった。血の痕があるのみだ。

 

外に出ると視界に入るのは夥しい飛び散り多量の血溜まり。壁に飛び散り床には血溜まりを作っている更衣室前。思わず目を背けたくなるが堪える。

 

「酷い惨状だよね…」

「ここに来たときは無我夢中だったからすぐに先に進んだけど改めて見たらこんな酷かったんだな」

 

男子更衣室前の方が女子更衣室前よりも明らかに血の量が多くて違うな。それに男子更衣室に続く扉のすぐ目の前を中心に血が飛び散ってるが気になるな。女子更衣室側は少し離れた場所に大きめの血溜まりがある。

 

 

コトダマゲット!《更衣室前の血溜まり》

 

 

そう言えばここにはもう一つ気になる事があったんだ。俺は注意深く床を見ていくと目当てのやつが見付かった。

 

「沢風これを見てくれ!」

「どうしたんだ砂糖?……これって」

「これ、気になるよな」

 

俺が見付けた気になる事はここに来た時に感じた焦げ臭い匂い…そして見付けたのは黒く焦げた床があった。血で見付かりにくかったけど見付けれて良かった。

焦げた床は男子更衣室前に複数小さくあった。

 

「何でこんな所が焦げてるんだろう?」

「わかんねえけど絶対に重要なもんだろうな」

 

 

コトダマゲット!《焦げた床》

 

 

「一体ここで何があったんだか…」

「それを知る為にも捜査しなきゃだね」

「おう、じゃあ保健室に行くか」

「時間は限られてるから急ごう」

 

 

ーーー保健室ーーー

 

保健室に入ってみるとそこには既に藤が薬の入った棚を調べていた。

俺達が入ったら振り向き俺の顔を見て嫌そうに顔をしかめやがったっておい何でだよ。

 

「会って早々その顔はなんだよ」

「貴方に会うとめんどくさいからよ。やれ仲良くしようだの暑苦しいったらないわよ」

「それの何がいけねえんだよ」

「貴方に言っても無駄よね…諦めてるから大丈夫よ」

 

なんか勝手に諦められてんだけど凄く不本意だ。

 

「て言うか藤は何で保健室に来たんだよ?モノクマファイルには二人は薬物投与はなしって二人ともあったのによ」

「……何ですって?」

「まあ俺らはある事が気になって来たんだけどよ、藤もその事なのか?」

「…………そ、その通りよ。当たり前じゃない」

 

何だよ今の間は?でも藤は俺らとは話す事もしねえのに何で薬が関係あるかもって思ったんだろな。

 

……あれ?そう言えば藤って…これは聞いてみよう。

 

「藤はモノクマファイル読んでるよな?」

「何を言ってるんだよ藤さんなら配られてすぐに読んでるだろうさ」

「………………」

「……藤さん?」

 

動く事を止め、反応を示さなくなった。これはもう当たりだな。

 

「お前読んでねえ…いや、読めないんだろ?」

「……………」

「お前機械音痴だもんなーモノフォンも機械だしなー」

「あれ?でも藤さんって前教えてもらって使える様になってたよね?」

「…………そ、そんな事を言ったって仕方ないじゃない」

「え?」

「これが!これが悪いのよ!私は教えられた事をしただけなのにこいつがモノクマファイルを開かないのよ!」

 

えええぇぇぇぇ!!?突然の逆ギレにびっくりだよ!大体モノクマファイルが開かねえのは藤が操作を間違えてるからだろ!そう思い藤に試しに操作してみてくれと頼んだら不安そうに操作を始める。

 

「って早速間違ってんじゃねえか!何で人差し指で押さねえで全部の指で画面を押してんだよ!?」

 

「藤さんそこはホーム画面に戻るボタンだよ!もうその間違い五度目だよね!?」

 

「違う!モノフォン振っても何もならねえよ!」

 

「諦めないで藤さん!モノフォンを床に叩き付けても壊れるだけだよ!?」

 

「別にお前のモノフォンだけ壊れてたりしねえよ!正常だ正常!」

 

…………と、色々と苦労はしたものの藤には何とかモノクマファイルの開き方を教える事が出来た。

 

