ハイパーダンガンロンパ   作:ゲップ助かります

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お待たせしました皆々様!それでは四章ラストを御覧あそばせませまぜまぜ!!


第四章 オシオキ編

 

「はーい!今回はクロ自身が卒業する気が全くなくて、助言までしちゃうわ庇ってくれる人の事を否定はするわで味気なかったね」

「始めからやる気のないクロだと分かっていましたから捜査時間を少なめにしたのですよ?ミナサマが文句を言われたのも全ては鈴木崎サンのせいですね」

「そんな訳でー!無事に超高校級の殺戮者、猫屋敷 狛犬クンを殺した素晴らしき寡黙な殺人鬼殺しは超高校級のメカニックである鈴木崎 美佳子サンでした!」

 

投票結果が明かされると学級裁判で喋れなかった鬱憤なのか毎回一番始めにウザってえ声を上げるのが耳障りだが、投票結果が合っていた事を告げる。チラとモニターを見てみると一人だけ瀬戸内にクロだと投票をしている奴が居る様だが恐らくは…。

 

「ハク、間違えるの駄目」

「…………」

 

俺もハクじゃねえかと思っていたが、鈴木崎も投票先を瀬戸内にしたのはハクだって分かってるみたいだ。だが言われたハクは自動だにせずにモニターを見つめ続ける。

 

そんなハクに悲しげな顔を浮かべていた鈴木崎は俺達全員の顔をしっかり見て、頭を下げ謝った。

 

「皆、ごめんなさい」

 

鈴木崎の素直な謝罪に、沢風が声を震わせながらこの場に居る全員が思っていた疑問を問う。

 

「な、何で…何で鈴木崎さんが猫屋敷を殺したの!?」

「それとォお前がわざとォ自分をクロだと分かる様にィ誘導してやがッたりィ反論もしなかッたのがァ気になッてんだよォ」

 

そうだ、鈴木崎は話し合っていた時も直球では言ってなかったが、クロに繋がる怪しい事を発言している。

 

それにクロが鈴木崎だと始めから分かっていたからこそ、嘘の証言や情報を言わなかったりしていたんだろうハクにも否定して庇う事をさせなかった。

 

結局瀬戸内と猫屋敷がボロボロになっていたのも、柔道場で何が起こったのかも分からず仕舞いだったから、その事も気になる。

 

「最初は偶然瀬戸内を見掛けた」

「瀬戸内をって…事は柔道場に向かう瀬戸内を見たのか?」

「うん、凄い速さで走ってたから気になって」

 

そんな急いで柔道場に向かったってのは確かに気になるよな。

 

「後悔してる」

「何をだい?」

「私も急いで向かえば…止められたかもなのに…」

「じゃあお坊さんと殺人鬼さんは予想通り殺し合ってたって訳ね」

「うん。自分の呑気さに悔やむ」

 

真っ直ぐ俺達を見渡しながら鈴木崎は言葉足らずだが話す。それでも何が言いたいのかは伝わる。鈴木崎もまさか殺し合いをしているとは思わないだろうし、鈴木崎が責められる事じゃねえんだ。

 

「柔道場に着いたらもう皆が見た状態だった」

「ええ!?それじゃそれじゃあさー!短時間であんな事になったって言う事だよね!?ちょ、どんだけ超人なのぉぉぉ!!?」

「お互い身体能力は超人みてェなモンだからなァ」

 

柔道場の惨状は短い間になったって言うのかよ…皆が思ってた以上に二人の身体能力は高い様だった。

 

「それじゃあよーお前さんも結局は瀬戸内猫屋敷の二人が何で争ったのかは知らねえって訳かよ?」

 

鷹倉は体を震わせながら眼光鋭く鈴木崎を居抜きながら問い掛ける。

 

「うん。瀬戸内は気絶してた」

「じゃあワンニャン…は?」

「意識があった、でも何故って聞いても教えてくれなかった」

「ちょ、ちょっと何でなのさ!?」

「猫屋敷からはこのままじゃ瀬戸内が死んじゃう、早く俺を殺してって」

「猫屋敷自身が…?」

「うん。時間がないって、私に謝りながら早く殺して皆を集めてって、それでモノクマに頼んでって…」

 

な、何だよそりゃあ…何で瀬戸内が死にそうだからって自分自身を殺せってお願いすんだよ…。少しずつ喋っていく鈴木崎に影山が顔を険しくしながら言った。

 

「あの…鈴木崎さんが口下手であるのは重々承知なのですが、今の状況を考えて分かりやすく端的に伝えてもらえませんか?」

「……ごめん」

「はあ!?鈴木崎が謝る必要はねえだろうが!影山もテメーは要らねえ茶々を入れるんじゃねえよ!」

「しかし太郎さんは瀬戸内さん、猫屋敷さんが殺し合っていたその原因を少しでも早く知りたいのですよね?なら後少しでお仕置きをされる鈴木崎さんから真相を聞きたい筈ですよね?」

「だからってそんな無理矢理に聞き出してえ訳じゃねえ!鈴木崎もお前のペースで良いからな!」

 

こんな時にこいつはどこまで空気を読まずに喋りやがるんだよ!

