パー論 【竜は甘美なる果実に愛を灯す】
…バレンタインデー、明日にはバレンタインデーがやって来る。
…だからどうと言う事はない。僕には何ら関係のない休日だ。
…なのに、何で僕は今チョコを作っているんだろう?
「あ、ちょっとベル、貴女何をいれてるのよ!」
「ウェヘ?オリヒメ、何怒ってんの?」
「怒るに決まってるじゃないの!何で貴女はチョコに明太子ととろろいれようとしてるのよ!」
「はぁ!?ちょっとシャル!レシピ見て作れって何度も言ったよね?」
「ヒィィ!?ヤ、ヤヨイ鬼みたいだよ?ほら二人とも気持ちを沈んで!」
「沈んでどうすんのよ!鎮めんのよ!」
…シャルさん達の方は近付かない方が良さそうだ。ボウルの中から紫色の煙が漂ってるし。
…料理の腕は良いのに何故かスイーツを作る時だけ壊滅的な味になるシャルさんだけどどこかの甘党君のようにアレンジを加えるからだろうと納得した。
「んん?ちょっと妻夫木、これってかき混ぜたら良いんだよねえ?」
「え?うんそうだけどって何でかき混ぜてるだけなのに緑色の煙出てんの!?」
「あ、やっぱりおかしいのかい?変な臭いがしてきて頭フラフラしてきたんだけどレシピ通りだし大丈夫だと思ったんだけどねえ」
「燐はどうしてそうなるのよ!?あんな繊細な氷彫刻作ってんのに何でよぉ!!」
「そ、そう言われても私にも分からないよ…」
…熱宮さんも駄目らしいな、あの煙は駄目なやつだ。僕はギャーギャー騒ぐ方から目線を外し調理に集中した。…そうすると僕の調理を覗き込んできた影山さんが感心しながら言った。
「うわあ、やっぱり手際が良いですね。流石は龍野さん、あの方への愛情が沢山入ってますね!」
「…なっ!?何言ってるのさ影山さん!?あ、あい、愛情なんてそんな僕は!ゆ、友情だよこれは!ゆ、う、じょ、う!」
「そんなに否定しちまってると返って怪しまれるよ?」
…う、そんな事を言われても大体何で僕は彼にチョコを作っているんだろう?
…そもそも作る気さえ無かったのに、彼とは友達として!と、友達として遊びに行ったりしてるだけなんだけど。
「ほらー!りゅうとん、手が止まってるよ?シュガーの事ばっか考えてないで今は目の前の愛情チョコを完成させないと!」
「…だ、だから愛情なんて…モニョモニョ」
…だから違うんだけどな。何でこうなったのかを僕は数時間前の出来事を思い出しながら憂いた。
ーーー数時間前ーーー
「ヤッヒョォォォ!!今日の授業はしまーいおしまい!」
「嶋野お前毎日六時間目の授業終わるとそのテンションで叫ぶて病んでと違うんか!?毎回聞いてて心配なるわ!」
「やだ!ばくわらちゃんったらー!ウチの事そんなに心配なの?惚れ惚れ?惚れ惚れなの!?」
「いや素直にお前のテンションに心配や!こんなんで惚れるかいな!」
…いつも通り嶋野さんと和良井君の漫才を見ながら僕は帰り支度をしだす。
…今日も希望ヶ峰学園での授業は終わり学生にとって何をするか迷う放課後だ。
…まあ僕は今日は放課後予定なんて特にないが、それにここ希望ヶ峰学園の放課後は一般の高校とは違う。…才能を伸ばすために超高校級の人達はその才能に見合った伸ばし方をしている人が多数居る。
(…まあ僕は伸ばす事なんてしたくないけど)
…否が応でも伸ばすようになるんだから自主的にする必要はない。
…僕は鞄に教科書を入れて帰り支度を終わらして帰ろうと席を立つ、既に藤さんや湯上君等は素早く教室から出ている。
…すると教室の後ろでは皆が集まって話していた。
「もうすぐバレンタインだってな!今年こそ!今年こそ!!本命チョコを貰ってやるぜ!」
「ふふふふ、僕だって貰ってやるんだ」
「あんた達は邪念しか感じないから誰もやらないよ」
…熱宮さんの言っている通りだと思うな。二人の顔を見てみるとにやけてる顔をしてて明らかにいやらしい事を考えてると分かる。
「そんなにチョコ欲しいならさ、砂糖君に作ってもらったら?」