「………」

「これで分かったよな?」

「……ええ……れ、礼を言うわ」

「あーどういたしまして」

 

学級裁判前にどっと疲れたな。藤はモノクマファイルを読んで首を振り納得した様だ。

 

「あの二人は薬を摂取してないって事ね…なら貴方達は何でここに来たのよ」

 

俺らは昨日の夜に起きた眠気について藤に話した。話終わると藤は思案顔で考えていたと思ったら、スタスタとある棚まで歩き、一つ薬を取ると俺達の所まで戻ってきて 取ってきた薬を見せてきた。

 

それはここに一番最初に探索した時に見付けた遅効性の緑色の蓋の睡眠薬だ。

 

「貴方達の言う薬…これの事でしょうね。中身も減ってるわ」

「ちょっとその薬貸してもらっても良いかな?」

「どうぞ」

 

藤から薬を受け取った沢風は薬のラベルにある説明欄を読んでいく。

 

「ええっと…効果は中に入っている粉を振り掛ければすぐに染み込みます。飲み物に入れても効果を発揮します。

薬を接種して約二時間から三時間の間で眠気が訪れます。必ず七時間はぐっすり安眠が出来ますのであまり眠れない方にはおおすめの一品!

……強力な眠気が襲い、体が重くなり気を抜けばすぐに眠ってしまう抗いようのない睡眠薬。いざ夢の中へ旅立ちましょう…って書いてあるね」

 

約二時間から三時間で効いてきて効果時間が七時間もって…それじゃあ犯行を行うには充分すぎるな。

 

「これって昨日の夜ご飯の時に入れられた可能性が高いよね」

 

昨日は確か八時を少し過ぎて食べたな。俺は熱宮達と少し遅れて集まったから、他の奴等はそれより早めには居て瀬戸内達なんかは先に食べていたが、効果時間から見て当てはまるな。

 

 

コトダマゲット!《緑色の睡眠薬》

 

 

「夜飯の時に入れられたって事は…」

「可能性が高いのは調理した人でしょうね。私は知らないから何も言えないけど」

 

昨日の夜飯を作っていた奴…桃瀬に影山に…龍野だ。あいつらの中に居るのかよ?

 

「別の奴って可能性があるかもだろ」

「貴方はまだ甘い事を言うのかしら?そんな可能性限りなく低いでしょう?」

「で、でももしかしたらって事が…」

「はぁ…いつまで経ってもその甘い考えをしていたら死ぬわよ?いい加減その甘さを捨てなさい」

 

藤は俺の目を真っ直ぐ見つめて淡々と言う。

 

「ここに用も無くなった事だし私は行くわ」

「あ、ま待ってくれ藤!!」

 

そう言い俺らに背を向けて出ていこうとする藤を半ば反射的に呼び止めてしまう。

だけど突然大声を出した俺に驚いた藤は数秒前の俺の様に体をビクッと震わせてゆっくりこちらを振り向いた。

 

「…………何かしら?」

 

誰がどう見ても怒っているが、今はそんな事気にしていなかった。今は思わず呼び止めてしまった為に何を言おうかと頭をフル回転して考える。

そして出した問いは。

 

「藤は昨日何してたんだ!?」

 

とりあえず昨夜の藤の行動を聞くだった。まだ聞いていなかったし出ていこうとしていたし、丁度は良いだろう。

 

「人をいきなり大声で呼んどいてそれ?…まあ良いわ、答えてあげる」

 

すんなりと藤は俺の聞いた質問を返す。いつもなら渋るのに今日はどうしたってんだ?

