第四章 (非)日常編1
第四章
【非常に非情が非常識】
ボスンッ!と俺は自室のベッドに倒れ込み目を閉じる。やっと三度目になる学級裁判が終わり、自室に戻ってきた。
「…………」
色々な事がありすぎて頭痛がしてきやがる。体も疲れきってるけど、変に意識は冴えていて眠れそうにはなかった。
そして思い出される出来事は大事な仲間二人の死に、説得しきれず疑心暗鬼に陥ってしまった一人のファンであった男のオシオキ、一人の影から生まれた隠していた狂気に触れて、一人の真実が明らかになった。
そして俺は先程まで居た学級裁判上の出来事を思い出す……。
ーーー
裁判がやっと終わり、疲れきった体を休めてやりたいのに、影山が告げた新たな事実にうんざりする。
影山が見せてきたモノフォンの画面を見れば鷹倉が裏切り者だと言う事は確かな物となる。
「鷹倉…何で裏切った?どうして?」
鷹倉とは比較的仲の良かったであろう鈴木崎が、いつもの無表情を消し、不安げな顔で鷹倉に問い掛ける。
「どうしてって言われてもなー……逆に俺がここで話すとでも思うか?」
「でも君は自分が裏切り者だって認めた…そうだよね?」
沢風が再度鷹倉に裏切り者の事を確認する様に聞く。
「いや確かに認めましたよ?俺は黒幕の手伝いをして、お前らを色々と裏切った裏切り者だってよ」
「なら言え」
「お前は相変わらず俺にだけ厳しすぎじゃね?まあ、裏切り者だとバレたしちょこっとだけ教えてやるけど本当に言えねえ事は言わねえぞー」
「例えば~どんな~事を~教えてくれるのさ~?」
「俺がお前らを裏切って何をしていたかだ。だけど黒幕が誰かとかそう言う事は話さねえって事だ」
黒幕なら俺も知っているけどな。ここで嶋野が黒幕なんだと言えれば苦労しねえけど、残念ながら俺は何も言えない。嶋野は鷹倉には、俺と木枯に正体がバレたって事は言ってたりすんのか?そもそもいつ鷹倉は俺達を裏切ってたんだ?最初から……そもそも最初からだったのか?
「大丈夫ですか太郎さん、お顔色が悪いですよ?」
鷹倉の事で頭が一杯になっていると、俺の顔を横から覗き込む様に見てくる影山に驚きより苛立ちが勝る。
「うるせえ……近寄んじゃねえ」
「それは嫌ですやっと太郎さんに本当の私を見て頂けるんですから私はもう自重しませんいつでもお側に居ますから」
「……はぁ、なら好きにしてくれ」
「はい、ありがとうございます」
駄目だ…こいつには何を言っても無駄だろうな。もう影山は好きに側に居させた方が安全だろうし、影山は放っておいて今は鷹倉に話を聞く事が大事だ。
「それでお前は俺らを裏切って何をしたってんだよ…」
「んあー…この学園中にある監視カメラ、あれを設置してやったり動機作り手伝ったり…裏工作的な感じをやってた……らしい」
「あのカメラ、あんたが付けたのかい」
「動機作りを…手伝った?」
「待って頂戴、やってたらしいって何よ?」
疑問に思った事を熱宮や鈴木崎に藤達が質問をする。鷹倉はめんどくさそうに頭をポリポリ掻きながら答える。
「黒幕は多少機械にゃ精通してたけど限度があった。そこで機械に詳しいであろう俺に白羽の矢が当たったって訳だ。だから動機のDVDやらゲームやら…監視カメラ用意したりは俺が主にやったって事…らしいんだよ」
「らしいってだからどういう事だよ?お前がやったって事だろ?」
「……いやそれがよー……あーこれは言って良いのかねー?」
「そんな時は校長に聞きたまえよ」
「……んじゃあお言葉に甘えましてー校長様よ」
「んん?何々どうしたのさ」
「いや話聞いてたでしょ?俺は話して良いんか悪いんか?」
「んー……まあその事なら良いでしょ!別にボクには何ともない事だし!」
「あーわっかりやっしたー」
鷹倉はモノクマの野郎に何かを聞くと俺達の方を振り返り、また話し出す。
「あんなー俺だってお前らと同じ何だぞ」
「同じって何がだよ」
「立場的には俺もお前らと同じいきなり目覚めたらここに居てコロシアイを強要されてて、二年半の記憶ってヤツもねえんだぞ」
「なら…鷹倉はここに来てから裏切り者になったの?」
「ちょっと待ってくれないかい?なら鷹倉は短期間で黒幕と一緒に動議作ったり監視カメラを設置したりしたってのかい?なら矛盾が出ちまうじゃないか」
「それは私も思う。私なら数日も掛からないけど…鷹倉には無理」
熱宮の言う事も確かにな。ここで目覚めて初日に裏切り者になったとしても監視カメラは既に設置されていたし、動機を作るのだってそんなすぐに出来ることか?メカニックでその道に詳しい鈴木崎も無理だと断定した。
「いやだから俺の記憶にねえんだよ」
「ない、とは裏切り者の記憶がですか?」
「その通りだ、流石はハクだな。初日にな、部屋で寛いでたらよー」
そうして鷹倉はポツポツと裏切り者になった経緯を話し出した。
ーーコロシアイ生活初日、鷹倉の部屋にてーー
「やっほっほー!どうも鷹倉クーン!」
「…………あー?」
コロシアイ等とふざけた事を強要されて、訳が分からない状況の中、鷹倉は自身を落ち着かせる為、ベッドにその身を倒れさせフカフカの毛布に身を委ねていた。
そんな至福の時間に、この学園の校長を名乗る熊のロボットが邪魔しに来てのっけから鷹倉は不機嫌を顔に出す。
「もー何でそんな顔をしてるのさー」
「人の部屋勝手に来て何の用だよ」
「えー!?ボクの言葉完全無視!?」
「うるっせーだから何の用だよ、ここから出してくれんのかよ」
「ブッブー!出すわけないじゃーん」
「よしなら帰ってくれーい…俺は寝たいんだよ疲れてんだよ俺の言った事把握あんだすたーん?」
兎に角帰ってほしい鷹倉はテキトーに対応していた。そんな鷹倉をにやにやとムカつく笑みを浮かべてくる。
「うぷぷぷ、これを見てもそんな事言えるかな?」
モノクマは手に持つ謎のスイッチを押した。すると鷹倉の部屋に備え付けられているモニターが付き、映像が流れ出す。