「げぇ!?いや木枯、それ俺らに死ねって言ってるよな?何だなんかしたのかよ!?」
「え…ええ?何でそんな言うの?砂糖君のチョコ美味しいよ?」
「……確かに美味しいよ?だけどさ、あのアレンジを加えられたら死ぬからね?」
「ん~木枯さんはさ~持ち前の幸運でまだアレンジ砂糖スペシャル~を食べてないんだね~?」
「は、話には聞いてるけどそんな変なアレンジしてた事ないけどなあ」
…やっぱり超高校級の幸運だな。僕はたまにだけどアレンジなしの絶品スイーツを食べた事があるけどあの味だったら超高校級のパティシエとかで入学出来たんじゃって思うな。
「ふむ、木枯殿は持ち前の幸運で回避しているのだな?しからば特大の不運が襲い掛かっているのではないか?」
「う、うん。実は砂糖君の美味しいスイーツを食べた日って大きな不運が起こるんだ。この前は食べた後銀行に行ったら銀行強盗に人質として捕まっちゃたりとか車に軽く轢かれちゃったりした日もあったな」
「あいつの美味いスイーツ食うとそんな不運くんのかよ!?もはや厄災じゃねえか!俺が念仏唱えてやろうか!?」
…彼の美味しいスイーツを幸運にも食べるとそんな不運が襲ってくるんだ……それほどって事何だろうね。
…僕は砂糖君の名前が聞こえ思わず立ち止まり皆の話を立ち聞きしていた。
…別に他意はない、友達の名前が聞こえてちょっと気になっただけで別にそんな大した用もないし。
…砂糖君、彼は不思議な人だ、ここ希望ヶ峰学園では僕達スカウトされて入学した超高校級の才能を持つ高校生の他にも一般の生徒は居る。
その生徒達は予備学科生徒と呼ばれ多額のお金を払い入学している。
…その多額のお金で希望ヶ峰学園は超高校級の才能を持つ高校生達の才能を伸ばす資金に使っている。その予備学科の中には僕達がよく知る有名な人が居る。
…砂糖 太郎君。所々毛先がはねていて頭部にはぴょこっとアンテナのようなアホ毛があるのが特徴の黒髪をしている。
…砂糖君は超高校級の僕達に並々ならぬ興味を持っていて予備学科なのに本校舎に入る事を許可されている。彼がどのようにして本校舎の立ち入りを許可されたのかは彼の努力の賜物によるものだが今は関係ないか。
…砂糖君は許可された本校舎に立ち入って色々な所を回り大好きな超高校級の才能を持つ高校生に話を聞いたり遊びに行ったり彼が作ったスイーツを食べさせたりしている。
…まあ僕もある事で砂糖君と交流を持つようになって今では週に二、三回程放課後遊びに行ったりしている。自慢とかではないが恐らく、いやきっと一番の友達は僕だろう。
「ん?リュウトそんな所で顔赤くしてどうしたよ?盗み聞いてんの?それかエッチーな事想像してた?」
「…な、シャルさん僕は別に盗み聞いてなんかいないしそ、そんな事考えてないよ!」
「りゅうとんはシュガーの名前聞いて気になっちゃったのかな?うりうり~!」
「…ちょ、止めてよ嶋野さん」
…嶋野さんがにやにやしながら僕を小突いてくる、他の皆の顔を見ると一様に顔を綻ばせている。
…何なのその顔は、どういう感情なの?
「何だ龍野!お前は砂糖にチョコレートやんねえのか?」
「…なっ!僕が何で砂糖君にチョコをあげるのさ!」
「いやいやでもりゅうとん、最近は友チョコなんて言葉もあるし作ってあげたら?」
…友チョコ、そんな言葉もあるのか、まあ友達だし…………僕と砂糖君は友達だし!友チョコを送るだけなら特にそんな大した事ではない。
…でもあげたらどんな反応するだろうか、ありがとなって言ってぱくっと食べて笑顔で美味いって言ってくれたり……砂糖君、喜んでくれるのかな。
「これは龍野さん考えてますね」
「顔もにやけてっしこりゃあ桃色な事妄想してんじゃね?」
「ちょっと瀬戸内、龍野がこんなに幸せそうな顔してるんだからそんな事言わないの!」
「わりーって妻夫木、そんな睨むなよ」
…はっ!?ぼ、僕は何を考えて!?