 

「ご存知の通り私は昨日の夜はほぼ一人で居たわ。当然貴方達の言う眠気も無かったわよ」

「ほぼ一人で居たって事は一人じゃなかった時間もあったんだね?」

「あら、そこに気付くなんてね。甘党さんは感謝しなさいよ、相棒君のお陰で答えてあげるんだから」

 

なんか藤って俺への当たりが強いよな?しつこく話し掛けるからか?でもあれは説得で必要な事だしな。

 

「昨日の夜時間間際まで私は才能不明さんと図書室に居たわ」

 

それなら瀬戸内に聞いたな。

 

「偶然会っただけで特に喋ったりはしなかったわ。夜時間になったら図書室が閉まるから先に私は部屋に戻ったからそこからは知らないわ」

 

と言う事は龍野も夜時間間際まで図書室に居たって訳か。

そう思っていると藤がまたどこかに行こうとするので、引き止める。

 

「まだ何か用かしら?」

「い、いや藤は何か気になる事とかねえかなって」

 

藤は頭が良いし何かに気付いているかもしれねえ。

 

「……それを答えたらもう行っていいわよね?」

「お、おう」

 

流石に藤を引き止めるのも限界だよな。むしろここまで付き合ってくれたのが奇跡みたいなもんだ。いつもならさっさと出ていくのにな。

 

「私もまだ犯人は掴めてないけど、今回も動機が重要な手掛かりになるでしょうね」

「動機って…クロが学級裁判に勝ったら今回限りで誰か一人を選んで一緒にここから出られるってやつだよね」

「ええそうよ。その動機の事をちゃんと頭に入れておきなさい。貴方達が思っているよりこの事件は複雑でしょうからね」

 

そう言い残し、藤は今度こそここには用はないと保健室から出ていった。

 

 

コトダマゲット!《動機》

 

 

「目的の物も見付かったけどどうする?まだここを調べてみる?」

「…いや、時間もそんなにねえだろうから次は龍野と木枯の部屋に行ってみようぜ」

 

部屋に何か事件に繋がる物があれば良いんだが。そして保健室からは近い俺達の部屋まで歩きまずは木枯の部屋の前まで着き、ドアノブを捻ってみる。

 

するとドアは簡単に開いた。

 

「……何で開いたんだ」

「木枯さん鍵を閉めてなかったのかな…」

「それほど急いでたって事か?」

「わからないけど…入ってみようか」

 

そう言い、俺達は部屋に入ってみる。すると中には熱宮とハクが居た。

 

「おや、あんたらも来たんだね」

「たろうにしゅんや」

「おお、お前ら先に来てたんだな」

「ああ、モノソノに開けてもらってねえ」

 

どうやら熱宮とハクがモノソノに頼んで開けてもらったみたいだ。なら木枯はちゃんと鍵を閉めていたって訳だな。安心したぜ。

 

「あんたら来といて何だけど私ら粗方調べ尽くしたからもう調べるもんはないよ」

 

どうやらもうここは二人に調べ尽くされたみたいだな。

 

「はい。隈無く調べました。たろう達はりゅうとの方を調べてもらっても良いですか?」

「おう、なら俺らは龍野の部屋を調べてみるわ」

「その前に二人には聞きたい事があるんだけど、昨日の夜何していたかを聞きたいんだ」

 

そう言われた熱宮は昨日の事を思い出しているとハクは記憶力があるからすっと答える。

 

「ハクなら昨日夜時間を過ぎてもますたーと技術室に居ました。ですがますたーが急に眠くなり、ふらつき始めたのでハクがおぶって部屋まで戻りますたーを寝かせてからスリープモードに移りました」

 

鈴木崎から聞いてた内容通りだな。すると熱宮がそう言えばと言い出す。

 

「昨日あんたらを見たねえ」

「そうなのですか?」

「ああ。確か…眠たいって言った桃瀬を私と瀬戸内が運んだ後、瀬戸内と何でこんなに眠いのかって話してたらハクが鈴木崎を背負いながら走って部屋に入ってくのを見たよ」

「瀬戸内はそんな事言ってなかったけどな?」

「それなら仕方ないねえ。本当に酷い眠気で意識朦朧としてたし…私は眠気には強い方だから意識も多少ははっきりしてたしねえ」

 

 

コトダマゲット!《熱宮の証言》

 

 

沢風もうんうんと頷いてるが、経験してない俺からすればそんな重たい眠気とかマジかって話だな。

 

次に熱宮の話に移る。

 