そこに映されたのは……。
「……は?ちょっと待てよんだこれ?」
混乱する鷹倉をモノクマは笑う。
「うぷぷぷぷぷぷ、どういう事か話を聞きたい?」
モノクマを睨み付け、しかし混乱し汗を浮かべながら鷹倉はゆっくりと問う。
「何でだ?……何で俺はあんな事をしたってんだ?」
ーーそして時は現在に戻るーー
「そこで映された映像が俺には全く見に覚えがねえ、黒幕とめんどくさそうに監視カメラを用意して設置したりや、動機のアプリを作ったりやらしていた映像だ」
「映像って…お前が映ってんなら分かんじゃねえのか?」
「全くねえよ。なーんか見た事ねえ場所で黒幕と作業してた……そっからモノクマに俺は裏切り者何だと言われて……まあ現在こう言う状況になってんだ…俺だって知らねえとしか言えねえよ」
辛そうに言う鷹倉に、俺はとても嘘を言っている様には見えなかった。
「えっと…そんな事言われても信じる事は出来ないですね」
そんな俺の考えを知らねえ影山が、バッサリと切る。
「そんな作り話を信じろとは太郎さんと私を舐めているんですか?映像は貴方しか見ていない、見に覚えがないではい分かりましたと言うとお思いですか?でしたら舐めてますよね?太郎さんを舐めないで下さいませんか?」
「いやいやーマジなんだってー映像だって見せられて困ってんだぞ?てかお前キャラ変激しすぎだってーの」
「そこの愉快犯さんに賛同するのは癪なんだけど、私も疑うわよ」
「えー……そう言われもなーマジで本当何だって」
影山に続き、藤も同様に信じてはいない様だ。でも鷹倉を見る限り俺にはそうは見えねえけど…。
「…………私は信じる」
「…す、鈴木崎」
鈴木崎は一言、信じると言って鷹倉を見る。
「あー……さんきゅ…」
「うん」
その短い言葉を発して鈴木崎は黙った。それで二人には何か通じ合ったっぽい。
「…ええっと…つまり鷹倉は俺達と同じくいきなりここに連れて来られたと思ったら見に覚えはないけど、自分の知らない間に黒幕と一緒に色々していて結果、裏切り者だったと知ったって事?」
「そんな所だ、だから俺にもいつ裏切ったとかは分かんねえんだよー」
なら、少なくとも今の鷹倉は別に裏切り者として動いてはいないって事だよな?コロシアイの為の物を黒幕と、つまり嶋野と作っていたって事だな。
「んで、確かに俺は黒幕が誰かは知ってる、けどここで俺が黒幕は誰々だとか言ってみ?俺はどうなると思うよ」
「少なくともお兄様の命はありませんね」
「そゆこと。俺は用済み、ポイだ」
「えーじゃあじゃあ黒幕については何にも分からないって事だねー」
黒幕である嶋野がそうほざいているのが気持ち悪く感じる。鷹倉も嫌そうな顔を浮かべるが特に何も言わず俺達に背を向けて歩き出した。
「あ、おいどこに行くんだよ?」
焦りながら俺は声を掛ける。
「上に帰るんだよ。特にこれ以上言える事もねえしー」
「ちょっと待ちなさいよ。まだ聞きたい事はあるのだけど?」
鷹倉がエレベーターに向かうのも止めて藤は聞くが、それでも鷹倉は止まらずゆっくりとエレベーターに歩きながら喋り出す。
「藤姫が聞きたい事は俺は言えねえし言わねえ事だろうなーまあーそれは自分の手で掴んでくれーいって事でここいらで退散だーお疲れ様でしたー」
そうしてエレベーターに乗り込もうとする鷹倉に、俺は思わず声を掛ける。
「鷹倉!」
ここで言わないといけねえ気がして、伝えたい事を簡潔に喋る。
「俺はお前を信じてるからな!」
短い言葉だが、鷹倉にはしっかりと聞こえたのか手を雑に振ってエレベーターに乗り込み先に帰っていった。
「んー…俺は悪いけど今は何とも言えねえな」
「まあ、これから鷹倉と接していって判断するしかないね」
「お兄様に記憶がないのでしたら、何も変わらないのでは?」
「そうはいかないねえ。あいつに裏切った記憶がなくとも、裏切ったって事は認めたのはあいつ自身だしねえ」
それぞれが鷹倉の事を話す。俺は、鷹倉の事を嶋野に聞き出そうかと思う。
思えば黒幕と判ったんだ。なら嶋野と話して重要な情報を聞き出せるかもしれねえし説得出来るかもだ。鷹倉とも変わらずに話し掛けていくと俺は決めた。
「しっかし鈴木崎に砂糖は真っ直ぐ信じるって良く言えるよなー」
「私は難しい事、良く分かんないし…あいつの様子見たら、信じる一択」
「俺も、んなすぐに疑うより仲間を信じていきてえんだ」
「太郎さんは優しい人ですね」
「だからお前はさっきから手を握ろうとすんなよな」
「照れてるんですか?」
さっきから影山が俺の手を握ろうとしてくるのを止める。でもまあ…こいつも信じてみ…いや今は無理だ…こいつは信じれねえよ。そこまで俺はお人好しじゃねえわ。
「とりあえず皆、疲れてるだろうし帰ろうか」
沢風からそう言われ、俺達はエレベーターに乗り込み、またいつも通り地上でのコロシアイ生活が再開される。
ーーー
「………はぁ」
先程あった出来事を思い出し、一つ溜め息。エレベーターに乗り、戻ってきた俺達だが、重苦しい空気が漂い、誰も何も話さず自然とそれぞれ部屋に戻った。
部屋に戻るまでも影山が付いてきて、俺の部屋まで入ろうとしたから何とか阻止して今、ベッドに倒れ込んでる所だ。
「…………あ、そうだった」
気付いてしまった。そういえばまだ俺ってまだ朝飯食ってねえじゃんか。
龍野達を発見したのだって朝の事だ。そこから捜査して学級裁判もぶっ通しでやってたが夢中だったから全然気付いてなかったわ。
時間を見ると考え込んでいたから結構立っていて、もうお昼を過ぎていた。朝食じゃなくてもう遅めの昼食になるな。
まだ朝飯も食べてなかった事に気付いた途端に腹が減ってきたので、俺は疲れた体に鞭をうって立ち上り部屋を出る。
「ご飯を食べに行くんですよね太郎さん」
「…………」
何で居る?扉を開けて廊下に出るとそこには影山が満面の笑みを浮かべて立っていた。もしかしてずっと居たのか?