「それじゃあリュウトはチョコ作るんだな!ワターシ達も一緒に作ってみようよ!」
「…え?僕作るって言ってな」
「つべこべあべこべ言わない!」
…僕の言葉はシャルさんによりかき消されてしまったけど何であべこべを入れたんだろう?
「じゃあ女子全員で集まってバレンタインのチョコでも作ってみようよ!後先に帰っちゃったプリンセスちゃんにメカ子も誘わないと!」
「なら鈴木崎は私と影山で呼びに行くわね」
「ワターシとナエはオリヒメ呼びに行ってやる!」
「それじゃあホムラっちとウチはりゅうとんと一緒に材料買って厨房行こうよ!」
「厨房にある程度材料はあるだろうからそんなには入らないね」
…なんか勝手に決まっていってるんだけど。僕に拒否権はないのかな。
「おい百澤、これは俺らにチョコくれるフラグか?」
「奇遇だね瀬戸内君僕もそう思ってた所だよ。誰からきても僕は万全状態でウェルカムだよ」
「これは甘いチョコよりももっと甘い展開になるかもな!」
「十八禁なるかな?」
「君達二人は大概にしときたまえよ?」
…わちゃわちゃとしている間に僕は帰ろうとこっそり歩いているとガシッと嶋野さんと熱宮さんに腕を掴まれ連行されていく。
…別に作るくらいは構わないけど一人で作るつもりでいたのに……嶋野さんのにやにやした顔を見てこれはまた弄られるなと思わずため息が出てしまう。
…こうして連行されて僕達はスーパーにて材料を買うことになった。
…仕方ないか、こうなれば別に作りたくはないけど日頃のお礼として砂糖君に友チョコをと、も、チョ、コ!としてプレゼントしよう。…親しき仲にも礼儀ありと言うしね。…親しき、そう僕達は親しい仲なんだ。
「さあそれじゃあ何から買うかね。仕方ないから瀬戸内と百澤の分含めて男子全員の分を作るとするか」
「ほっほう!ギラリンにはっちんにも渡したげるんだ!私は渡したげないけどね~ってか勿論私は本命チョコ一つだけしか作らないし!」
…まあ嶋野さんはね、彼氏さん居るし当然だよね。
「りゅうとんはシュガーに渡すんだから相当甘々にしないとだよね?なら片っ端に甘いもの探そうか!」
「確かに砂糖の甘党はブラックホールのようだからねえ。限度があるのか…時々恐怖を感じるよ」
…身震いする熱宮さんには同意をせざるを得ない。彼が甘過ぎると言った事なんて一度もないし多分これからもそんな言葉聞けやしないだろう。
…とりあえず僕達はチョコ作りに必要な物を買い物カゴに入れていった。
…そして一通り揃ったら次は砂糖君用に特別甘くするために甘い調味料を探して回った。
…相当な数の甘いものを買い物カゴに入れていくが見ていると甘い匂いが漂ってきて…というか甘過ぎる匂いが僕の嗅覚を激しく刺激し脳まで甘く蕩けそうになる。
…隣を見ると嶋野さん熱宮さんも同様に顔を顰め鼻を摘まみ出した。
「うへぇ~流石にこの甘々な匂いには参ったね~」
「…これ位にして引き上げようか?」
「それが良いさね…周りの人にも被害が及ぶからね」
…僕達は素早く会計を済ませ学園の厨房に向かった。
…会計時は店員さんが匂いに顔を歪め学園の厨房に向かう最中は通り過ぎる人達から振り返られたりした。
「お、戻ってきたね!三人ともお疲れ様!」
…厨房に入ると既に他の皆は集まっていた。藤さんと鈴木崎さんも居た。
「何で私がチョコなんか作らなきゃいけないのよ?」
「まあまあ!良いではないか良いではないかアーレーって感じじゃんよ!」
「シャル?それはどういう感じなのかな?意味不明過ぎるけど」
…ため息を吐きながら憂いている藤さんだが恐らくシャルさんが強引に呼んで連れてきたんだろう。
…色々文句を言うが純真に迫ってくるシャルさんには甘いのが藤さんだ。…まあシャルさんの押しの強さもあるけどね。