 

「砂糖…ありがと」

「気にすんな…」

「そ、それじゃあ鈴木崎さんは……猫屋敷に頼まれて殺したの?」

「うん」

「何故ますたーに頼まれたのですか…自殺をすれば、ますたーは……」

「は、ハク…」

 

今まで聞いてきた中で一番辛そうに話すハクに、何も言えなくなる。だが鈴木崎は怒気を孕んだ雰囲気を纏わせてハクに詰め寄る。

 

「ま、ますたー?」

「良い?一度しか言わないから、ハクはそんな酷い事を言っちゃ駄目。どんな状況でも諦めない、足掻いて」

「……ですがますたーは今回クロとして勝つ事を諦めてましたよね?」

「私も最初は猫屋敷の案否定した。でも猫屋敷の覚悟が分かったし、私も別に諦めて挑んだ訳じゃない」

「なら…ならばどうしてですか!?」

「……皆を…瀬戸内を救えた、これが私と猫屋敷の覚悟」

「瀬戸内を、閉じ込められた俺達を救う事が…」

「うん」

 

何だよ…んな真面目な顔で言われたら何も言えなくなるじゃねえか…。一体鈴木崎、瀬戸内、猫屋敷達の間でどんな会話があったってんだよ…。

 

俺達が言葉を失っていると影山がモノクマ達の方へ向き話し掛ける。

 

「そろそろ校長からの詳しい説明はないのですか?」

「うん?ボクからの説明ってー?」

「惚けないで下さいますか?用意周到なあなた方の事ですし鈴木崎さんだけに説明をして頂く流れではない筈です」

「うっぷっぷ、ワタクシ達の事をよぉ~く理解されているのですなぁ?」

「歩んだ道は違えど、あなた方と私は同じ陰の人じゃないですか。予想は出来ますよ」

「うぷ、うぷぷぷぷぷ!成る程ね!影山さんらしい考えだね!まあボクもそろそろ答え合わせをしてほしいからさー!と、言う訳でオマエラ、エレベーターをご覧あれ!」

 

モノクマの声に釣られて全員がエレベーターを見る。するとエレベーターから動いている音が聞こえてきて、やがて扉が開く。

 

すると降りてきたエレベーターからは頭を包帯で巻き付けて、ふらふらと覚束ない足取りで来たのは瀬戸内だ。

 

「瀬戸内ィ!?お前ェ何でもう動いてェ…テメェモノクマァ!!お前らの仕業かァ!!」

「安心してよ桃瀬クン~ボクらの治療技術で瀬戸内クンはもう歩ける位には元気なのさ!」

「その割にィふらついてンじャァねえかァ!!」

「桃瀬…俺は大丈夫だからよ」

「瀬戸内ィ……チッ、後でェ俺の診療を受けてもらうからなァ」

 

何か言いたげな桃瀬だが瀬戸内の雰囲気を察したのか渋々と引き下がった。

すると桃瀬に代わって沢風が瀬戸内に話し掛けた。

 

「せ、瀬戸内!来て早々申し訳ないんだけど…猫屋敷と何があったの!?」

「ああ、その前に俺が居ねえ間にどうなったのか教えてくれねえか?目が覚めたらいきなりモノクマの野郎にここまで連れて来られてよ」

「たいよう……」

 

真っ直ぐな目線で瀬戸内を貫くハクに不安な気持ちを抱く。一体何を思っているのか。

ハクの事を思っていると沢風が何も状況を知らされていない瀬戸内に何があったのかを伝え終わっていた。

 

「な…鈴木崎がクロって…お、俺じゃねえのかよ!?お前、着いて来てたのかよ」

「うん。偶々見えたから」

 

どうやら瀬戸内は自分が猫屋敷を殺したクロだろうと思っていた様だ。モノクマから来いと言われたのもその事だろうと予想していたらしい。

 

「それでお前は何で猫屋敷の居る柔道場に行ったんだよ?」

「その前に、公衆トイレで長時間引き込もって居た事を謝ってくれないかしら」

 

藤はその事に関してご立腹な様子だ。そのせいで藤には辛い事が起こったからな、怒るのはまあ当然だろうな。

 

「な、何で藤はそんなキレてるんだよ?確かにトイレには長い間居たけどよ…」

 

瀬戸内も藤の怒りのオーラにたじたじで弱々しく聞き返す。それに更に怒りを増大させながら藤が問い詰める。

 

「貴方が長時間トイレから出てこないとどうなるか分からないの!?こう言えば分かるかしら、校庭にはトイレは一つだけ。公衆トイレに貴方が閉じ籠っていた」

「あ…そ、そう言う事か、藤その、すまねえ!静かで一人になれる所って言ったら公衆トイレ位しか思い付かなくてよ」

「私は呼び掛けてもいたしノックもしたのだけど?」

「本当にすまねえ…俺って一回冷静になろうと座禅を組んじまうと周りの事に気付かなくなっちまうんだよ」

 

だから瀬戸内は藤からの呼び掛けに応じなかったんだな。そう言う所は超高校級の僧らしいが、藤にとっては最悪の結果に繋がってしまったって訳だ。

 

「それでたいようは何を考えてこまいを殺すと決めたのですか?」

「……それは、俺が…俺の覚悟が足りなかったんだ…」

「何ですかその覚悟と言うのは?」

「……猫屋敷を信じる、ここから出られるって事が出来なかったんだ…」

 

鬼気迫る雰囲気を漂わせながらハクは瀬戸内に説明を求める。瀬戸内もハクの気持ちが恐らく分かっているから鈴木崎とハクを交互に見て歯をグッと食い縛りポツポツと語り出す。

 

それはあのいつも自信満々な瀬戸内とは打って変わった弱々しい姿と声音だった。

 

「最初は落ち着けると思ったんだけどよ、段々また不安な気持ちが増してきてよ…さっき見た猫屋敷の不安定な姿…それに八方塞がりの現状に…。だから思っちまったんだ、今最善はなんだって…」