「きっと朝食を食べていない事に気付いた太郎さんが何か食べに行こうと食堂に向かうと思ったので先にご飯を作って待っていたんですよ」
「…………」
「それでは一緒に食堂まで行きましょう」
自然な流れで俺の手を掴み、食堂まで引っ張っていく。なんかもうリアクションすんのも疲れたんだが。
どうせ行きたい場所は食堂なんだしなされるがまま影山に引っ張られていく。
その道中、嫌々だけど影山に話し掛ける。
「お前…次は誰を唆そうとか思ってんじゃねえだろうな?」
「うふふふ。太郎さんから話し掛けて下さるなんて幸せですね。その質問の答えは分からない、と答えますね」
「分からない?」
「はい。私の行動理由は今、太郎さんが関係しているかどうかです。本当はここに居る方々全員を殺し合わせて私と太郎さんのみの理想郷をと思ったんですけど私の正体がバレてしまいましたし今は太郎さんに尽くす事しか考えてません。ですので、太郎さんに害をなす輩が居ましたら全力で滅します」
何でも無いように平然と言う影山に、やはりこいつは危険だと思った。だが、俺がしっかりと相手をしていたらこいつは誰も殺さない安全な奴なんじゃねえかと思う。
嫌だけど…龍野と木枯に和良井を嵌めた奴だけど俺が手綱を握らねえといけねえんだ。
めちゃくちゃ嫌だけどな!!何で人生初のモテ期がこのタイミングでこんな感じになっちまってんだよ!瀬戸内とか百澤なら喜ぶのか?思えば龍野の俺と話してる時に出る赤面はあれ、熱じゃなかったのか!!
今更になって疑問に思っていた謎が解けて龍野の気持ちを知らなかったとはいえ、無遠慮に接していた事を反省し気恥ずかしくなる。
まさか良く見る鈍感野郎な漫画とかの主人公と同じ事をしていたと気付いて微妙な気持ちになる。
「うふふふふ」
「何を笑ってんだよ」
俺の隣を歩いている影山がいきなり笑い始めた。なんだよもしかして俺の顔になんか付いてんのか?
「いえ、こうして私の姿を見て、私の本性を知っても太郎さんはこうして話して下さるという事に幸せを感じて思わず笑みが溢れてしまいました」
「………」
「私の気持ちも私の本性も知って下さっている…何も隠す必要はないというのはこんなにも幸せなんですね」
……畜生…本来ならこんなに想われて嬉しいんだろうけど素直に喜べる状況じゃねえ。憎く思ってたのにこんな真正面から好意を投げてくんのは狡くねえか?
影山からのどストレートな好意に複雑な気持ちを抱えながら食堂に着き、中に入る。
「おやたろうにこはく、こんにちはですね」
「げっ…砂糖は良いけど何でお前まで居んだよ影山…」
食堂にはハクと瀬戸内の二人が隣り合って座って居た。俺は二人に軽く手を上げて挨拶をする。瀬戸内は影山の顔を見た途端、嫌な顔を全面に出して文句を言う。
と言うか影山の存在にすぐ気付いたな。これは影山の本性を知ったからか?それとも影山が何か意図的にとか…まあ今考える事じゃねえか。
「太郎さんが居る所に私在りですから側に居るのは当然の理です」
「いや理までいくとかどんだけだよ」
「流石はたろうにらぶのこはくですね。お兄様から教えられたでーたによればこはくは病んでいるんですよね?」
「お前そのデータの事は絶対に鈴木崎に言うなよ?」
あいつならハクに余計な知識を与えたら怒るだろうからな。それも鷹倉がって事なら尚更怒るな。
「そんで砂糖は飯食いに来たんか?」
「おうその通りだ。今日は何にも口にしてねえって気付いたらもうペコペコでよ」
「俺もおんなじだぜ。だから一足先に自分の分だけ軽く作って食っちまったわ」
そういや瀬戸内は料理出来たんだよな。瀬戸内なのに、瀬戸内の癖に………あ、なんか瀬戸内が睨んできやがった…知らんぷりしとこう。
「ふうん…ならハクは何しに来たんだ?鈴木崎とは一緒じゃねえって珍しいしよ」
あのハク溺愛の鈴木崎がハクをそう簡単に一人にする筈はないしな。
「ハクはますたーの為に軽食でも作ろうかと」
「鈴木崎に?」
「俺はもう話を聞いてるけど、鈴木崎は鷹倉を心配してんだとよ」
「考え込んでいてハクからの会話にも空返事で、せめて食事をと思ったんです」
「それで料理を作り終えたハクと飯を食い終わった俺が少し話してたって訳だ」
「なるほどな、じゃあハクは今から持って行くんだな」
「はいそうです」
「そういや、お前料理出来るんだな」
ハクは高性能ロボットだってのは知っているが、料理まで出来るものなんだな。
「お兄様が付けてくれた性能の中に調理もあるので完璧に調理する事が出来ます」
「鷹倉はんな性能も付けてんのか」
「お兄様が言うには妹には愛情を込めた料理を作ってほしい、との事で付けた様です」
何ともあいつらしいな…。そんな楽観的で怠け者の鷹倉が裏切り者だとは簡単に信じられねえな。
「それじゃあ鈴木崎に真心込めた料理、持って行ってやんねえとな」
「鈴木崎ならハクに作ってもらった料理食べたら元気になりそうだな!」
それで少しでも元気になってくれたら良いんだけどな。…気になるし後で様子を少し見に行ってみるか。
「……ロボットに真心を込められますかね?」
「何だとぉ?」