「いよっしゃー!ワターシ渾身のチョコ作りやがりますってねー!」
「ベル、貴女は余り張り切らない方が良いわよ」
「ええーー!!何でさオリヒメ!」
…自信満々なシャルさんだけどありえないアレンジを加えるし藤さんの言うことは分かる。
…本当に何でいらないアレンジ加えちゃうんだろう、普通に作れば美味しいのにな。
「よしっ!それじゃあ早速チョコ作りに取り掛かりましょうか!」
「とびっきり超美味いチョコ作っちゃうよー!」
「気合入ってるじゃんか嶋野」
「たりめーようメカ子!愛しのダーリンに作っからね!」
…そうして僕達はチョコ作りを開始した。…そして冒頭に戻ることになる。
…シャルさんが普通の人ならいれないありえない物をいれたり熱宮さんはレシピを見て作ってるのにドロドロで何て言えば良いか分からない形容しがたい物を作ってしまったりしていた。
…木枯さんは少し焦がしたりやらと少々ミスがあるけどシャルさんと熱宮よりは食べれるチョコを作れてるから大丈夫だ。
…普通の腕前なのが鈴木崎さんだ。特に失敗もなく作れている。
…料理の腕が良い妻夫木さん、藤さんはシャルさんと熱宮さんに付きっきりで教えているがちゃんとしたチョコが出来る可能性は低そうだ。
「…よし、後少しで完成だ」
「私もです、皆さんの人数分作ると時間やっぱり掛かりますね」
「…分担してるけど思ったより掛かったよね、まああっちの方があれだからね」
「シャルさんと熱宮さんがド下手だからね」
…僕が言葉を濁したのに木枯さんがあっさりとド下手と直球で言ってしまった。…ほら、ド下手って言葉を聞いてシャルさん熱宮さんがショックを受けてるよ。
「苗、あんたもう少しオブラートに包んでくれないもんかねえ?いや、自覚はしてるけどそうハッキリと言われるとねえ…」
「ドドドドド…ドヘタ!?ワターシドヘタなの!?」
「何で貴女は自覚してないのよ……」
「ホヘ?」
…顔を傾げながら疑問の声をあげるシャルさん。藤さんも今日何度目かのため息を吐いて頭を抑えた。
…後はチョコケーキの焼き上がりを待つだけだ。…待つ間に使った調理器具等を洗う。
「何で貴女達洗うのは早いのよ…」
「フフーン!これがワターシの努力の賜物です!」
「洗うのは単純作業だけだしね、彫刻作るより遥かに簡単だよ」
「その調子で料理も上手くなったら良いよね」
「ウグッ!ナエの弾丸がワターシを撃ち抜くゥゥ。でもでもスイーツはダメだけど他の料理は上手く出来てる!」
…まあ確かにシャルさんの普段作ってる料理は美味しい、スイーツになるとポンコツになるだけだ。
「りゅうとんはちゃんと真心込めて愛情注いだ?」
「…だ、だから愛情じゃなくて友情を!」
「ぷーくすくす、照れちゃってるりゅうとんキャワイイ!!」
…すぐに弄ってくる嶋野さんには呆れてしまう。…皆もにやにやと僕を見てくる、ちょっと止めてほしいんだけどな。
「いやーりゅうとんはからかいがいがあって楽しいんだよねー!」
「…止めてよ」
「ゴメリンゴリラッパ!!」
…いやそんなどや顔で言われても反応に困るよ。…シャルさんだけが目を輝かせながら嶋野さんを見ていた。
「エコ!なにそれ閃きの発想力じゃない!」
「でっしょー?崇め奉りなさいなってのよー!」
「この二人のテンション疲れるんだけど?」
「奇遇ね鈴木崎さん、私もよ」
…藤さん、それは多分この場に居る人全員思ってるよ。…でも木枯さんも少し目を輝かせていたのを見逃さなかった。…木枯さんも結構天然な所があるからな。
「ねえねえ!折角女子が集まってるんだし恒例のあれやろうよ!」
「あれってなに?」
…いきなり嶋野さんから提案がきたけど妻夫木さんも言ったようにあれって何だろうか?