「私なら昨日は食堂に居たよ。猫屋敷と桃瀬と一緒にね」

「それで猫屋敷が先に部屋を出たんだよな」

「ああそうだよ。そしたら次に桃瀬も眠くなって意識朦朧とし出してねえ…慌てて支えて部屋まで運んでたら瀬戸内と偶々出会して一緒に運んでもらったよ。そこからさっきも話した通り瀬戸内と居たらハクらを見た後、部屋に戻って寝たって訳だよ」

 

なるほどな…これも瀬戸内の言う通りだな。

 

他に何か気になる事はないかと二人に聞いてみるが、他には特にないと言われたので俺と沢風は二人に礼と別れを告げて龍野の部屋に向かった。

 

龍野の部屋の前まで来て、ドアノブを捻る。

 

「開かねえか…」

 

やっぱり普通は鍵掛かってるよな。

 

「ならお願いするしかないね」

「あんまり気が進まねえけど…仕方ねえ。モノクマ出てこい!」

 

鍵を開けてもらうにはあいつらに言わないといけねえ。お願いするとかスゲー癪だけどそうは言ってらんねえ事態だし我慢だ。

 

「はいはーい呼ばれて来ましたモノクマでーす!」

「今度はちゃんとお前が来んだな」

「ん?ちょうど一段落したしね!それで何々?鍵を開けてって事?えーどうしようかなー開けてあげよっかな~開けたくないなーめんどくさいなー」

「おい早く開けろよ!」

 

いやらしい笑みを浮かべて焦らし始めてきたモノクマにいらっとする。

 

「そんな茶番いいから早く開けてくれないかな?」

「う、うん!はい開けたよ!ちゃんと捜査が、頑張るんだよー!」

 

しかし横から俺よりも怒気を孕ませた沢風に穏やかだが怒っている雰囲気が伝わりモノクマはさっさと鍵を開けて消えた。

 

「あっれー!?そこに居るのはシュガーにしゅんやくんじゃーん!」

 

俺達は龍野の部屋に入ろうとすると偶然…とは思えないタイミングで来やがった嶋野だ。

こいつ絶対狙ってたよな?狙っていやがったよな?邪魔しに来やがったのか?

 

「やあ嶋野さん。俺達今から龍野さんの部屋を調べようかと思ってね」

「ほうほーう…ならウチもお手伝いする!」

「……え?」

 

それは絶対に嫌だ。こいつに龍野の部屋を捜査させるのも嫌だし一緒に居るのも嫌だ。嫌な事尽くしで気持ちが沈んでいく。

 

「うん、人は多い方が何か発見出来るかもだしね!」

 

だけどそんな俺の気持ちを知らない沢風は当然OKを出す。

 

「あれ、何かあった砂糖?」

「い、いや…別に大丈夫だ…」

「えっへー!それじゃあ早速参りましょー!!」

 

俺は嫌な気持ちを抱えて、龍野の部屋に足を踏み入れた。

 

パンパカパーン!

 

「うおぉぉ!?」

「え!?」

「うっきゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

俺が一歩足を玄関に踏み入れた瞬間に何かが当たった様な軽快な音が鳴り響きビックリする。

 

俺らが何が何だか分からず、しかし俺はきっと黒幕の仕業だろうと思ったので嶋野を睨む。

お前が鳴らしてんだから驚くって演技してんじゃねえよ!と睨んでいたら俺にだけ見える様にやついてきやがった!

 

(こ、このやろう!!?)

 

混乱する頭で嶋野に腹が立ち、文句の一つでも言ってやりたい気持ちを必死に抑えていると、今度はモノクマの野郎がまた出てきやがった。手にはクラッカーを持ち俺らに向けて鳴らしてくる。

 

「いえーい!おめでとーう!オマエラはこの部屋に訪れた初めての人でーす!」

「………は?」

「えー何々それって!?良くある遊園地とか水族館の記念すべき何人目ですってやつ!?け、景品は!特賞はなんなのさー!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて嶋野さん…」

「景品はー……ほいドラムロールお願い嶋野サン!」

「はいさー!ドゴドゴドゴドゴ……ジャーン!」

「ズバリ!この部屋を調べる事が出来ます!」

「ズコー!それって景品じゃないよー!!さては景品なんてないって事ね!」

 