今までずっと黙っていた影山が口を開いたと思えば、とんでもねえ事を口走る。
「だって所詮はロボットじゃないですか。心何て無いのに料理に真心も何もないでしょう?」
「あんだとてめー影山コラァ!」
冷めた様子で嘲笑混じりに影山は呟いた。嫌な気持ちになり、俺はキレそうになるが瀬戸内が早くにキレて噛み付く。
「ハクは自分の判断で鈴木崎を想って作ろうとしてんだぞ!?ならそこには心は込められてんだろうがっ!」
「いえただの思考計算とかじゃないですか?どこまでいっても白さんは機械なんです。機械に心があるとでも?最近は自分で計算して行動出来ますが、ただ高性能なだけです。そこに心等の感情全ては持っていないんですよ」
「んな事じゃねえんだよ!」
「なら何なんですか。私は正しい事を言っているだけです。瀬戸内さんは私の事が嫌いでいらっしゃるから否定をしようとしているんでしょうけど、私は間違った事は言っていません」
「ぐぐぐぐぅ…ロボットだからとかそんな事じゃねえんだよ…」
「もう結構です。どうせこの話し合いは平行線を辿るだけですし…そろそろ太郎さんに私が丹精込めて作り愛情を注いだ料理を食べてもらいたいので、冷めても嫌ですし」
「あ、待てよこら、おいっ!!」
「それでは太郎さん、少しだけお待ち下さいね。今から私が真心を込めた料理をお持ちしますので」
影山は瀬戸内の事を無視してスタスタと厨房の方へ歩いていってしまった。
その間も瀬戸内は影山に怒鳴り掛けるも全て無視をされて、凄い不機嫌顔で俺の方を見てきて文句を言う。
「おい何なんだよあいつは!本性表したと思ったら藤みてえになりやがって!いや、藤より悪いぞ!?」
「たいよう、少し落ち着いて下さい」
「ハクの言う通りだぞ?落ち着けって。あいつには何を言っても無駄だろうしよ」
「無駄な訳あるかよ!大体砂糖も何あいつと一緒に行動してんだよ!影山が何をしやがったのか分かってるよな!?」
「わ、分かってるけどよ…分かってるけど今は俺があいつの相手をしていりゃ少なくともまた誰かを貶めようとは思わねえだろ?」
俺がちゃんと構ってやれば影山は何もしねえだろうって俺は思う。
「…………その言い方腹立つな」
「何でだよ!?」
何で更に不機嫌な顔になんだよ!訳が分からねえし!
「影山には腹立ってるけどよ、歴とした女子にあんなに愛されて、女子だった龍野にも好かれてたお前が、惚れられてる女の相手をしてればとか言うのが腹立つんだよ」
「い、いやだって事実だろ!?」
「そりゃ今影山を制御出来そうなのはお前位だけどよー…お前がモテてんのも目の前で大好きだって感情を全面に出した影山に話掛けられてるお前を見るのも腹立たしいんだよぉぉぉ!!!」
つまりは純粋な僻みじゃねえか!!俺だって多少は嬉しい気持ちはあるけど、素直には喜べなくて複雑なんだぞ!?
「それでは私はそろそろますたーの元に食事を届けて参ります」
「おう!影山が言った事なんか気にしなくても良いんだぞ!」
「……いえ、こはくの言う言葉は正しいです」
「は?な、何でだよ!?」
どこまでも淡々と影山の言葉に同意するハクには俺も瀬戸内もビックリだ。
「こはくの言う通りハクには心はありません。心と言うものも、真心を料理に込めるという事も分からないんです……いつか、知れたら良いんですけど……」
「ハク……」
「それではたろうにたいよう、また後程お会い出来れば幸いです」
そう言い残してハクは手に持つトレイに乗った料理を持って、鈴木崎が待っているだろう部屋へと戻っていった。
「……何だよ、ハク自身も影山の言う事が正しいってのかよ…」
「……いつかは、分かってくれたら良いんだけどな」
「はあぁぁぁぁぁぁ…今日はもう影山を見たくねえし部屋にでも戻るわー夕飯も今日は勝手に自分で作って食うから作らなくても良いって桃瀬に伝えといてくれねえか?」
「………仕方ねえな、分かったよ」
「おう、ありがとな…そいじゃあまた明日な」
「…ああ、明日な」
瀬戸内もため息を大きく吐きながら、自室に戻っていった。 残された俺は一つ息を吐いて席に座る。
「太郎さん、お待たせしました。美味しく作れたのでどうぞ遠慮なくお食べ下さい」
そう言いながら戻ってきた影山は、作った料理を俺の目の前に置いていく。見た目からして美味しそうで、良い匂いが香ってきてごくっと唾を飲み込む。
「ふふふ、それでは私もまだ食べてないので、隣失礼して…それでは食べましょう」
料理を全て置いて、自然な流れで俺の隣に座ってきやがった。まあ別に良いけどよ。せっかく作ってくれたんだしその好意には甘えて…食べるか。
「……んじゃあいただきます」
「はい、いただきます」
影山が作った料理を一口食べる。スゲー美味い。あれこんなに美味かったか?と言うか俺の好みに合ってんな。
「ふふ、どうですか?太郎さんの舌に合いますよね?」
「…ああ、何で分かってんだよ」
「愛の成せる技です」
「………あ、あーそうですか」
「ふふふ」
くそ!照れるな俺!いや無理だ!俺にはこんな好意を全面に向けられる何て事経験ないから照れちまう!