「それで…猫屋敷を…?」

「……ああ、そうだ」

「なら何で俺じゃなく猫屋敷だったのさ!?猫屋敷とは同じ時に閉じ込められてたし、弱っていたのも狙いやすいのも俺じゃないか!何で、何で猫屋敷だったのさ!!」

 

沢風は声を大きくさせながら叫び聞く。一歩一歩瀬戸内の元に近付いていた沢風はついに瀬戸内の眼前まで詰め寄ると瀬戸内の首元の服を掴みながら更に問い詰める。

 

瀬戸内はされるがままに立ち続けている。この先の事を言うのが怖い様で唇を、体全体をガタガタと震わせていた。

 

「お前も…あの状態の猫屋敷を見たろ?殺気が漏れてやがるしいつ誰を殺してもおかしくねえ…それに……弱ってる今なら…今なら俺なら出来るんじゃねえかって!これで少なくともお前らは助かるじゃねえか!!」

「な!?な、何だよそれ……君は弱ってるからって辛くても俺達の為に、約束を守る為に耐えていた猫屋敷を狙ったのか!」

「そんな事俺だって分かってらぁ!だけど猫屋敷もお前ももう限界だったろうが!?大体約束って何の事だよ!?」

 

猫屋敷の約束…普通に考えりゃあ猫屋敷と沢風の約束だろうがチラッと沢風は俺の事を見たから俺が関係してる事だろうが…。

 

「まさか約束って俺との誰も殺さないってやつか?」

 

思い付くとしたらそれしかねえ。猫屋敷と交わした唯一の約束。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…………ぷっ、にゃっはっはははは~。は~そんな真剣な目で見られちゃ~友達として応えないとじゃないかにゃ~。分かったよ~僕はここに居る皆を誰一人殺さないわ~ん」

 

「へっ、ああ。友達としてな」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

百澤が殺されてしまう少し前、カラオケの部屋で俺はお前を信じると言ったらその気持ちに応えて誰も殺しはしないと誓ってくれたあの言葉…必死に自分の殺人衝動を耐えて守ろうとしてくれてたのか…。

 

「あいつが…そんな約束を…でももう今知っても遅いじゃねえか!!……俺は猫屋敷を信じきれずに殺すと決意しちまった後なんだ…クソッ!!何で俺はここまで不甲斐ねえんだぁ!!」

「瀬戸内…クッ!何で気付けなかったんだっ!」

「……嘆くのは後にして下さい、たいようは速やかにその後の事を報告して下さい」

「ハク、空気を読む」

「ロボなので読めません」

 

キツい言い方をするハクだが、残り時間少ない鈴木崎に真相を教えたいんだろう…モノクマの気まぐれでオシオキにいつ移るか分からねえし、一刻を争う事態だしな。

 

「鈴木崎、ハクの言い分が正しいよ。それで俺は柔道場に入った…すると猫屋敷は休んでたと思ってたら堂々と立って俺を待ってたんだ…」

「え?」

「はいはーい!なんか瀬戸内クンを呼んでスマートに説明を終わらせてオシオキに移ろうって思ってたけど、やっぱり長々と掛かりそうで退屈だ、か、らぁぁ特別に~!その時の様子を見せて~あげるねー!!」

「それではミナサマモニターをご覧あそばせませ!」

 

話を遮ってきたモノクマとモノソノは俺達のやり取りに飽きたとモニターでその時の様子を見せると言い、モニターの画面が変わる。

 

苛立ちは増すが、今はモニターに集中する。そこには丁度柔道場に入ってきた見ているこちらが不安になる鬼気迫る表情の瀬戸内と、言っていた通り柔道場の真ん中辺りで手を垂れ下げながらいつもしている猫背で、体をゆらゆらと揺らしながら前を見据えていた。

 

 

 

 

『にゃは~待ってたよ~』

『待ってたって…お前となんか約束でもしてたか?』

『いや~でもすんご~い殺気が近付いてたからさ~瀬戸内君かな~って思ってたんだけど~合ってたぜ~ぶいぶい~』

『はは…寝ていてくれたら楽に殺れたんだけどなあ…』

『僕を~舐めてもらっちゃ~困りますだよ~?で~理由は大体分かるけど~一応聞くね~?何で俺を殺すの~?』

 

映像越しに見ても誰でも不安を抱く瀬戸内に、猫屋敷は飄々といつも通りのペースで接する。そんな猫屋敷に瀬戸内も拳を構えて全身に力を込めて警戒する。

 

『やけに余裕じゃねえか?俺如きには殺されねえってかあ!?』

 

そう言うと瀬戸内は素早く猫屋敷の元まで駆け出し、あっという間に距離を詰めた。自身を襲う瀬戸内の殺意を纏う拳に猫屋敷は一切反応をせずに…その身で受け止めた。

 

『っ!?あ、がぁぁぁぁ!!』

『流石は~瀬戸内君~……効くね~』

 

だが吹っ飛んだのは瀬戸内。カウンターで瀬戸内の顔面をぶん殴ってぶっ飛ばした様だ。

 

『今の俺に~無傷で気絶させるなんて~出来ないからさ~……痛くするよ~?』

『ハッ!そんな事にはならねえよ!俺がお前を殺す!!』

『ほざいてろ~だにゃ~』

 

そこからはお互い己の体を使って戦う。だが二人の目的は大きく違っている。瀬戸内は殺す為に全力で殴る、猫屋敷は瀬戸内を気絶させたくて全力は出さない様に…己の殺人衝動とも戦いながら応戦するが、遠慮のない瀬戸内に明らかに圧されて劣勢だ。

 

