俺達を祝福する音色が裁判場に響き渡る。しかし俺達は殆どが嬉しいと思えず浮かない顔をしていた。
「いやいやー今回は中々に面白い事件だったね!と言う訳で、今回超高校級の幸運、木枯 苗サンを殺したクロは超高校級の???、龍野 竜斗クン…ですが!龍野クンは驚愕の事実の女の子でした!龍野クンは龍野サンだったって事だね!」
何が驚愕の事実だ、どうせお前らは龍野の性別が女子だって知ってたんだろう。
「そしてそして!木枯サンを殺した龍野サンを殺したクロは超高校級の芸人、和良井 笑平クンでしたー!!
いやー彼は見事に影山サンの甘い誘惑に引っ掛かりましたね!」
「ぅぅぅぅぅ……嫌や嫌や嫌やぁぁぁ」
和良井は自身がクロだと決定したにも関わらず、未だ否定の言葉を繰り返している。
先程の和良井の縋り付く声を思い出し、気分が悪くなってくる。和良井から仲間だと言ってくれたのに、嬉しい言葉の筈なのに状況が状況のせいで全く嬉しくなく自分に嫌気がしてくる。
だがそれ以上に嫌悪し苛立ってくるのが…。
「うふ、うふふふふふ」
ずっと俺を見つめてくる今回の事件を引き起こした張本人である影山だ。こいつの勝手な理由のせいで龍野は木枯を殺す気はなかったのに殺してしまい、そして和良井に殺させた。
本来ならこいつがクロとして処刑されるべきじゃねえのかと思うが、モノクマ達のルールによれば処刑されるクロは和良井になってしまう。
「……はぁ…全く、やられたわ」
「ああ、そうだね…俺も影山さんが二人を殺したと思ったんだけどね」
藤と沢風は疲れた顔でそう言う。俺も…誰だって影山がクロだと思ったのに…覆された。
「うふふふ…皆さんは太郎さんの良い引き立て役として役目を全うしてくれましたよ」
「……別に引き立て役なんてした覚えはないけど、そんな事より貴女は才能不明さんのどんな秘密を見たのかしら?良ければ教えてくれないかしら」
そうか、こいつは前の動機であるゲームから龍野の秘密を知ったんだったな。つまり龍野の才能も知れると言う訳か。
せめて、龍野がどんな超高校級の才能を持っていたのかって事は知りてえ。あいつの事はまだ全然知れてねえんだ、その位は…あいつは言われたくねえだろうけど知りたいんだ。
「うーん……藤さんを含め、皆さん今まで散々私の事を無視しておきながら、そんな調子の良い事を仰るんですか?私は私を見てくれる太郎さんの言う事以外は聞き入れたくありません」
「な、何ですって?」
「大体藤さんは私は犯人さんは最初から分かってますといった雰囲気を醸し出しておきながら間違えているじゃないですか」
「う…そ、それは……」
「間違っているのにドヤ顔を晒していらっしゃったのは滑稽で私は笑いを堪えるのに必死でした」
「ぐうぅぅぅぅ…良いから教えなさいよ」
「ですから私は太郎さん以外の方の意見なんて聞き入れたくありません」
煽りに煽られて顔を真っ赤にしてプルプル体を震わせる藤は悔しそうにしながらバッと俺の方を向き、何故か俺を睨み付けながら怒鳴るように言う。
「ちょっと甘党さん?あの愉快犯さんは貴方の言う事しか聞かないそうだからお願いしてくれないかしら?」
「すみません藤さん、私の太郎さんに馴れ馴れしく話し掛けないで頂けませんか?貴女の小物臭が太郎さんに悪影響を与えてしまったらどうしてくれるんですか?」
「こ、小物臭ですってぇぇ!!?わ、私が小物臭って…貴女、許さないわよ!」
「ええどうぞ御勝手にして下さい。貴女に許されても許されなくても私は気にしませんし」
「お、おい鈴木崎、あいつら止めろよー見てて怖いんだよー」
「そう言う鷹倉が止めろ。私は関わりたくない」
藤と影山が言い争いを続けるが、次第に藤が泣きそうな顔になってきたので仕方なく俺は止めるため口を開く。