騒ぎ立てるモノクマと嶋野にうんざりした気持ちになるな…。今までは嶋野の事は仕方ねえなと思いながらも別に嫌な気持ち何て無かったが…ここまで嫌悪を抱くとはな。

 

「良いからこんな奴放っておいて調べるぞ」

「あ、うん。ほら嶋野さんもモノクマなんか無視して行こう」

「はーい!」

「ガビーン!!校長を無視なんて…酷いよぉぉ!!」

 

下らない茶番を終えて龍野の部屋を見渡す。特に俺と部屋の構図とかは違いはないな。

強いて言えば図書室から取ってきた本が机にいくつかあること位だな。

 

それから龍野に申し訳なく思いながらも調べていく。タンスには…龍野がいつも着ている真っ黒な服。マジで開けた瞬間真っ暗だから怖かった。

 

そして机の棚…特に何も入ってないなと思っていたら棚の中に本が入っていた。

それは龍野が俺にお薦めで貸してくれると言っていた本だった。

 

(……結局俺はまだ見付けれてなかったんだよな…)

 

龍野はあんなに嬉しそうに俺に貸す本を見付けてくれていたのに…今更悔やんでもどうしようもねえ事はわかってるが…どうしようもない気持ちを抱えて俺はパラパラとページを捲る。

 

「……あ?」

 

そして最後のページまで捲るとそこには明らかに気になるものがあった。

 

『夜12時本館二階更衣室前まで来い拒否すればお前の隠している秘密をバラす』

 

急いで書いたのかぐしゃぐしゃな走り書きの字で読むのに苦労しながら読めた字はそう書かれていた。

 

「これって…」

「ん?どうしたんだ砂糖」

「沢風、こいつを見てくれ」

「んー?シュガーどったのさ!」

 

俺は沢風に最後のページを見せる。本を受け取った沢風は嶋野にも見えるようにして書いてある事を読んでいく。そして読み終わり本を閉じる。

 

「これは重要だね」

「ほえー…汚い字だねー」

「これじゃあ誰が書いたかも判別つかないね」

 

確かに汚すぎてギリギリ読める位だ。だがこれは沢風も言った様に重要な証拠になるな。

 

 

コトダマゲット!《龍野の本》

 

 

「そう言えば嶋野さんは昨日俺と会ったけどその前は何をしてたのか聞いてもいいかな?」

「へ、昨日?」

「うん。砂糖には昨日寝る前に嶋野さんと会った事は話したんだけどね、その前は誰かと会ってたりしてないかなって」

「あー!そう言う事ね!なら昨日はしゅんやくんと会うまでは一人で居たからねー特に言う事はないね!」

「そうだったんだね、ありがとう」

 

こいつは俺と木枯が来るまでずっと俺らを監視してやがったからな。そりゃ誰とも会ってないだろうよ。

 

だけどまあこれで後聞いてない奴は和良井だけだな。今の所和良井に会ってないし捜査をしながら和良井も探さないとだな。

 

それから部屋を調べるも事件に関係ありそうな物は見付からなかった。まあ関係なさそうだが黒色の腹巻みてえなもんが服と同じ数あったから龍野って腹巻してたんだなって事がわかった位だ。でも腹巻にしては薄くて変だなって思ったが。

 

「じゃあ調べる事も無くなったし他の場所行こうぜ沢風!」

「え?う、うん。どうしたのさいきなり」

 

とにかく嶋野から離れたかったから沢風を連れて他の場所に行こうと急かす。

不思議そうに沢風は嶋野に別れを言い、外に出る。俺もさっさと出ようとすると嶋野が真後ろから喋りかけてくる。

 

「もーシュガーったら露骨すぎじゃないの?そんなんじゃ誰かにバレちゃうかもよ?」

「……っ!」

「ウチはちゃんと皆と同じ立場でもあるんだからクロ探しに集中しなきゃだよー?じゃないと見付けれないしーウチの正体バレちゃったら大切な人達死んじゃうんだけどなー……良いのかな?」

 