『とっとと諦めてくれ、よっ!俺もすぐにそっちに逝くから、よぉ!一緒に地獄巡りといこう、ぜぇ!』

『ん~そこは~ぐぅっ!?て、んごくじゃなく、がはっ!』

『お前と俺は地獄逝き直行だろ!?なぁんで天国逝けっと思ってるんだよぉぉ!!』

『確かにね~自惚れてた~…よ!!』

『ぶっ!?ああぁぁぁ、がっ!!!?』

『あ、あ~!?』

 

お互いに話しながらも手は止めずに殴る。そして壁際で取っ組み合うと瀬戸内が優勢に殴る。しかしそこへ猫屋敷がまたもやカウンターで瀬戸内の頭を掴むと壁に押し付けた。

 

『し…しま、しまった~力が強すぎた~!?あ~俺の馬鹿阿保~血が~血が止まらないよ~瀬戸内く~ん!!?』

 

殺人衝動が勝ってしまったのか、想定していたより力を込めてしまったらしく焦り出す猫屋敷。これで瀬戸内が気絶させる事には成功をしたが、想定してたより重傷を負わせてしまったのか。

 

『約束が~死んじゃ駄目だよ~耐えて~あ~でもこれどうやって治療すれば~!?桃瀬君が居ないし~モノクマに頼んでも~応じてくれるかどうか~』

 

ボロボロの体でどうしようと焦る猫屋敷がオロオロと倒れている瀬戸内を心配していると、柔道場に鈴木崎が到着し入ってくる。そこで頭から血を流して倒れる瀬戸内とその場で顔を青くして焦る猫屋敷の姿を見て分かりづらいが目を微かに見開き、おずおずと猫屋敷に話し掛ける。

 

『何があったの?』

『っ!?って~鈴木崎さん~!?ビックリしたよ~?何で居るのさ~夢中になりすぎて警戒を怠ってたよ~』

 

軽く体をびくつかせながら猫屋敷は応じた。そんな猫屋敷と瀬戸内を交互に見ながら警戒心の全くない鈴木崎はずかずかと猫屋敷の方へ進む。

 

『え、え~と~鈴木崎さんそんなに無警戒は無用心じゃな~い~?状況を考えれば~誰かに助けを求めるんじゃ~』

『理由があるんでしょ?何があったの?』

『にゃは~…そんな真っ直ぐ見られると照れちゃうな~…』

『……話す気はない?なら早く瀬戸内と猫屋敷の治療』

 

猫屋敷が話す気がないと感じた鈴木崎は、一先ず人を集めようと柔道場から出ていこうとする。そんな鈴木崎の腕を素早く掴んだ猫屋敷は訝しむ鈴木崎を真剣な表情で見ながら言う。

 

『なに?』

『…お願いなんだけど~僕を殺してくれない~?』

『…………ふざけてる場合?』

『いやいや~ふざけてないよ~大真面目だし~これなら瀬戸内君は助かるんだよ~』

『嫌だ、猫屋敷が死んじゃう』

『うん~鈴木崎さんも巻き添え食っちゃうんだけど~四の五の言ってられないんだよ~』

『理由は?』

『今説明してる暇はないんだ~早くしないと~瀬戸内君が死んじゃう~約束も守れない~……自殺をしたくても~もう体が言う事をきいてくれないんだ~…だからお願い~』

『…………』

『本当に~…ごめん~。だけど残されてる時間が少ないんだ~俺を信じてくれた人達を~裏切りたくないんだ~』

『…………痛くさせない』

『にゃは~鈴木崎さんすんなり受け入れてくれたね~』

 

短い時間だったのに鈴木崎は猫屋敷を殺す事を決めた。その間に鈴木崎は柔道場の様子や猫屋敷、そして倒れている瀬戸内を見てからほんの少しだけ目を閉じ、ゆっくり開けると工具入れからレンチを取り出しながら言った。

 

『あ~殺すなら瀬戸内君とは反対の方向でお願いだよ~俺の血が瀬戸内君に付いちゃったら汚す事になるもんね~』

『気にしないと思うけど』

『僕が気にするの~って訳で~鈴木崎さんお願いね~』

 

猫屋敷の要望を聞き入れた鈴木崎は肩を貸しながら瀬戸内とは真逆に位置する壁際まで連れていってもらう。そして猫屋敷は鈴木崎の持つレンチを見つめる。

 

『痛くしないでよ~』

『善処する』

『にゃは~…鈴木崎さんには~本当にごめんなさいな事を~お願いしちゃったよね~』

『全くその通り、地獄で侘びて』

『地獄で会うのは~前提なんだ~』

『……じゃあ後で』

『任せたわ~ん~』

 

少ない会話を交わすと鈴木崎はレンチを猫屋敷の頭目掛けて振り落とした…その瞬間だけ音を大きくしやがったせいで、嶋野が叫ぶ。他の皆も顔を青くして顔をくしゃっと歪めて目を背ける奴も居る。

 

映像越しだがはっきりと大事な仲間で同級生が、その手で同じ同級生を殺した瞬間を見たのは初めてだ。脳に、記憶に強くこびりついて鮮明に巻き戻されてまた再生される。

 

先程まで生きて動いていた飄々とした猫屋敷は、もう動かずに薄く笑いを浮かべながら壁際に寄り掛かって死んでいる。

 

そこで映像は途切れた。

 

 

 

 

「ここでおしまいです!後はミナサマの推理通り人を集める為に喧しい目覚まし時計を鳴らしたのです!因みに白サンはその音を聞いた瞬間に気付かれたのでしょうね!」

「あの目覚まし時計を止められるのは鈴木崎サンだけって唯一分かってる白サンがすぐに証明してくれると思ってたらしいけどまさか庇う方へ回るとは!?ってなったんだろうね!あ、因みに鈴木崎サンすぐに自分が殺したって言おうとしてたから口止めしておいたんだよ?」

「口止め…?おいオメーら鈴木崎に何を吹き込みやがった!」

「嫌だな~鷹倉クンもいつの間にか熱血野郎じゃんか~。ただクロだって自白したら白サンに何しよっかな~とかおねだりしただけだよ?」

「そんなんおねだりな訳ねえだろうが!!ハクを脅しに使いやがって!」

「じゃないとつまらないじゃありませんか?せっかく行われる特大イベント学級裁判なのですよ?」

 

悪びれもせずにのうのうと言いやがって!