「……おいお前ら止めろ…藤、俺が聞くから落ち着け。………それで龍野の秘密ってどんな内容だったんだよ…」
影山に話し掛けると今まで藤を嘲笑しながら煽っていた影山はすぐさま俺の方を向き満面の笑みを浮かべて答える。
「はい、龍野さんの秘密はまず女性である事…そして希望ヶ峰学園にスカウトされた才能が【超高校級の殺し屋】で闇組織"ouroboros"の一員であるという秘密です」
「た…龍野が……殺し屋?」
「マジかよおい!?」
「はい、何なら証拠として私のモノフォンに情報データがあるのでお見せ致しますよ。…………はい、これです」
そう言ってポケットから取り出したモノフォンを弄り、影山は俺に向けて画面を見せてきた。そこには確かに龍野の性別が女である事…そして【超高校級の殺し屋】である事が書かれていた。
【超高校級の殺し屋】龍野 竜斗
本当に龍野は女子で殺し屋だったのか…今更そんな事を知っても龍野はもう居ない。
あいつが才能を言いたがらない事に納得し、同時に消失感に襲われる。
「龍野さんが所属していた"ouroboros"は国から指示を受け邪魔な者を消す役目をしていたんです。龍野さんは生まれてすぐに捨てられた所を組織に拾われて育った様で、性別は女より男と言った方が都合が良かったから隠していたらしいです」
「へ~じゃあ~言っちゃえば~龍野君は~国のお偉い方々から~邪魔者を消す~闇の執行人的な~やつだね~」
「そう捉えてもおかしくはないねえ」
少なくとも、龍野は人を殺した事はあれど悪人しか殺してないんだ…そう思えば気持ちは軽くなる…。
「いえ、別に正義の使者だとかではないですよ?国の権力とお金に目が眩んだ汚物さん達が邪魔だと思う方を抹殺する事を指示してますから悪者だけではなく、むしろ汚物さん達を止めようとしていた善き方々の方が多いでしょう」
少しでも気持ちが救われる方に行こうとするも、影山は逃さなかった。こいつは徹底的に龍野のイメージを潰す気でいやがるんだ。影山を止めようと口を開きかけるが。
「あのさーやっと学級裁判終わってオシオキに移れるのにグダグダと死んだ人の話は後でしてくれない?」
「くま校長は空気が読めないのですか?ろぼっとのハクでもそれ位は分かりますよ?」
「う、うるさいうるさいうるさーい!!やっと待ちに待った特大イベントオシオキが出来るんだから邪魔しないでよね!」
「邪魔はァテメェの方なんだがなァ」
「はいキミタチ、私語は慎んで下さいね!あ、和良井クンは今からオシオキですし死語をドンドン言っちゃって下さい!死後になればもう慎むしかないんですから!」
「ひ、ひいぃぃぃぃぃ!!?だ、だか…ら俺がオシオキされるんは違うやろぉぉぉ!!!!?」
今まで、ひたすら自分はクロではない影山がクロだと呟いていた和良井をモノクマモノソノが現実に強制的に引き戻させる。
「うんうん!往生際が悪いのはクロとして模範生だよ!もっと無様に泣き叫んでよね!」
「お、お前らは悪魔やぁぁ!!こ、これはきっと俺を貶める罠やったんや!全員グルやったんやろ!?俺の過激アンチ勢の仕業やろ!それかドッキリか!?もう勘弁してくれやぁぁぁぁ!!!」
「それではそんな無様で醜い和良井クンにはとびきりスペシャルなプレゼントを御送りしますね!」
「嫌やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!おい影山ぁぁ!?お前助けろや裏切りもんがぁぁ!!!何で俺を裏切りよったぁぁぁぁぁぁ答えろクソボケカスオラァァァァ!!!?」
ひたすら叫び続ける和良井が影山に怒鳴り叫ぶ。その慟哭を受けた影山は。
俺を満面の笑みで見つめているのを止め、
和良井の方を俯きながら向き始め、
ゆっくりと顔を上げた、
その顔は、