「決まってるでしょう!恋バナだよ恋バナ!女子が集まってるこれすなわち女子会、からの恋バナは必然の定理!」
「あんた定理とか言葉知ってんだ」
「え?ちょ、メカ子言葉の棘少し和らげようか?」
「大体龍野男じゃん、女子会ではないよね?」
「うんぐっ!?……そこはフィーリングでどうにかしてよ!」
「横暴じゃない?」
…いきなりの提案、恋バナと言われたけど僕は勿論ないけど皆はあるのかな?
…嶋野さんは彼氏さんが居るけど他の人達は居なさそうだけどな。
「まあとりあえずさ、早速皆は好きな人居る?」
「いやそんないきなり言われても…私は今は居ないけど」
「えーフウフちゃん居ないのー?まあバイトで忙しいだろうしね。じゃあじゃあお次はメカ子!」
「居ない」
「みっじか!!」
「逆に聞くけどそれ以外に私が言うと思う?」
「んー予想通り!」
…確かに予想通りだ、鈴木崎さんから好きな人が居るなんて言葉を言うところは想像できないな。
「他の皆は居ないの!?」
「ワターシは皆大好きだぜ!」
「あ、それは求めてた好きじゃないな!シャドーちゃんにナエトンは!」
「え?私は今居ないかなー」
「私もです、居ませんね」
「えー!つまんないー!ならプリンセスちゃんは…居ないだろうね~。ホムラっち…も居ないよね?あ、りゅうとんは言わなくても分かってるから!」
…なっ!?
「…な、なななな何を言ってるのさ嶋野さん!?何で僕は言わなくて良いのさ!?」
「ちょっと何で断定されないといけないのよ?」
「そりゃ居ないけどさ、そうどうせ居ないだろうって言われるとイラつくねえ」
「いやだってプリンセスちゃんは性格的に居ない確定でホムラっちはメカ子もだけど毎日放課後は自分の工房に籠ってるからそんな暇ない女死力滾ってる女子だし、りゅうとんはお察しの通りりゅうとんじゃん?」
…僕達凄く貶されてない?僕に至っては理由が意味不明すぎる。
「んーじゃあさじゃあさ!クラスの男子で良いなって思う奴居る?シュガーも入れて良いからさ、良かったねりゅうとん!」
「…だ、だから!何で砂糖君が出てくるのさ!?僕と砂糖君はただの友達だって!!」
…これで何度目だろうか、僕と砂糖君は友達…えへへへ友達…。
「た、龍野さんいきなり笑いだしましたけどどうしたんでしょう?」
「顔赤くして熱でも出てんの?」
「いやーこれは砂糖の事を想像してんじゃないの」
「ナルハチとタイヨウみたいなスケベー想像してんのか!」
「…はっ!?シャルさん!そんな事想像してないよ!」
…い、嫌だあの二人と同じに見られるなんて絶対に嫌だ!
…思わず身震いをしてしまう…教室でもあの二人は授業中も関係無くそういう話をし始めて皆から白い目で見られる。
…でも僕には何を話してるかほぼ分からないんだけどね。
「それじゃあとっとと話そっか!先ずはナエトン!」
「え、私から?ええっと…砂糖君は優しいよね。そんな大した才能でもない私にまで優しく話し掛けてくれたし」
「……へえ」
「龍野君?なんか顔怖いよ?」
…嫌だなーソンナワケナイジャナイカー木枯さんったら全くー。
「も、もう私は大丈夫!次熱宮さんどうぞ!」
「え、私かい?そうは言ってもねえ…瀬戸内は馬鹿だけど接しやすいし気楽で良いねえ」
「確かにあいつは相手してて疲れない」
「まあ欲望に正直ではあるけど良い奴ではあるよね」
…何だかんだ瀬戸内君は好評価を得ているんだな。
「ワターシはナルハチと仲良しこよしその日暮らしですねー!アニメゲーム好き同士語り合ったり対戦したりしてるよ!でもナルハチ強すぎネ!」
「ベルは恋愛的な感じは一切無さそうね」
「ん?ワターシまだラブがどういう感情か分かんないね!そう言うオリヒメはラブな人居んの?」
「私?…………居ないわ」
「あ、ウソっぱち言いましたねオリヒメ?」
…藤さんが言い終わるやいなやすぐに遮ってきたのはシャルさんだった。…これには藤さんも驚いて目を見開いていた。
「何で嘘だと思うのよ」