 

だからはっきりと言う鈴木崎が何とか自分がクロだと伝えようとして、ヒントをくれていたのか。こいつらのせいで鈴木崎と猫屋敷の想いが踏み躙られたのかと思うと許せねえ!

 

「そ、そんな…話があったのかよ…俺は鈴木崎に…猫屋敷に救われたのかよ……なのに俺は…俺はぁぁぁ!!」

 

自身の知らぬ所でのやり取りを聞き、猫屋敷の真意に鈴木崎の犠牲心を知った瀬戸内は膝をつき項垂れる。己の不甲斐なさを嘆き後悔する。

 

「ん~思惑通りってな感じで空気がズーンってなってくれたし、そろそろ始めよっか!」

「は、始めるとは…何をでしょうか?」

「嫌だな白サンったらとぼけちゃって~!これから始めると言えばオシオキのお時間でしょ!!」

「待ってください、まだ…まだますたーと話したいです」

「既に特別なお話の時間はとってあげましたよね?これからはグダグダとお涙頂戴劇を見せられる事は分かっているのです!ですのでそろそろお開きとしましょう!」

 

やっぱりこいつらは最悪のタイミングで始めようとしやがった。真相を知ったすぐ後にお仕置きを開始するなんてどこまでも嫌らしい奴等だ!

 

「……皆、こっち」

 

お仕置きだと聞き皆が焦り出すも鈴木崎の一言で一斉にそちらを見る。そこにはこれから恐ろしいお仕置きが待っていると言うのに、無表情な鈴木崎の姿があった。しかし体は震えており、誰が見ても恐怖しているのは分かる。

 

「す、鈴木崎…すまねえ……俺のせいだ、俺が…すまねえぇぇぇぇぇ!!!猫屋敷も信じられなくてすまねえ!何が友達だ!何が仲間だよぉ!俺は大事な事も忘れて情けねえ!!!」

「ちょ、ギラリン!?」

「お前はァ何をしてやがンだァ!死んじまうだろうがァ!!」

「せ、瀬戸内を止めよう!」

「おい止めろ瀬戸内!!」

「あんたって奴はどこまでも馬鹿だねえ!」

 

鈴木崎と猫屋敷に申し訳ないと謝る瀬戸内だが、額を地面に何度も打ち付けながら謝り始める瀬戸内に、必死になって止めるが、どこにそんな力があるんだと思う位の力強さで抗う。

 

すると鈴木崎は瀬戸内の前まで行くと目線を同じにしゃがむと瀬戸内の頬に触れる。

 

「す、ずきざき…?」

 

涙と額から流れる血でぐしゃぐしゃな瀬戸内が呟くと、鈴木崎は瀬戸内の頬を思い切りビンタした。それも往復で。

 

「ぶっ!?ぶべばはらぁぁぁぁ!!!!?」

 

いきなりの往復ビンタにたまらず自害しそうなまでの土下座を止める瀬戸内に、怒気を孕ませた声色で鈴木崎は問い詰める。

 

「瀬戸内が死んだら駄目、誰も望んでない。それに私も、猫屋敷も瀬戸内を恨んでない。生きる事を望む」

「……な、何で恨まねえんだよ…?俺はお前らを殺したも同然じゃねえか…」

「それは違う。私も、きっと猫屋敷もそんな事思ってない」

「猫屋敷も……うぅぅ…」

「おいィ瀬戸内テメェ」

 

先程までの怒気はなく、暖かい声色で鈴木崎が想いを告げ、瀬戸内は更に涙を溢す。そんな瀬戸内に桃瀬が近寄る。

 

「なァにをしてやがんだバカ野郎がァ!!!」

「ぐっはぁぁぁ!!!」

「ええぇぇぇぇ!?何でギラリン殴ってんのピーチベリーちゃぁぁん!!」

 

鈴木崎の往復ビンタで少し膨れていた頬を殴った桃瀬は、拳を鳴らしながらキレている様子で瀬戸内の眼前に顔を近付ける。

 

「良いかァ!道を間違ッてもよォ、自分の命で償おうとか思うんじャァねえぞォ!ンな簡単な方にィ行きやがるとォ猫屋敷をォ…鈴木崎を侮辱してやがんだよォ!!勝手に判断して償えるなんてェ思うんじャァねェ!これからの生き方でェ示しやがれェ!!無様でもォみッともなくてもォ生にしがみつけェ!!分かッたかァ!!!」

「……桃瀬……ああ……分かった」

「フンッ!俺もどこまでもォ付き合ッてやるからよォ…悪かッたなァ横入りしちまッてェ」

「ううん。桃瀬も、ありがと」

 

鈴木崎、桃瀬のお陰で瀬戸内の自傷を止められ、大人しくなってくれた瀬戸内には細心の注意を払いつつ、遮られた鈴木崎の言葉を待つ。

 