何も浮かべておらず、
無、
感情という物が始めからなかったかの様に感じ、見ている奴を黙らせ周りを凍り付かせる表情をしていた。
そう思っていたのも束の間、顔を綻ばせて言う。
「私は始めから和良井さんを勝たせる気は更々ありませんでしたよ」
それは余りにも残酷な言葉であり、真っ直ぐその言葉を撃ち放たれた和良井は、
「ぁぁぁぁ……あ?………は、はあ?」
きょとんとし、呆然と、ただ影山を見つめる。
「始めから邪魔者の龍野さんを殺せれば良かったんです。ですが私が殺してバレれば太郎さんと会えなくなります。ならどうするか?…それは都合の良い操り人形さんに殺して頂くのが最良の選択です」
「つまり、利用しやすそうな和良井に、利用出来る龍野の秘密と和良井を協力させれる動機と揃ったから実行したんだね?」
「その通りです。沢風さんは理解が早くて助かりますね」
「別に君に褒められても…嬉しくないよ」
「私も貴方を褒める時間があれば太郎さんを見つめて喋っていたいですよ」
そう言いながら俺を見てくる影山に舌打ちをする。でもそんなのお構いなしに見てきやがる。
「私は別にここから出ようなんて思ってはいないんですよ?」
「はあ?それはあり得ねえだろ…」
「いえ正直な私の気持ちですよ。私は太郎さんさえ生きていてくれたら何も要らないんです。私と太郎さんだけが居る学園にする為に前回は剣さんを唆して事件を起こしてもらいましたね」
「やっぱり愉快犯の君がそう仕向けたんだね!?」
「はいそうですよ。邪魔な方は消えて頂きます」
「くっ!……剣は君のせいで……」
分からねえ。こいつが俺に執着する意味が全く分からねえ。大体龍野を狙った理由も龍野が邪魔だったからって…別に龍野とは仲の良い友達同士だったし、影山に特別そんな好意を抱かれる事なんて…無かったと思うが…。俺は気になって、自然と口から漏れ出た。
「何で………だ?」
「すみません太郎さん…聞き取れませんでしたからもう一度仰って頂けませんか?」
「…何でお前は、俺にそんな執着するんだ?」
「何で……ですか」
分からねえ。分からねえなら聞くしかねえ。こいつが龍野を邪魔だと思った理由、俺に執着する理由。
「そんなの決まってます」
俺と影山は向かい合い、視線を交わす。そして影山は艶やかに頬笑み告げる。
「私に気付いてくれるからです」
…………は?
「気付いてって…そんな事で?」
まさか、確かに俺は皆より影山に気付くのが早いが…。
「うふふ…普通に喋り掛けて下さる太郎さんはそうでしょうね。ですが幼い頃から話し掛けても何をしても全然気付かれずに過ごしてきた私にとっては…救われる思いでした…」
影山の才能は、大体知っていると思っていた…だが俺はその事を知っていただけで影山の受けた苦しみまでは知る由も無かった。
「親にまで存在を気付かれなくなった時に私の何かは壊れました。その日から私は誰かに気付いて頂く為、利用出来そうな方に近付き、その気持ちを利用して私の都合が良い様に事件を起こしてきました」
「……それが超高校級の愉快犯に繋がるって訳ね…」
「そうですね。いつの間にかそう呼ばれましたね。そして希望ヶ峰学園からスカウト通知が届いた時、私は心の底から嬉しく思いました。その日は一日中泣き続けました。これで私は一人じゃなくなる…と」
頬を紅潮させ、染々と語る影山に全員黙って聞く。いや、影山の雰囲気に呑まれ誰も何も話せないんだ。先程まで騒ぎ叫んでいた和良井も、モノクマもモノソノも。
「ですが希望ヶ峰学園の門を潜りましたらいつの間にかここに拐われていて、同じ超高校級の方々なら気付いてくれると思っていましたが、誰も気付いてもらえない……と絶望していましたが…………太郎さんだけは、私の存在に気付いて、見てくれました」