こ、こいつ…今すぐキレそうになるのを堪えて無視して部屋を出ようと歩く。後ろからは嶋野の心底楽しそうな声が聞こえる。

 

「さーて学級裁判ワクワクドッキドキだねー……シュガーも頑張ってね?」

 

あんな奴には負けねえと気持ちを強く持ち沢風の元に向かう。

 

「それじゃあ次は…どこに行こうか」

「そろそろ桃瀬の検死終わってんじゃねえか?」

「なら行ってみようか」

 

もう一度桃瀬が居るだろう女子更衣室に戻る。その途中でやっと和良井に会えたので急いで近付く。

今の和良井の事だからすぐに逃げて行きそうだからな。

 

「よう和良井!ちょっと話聞きてえんだけどよ!」

「うひょおぉぉぉぉぉん!!?って驚かすなやアホが!」

「それはすまん!それで聞きたいんだけどよ」

「はあぁぁぁぁぁ!!?こいつ軽く流すてアホマイペースやないか!?」

「まあまあ!それで聞くんだけど昨日は和良井酷く重い眠気があったとか誰かとあったとかなかったか?」

「何で答えなあかんねんっ!!」

 

ここで和良井を逃す事はしねえとしつこく聞いていく。するとしつこく聞いた甲斐があり、諦めて話してくれる。

 

「……昨日は…ずっと一人で居ったわ。誰とも会ってないし眠気とかもそりゃ夜過ぎれば眠たなるに決まっとる」

 

最近ずっと一人で居た和良井だからまあ当然と言えば当然か。眠気も沢風達の様な眠気は一切無かったとの事。これで一応全員眠気については聞けたな。

 

 

コトダマゲット!《睡眠薬を盛られた人と盛られなかった人》

 

 

そういや影山から和良井を見掛けたって事を聞いたって事を言ってみる。

 

「た、確かに空き教室には居ったけど…見られとったなんて全然気付かんかった…」

「ちなみに何かに怯えてたって…どうしたんだよ?」

 

あんま聞かない方が良いと思うが気になったし何かに繋がるかもだしと聞いてみた。だけど俺の予想通り和良井は嫌な顔を全面に出してくる。

 

「そ、それはお前には関係あらへん事や!もう話す事は話したし俺は行くで!お前ら二人の内に犯人居るかもなんやしな!」

「あ、和良井待ってくれ!」

 

沢風が呼び止めるも空しく和良井は去っていってしまった。何に怯えていたかは結局分からずだったが影山の言っていた事に確かな証言を聞けたし全員分は聞けたな。

 

事件時刻の時殆どの奴等が寝ていて、夜時間間際はそれぞれ行動していたって事だな。

 

 

コトダマゲット!《事件時刻時の皆》《夜時間間際の皆》

 

 

俺達は気を取り直し、桃瀬の元に向かっていたら目の前から桃瀬が歩いてきてくれた。桃瀬は俺らに手を振りながら近付いてきてくれる。

 

「おゥ、お前らを探してたぜェ。検死が終わッたから教えねえとなァ」

「わざわざ探してくれたのか」

「ありがとう。それで検死はどうだった?」

「木枯はァ首からのォ斬り傷のみだァ。確実にそれが死因だろうなァ。他に傷がねえかちャァんと調べたがァ…それ以外に傷はなかッたぜェ」

「ならモノクマファイル通りって事か…」

「あァ…アイツらがァ嘘を書いてる訳じャァねえッて事だァ」

 

首からの斬り傷…死因は分かったって事なら次は凶器って事になるな。ならすぐにでも見付かりそうだな。

ここにある物は限られてくるしなと思っていたら桃瀬が難しい顔を浮かべている。何だ桃瀬浮かない顔してんな?