息を大きく吸うと鈴木崎は俺達を見渡しながら言った。

 

「お願い。皆はモノクマ達に負けないで」

 

そこで言葉を一旦区切ると次にヴィクトを見つめる。ヴィクトも静かに鈴木崎の言葉を待つ。

 

「ハクの事頼んだよ」

「はいよーっと」

「ふざけるな、メンテもハクは自分で出来ない」

「分かってるってーの」

「うん、なら良し」

「……いってらー」

「うん」

 

軽く言葉を交わして鈴木崎はヴィクトからずっとうつむいているハクの方へ移る。

 

「ハク」

「……ますたー」

 

声を掛けたら顔を上げて反応する。鈴木崎が口を開こうとしたその瞬間、アームが高速で伸びて鈴木崎の首を掴んだ。その事に全員動きを停止させる。

 

「待つのも飽きたしオシオキをはっじめるよ~!」

「おま、ちょっと待てよ!」

「瀬戸内クンそんなに叫ぶと傷に障りますよ?それにこれでも待った方じゃありませんか!」

「そんなの今は関係ねえんだよ!何でんな勝手な事しやがるんだ!」

「お前らわざとこのタイミングで始める気だな!」

「水を差すんじゃないよぉ!」

「そうだそうだぁぁぁぁ!!」

「てめーらの都合過ぎるだろうが!」

「何ですか鷹倉クンはそんなに叫ぶ事は初めてですね」

「うるせー!」

 

何とかお仕置きを遅らせようと俺達が必死に止めろと叫ぶ。その間に鈴木崎はハクに近付くと頬に手を添えて話し出す。

 

「良い?一度しか言う時間ないから聞いて」

「嫌です…そんなの嫌です」

「我が儘言わないの。まず始め、瀬戸内の事許して」

「そ、んなの無理です…だってたいようが…」

 

その言葉を聞いて瀬戸内の表情が歪むが歯を食い縛り、更に大きくモノクマ達に対して叫ぶ。今は鈴木崎達の会話が少しでも長引かせれる様にモノクマ達の邪魔をする。

 

「別に今すぐじゃなくて良い。時間を掛けてでもこれから瀬戸内と接して考えて」

「…………」

「じゃあこれで伝える事は最後になるか「オマエラの魂胆は丸分かりだよ!そう上手くはいかせないからねー!今回は【超高校級のメカニック】である鈴木崎 美佳子サンの為にぃぃぃぃ!!スペシャルなぁぁぁオシオキを用意しましたぁぁぁぁぁ!!!!ってな訳でレッツらオシオキターイム!!」

「え…そんな、ますた「生きて、色んな事を学んで楽しむの、これからはハクの自由。ハクの親で幸せ」

 

ハクの言葉を遮って自分の想いを口にする鈴木崎。その顔は誰が見ても分かる素敵な笑顔を浮かべていた。

 

「ますた、ますたぁぁ!!」

 

今まで一緒に居て聞いた事がないハクの叫び声に驚く。

 

「え…」

「え、は、ハクお前何してんだぁ!?」

「あァ!クソがァ行ッちまッたぞォ!?」

 

強制的にお仕置きに移ろうと口上述べ終わると鈴木崎の首を掴むアームは伸びてきた上に空いたお仕置き場へと繋がっているだろう穴に連れて行こうと戻り始める。

 

そんな鈴木崎の首を掴むアームにハクも手を伸ばし…掴んで驚く鈴木崎と共に穴に消えていってしまった。桃瀬が止めようと急いで手を伸ばすもそれは叶わず空を切ってしまう。

 

「ちょっと校長これどうしましょうか!?」

「んーまあ良いでしょ!別に白サンが居た所でオシオキは止めれないだろうし、サプライズイベントって事で!」

「成る程!では良い感じにオシオキに組み込むのですな!」

「そうそう!イレギュラーは面白おかしく取り組んで利用するのが一番だよ!」

 

なにやら不穏な事を言いながらニタニタと邪悪に笑い合う二体のロボに不安を感じるが、俺にはもうどうする事も出来ずにモニターに映し出される映像を見る事しか出来ない。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

【GAME OVER】

 

スズキザキさんがクロに決まりました。

 

オシオキを開始します。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ハクの事が不安だが今はもう無事を祈るしかない…願わくば二人とも無事で居てくれと思いながら、続いていく映像を見る事しか出来ない自分が無力で情けなくなる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

~ブリキに真を~

 

【超高校級のメカニック】

 

鈴木崎 美佳子

 

『処刑執行』

 

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そこはとある寂れた工場。鈴木崎はポツンとそこに立っていた。辺り一面にはモノクマやモノソノが沢山倒れていたが、動く様子はない様だ。数的にモノソノはモノクマより大分少ない数だった。

着いてきてしまった白がこの場に居ない事にすぐ気付いた鈴木崎は辺りを見渡し探し始める。

 

すると何処からか自分を呼ぶ声が聞こえ、そちらを見ると遠くの方にあるベルトコンベアに白はこちらに手を伸ばしながら呼んでいた。白の様子がおかしいと疑問に思った鈴木崎が良く見てみると、仰向けになっている白の服の裾部分にネジが打ち込まれており、動く事が出来なかった。

 

すぐに助けに行こうと一歩足を踏み出すと、機械音が聞こえてきた。何かが作動したのかと思うとベルトコンベアが動き出し白がゆっくりと離れて行き出す。

 

その先に見えるのは【この先、溶鉱炉】と書かれた看板。その文字を見た瞬間鈴木崎は駆け出した…が何かに足を掴まれる。

 