突然そこで俺に視線が集中した。ここで俺に執着する理由にくるのか。
「日に日に太郎さんは私に気付いて下さる事が増え、私を見て下さり、優しく話し掛けて下さいました。それがどれ程待ち望んでいた事でしょうか!私にはもう太郎さんしか居ないのだと…感じました……なのに!!」
愛おしそうに俺の事を見つめていた影山はそこで龍野の方を憎々しげに睨み付ける。
「太郎さんの隣には邪魔で目障りで鬱陶しい龍野さんが居たんです!!最初は男性だと思っていましたが、…日に日に太郎さんを見る目が変わっていく所を見、そして龍野さんの秘密を知った時、私は憤りました…」
「な、何でそこで龍野を憎むんだよ…」
龍野が女子だと言っても、俺と龍野は変わらず友達のままなんだ。影山が龍野を憎む要素なんてどこにもない。
「そうでしたね…太郎さんは鈍感な方ですから、でしたらお教えします。龍野さんは太郎さんの事を愛していました」
…。
……。
………。
…………。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?
「え、え?は?はあ!?」
龍野が…俺を!?いや待て待て…そんな事ねえと周りの奴等に同意を求め見る。
「…………いや、まあ…何となく龍野が砂糖に好意があるってのは…感じてたよ」
と沢風が気まずそうに。
「ハクはまだらいくとらぶの違いはわかりませんが、りゅうとがたろうを頬を紅潮させて見ていたのは知っています」
と何でもないようにハクが。
「あんなラブラブ光線出されて気付かねえなんて鈍感系野郎過ぎて腹立つ」
と鷹倉が苦々しげに。
皆それぞれは影山に同意の意見だった。
「ぜ、全然知らなかったよ…」
「ね~まさかの~まさかだよね~」
中には熱宮とか気付いていない奴も居たが概ね全員察しは付いていた様で言葉が出ない。
「龍野さんは男性として生きてきて、殺し屋として扱われたので初めて太郎さんに優しく話し掛けられ接していく内に惹かれていったのでしょうね…」
そ、そんな…俺は別に普通に接してたんだが…。
「きっと太郎さんははっきり言葉にして言わないと気付かないんでしょうね…ですので私はきちんと言わせて頂きます。私は太郎さんが…」
「はいストーップ!!!」
影山は俺を潤んだ瞳で見つめて、何かを言おうとしていた途中、今まで不気味に黙っていたモノクマからの突然の制止に遮られた。
影山は言葉を遮られた事に対して、不機嫌そうに憎しみを全力で込めながらモノクマを見る
「あの…今私が大事な話をしようとしていた所なんですけど…」
「いや、いやいやいやいやこれでもボクは待ってやった方じゃない!?面白そうだから黙っていようと思ったけど…何を甘い空気を出して告白しようとしてるんだよ!」
「ちょっと私が太郎さんに愛の告白をすると何故先に仰るんですか!」
「いやもう全員予想が出来てるし何なら砂糖クンにも十分伝わっただろうし、そもそもここはコロシアイの場で希望と絶望が争う場で呑気にラブコメハーレムする物語じゃないんだよ!!」
「そろそろ読者もふざけるなの抗議が大合唱で鳴り響いてますんで!!その話は後で勝手にやって下さい!!」
…いやまあ……流石に今の流れと空気と影山の言葉で分かるけど……俺にとっては衝撃の事実の連続で影山への憎しみとか驚きとかもう色々と感情が混ざって混乱状態だ。
「もうとっとと始めるよー教頭!」
「はい了解です校長!和良井クンもあんなのを見せられた後で申し訳ないですがいきますよ!!」
「はぁぁぁ!!!?なんでやねんっ!!!!!」
急に自身のオシオキへ流れが移り始めた和良井は大きく慌てる。
「ちょ、待てやこんな、こんなん見せられてこんな俺には一ミリ足りとも関係あらへん事に巻き込まれた挙げ句、雑な流れでオシオキてなんやねん!!?」