「何となくですけどオリヒメは今誰かを思い浮かべたね?」
「そんな事は……ないわよ」
「いやいやゼッテー居やがるだろー?ほら先っぽだけ言ってみ!ほんとに先っぽだけ!」
「ちょ!?な、何言ってんのよあんたは!」
「フェ?ヤヨイどしたのさ顔赤くしてー。ナルハチが困ったらこう言えって言ってたんだけど?」
「あ、ああぁぁぁんのドスケベゲーマーがぁぁぁぁぁ!!次会ったら許さない!」
…妻夫木さんを怒らせたな、これは百澤君死んだかな。
…僕は心の中で静かにこれから死する百澤君を思い祈った。
「まあまあ、後ではっちんを滅するとしてお次はシャドーちゃん!言ってみよう!」
「え、私ですか?そう言われましても皆さん良い方ですけど」
「えーそれって恋愛絡まない良いなじゃんー」
「そう言われても…恐らくですけど嶋野さん以外は誰も恋なんてしてないですよ」
「うーつまんないじゃん…じゃありゅうとんシュガーの良いところ言ってよ」
…え!?な、何で僕だけ名指しで砂糖君限定なの!?
「ほらほら驚いてないでどうせりゅうとんはシュガー一択だろうし」
「…ちょ、待ってよ嶋野さん。何で僕だけそんな強制的なのさ」
「強制じゃないって!これは必然の流れ!さありゅうとん言ってみよー!」
…有無を言わさない圧力を掛けながら詰め寄ってくる嶋野さんに何とか抵抗する。…抵抗していると妻夫木さんが僕の肩に手を置いてきた。
「龍野、諦めな?嶋野はこうなると諦めないって知ってるでしょ?」
「…うっ、それはそうだけど」
「早く言っちゃいなって、後少しであんたのチョコケーキも出来上がるし話してたら焼き上がるって」
「…う~、分かったよ」
「お!言ってくれるか!ならばさあハリーハリー!」
…かなり恥ずかしいけど言う事にしたら嶋野さんは喜びながら僕から離れた。
…他の皆もしっかりと僕の方を見ながら僕が話すのを待っている。…え、これって僕嵌められたんじゃ?
「…砂糖君の良いところ、か。先ずはまあ木枯さんも言ったように優しい所だよ。暇さえあれば遊びに誘ってくれたり一緒にスイーツ作ったり、凄く楽しいし初めて話し掛けられた時は冷たくしたのに諦めずに話続けてくれたしね」
「龍野君が明るくなったのって砂糖君のお陰だよね。だって最初の頃なんて誰とも話さなかったし話し掛けても一言位しか返してくれなかったし」
「そうそう、それが砂糖がこっちにも遊びに来るようになってから龍野も普通に接するようになったよね」
…確かに最初は才能の事もあって誰とも仲良くしないだろうって思って冷たくしてたな。
…でも砂糖君のお陰だよね、こうして皆とチョコ作ったり出来るのは。…それに僕の才能を知っても変わらず接してくれてる皆にも感謝だよ。
「他には!?リュウト!」
「…うん、砂糖君ね、正義感も強いんだよ。二人で遊びに行った時に万引き犯が居たんだ。そしたら砂糖君万引き犯を捕まえて警察に引き渡したり、あの時は格好良かったよ……」
「またリュウトがタロウに思い馳せてますぞ?」
「やっぱ愛でしょこれ?」
「…はっ!?あ、愛!?だから僕は!」
「あーはいはい、愛情は愛情でもこれは親愛のほうっしょ?友達としての親愛って事っしょ!」
…親愛?ま、まあ親愛なら分かるかな。…親しいしね僕達は。そう僕達は友達として凄く親しい…親友と言っても良いんじゃ……。
「リュウトこれで何回目のタロウスイートタイムなの?」
「何なのそのスイートタイムなんて甘ったらしいものは」
「ベルリンもなかなか甘々な発想じゃない!」
「エッヘン!」
「…………えへへへ」
「この三人もう手遅れじゃないかい?」
「とうの昔から手遅れでしょうね」
…僕が少し、ほんの少しだけ砂糖君との楽しい思い出を思い出してたりすると僕の耳にチーンと機械音が聞こえてきた。
…そこで僕を含めた皆はその音の方に顔を向けた。…どうやらチョコケーキが出来上がったようだ。
「ヨッシャー!ワターシが上手に取り出すよー!」
「ベルさん危ないですよ?気を付けないとですから」