俺は気恥ずかしい気持ちを誤魔化す様に料理を口に運んでいく。
「あ、そうですね。太郎さん」
「あ?何だよ?」
「はいアーン、です」
「ぐふぅっ!!?」
まさかのアーンに吐き出しそうになるのを必死に耐えて、何とか吐き出さずに我慢出来た。
「大丈夫ですか太郎さん?お茶を飲んで落ち着いて下さい」
「……ぐっ」
差し出されたお茶をグビグビと飲む。何とか落ち着けたけど、アーンはハードルが高いだろと思っていたら再度俺の方にアーンをしてくる。
「……勘弁してくれよ」
「何でですか?」
「お前自分がした事を良く考えてみろよ」
そう言って考え始める影山。ほんの数時間前にあんな事をしでかしたのに、良くそんな態度でんな行動が出来るなと驚いてるわ。
「……すみません、私は何かしましたか?」
「……ええ、お前マジでかぁ…」
悪気なし、一切曇りの無い顔で言い放ちやがった影山に今日で何度目かの驚きに、段々慣れてくる。
「私はただ太郎さんを思ってしただけですよ」
「いや…だからぁ……その俺を思って…したってのは…まぁ…うん、だけどよやり方が…駄目なんだよ」
くそ…何で俺が変な事を言ってるみたいになってんだよ…え、これ俺が変な事言ってる訳じゃないよな?影山がおかしいんだよな…。
「私は自分のした事があると間違っている、とは思っていません。後悔もしてませんし、むしろして良かったと思っています。今、私は幸せですから」
おおぅ…普通なら嬉しいんだろうなぁ…嬉しいんだろうな!!なのに何でこうなったんだっての!!
「…ああ、そうですかー」
もう疲れたわーこいつと話してるとおかしくなりそうだわ。もうテキトーな返事をしてとっとと食っちまおう。
「太郎さん、アーンはしなくてよろしいんですか?」
「いらねえ」
「あ、太郎さんお口の周りにソースがついてます。拭きますから」
「いらねえ」
「美味しいですか?」
「……美味しい」
「うふふ、ありがとうございます」
俺の雑な対応にも嬉しそうに、本気で嬉しそうに微笑みを絶やさずいる影山になんか俺が悪い事をしてるみたいになってくる。
「……ご馳走さまでした」
「うふふ、お粗末様でした」
そんなこんなで食い終わる。正直味は俺の好みに合ってたし、影山のご飯は凄く美味しかった。
だけどひたすらに俺にアーンをしようとしてきたり、矢継ぎ早に話し掛けてきたりとしてきて困った。しかも俺が雑に返事を返したらめちゃくちゃ嬉しそうに笑うから罪悪感が出てきて疲れた。
こいつの人生を聞かされたから、こうして話し掛けて返事が返ってくる事が無かったから嬉しいんだろうな。
「……ふう、それじゃあ片付けるか」
「片付けでしたら私がしますので太郎さんは休んでいて下さい」
「そうはいくかよ、作ってもらったし片付けは俺がやる」
そう言い俺は食器を持って厨房まで歩いていく。俺の為に作ってくれたんだ。色々としでかした影山だけど純粋に料理を作って食わせてくれたし片付け位は俺がやる。
「すみません、ありがとうございます太郎さん。でしたら私もご一緒にお片付けしますね」
影山も自身が食べた食器を持ってくる。学級裁判の時はスゲー憎かったし腹立ったんだけど今何故かその影山と一緒に洗い物してるって何なんだろうな。
「こうしてると…あの…夫婦みたいですね」
「あーそーだなー」
もうこう言う影山の発言は雑に返しとこう。変に反応をしたら俺が意識してるみたいに思える。
そうして片付けも終わり次に何をするかと考え、俺は鈴木崎の様子を見に行こうと決める。
「何処へ行くんですか?」
「……え、まさか着いてくんじゃねえよな?」
俺の隣にピタッとくっついてくる影山に疑問を口にする。
「当たり前ですが…何でそんな事を聞いてくるんですか?」
まさかの当たり前と返ってきたよ。こいつの頭では俺と一緒なのはデフォルトなのかよ…。
「いやいやいやいや着いてくるなよ」
「それは嫌です」
「いや、着いてこられても困るんだが」
「私は太郎さんと居たいんです」
「そうは言っても俺にも用事とかあるしよ」
「その用事とは何なんですか?邪魔にならない様に影ながら着いていきますから」
まあ確かに影山なら邪魔にならずに着いてこれるだろうけど着いてきてるって思ったらソワソワするんだが。
「…もう勝手にしてくれ」
「はい、太郎さんならそう言って下さると信じていました」
「はぁ……」
これはこれから大変だなと思いながら鈴木崎の部屋に向かう。その間本当に影山は邪魔にならない様に俺の隣から斜め後ろに変わって着いてくる。
でも後ろから視線はバッチリ感じるからずっと見てきてやがるな。凄くソワソワしてくるから着いてくんの止めさせたら良かった。
ソワソワしながらも鈴木崎の部屋の前に着く。
「お前いらない事言うなよ?」
「はい、分かりました」
本当に分かってんのか?と言うか鈴木崎に何か言われそうだなー影山が何で居るとか…。まあ来てしまったものは仕方ないし、鈴木崎の部屋をノックする。
少し待つとドアは開き、ハクが顔を出す。
「先程振りですねたろう」
「おう」
「何か用ですか?」
「いやちょっと鈴木崎の様子を見に来てな」
「そうでしたか。なら今呼んできます」
そうして鈴木崎がハクに呼ばれてやって来た。
「砂糖」
「よう、悪いな疲れてるだろうに来ちまって」
「ん。別に大丈夫」
鈴木崎の様子を見るが、いつも通りの無表情だな。でも心なしか学級裁判終わりの時よりは元気になってる気がする。
「そうか、ハクが作った料理食べたか?」
「うん。美味しかったし嬉しかった」
「そりゃあハクは作った甲斐があったな」
「うん。それで何か用?」
「おう、ハクから鈴木崎が悩んでるって聞いてよ」
「それで来てくれた?」
「そんな感じだ」
まあ今の鈴木崎を見るにハクからの手料理で元気になったんだろうから心配は無用だったな。
と言うか鈴木崎もさっきのハクも俺の後ろに居る影山に一度も触れねえな。これはあえて無視してるのか、気付いてないのか?