「あーあーあーうるさいっての!こっちだって重く苦しく絶望に支配された空気を期待していたのにとんだ肩透かしだよ!」
「はーいそれでは今回は超高校級の芸人、和良井 笑平クンにごっつ!ドギツい!!オシオキを!!!用意してますさかい!!!!よろしゅう頼んますっ!!!!!」
急に騒ぎ立てて雑にモノソノがボタンを押し、アームが和良井の首を掴み処刑場へと引っ張っていく。
「ちょ、ま…てや…こん、こんな……こんなアホな事があるかぁぁぁぁぁぁ嫌やこんなんで死にたぁないわぁぁぁぁぁぁ!!!?」
最後まで和良井は叫びながら連れていかれる。そしてモニター画面が映り映像が流れ始める。
ーーーーーーーーーーーーーーー
【GAME OVER】
ワライくんがクロに決まりました。
オシオキを開始します。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「はあ…早く終わってほしいですね」
心底退屈そうに影山は呟く。
「私は別に和良井さんのオシオキに興味はありませんから見ませんよ?」
「ん?……別に良いんじゃない?影山サンはこんなので絶望しないだろうし」
「では太郎さんを見ています」
影山がこちらを見つめてくる視線を感じながら、極力気にしない様に画面を見る。
ーーーーーーーーーーーーーーー
~抱腹絶倒、これが浪花の熱血芸人魂や!~
【超高校級の芸人】和良井 笑平『処刑執行』
ーーーーーーーーーーーーーーー
和良井 笑平は気が付くとガタゴトと音を鳴らしながら走行するトロッコに乗っていた。
何が起こるのかと不安に思っていた和良井だが、隣に誰か居る気配を感じてそちらの方に顔を向ける。
そこにはボディービルダーの様に筋肉ムキムキマッチョのモノクマが一緒に乗っていた。突然のマッチョなモノクマに驚き絶叫を轟かせる。
すると笑い声が何処からか聞こえる。笑い声が聞こえる方を見ればトロッコに付けられているモニターにはこちらを見る沢山のモノソノが居た。
隣に居るマッチョなモノクマが気になるが特に何をしてくるでもなく、突っ立っているだけだ。
そして画面に文字が流れ始め表示される。
『制限時間以内に全員わらわせられる事が出来たならオシオキ免除、絶望ヶ峰学園から卒業も出来る』
表示された言葉を読み和良井は顔を綻ばせる。自分の得意分野でなら絶対の自信を持っている和良井には朝飯前、事実こんな企画の番組に何度も出演し、毎回全ステージクリアをしている。
そして先程の和良井のビビった絶叫により半分近くのモノソノが既に笑っている。これなら無茶な制限時間を要求されない限りクリア出来る。
モニターを見ると文字は続く。
『もし制限時間以内にクリア出来なければ、罰ゲームの灼熱風呂へドボン!熱々リアクション芸を披露してもらう』
そして画面が切り替わり見えるのは今自分が乗っているトロッコの終着場、煮えたぎり今までの自分の人生の中で見た中で一番の赤、紅、マグマ。
熱湯風呂なんて代物ではなく、ただ純粋な自分を殺す恐怖の場所。
まだマグマまで離れているのに熱が伝わる気がして汗が滝の様に落ちる。
ついに制限時間が動き出す。
気合いを入れ、和良井は命懸けのお笑いステージを行う。自信がある鉄板ネタ、必殺のギャグ、漫談を披露する。
爆笑間違いなし、今までの人生でスベった事など皆無の和良井には簡単すぎる…と最初は思っていた。
想像していた爆笑は起こらず、モノソノ達はピクリとも笑わない。
次第に焦り始め、急ぐ。
ネタ、ネタ、ネタ…スベる、トロッコは進む。
ギャグ、ギャグ、ギャグ…スベる、トロッコは進む。
漫談、漫談、漫談…スベる、トロッコは進む。
音ネタ、トーク、リアクション芸、サイレントネタ等々…etc.