 

「たがよォ…凶器がァ見当たらねェんだよなァ」

「え?そうなのか?」

「検死が終わッてからよォ俺も凶器探しをォしたんだがなァ当てはまるモンがないんだよォ」

 

桃瀬が言うには厨房や倉庫に売店等あり得そうな場所は粗方探したが木枯の傷にあう凶器は見付からなかったらしい。

そこ位しかありそうな場所思い付かないんだけどな…。

 

「お前らはァ凶器になりそうなモン見付かッたかァ?」

「いや、特には見付けてないね」

「そうかァ…ならもう少しィ俺も探してみるぜェ」

「なら俺らも色々探してみるぜ」

「おゥ頼むぞォ」

 

果たして見付かるかはわかんねえけど斬り付けられそうな凶器になり得る物を探してみるか。

 

ちょうど桃瀬に会ったし他にも合った聞きたい事も聞いてみよう。

 

「桃瀬って昨日は龍野と影山と一緒に夜飯作ってたよな?」

「ン?おゥ作ッたぜェ」

「何か変な物を入れてたとかねえか?」

「なんだよォそれェ…俺が見てた中ではァ特に入れてなかッたとォ思うがなァ」

 

まあ見付けたらその時に言うわな。

 

「皆ずっとご飯作ってた時は目を離したりしてないかな?」

「いやァ…一人最低一度はァトイレに行ってるぜェ」

「そうなんだ、ありがとう」

 

 

コトダマゲット!《昨日の夜ご飯時の状況》

 

 

そりゃトイレには行くだろうし沢風が言うには先に食堂に居た奴等もトイレには行ってるから目は離してる。

 

それじゃあ凶器探しに手当たり次第探してみるかと思っていたら。

 

『時間は無限に流れていくけどオマエラには有限なのです。オマエラに与えられた時間は長いようで短い。それは今この時もです…直訳するなら時間切れだよ!"学級裁判"を開始するからいつも通り別館の赤い扉から学級裁判場に来てねー!』

 

ついに鳴ってしまった。まだ調べたい事はあったが仕方ねえか。

 

「ちィ!もう終わりかァ…ならとッとと行くかァ」

 

そう言って桃瀬は別館の方へ歩いていった。

 

「俺達も行こう」

「おう」

 

短く返事を返し別館の赤い扉に向かう。本当にこれで良いのか、まだ調べるべき場所があったのではないか。

果たしてクロは見付ける事が出来るのかと不安が押し寄せてくるが…やるしかねえんだ。

 

「おんや~砂糖君に~沢風君~ちょうど良い所に~」

 

赤い扉まで歩いていると猫屋敷に会う。何か俺らに用事でもあんのかな?

 

「どうしたんだ?」

「君らに渡したい物があってさ~」

「渡したい物って…んだそれ?」

「これこれ~」

 

そう言って取り出したのは…水に濡れた全身真っ黒なナイフだ。

 

「何だよそのナイフ…」

「こんな黒いナイフ見たことないけど猫屋敷はどこで見付けたの?」

「何かね~龍野君が~浮かんでたプールで偶然見付けたの~」

 

龍野が浮かんでたプール…ってあの血で染まった所から見付けたのかよ!?

 

「お前…良く見付けられたな」

「こう見えても~殺人鬼ですから~」

 

説得力は不思議とあるけど…まあこのナイフはちゃんと持っておこう。猫屋敷も殺人鬼である自分が持っているよりも俺達が持っていた方が良いだろうと思って探していたとの事だ。

 

 

コトダマゲット!《プールに沈んであったナイフ》

 

 

ーーー別館、赤い扉ーーー

 

赤い扉前に着くとそこには既に皆も集まっていた。自信満々な奴、不安そうにしている奴、落ち着いている奴と様々。

 

これでついに三度目…三度もこんな狂ってる事をやっていると思うと頭が痛くなる。

 

三度目となる学級裁判場に繋がるエレベーター…これに乗ればもう戻ることは出来ない。だが乗る事しか俺達には出来ない地獄への片道切符。

 

次々と乗り込んでいく皆を俺は見つめる。この中からクロか…クロ以外の俺達が死ぬ。必ず誰かは死んでしまう。

 

例え今回学級裁判を乗り切ってもまたここに来るのではないかとそんな考えも過り、そもそも今回クロを見付けられるかすらもわからない。調べ回り、証拠はある程度掴んだがそれでも何が起こるかは分からない、予測できない。

 