影山の言ってた邪魔しない様にするってのはこう言う事なのかよ?何だこいつ自在に存在消せんのかよ!?そりゃあ超高校級のモブでもあるからな…改めて影山の異常性に気付かされる。
「砂糖、どうした」
「ぁ、おう何でもねえよ」
危ねえ危ねえ、ここで俺が変に反応して鈴木崎に気付かれたら影山も何か余計な事言いそうだしな。
「それで、気になって来てみたけど…大丈夫そうだな」
「心配性掛けた?ごめん」
「いや、謝る必要なんかねえよ」
「うん。ありがと」
「まあ用はそんだけなんだ。でもハクの料理のお陰で元気になったんなら良かったぜ」
「ハクに感謝」
「だな。それじゃあ俺は行くわ」
鈴木崎にはハクが居るし、まず鈴木崎は強い奴だから大丈夫だな。
「うん。それじゃ」
「たろう、またお会いしましょう」
「おう!」
鈴木崎の後ろからはハクも声を掛けてくれる。そして二人に挨拶をして、二人と別れる。
「さて、次は…」
「太郎さん、私邪魔してなかったですよね」
「……まあしてなかったけどよ、お前はあれか?自分を気付かせないとか出来んのかよ」
気になったし、ここは聞いてみよう。
「ええ、長年の経験で出来ます」
「それで剣を唆したって訳かよ」
「はい、丁度剣さんが百澤さんと話していた所を目撃し、利用出来そうでしたから」
影山は何でもない事の様に言う。こいつにとってはそれほど重要な事でもないって訳かよ。
「太郎さんが私に気付いてくれていると感じてから、太郎さん以外は要らないと思い、潰し合って頂ければと思ったんです」
そこが間違ってるんだけどな…。こいつを理解するのは当分…下手したら一生理解出来なさそうだわ。
それでも今は俺しかこいつの存在をはっきり認識して話せないんだし、諦めずにいくしかないか…。
「それでお次はどちらに行かれるんですか?」
「…桃瀬の所だ」
瀬戸内から今日の夜飯はいらねえって事を伝えないといけねえからな。
まずは桃瀬の部屋に行き、ノックする。しかしいくらまっても出てこない。どっかに出掛けてるのか?桃瀬が行きそうな所は…保健室とかか?
「よし、桃瀬を探すか」
「はい」
影山が着いてきながら俺は桃瀬を探しに行く。
保健室に行ってみたが桃瀬は居なかった。ならどこだろうとしらみ潰しに探して行く。
案外早くに俺は桃瀬を見付けた。本館の二階、プールに繋がる更衣室前の廊下にしゃがんで手を合わせていた。
話し掛けちゃ駄目だと黙っていると、桃瀬がこちらを振り返る。
「砂糖じャァねえかよォ、驚かせんなよなァ」
「悪い、話し掛けて良いか迷ってよ」
「別に構わねえよォ。それで何かあッたのかァ?」
「ああ、瀬戸内がよ……」
俺は桃瀬に瀬戸内が夜飯を作らなくて良いことを伝えた。
「あァ…そうかァ了解したァ。そういやァ朝飯も結局作れてなかッたなァ。砂糖もォサンキューなァ」
「そんな大した事はしてねえよ。それで何だけどよ、今日の夜飯は俺も手伝うわ」
「それは助かるけどよォ、良いのかァ?」
「おう、その方が桃瀬も楽だろ」
今まで桃瀬は龍野と影山とご飯を作ってくれていた。だけど龍野は死んでしまい、影山は今、俺の分しか作らなそうだから俺が手伝った方が良いだろう。
「ならその好意はァ有り難くゥ受け取るぜェ」
「よっしゃ!美味い飯作ってやろうぜ!」
「お前頼むからァ甘くすんなよォ?」
「大丈夫だって」
「……俺がァしッかり見とかねえとだなァ…」
「それで何時位から作り始めるよ?」
「そうだなァ、いつもは五時半位からァ始めるぜェ」
「なら五時半に食堂に集合だな」
疲れてるだろう皆に疲れが吹っ飛ぶ飯を作ってやる!と意気込む。こう言う所で自分の出来る事をしていかねえとな。
「それで桃瀬は何をしてたんだよ?」
「あァ、ちッとなァアイツらになァ」
そう言って桃瀬はチラリと見る先を見るとそこには白い花が三本、置かれていた。
「これって…」
「こう言う時はァちャァんとした花をォ贈りてェんだけどよォ…ここにャァねえしなァ」
「この花って…モノガチャか?」
「そうだァ丁度当たッたモンでなァ」
「そうか…それで花を供えて手を合わせてたって事か」
三人の冥福を祈ってたって訳だ。なら俺も…としゃがみ手を合わせる。
龍野、木枯、和良井…お前らの分も俺は生きる。祈り終わり、立ち上がる。
「桃瀬は今までもこうしてたのか?」
「まあなァ…アイツらだッてよォ、殺したくてェ殺されたくなくてェ居たんだァ。こんな状況でなきャァよォ、こんな事にはァならなかッたんだがなァ……」
悲しそうに桃瀬はそう話した。チラリと影山を見る。こいつはここに閉じ込められていなければ、こんな事はしなかっただろうか…。
たらればを話した所でもう死んだ奴等は帰ってこない。俺達はその事を踏まえて生きていかなきゃならねえんだ。その代わり、あいつらの事は忘れてしまってはいけない。いつまでも忘れずに胸に刻んでくんだ。
「それじャァ俺はァ祈り済んだしィ今日の献立でもォ考えとくわァ」
「おう分かった。それじゃあまた後でな」
俺は桃瀬と別れ、しばらくその場に留まった。あんなに飛び散っていた血も自動小銃によって付けられた焦げ痕も綺麗に無くなっていた。
この短時間で何事もなく消えていると、あんな事が起こったのが夢の様だ。
「太郎さんは、それほど亡くなった方々を想っているんですね」
「……当たり前だろ、皆仲間だったんだ」
「そうですか…」
何か余計な事を言うかと思ったが、空気を読んだのかそれきり何も言わずに影山は黙った。
そこから数分ほど経って俺はやっとその場を離れる。俺は絶対にここから出ると決意する。
「おや~砂糖くんじゃ~ないか~」
目的もなくなり廊下をブラブラと歩いていると、目の前からのほほんとしたいつも通りの猫屋敷がやって来た。
「猫屋敷、奇遇だな」
「砂糖君は~もうご飯食べた~?」
「食べたぞ。猫屋敷は食べたのか?」
「ついさっきね~沢風君と~嶋野さんが~作ってくれて~熱宮さんと皆で食べたよ~」
どうやら皆はそれぞれご飯を作って食べた様だ。藤も勝手に作って食べてるだろうし、鷹倉は…わかんねえな。
「鷹倉って飯食ったのかな…」
「あ~それなら~大丈夫だよ~」
「鷹倉を見たのか?」
「うん~俺が食堂に入ったらさ~鷹倉君が~ご飯食べ終わった~所だったんだ~」
「そうか…なら鷹倉も飯ちゃんと食ったんだな」
「うん~そうだね~」
なら安心だ。あいつなら引きこもるとかありそうだしな。
「そう言えば~影山さんは~近くに居たりするの~?」
「え?」
「いやさ~あんなに砂糖君に~執着してる影山さんが~砂糖君一人に~してる訳なさそうだし~きっと~姿は見えないけど~近くに居たりするんだろうな~って~」
猫屋敷は結構鋭い所があるんだよな。野生の勘みたいな感じか?