それは倒れていたモノクマだった。急いで振り払うも周りに倒れていたモノクマ達はゆっくり起き上がり始めた。そして鈴木崎は気付く、モノクマ達の心臓部分がポッカリと穴が空いており空洞になっている事に。

 

背後に嫌な気配を感じた鈴木崎はとっさに身を捻る。するとモノクマが襲い掛かって飛び掛かってきていた。だが鈴木崎は構っている暇はないと襲ってくるモノクマ達を避けながら走る。

 

何度か襲われて分かったが、このモノクマ達はどうやら自分に足りていない心臓を欲している様で、先程からずっと飛び掛かってきているし、狙う場所が心臓だ。だが動きは鈍間であり単調で避けやすい。

執拗に自分の心臓を狙ってくるモノクマ達は次第にまずは弱らせようと他の場所を狙いその鋭利な爪で切り裂き始める。

 

動きは遅いものの流石に数が多すぎて攻撃を至る所に食らってしまい顔をしかめるが、鈴木崎は足を止めずに走り続ける。

 

そしてついに白の元まで辿り着いた。幸いにもモノクマ達の足は遅くまだ距離はある。急いで鈴木崎は工具入れからドライバーを取り出し白の服の裾に打たれているネジを外していく。

 

しかし溶鉱炉までの距離が近く後ろから迫るモノクマの軍団に白の不安げな顔を見て焦ってしまい中々上手く外せない。

そして何とか溶鉱炉に着くまでにネジを全て外し終わり白を引っ張ってベルトコンベアから逃れる。

 

白を大事に抱き締めながら後ろを振り返ると、モノクマ達がこちらを怪しく瞳を輝かせながら見ていた。鈴木崎は白を自分の後ろにして護るようにして立つ。

 

そして両手に槌とレンチを持つ。そこからは向かってくるモノクマ達に持っている工具で迎え撃つ。メカに詳しい鈴木崎は弱点の箇所を的確に振り下ろして壊していく。

 

時間は掛かり、更に傷も増えたが動きが遅く単調な動きしかしない事が幸いし息も絶え絶えになりながらも何とか全部を壊し倒せた。

 

しかしまだ何かが起こるかもと警戒を怠らずに居る鈴木崎に白が心配そうに近付く。そんな白を優しく抱き締めて安心させる様に頭を撫でる。

 

一時の平穏を噛み締めていた…がそれはほんの一瞬だった。鈴木崎は己の体を襲った衝撃に思わず目を見開きその箇所を見る。

それは白も同様信じられない気持ちで口をパクパクさせながら見る。

 

それは白自身の手が己の胸部、心臓のある位置を的確に貫いていたからだ。己の胸部から止めどなく溢れ出てくる血液に、思考が停止する。

 

急速に意識が薄れていく中、白が自分を必死に呼ぶ声が聞こえてくる。訳が分からない様子で混乱している白に鈴木崎は自分も訳が分からない中、最後に力を振り絞り白を強く抱き締めてこう言った。

 

 

『……ぁ…いし…て………ぅ…』

 

 

そう呟くと鈴木崎の体は力を失い電池の切れたロボットの様に全身をダランとさせて白に寄り掛かる。鈴木崎はもう動き出す事はない。

 

今も白は何故自分がこんな事をしたのか、と自問自答を繰り返しながら自身の手には大切な人の心臓を持ち続けていた。まだ微かに動くその心臓だが、段々動きが小さくなり…心臓も止まった。

 

工場に残されたのは大切な人をその手で殺めた白一人だけであった。尚も自問自答を繰り返すも答えが出ずのままだ。

 

 

 

 

「うぷぷぷっぷぷー!!エクストリームが止まんないねー!!もうウハウハだよ!今回はまた一風変わったオシオキだったし楽しめたね!」

「そうでございますなぁ!エモエモでウハウハでウキャキャキャとはしゃぐ程ですよね!」

「え?いや何その表現のしかた…教頭として失格だよ?やだ気持ち悪い…」

「うえぇぇぇぇ!!?急な罵倒に驚きを隠せませんが!?」

「…おいオメーら!!」

「ん?何ですかな鷹倉クン?大丈夫ですよ白サンならちゃんと返してあげますから」

 

あり得ねえ事があって思考が止まっていたらヴィクトがモノクマ達に詰め寄って叫ぶ。

 

「ハクがあんな事する筈がねえんだよ!お前らだろうが!お前らが渡したきたあのチップだろ!?あれでなんかしたんだろうが!」

「チップ…あ!」

 

そう言えば言ってたな…モノクマから渡されてハクに内蔵してしまった謎のチップ、ハク自身も訳が分からない様子だったしこいつらが何か仕掛けてきたのは間違いねえ!

 

「なんだいそのチップってやつは?」

 

俺とヴィクトしか知らなかったチップの事を俺が説明した。

 

「そんな物がハクさんに…」

「だから気にせずに始めたのね」

「くそ!早く外してれば…くそが!ハクが心配だ」

 

確かに何よりも鈴木崎が一番優先だったハクが操られていたとしても自分の手で殺してしまったとなったらただでさえ不安定だったのに更に追い詰めちまう。

 

「有効活用しただけですが?」

「くそがぁ!」

「口が悪いよ鷹倉クン~、そんな鷹倉クンにほいっと白サンを返すね」

 

そう言うとアームに掴まれた血に濡れたハクが戻ってきた。だが表情は暗くずっと手に持っている鈴木崎の心臓だろう物を見つめている。

 

「ハク…」

「ますたーが…ハクのせいで、ハクが…ますたーを」

 