和良井は思い付く限りのネタをしていくもいずれも全く笑わず、スベる。
トロッコはグングン進み、制限時間は過ぎていく。
焦る和良井の肩を誰かが叩く。振り返るとそこには忘れていた存在、マッチョなモノクマ。手には何か本を持っており和良井に手渡す。
それは漫才の台本。和良井は瞬時に意図を汲み取り台本に目を通していく。驚くべき早さで読み終わると一度で漫才の内容を覚えネタを始める。
制限時間は残り四分。
和良井は得意のツッコミに周りマッチョモノクマはボケ。
マッチョモノクマがボケるボケるボケるボケるボケる。
和良井がツッコむツッコむツッコむツッコむツッコむ。
しかし笑わないモノソノに苛ついたマッチョモノクマが和良井の顔をどつく。
突然殴られた痛みで意識が霞む、鼻からは血が流れ出る。するとモニターから笑い声が聞こえてくる。
和良井はすぐさま見てみるとモノソノ達が笑い転げている。
これはイケる!和良井はマッチョモノクマにもっとこいと訴える。それに応えマッチョモノクマと和良井の一方的などつき漫才がスタートする。
マッチョモノクマが和良井をどつく。
和良井がそれにツッコむ。
モノソノ達は爆笑。
その繰り返しだ。
制限時間は残り二分。
どつく、ツッコむ、爆笑。どつく、ツッコむ、爆笑。
どつく、ツッコむ、爆笑。どつく、ツッコむ、爆笑。
どつく、ツッコむ、爆笑。どつく、ツッコむ、爆笑。
どつく、ツッコむ、爆笑。どつく、ツッコむ、爆笑。
どつく、ツッコむ、爆笑。どつく、ツッコむ、爆笑。
………………………。
………………………。
………………………。
…どつく、ツッコむ、爆笑。どつく、ツッコむ、爆笑。
高速で繰り返されるどつき漫才にモノソノ達はまさに抱腹絶倒。それでも全員わらってはいない。
制限時間は残り三十秒。
和良井は既に顔中腫れ上がりパンパン、顔だけでなく身体中どつかれるせいで体の骨も所々ヒビや折れたりもしているが助かるなら和良井は耐える。
制限時間は残り二十秒。
既にマグマの熱が体に襲い掛かってきており、皮膚が焼けていく。
制限時間は残り十秒。
どつかれる痛みも麻痺してなくなってくる。もうマグマまではすぐそこだ。
それでもまだクリアではない。
そしてついにトロッコは前方からゆっくりとマグマに浸かっていく。和良井は体を懸命に動かし後方に逃げる。マッチョモノクマも慌てて逃げる。
モノソノ達は全員笑っている様に見えるのにクリアと出ない。和良井は叫ぶ、全員笑っとるやないか。どうなっとる。助かる言うんも嘘やったんか…と。
トロッコは傾き徐々にマグマに浸る。
必死に落ちないように耐えている和良井の横に居るマッチョモノクマが手を滑らせて…マグマにドボン!落ちてしまった。
マッチョモノクマは浸かる下半身が溶けていくのを焦り何と和良井の足を掴み引っ張ってくる。これには和良井もモノソノを笑わせる事など忘れてマッチョモノクマの手を片方の足で蹴り落とそうとする。
しかしマッチョモノクマの力は強かった。健闘空しく和良井も足先がマグマに落下、そして響くは絶叫。
何とかトロッコの後方部分を掴み全身が落ちるのを耐える和良井。マッチョモノクマはついに全身マグマに浸ってしまいました。
和良井は自分の足先が溶けていくのを考えられないほどの激痛と共に感じていた。
徐々に徐々にトロッコはマグマに浸かっていく、それに従い和良井の体も足先から浸かる。