「まあ…俺の後ろにほら、居るだろ?」
俺は影山の方に手を向けて猫屋敷に教える。
「おやや~ほんとに~居た~」
「どうも…」
「うわっは~嫌な顔~」
「太郎さんと私の時間を邪魔なさる貴方が悪いんです」
「うわ~ちゃんと執着してる~」
な、なんだこいつら仲悪いのか?一触即発の空気があんだけど…こいつら二人とも歴とした犯罪者だからか?
超高校級の殺戮者の猫屋敷に超高校級の愉快犯である影山。猫屋敷も影山も人を不幸にし、命を奪っている。
改めて考えると今俺って凄い奴等に囲まれてんだな。猫屋敷はいつもと同じだからなんか普通に接する事が出来るけどな。
「砂糖君さ~ちゃんと付き纏うなって~この愉快さんに~言わないと~」
「何ですかそれ私は太郎さんの邪魔はしていませんし付き纏っていません。これは一緒に居るんです人をストーカーの様に言わないで下さい貴方こそ殺人鬼が近付かないで下さいませんか?太郎さんの身が危険なので」
「あっはっは~僕は~砂糖君と~殺人はしないって~約束していま~す~」
「そんなの信用出来ません」
「それは~俺の方も言える事だね~」
「もう結構です太郎さん早く行きましょう」
「い、いや行くって言われても別に目的もねえし…」
「砂糖君~愉快な影山さんは~放っといて~俺と居よ~よ~」
「は?太郎さんは私と居るんですが」
「俺だよ~」
「は?」
「は~?」
や、やべぇぇぇぇぇぇ!!?何だよ何だってんだよこの状況は!何でいつの間にか俺の取り合いになってるんだよ!
これは俺がどちらかを選ばなきゃいけねえのか?俺には荷が重いんだがどっちを選んでも地獄な気がするし…ど、どうすれば?
「あ、猫屋敷…に砂糖も」
「お、おう…よう沢風…」
「……影山さんも居たんだね……えっと、この状況はどうしたのさ?」
「あははは…どうしたんだろうなぁ」
影山と猫屋敷の抗争を冷や汗ダクダクで見守っていたら沢風がやって来てくれた。こ、これで助かるかもしれねえ!
「ちょっと猫屋敷に用があったんだけど…来てくれないかな?」
「ん~?僕に用事~?」
「うん、今駄目かな?」
「良いじゃないですかいくらでもお貸し致しますよ」
「むっか~なぁんで君が許可してるのかなぁ~?」
「…………」
「無視をするなぁ~!」
は、初めて猫屋敷が叫んでる所を見たぞ…あのいつものんびりゆっくりな猫屋敷が叫ぶなんて凄い事だな…。
「え、ええっと…取り込み中だったかな?」
いや待て沢風、諦めようとしないでくれ行かないでくれぇぇ!!と思っていると猫屋敷がゆらりと沢風の方を向く。
「あ~安心してよ~別に沢風君の~用事に~付き合うよ~」
「あ、本当かい?ありがとう」
「何ですか結局行くんじゃないですか」
「君に言われると~癪なだけ~じゃあ~行こうか~」
「うん、それじゃあ砂糖…影山さんも…」
「はい、存分に扱き使って大丈夫ですから」
「おう…」
よ、良かった…沢風は救世主だ!心の中で沢風にお礼を何度も言う。猫屋敷は沢風に着いていった。
「……お前猫屋敷を怒らせんなよ」
猫屋敷の怒った姿なんて初めて見たわ。
「うふふふ、私を心配してるんですか?」
「いや違うぞ」
「うふふ、分かっていますよ。別にあんな人、怒っても怖くありませんし太郎さんはお守りしますから」
「いや怖くないとかそういう問題ではねえからな?」
影山に守られる程、俺も弱くはねえ……弱くねえ…し。なんか不安になってくるがそこまで弱くねえよ!