「コハクありがとね!なら気を付けて上手に取り出すよ!」
「あんた本当に分かってんの?」
…僕達は出来上がったチョコケーキを取り出した。…うん、我ながら良い出来だと思う。…試しに味見をしてみよう、僕は一口食べてみた。
…すると僕の口の中を極上の甘さが刺激してきた。
「…んぐっ!?あ、あぁぁぁ!!?」
「え!?ちょ、どうしたのさ龍野!?なんかあったのかい!?」
「ど、どどどどうしたの龍野君!?」
「…み、水を、水を!」
「りゅうとん、ほい水だよ!」
…嶋野さんに渡された水を勢い良く飲み干した。
「…はぁはぁ、あ、ありがとう」
「どういたしまして!それでどうしたの?不味かったとか?」
「…い、いや……甘過ぎて」
「あー…そりゃあシュガーにプレゼントすんだから甘々にしないとだよね」
…我ながら出来映えは良いけど味は……結構砂糖君が作る甘さに近付けてるんじゃないかと思う。
「私達も出来は良いわね。まあ熱宮とシャルのは……見映えは良いけど」
「食べるのが怖いね」
「あらそれなら簡単よ。瀬戸内と百澤ついでに猫屋敷にも食べさせてやれば良いのよ」
「あ、それ良いじゃん、プリンセスちゃんの案採用!」
…藤さんの提案により三人が食べる事が決定した。料理していた時の二人を見てたから出来は良くても恐らく味は壊滅的だろう。
…それと猫屋敷までもついでに言ったのは多分日頃から良く弄られてるからその腹いせでだろう。
…そうして綺麗に箱に入れてチョコ作りはお開きとなった。…僕は明日これを渡すのか、今更になって恥ずかしさが増してきた。
…別に間違いはないけどそれを砂糖君は知ってないけど。…僕は悶々としながら自分の部屋に着いた。
…部屋に入っても何をしていてもドキドキは止まらず心ここにあらずって状態だ。
…もう明日に備えて寝てしまおうと布団に入りこんだけど今の状態で寝れる筈もなく長い時間悶々としていた。
…こういう時は楽しい思いででも思い出してたらいつの間にか寝れてるんじゃないかと思ったのでそうしてみる事にした。
…砂糖君と初めて話し掛けられた時、遊びに行った時、料理を作った時……どれも大切な僕の思い出で宝物だ。
…明日も…素敵な………思い出……に…………。
…気付けば僕は寝ていた。起きたら朝だった。
…砂糖君にはメールで呼んでいるから後は集合場所に行ってこれを渡すだけだ。
…何をドキドキしているんだろうか。…これはきっと恥ずかしさから来るドキドキだ。
…僕は身支度を済ましチョコケーキを持って外に出た。
…待ち合わせ場所に着く。…まだ時間までは少しある。砂糖君は必ず時間より少し早めに来るから後数分で来るだろう。
…そうして待っていると遠くから砂糖君が来ているのが見えた。遠くからでも分かる所々ぴょこっと跳ねている黒髪はいつも通りだ。
…笑顔で僕に手を振っている砂糖君に若干恥ずかしさがありながらも手を降り返す。
「よう龍野!お前から用があるなんて珍しいじゃねえか!」
「…う、うん。ちょっと渡したい物があってさ」
「お、何だ嬉しいじゃんか!」
…無邪気に笑いながらはしゃいでくれる砂糖君に鼓動が早る。…もうさっさと渡してしまおうと僕はチョコケーキを取り出し砂糖君の前に出した。
「ん?これは…」
「…こ、これ今日はほら、あれだから、友チョコでって言うか皆から作らされたって言うかでもまあ作りたかったのは本当でってそれはどうでも良いからこれどうぞ!」
「お、おう。なんかスゲー早口で言ってっから後半聞き取れなかったぞ、でも友チョコか!サンキューな!」
…砂糖君は僕のチョコを受け取ってくれた、砂糖君なら受け取ってくれると分かっていても嬉しくて自然と顔がにやけてしまう。
「これ今食べても良いか?」
「え?う、うん。じゃあそこにベンチがあるし座ろっか」
…ベンチに座り砂糖君がチョコケーキの入った箱のラッピングを解く。…それを見て鼓動が更に早くなったように感じる。
…これ砂糖君に聞こえてないかな?