助けてくれと叫んだその時、徐々に落ちるトロッコが止まる。何故止まったのかと上を見た和良井の目には先程マグマに落っこちたマッチョモノクマが無事な姿で落ちるトロッコを片腕で掴んで支えていた。
マッチョモノクマはトロッコを掴んでいない方の手で何かを和良井に向ける。
そこには【ドッキリ大成功!】の文字。
和良井はホッと安心したような顔をし、引き上げてくれと叫ぶ…がマッチョモノクマは先程蹴られた事に対して怒っている様子。
和良井は顔を青ざめさせてマッチョモノクマに叫ぶ。
離すなや、絶対に掴んでいる手を離すんやないぞ、と。
顔を青ざめさせ鼻血鼻水涙涎ありとあらゆる液体を溢しながら泣き叫び助けを乞う和良井を姿を見たモノソノ達は馬鹿にした様に見下した様に
嗤う
嗤う
嗤う
その時、空から鳴り響くモノクマからのクリアの声。和良井は制限時間以内にクリア出来た。残りは一秒。
和良井はマッチョモノクマに言う。
早く引き上げろ、途中で離したりしたら許さへんぞ、離すなや、絶対に離したりなんかするんやないぞ。
マッチョモノクマは芸人には嬉しい魔法の言葉を聞き
ニコッと笑って
掴んでいた手を
離す
支えを失うトロッコ
落ちる
和良井の体は
マグマに浸かる
叫ぶ
叫ぶ
叫ぶ
叫ぶ
叫ぶ
絶叫
絶叫
絶叫
絶叫
絶叫
絶叫
慟哭
沈む体
そして静寂
マッチョモノクマもモノソノも無表情で去っていく
モノソノ達は口々に言う
あの人つまんなかったねー(笑)、鼻水とか汚いし(笑)、やっぱ純粋にネタで勝負してくれよ(笑)、リアクションもワンパターン(笑)、あのマッチョな人は良かったよね(笑)、あの人はピンでもやっていけるよ(笑)、もう一人はは駄目だよね(笑)、この厳しい世界にあれじゃ生き残れないでしょ(笑)、まあもう死んでるから(笑)
(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)(笑)
「………………えー超高校級の芸人って言うから期待したのにこんなモンなの?」
「これは非常にガッカリですね」
「あれでプロ?お笑いだねー素人以下じゃん」
「どうせ優勝したのもヤラセでしょうね」
モノクマモノソノは和良井を馬鹿にして嗤う。俺は腹が立ち気付けば怒鳴っていた。
「なにヘラヘラ嗤ってやがる!!」
「うっわー!?もービックリするじゃないの砂糖クン!」
「黙れ!お前らが和良井を嗤うんじゃねえ!」
「可笑しい事を言いますね…彼はお笑い芸人なのでしょう?なら嗤ってあげなければ…」
「そうそう!ボクらは芸人である彼が嬉しい事をしてるんだよ?」
「お前らの嗤うは違うんだよ!」
「そうだよ、これ以上和良井を馬鹿にしないでくれないかな?」
「おめェらがァ嗤う資格はねェんだよォ!!」
沢風、桃瀬も反論してくれる。それを面白く無さそうに見つめてつまんなさそうに呟く。
「あーあ…冷めちゃったー…もうボク帰るよ」
「お前みてえな奴早く帰りやがれ!」
「瀬戸内クン酷いよ!!」
「これが普通、常識、帰れ」
「うううぅぅぅぅ…もう良いよ!オマエラはそこの影薄愉快女と楽しく殺し合ってれば良いんだ!」
「ああ、校長!?あなた方のせいですよ全く!お帰りはもうご勝手にエレベーターに乗って下さいね!それでは!」
モノクマは嘘泣きながら、モノソノはそんな事を言ってさっさと消えていった。残された俺達は重苦しく気分が悪い雰囲気の中、動けずに居る。
未だ俺を見てくる問題の…影山をどうするかという問題に直面している。
「それでは太郎さん。先程の続きを」
「わ~お~マイペ~ス~」
「オメーもだろ」