「砂糖、どうしたんだ?」

「…っ、沢風……」

「おィ!何してやがんだよォ!お前が乗らねェと動かねェんだぞォ?」

「ああ…悪い悪い、ちょっとボーッとしてた」

「大丈夫ですか?」

 

影山が心配そうに聞いてくるのを、大丈夫だと返す。思考が深みにハマってしまったら、視界が狭まる。今は目の前の学級裁判に集中しなければ。

 

俺はごくりと生唾を飲み込みながら、重い足取りでエレベーターに乗り込む。するとエレベーターは扉を閉め、下がっていく。

 

どんどんどんどん、下がっていく。

 

どこまでも、俺達を闇に吸い込んでいく。

 

段々とエレベーター内のスペースが空いていく、この寂しさを胸に刻み込み、俺を苦しめる。

 

今まで隣に居てくれた龍野が、いつでも前向きに俺らを鼓舞してくれ支えてくれていた木枯はもうこの場には居ない。

 

木枯……いつもマイペースだが心強く居た。嶋野が黒幕だと知った時は共に居てくれたし、俺が追い込まれ不安に気持ちが不安定になっていた時に俺を気遣い明るく励ましてくれた。共に戦うと言ってくれた優しくも強い木枯は殺された。

 

龍野…ここに目覚めた時に最初に出会い、それから相棒だと言っていたが俺は助かりっぱなしだった。だけど一緒に居て気安く話していて楽しかった。

ここを出ても仲良くしていけると思っていたのに…結局、お互いが選ぶお薦めの本は貸し合う事が出来ずじまいになってしまった。頼れる相棒だった龍野もまた殺された。

 

あいつのお薦めの本、あれには重要な証拠があったんだ。

 

二人を殺したクロは……この中に居るんだ。俺は恐怖、緊張が混じった感情をドロドロと混ぜ込みながら気持ちを必死に落ち着かせようと深呼吸する。

 

これから始まる三度目の学級裁判、騙し合い、蹴落とし合い、信じ合う。

誰かが嘘をつき、誰かは嗤う。誰かは悲しみ、誰かは怒る。

様々な思惑、思想、信念、狂気が渦巻き俺達を呑み込み喰らう。

一人の生け贄か、全滅か…結末は二択。

 

さあ、気合いを入れて挑もう。揺らいでいてはこちらが喰われる。

 

二人を殺したクロを見つけ出し、糾弾し、追い込むんだ。覚悟はとうに決めている。

 

エレベーターが止まり、扉が開く。クマとトラのふざけた絶望の塊は嘲笑い俺達を迎える。

少し見慣れてきた裁判上を視界に入れながら俺は誰よりも早く自分の席に向かう。

 

じゃないと足が震えて動いてくれないから。

 

「うぷぷぷぷぷぷぷぷ」

「うっぷっぷっぷっぷ」

 

希望と絶望がぶつかり合う三度目の学級裁判が今、始まろうとしている。

 

ーーー続くーーー

 

 

 

 

ー登場人物ー

 

【予備学科生徒】砂糖(サトウ) 太郎(タロウ)

 

【超高校級の芸人】和良井(ワライ) 笑平(ショウヘイ)

 

【超高校級のリア充】沢風(サワカゼ) 俊也(シュンヤ)

 

【超高校級のメカニック】鈴木崎(スズキザキ) 美佳子(ミカコ)

 

【超高校級の放送部】嶋野(シマノ) 恵子(エコ)

 

【超高校級の殺戮者】猫屋敷(ネコヤシキ) 狛犬(コマイ)

 

【超高校級の氷彫刻家】熱宮(ネツミヤ) 燐火(リンカ)

 

【超高校級の僧】瀬戸内(セトウチ) 太陽(タイヨウ)

 

【超高校級のモブ】影山(カゲヤマ) 琥珀(コハク)

 

【超高校級のネット配信者】 鷹倉(タカクラ) ルゥ ヴィクトー

 

【超高校級の折り紙講師】 (フジ) 織姫(オリヒメ)

 

【超高校級の保険委員】 桃瀬(モモセ) 一護(イチゴ)

 

【超高校級のロボット】(ハク)

 

生存者 13人

 

 




さてはてついに始まります次回、学級裁判です!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。