「ご安心を。これでもそこそこ私も強いですから」
「何だよ…何かやってたとかか?」
見た目雰囲気的には別に何だが…。
「自分しか頼れませんでしたから、ある程度自衛の為に鍛えていたりしてます」
「でも…猫屋敷には敵わねえだろ」
「いえ?特に苦もなく戦えます」
いやいやそれは盛ってるだろ!と否定をする。
「うふふ、その時がきましたらお見せしますね」
舌先を少し出しながら妖しく笑い影山はそう告げた。その雰囲気に俺は何も言えなくなってしまう。そんな時が来ない事を祈るしかないな…。
「はぁ…」
「お次はどこに行かれるんですか?」
「…特に予定もねえよ」
「うふふ、分かりました」
それからは俺と影山はテキトーにぶらついて桃瀬との約束の時間まで過ごした。
特に何事もなく夜飯作りの時間になったので、桃瀬と夜飯を作る為、厨房に入る。ちなみにしっかりと後ろには影山も着いてきている。
厨房に入るとそこには見た目厳つく怖い桃瀬が、いつも着ている白衣を脱いで、可愛らしいエプロンを着けていた。
そして桃瀬の隣には同じ様にエプロンを身に纏っているハクが居た。
「よっす桃瀬とハクも居んだな」
「おォ、ハクも手伝ッてくれるッてェ言ッてくれてなァ」
「ハクも調理出来ますし、ますたーも喜んでくれましたからいちごに頼んだんです」
「こりゃあ心強いな」
「それじャァ今日は献立決まッてッからァさッさとォおッ始めるかァ」
「うっし!…お前はどうすんだ?」
「私は太郎さんと私の分を作ります」
「あァ?」
「たろうは誰に話し掛けてるのですか?」
俺は横に居る影山を指差す。桃瀬もハクもそれでやっと気付き桃瀬は警戒を強めた。
「そんなに警戒なさらなくても大丈夫ですよ?」
「そうは言ッてもなァ無理な話だァ」
「別にそうしていても良いんですけど…調理する時間が減っていくだけですよ?」
「……はァ、その通りだなァ…じャァ作る前にィ砂糖とォ影山はァエプロン着けて手ェ洗えよォ」
「おう、分かった」
「うふふ、楽しみにして下さいね。美味しいご飯作りますから」
そこから俺達は夜飯作りを始めた。流石は今まで俺達のご飯を作ってくれていた桃瀬と影山は慣れた手つきで調理している。ハクも素早く調理を進めている。
俺も腕に多少の自信はあったけど、まさかこいつらがこんなに上手いとは。
若干圧倒されながらも、夜飯作りは滞りなく進み、そして料理が完成した。時間的にも丁度夜ご飯の時間だったので、料理を食堂に運んでいく。
そして食堂には瀬戸内、鷹倉、藤を除く鈴木崎、嶋野、熱宮がやって来た。
「……随分少なくなッたなァ」
「まあ人数は確実に減っていますからね」
「たいようとうぃくとにおりひめが居ないですしね」
確かに、瀬戸内は今日だけだろうが、いつまでも一人行動の藤に鷹倉も、裏切り者だと判明したけど今俺達がバラバラになるのは駄目だ。
藤は…説得難しいそうだけど諦めずにいくとして、鷹倉も何とか話していって説得してえなと思っていると桃瀬が険しい顔で呟く。
「…おィ…沢風とォ猫屋敷はァどうしたァ?」
「…え?」
見れば夜ご飯の集合時間はとっくに過ぎていた。沢風は時間にしっかりとしているし、猫屋敷も朝食には寝坊して遅れる事はあるが、夜ご飯には遅れて来ない。食べる事が好きな奴だし。
「……おかしいな」
「あァ…」
「あれはれー?しゅんやくんとワンニャンが来てないとか珍しいねー!」
「何かあったとか?」
「でしたら探した方が良いのでしょうか」
「お二人とも一緒に居た筈ですし怪しいですね」
確かに途中で猫屋敷に用があると沢風は言って二人ともどこかに行ったが…そんなまさかな…。
「二人を探そうぜ」
「そうだねえ、今日あんな事があったのに起こる筈もないと思うからねえ」
「でも気を付けないと」
「何が起こるからァわかんねえからなァ」
そうして俺達は沢風、猫屋敷を探し始めた。瀬戸内、藤はすぐに見付けて話を聞いてみるも二人は見ていなかった。
俺と付いてくる影山は、鷹倉が居るかもと思い超高校級のネット配信者の研究教室に入る。そこには寝転がってだらけている鷹倉が居た。良かった…鷹倉は居てくれた。
「んはー?何だよいきなし裏切り者の俺に何かご用ですかー?」
「裏切り者とか今は関係ねえよ!それより沢風と猫屋敷見てねえか!?」
「ええー関係なくはねえだろー…なんだ何かあったんかよ?」
俺は鷹倉に沢風と猫屋敷が居なくなった事を伝えた。
「ふーん…残念だが知らねえな」
「そうか…お前は何か知ってたりするかもって思ったんだが」
「いやー…俺は何も知らされてねえしなー」
「そうなのか?」
「大体学級裁判終わりに次の動機やらをモノクマから話されて上手く動けだの言ってくるんだが……今回はなんもねえのよ」
「それって…」
「お払い箱になったのでしょう」
「お払い箱…」
「そう、それだーまあ裏切り者だとわかっちまった今、俺に裏切り者としての価値はねえしなー教える訳もないわな」
じゃあ鷹倉も本当に何も知らねえって事か?どうしても疑ってはしまう。
「まあー上手く動けだの言われてもめんどいしだるいしで特に何かした試しはねえけどよー」
「確かに鷹倉さんっていつもだらけてましたしね」
「記憶にねえ俺が作った動機が役立ったとか言われるけど俺にはその記憶がそもそもねえから何とも言えねえんだわ」
「そうか…」
鷹倉もいきなり裏切り者だと言われても何がなんだかわかんねえんだろうな。
「それじゃあ沢風と猫屋敷がどこに居るかはわからずか」
「おーそう言う事だ」
「そうか…分かった。ありがとうな」
「んー」
そう言って鷹倉は俺達に背を向けてまた寝転がり始める。
「鷹倉…俺はお前の事を信じてってから…明日からは朝飯に来いよ。待ってるからな」
「…お前も鈴木崎もおかしい奴だよなー」
「おかしくねえよ」
「なら愚直だ」
「それが俺の長所だ!」
堂々と言ってやる。それが俺の誇れる長所なんだ。
「……へっ、ああそうかい」
「おう!んじゃあ邪魔したな!」
「別にー」
「それじゃあまた明日の朝食来いよ!食堂で待ってるからな!」
「……気が向いたらなー」
そう話して研究教室を出た。すると影山が話し掛けてくる。
「鷹倉さんが何も知らないって本当なんですかね?」
「俺はそれを信じる」
「今は何とも言えないですからね。鷹倉さんも掴み所のない方ですし…様子見ですね」
「そうだな…結局沢風と猫屋敷の行方はわからず仕舞いだな…」
「一通り探してみましょう」
「ああ、きっとどこかには居るだろうし、案外沢風の自主トレに夢中になったとかそんな事かもしんねえしな」
そうして、俺らは二人の捜索を開始した。
…………しかし、
二人はいくら探しても
どこを探しても
どこにも居なかった
沢風と猫屋敷と別れたその時から二人は姿を消してしまった。
ー続くー
ー登場人物ー
【予備学科生徒】
【超高校級のリア充】
【超高校級のメカニック】
【超高校級の放送部】
【超高校級の殺戮者】
【超高校級の氷彫刻家】
【超高校級の僧】
【超高校級の愉快犯】
【超高校級のネット配信者】
【超高校級の折り紙講師】
【超高校級の保険委員】
【超高校級のロボット】
生存者 12人
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