「鷹倉あんたもね」
「ますたーも中々ですが」
「え…ハク?」
「あーお前らうるっせえぞ!茶々を入れんなっての!」
珍しく瀬戸内が騒ぐ四人を嗜める。
「おい…俺は別にお前を許しちゃいねえぞ」
「はい、それは分かっていますよ」
「なら言っても無駄だ。大体言おうとしてる事は分かってるし…聞く来もねえし」
「……そうですか。では仕方ないですが今回は諦めます。伝えるべき事もありますし」
「伝えるべき事だァ?そんなモンはァもうねェだろうがァ」
確かにもう今日は驚き疲れたしぶっちゃけて言えばもう新たなめんどくさい情報は聞きたくねえ。只でさえ今日は色々起こって和良井のオシオキを見て全身が疲れてんだし。
「いえ、それがこの情報は…裏切り者さんに関しての事なんです」
裏切り者…ってそう言えばモノクマらが言っていたな。もう色んな事がありすぎたせいでそんな事も忘れていたな。
「はぁ…その裏切り者がどうしたってんだよ…」
「どうしたと言いますか、鷹倉さんだったんですよね」
「ほー…鷹倉が裏切り者だったって……は?」
「…………え?」
「ヴィヴィやんが………」
「は?…え?……はあぁぁぁぁぁぁ!!?」
さらっと言い放った影山の一言により疲れた筈の体を無視して叫ぶ。言われた鷹倉も驚き目を見開いている。
そんな鷹倉にハクが話し掛ける。
「……お兄様?」
「………おい、愉快痛快影山」
「何ですかその呼び方…不愉快ですから止めて下さい」
「お前はその情報どうやって知ったってんだよ?」
鷹倉は今まで見た事がない険しい顔で影山に問い掛ける。その気迫に俺は何も言えなくなる。
当の影山はクスッと笑って告げる。
「龍野さんと同じですよ。ゲームで知りましたけど……驚きました?」
「ほーん…ちなみに難易度は?証拠は?嘘付くんじゃ」
「【鬼】です。それとこれが証拠ですよ。鬼じゃないと知り得ない情報を知ってる訳はない。どうせ難易度が絶望とかだろう。なら嘘だと言えるしそもそも鬼をクリア出来る筈がない…とお考えでしょうが、私ってこう見えて何でも出来るんですよ?料理もスポーツも勉強も…ゲームも得意なんです」
「ねえよって言おうとしたんですけどー」
影山が見せてきたのは確かに難易度【鬼】をクリアして獲得した情報一覧…一つは龍野の秘密でもう一つが鷹倉だった。影山は鷹倉の所をタッチして鷹倉の秘密を俺達に見せる。
そこには確かに鷹倉が俺達の裏切り者でこのコロシアイ生活を補助していると書いてあった。
「嘘だ……ねえ鷹倉?」
鈴木崎がいつもの無表情から今まで見た中で一番の驚いた表情で鷹倉に話し掛ける。きっといつも通り気だるげに否定してくれると信じていたが…。
「マージかー……ここでバレるとは思わんかったわー。まさか鬼をクリア出来る奴が百澤以外に居るとは…いや予想外予想外」
認めてほしくない事に限って素直に認めやがる。何故現実は非常なのか。一体俺達が何をしたのか。一刻も早くこの場から出ていって今日はもう寝ていたいのに、まだここから出られそうになかった…。
第四章
【非常に非情が非常識】に続く。
ー登場人物ー
【予備学科生徒】
【超高校級のリア充】
【超高校級のメカニック】
【超高校級の放送部】
【超高校級の殺戮者】
【超高校級の氷彫刻家】
【超高校級の僧】
【超高校級の愉快犯】
【超高校級のネット配信者】
【超高校級の折り紙講師】
【超高校級の保険委員】
【超高校級のロボット】
生存者 13人 ➡ 12人
この調子で四章も頑張ります!!