「おお!チョコケーキじゃんか!美味そうだな!」
「…あ、ちゃんと使い捨てのフォーク持ってきてるよ」
「お、ありがとうな!それじゃあ早速いただきまーす!」
…遂に砂糖君がチョコケーキを食べた。果たして砂糖君の口に合うかどうか凄く不安だ。
…すると砂糖君はプルプルと体を震わせ始めた、ま、不味かったかな?
「…砂糖君?」
「うっ!」
「…う?」
「う、うめー!これうめーぞ龍野!甘さも良いし絶品だ!何個でも食べれるぞ!!」
「…!!よ、良かったぁ~」
…どうやら甘さも砂糖君のお眼鏡に合ったらしい。…先程までの不安なドキドキ感は消え去り今は美味しいと笑顔で言ってくれた砂糖君に幸福な気持ちで顔が綻ぶ。
「モグモグ、あそうだ龍野、俺もお前にチョコ作ってきたんだぜ?」
「…え"!?」
…砂糖君が作ったチョコ?う、嬉しいけどそれはいつものアレンジ付きかな?
…僕は不安になりながら砂糖君が取り出したチョコが入ってるだろう箱を貰った。
…またドキドキしながら箱を開けるとそこには…マシュマロが入っていた。
「へへへ、チョコマシュマロだ!美味いから食ってみてくれよ!」
「…う、うん、それじゃあいただきます」
…恐る恐るマシュマロを口に運んだ。そして勇気を出して口を動かし味を広げる。…すると口の中から程よく甘く美味い味で僕を幸せな気持ちで包んできた。
「…美味い、砂糖君このマシュマロすっごく美味いよ!」
「へっへっへーだろう!?自信作だぜ!」
…良かった、今日はアレンジを加えてないみたいだ。
…いつもこの味だったら超高校級になるのも夢じゃないと思うんだけどな。
「いやーしかし龍野のこのチョコケーキウッメーな、甘さも控えめになってっしビターチョコだな!」
「……え"!!?甘さ控えめ?」
「ん?おう!食いやすい甘さ控えめチョコケーキだな!」
…え?あんなに甘くしたのにまだ控えめなの!?…愕然としながらマシュマロを口に運ぶ。
…少々ショックな事があったけど僕と砂糖君はそれぞれが作ったチョコを完食した。
「はー!美味しかったな!」
「…うん、凄く美味しかったよ、ありがとう砂糖君」
「俺の方こそありがとうな!それじゃあ今日は俺見たい映画あるんだけど観に行くか?」
「…うん!良いね、それじゃあ行こっか!」
…僕達二人は共に揃って歩きながら映画館に向かう事にした。…初めて人にチョコをあげたけどまだまだ甘さが足りないと言われたし来年もリベンジを兼ねて作ろうかなと思った。
…でも今は来年の事より今を楽しんでおこう!
ーーー物陰ーーー
「行った?」
「うん!行った行った!」
「どうやらちゃんと渡せたようだねえ」
「でもシュガー甘さ控えめって味覚がぶっ壊れ過ぎでしょ!」
物陰から姿を表したのは龍野と同じクラスの女子達だった。嶋野の言うように龍野渾身の甘いチョコケーキを控えめと言った砂糖にはあり得ない者を見る目で皆見ていた。
「でもあの二人幸せそうだったじゃない?それで良いんじゃないかしら」
「そうですね、お二人とも笑顔でしたしね」
「はい!それじゃあ私達も男子にチョコあげに行くわよ!」
「じゃあ私はダーリンに渡して来るねー!」
そうして女子達も男子達に甘美なる果実を渡しに行ったのである。
追記、瀬戸内、百澤、猫屋敷の三人は見事に何も知らされず熱宮、シャルロットの作ったチョコを喜んで食べて意識を失ったとさ。
終わり
甘い青春ですね!読んで下さりありがとうございました!