ひたすら同じ事を呟くハクにヴィクトは手を強く握り締めて悔しそうに嘆く。

 

「こんな感じで役に立つとは思ってなかったけど仕掛けさせてて良かった~満足もした事だしボクはもう帰るね!明日の朝にはまた新しく開放される場所があるから報告に行くね!」

「それではミナサマお疲れ様でしたー!」

 

勝手に満足したと帰っていったモノクマ達。あいつらが消えた事で邪魔な奴が居なくなったが良かったとは全く言えねえ状況だ…。

 

「…帰ろうぜェ」

「やっと終わりましたね太郎さん!」

「うるせー…」

 

影山の言葉も反応出来ねえ位精神が疲弊してんだ。今は構ってなんかられるかよ。だが雑に返した俺の言葉にも嬉しそうに笑う影山には何を言っても無駄だろうと今はもう何も言わない様にしてエレベーターに向かおうとする。

 

「ハク…後でメンテするぞ?チップも外してえしよ…」

「お兄様…ますたーの心臓が……」

「分かってる…分かってっからよ……」

 

ふらふらとふらつくハクを気遣いながらヴィクトはエレベーターに向かっていく。それに続いて皆も帰ろうとする…が今この状況で合わない明るい声が聞こえてきた。

 

「あ、ねえねえ皆ちょっと待ってくれないかな!?」

 

そう言われて俺は足を止めて声の聞こえた方を向く。声の主は先程鈴木崎のオシオキを見たにも関わらず、今から楽しい事でもするかの様な嬉しさ混じりの声色だ。

 

「えっと…何かな嶋野さん」

 

他の皆も足を止めていて、呼び止めた嶋野に不思議そうな顔をしている。楽しそうな笑みを浮かべる嶋野に眉を潜めて沢風が聞く。

 

「うん!そろそろ良いかなって思ってさー!」

「そろそろって…一体何の事だい?」

「ふふふのふー」

 

んだよこいつは…さっきの今でそんな楽しそうな表情を浮かべてると疑われるぞ…。そりゃあ黒幕だし狂ってんのは分かりきってるが黒幕なら上手い事隠せよ。

 

現に皆も不快そうな顔をしていたり、警戒してたりと疑いの眼で見られてるぞって何で俺が嶋野の事を心配してんだよ?阿保らしい…どうせ下らねえ事だろうがとっとと済ませてくれよな…。沢風達も休んでもらわねえとなんだからよ。

 

「おい嶋野ォテメェはもう少し場の空気を読むッつう力を培えェ」

「流石に自重しなきゃだよ?」

「あんたの明るい所は長所だけど時と場合では短所になっちまうんだよ」

 

皆から咎められるも全く反省の色がない嶋野は変わらぬ声色でウキウキと告げる。

 

「きゃはは、めんごめん!でもウチが黒幕なんだよーって発表したら皆がどんな反応するのかぁぁ!!?って思い浮かべたら~……うぷぷっちゃうでしょ?」

 

…………ん?こいつ今さらっと黒幕だって言わなかったか?言ったよな!?何をしてやがるんだこいつは!!何を考えてんだ!?

 

「…嶋野さん、もう一回言ってくれるかな?」

 

困惑した様子で沢風は聞き返す。他の皆も聞き間違いかと首を捻っていたり困惑していたりする。そんな中嶋野はとびっきりの笑顔で両手を横に広げて、どこまでも嬉しそうに、幸せそうに告げた。

 

「全くー!もう一度だけだよ?ウチは皆をこの絶望ヶ峰学園に閉じ込めてコロシアイを強制している憎っくき黒幕なんだよ?良い?超高校級の放送部、嶋野 恵子は超高校級の黒幕なんだよーって二回言っちゃってた!きゃは!」

 

何なんだよこいつは…何でそんな重要で秘密にするべき事をんな無邪気に楽しそうに話してんだよ…。俺に言うなって口止めしてたのは何だったんだよ…。

 

「……嘘だよね?」

 

唇を震わせて再度問い掛ける沢風は、信じられないという表情を浮かべる。

 

「え、本当だけど…初めての試みだけどこうしたらどうなるかな~って思ったらうぷうぷしてきて耐えれずに言っちゃったー!!きゃはははは!!」

「成る程、気になる事は沢山ありますが貴女が黒幕だったとは驚きですね太郎さん」

 

もう頼むからこれ以上喋らないでくれと願うが、そんな願いは叶う筈がねえ事は分かってる。この後もまた無邪気に絶望を振り撒いてくるのかと思うと憂鬱な気持ちになってきやがる。

 

 

第五章 

 

【戦意の一攫千金大博打、大航海の代行かい?】に続く。

 

ー登場人物ー

 

【予備学科生徒】砂糖(サトウ) 太郎(タロウ)

 

【超高校級のリア充】沢風(サワカゼ) 俊也(シュンヤ)

 

【超高校級の放送部】嶋野(シマノ) 恵子(エコ)

 

【超高校級の氷彫刻家】熱宮(ネツミヤ) 燐火(リンカ)

 

【超高校級の僧】瀬戸内(セトウチ) 太陽(タイヨウ)

 

【超高校級の愉快犯】影山(カゲヤマ) 琥珀(コハク)

 

【超高校級のネット配信者】 鷹倉(タカクラ) ルゥ ヴィクトー

 

【超高校級の折り紙講師】 (フジ) 織姫(オリヒメ)

 

【超高校級の保険委員】 桃瀬(モモセ) 一護(イチゴ)

 

【超高校級のロボット】(ハク)

 

生存者 11人→10人




五章をお楽しみませまぜまぜ混ぜ込みご飯~!
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