ハイパーダンガンロンパ   作:ゲップ助かります

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これは物語の渦中に居た者達の心情。

安らかには眠れない、止まっていたらどれほど良かっただろうか。

安眠は訪れない。


一章【トマレナイ】

モノクマから渡された動画には私の想像を遥かに超えた衝撃の光景があった。

数秒前までは笑顔を私に向けてくれていた愛すべき家族が、家が、変わり果てた。

 

家族の姿がなく、皆の悲鳴が聞こえてくる。不吉な何か液体が噴射した音が、聞き慣れないパァン!という破裂音が聞こえてきて更に悲鳴は大きくなる。

 

……私はここから出なきゃ、あいつらが待っているんだ。この手が汚れてもいい。家族を守れるならそれでいい。

まだ死んだと決まった訳じゃない。無事かもしれないなら私はその可能性に縋る。

 

やってはいけない最低な事をする自覚はある。でも私はすぐに実行に移す事にした。

たった数日過ごしただけの人達と私の全てを賭けてでも守りたい大事な家族。どちらを取るかなんて始めから決まっている。

 

心が痛い、なんて言っている場合じゃない。自分を庇護しようとするな、今から行うのは皆から恨まれ蔑まれる一番最低で屑な行為だ。

 

心を殺せ。今は家族の無事を願いながら自分のすべき事を成功させるだけ。

 

私は殺しに使えそうな物を探した。

 

倉庫を探しているとうってつけの金色の模擬刀があった。これを使えば……と思っていたら木枯に見付かってしまった。

その時はすぐに出ていった。そしてもう一度倉庫に来て他に使えそうな物がないか探していると、後ろから誰かが入ってくる音が聞こえて慌てて振り返る。

 

「どうしたんだ妻夫木?そんなにビビって」

 

その人物は砂糖だ。

 

「な、何でもないよ……砂糖こそどうしたのよ?」

 

冷静に対応しようと口を開くが一言目から噛み声が震える。ここでバレるわけにはいかないんだ。

 

「俺か?俺はあの甘いジュースを取りに来たんだよ」

「…あんたあの甘々な飲み物まだ飲んでんの?」

「失礼な、あの甘さが良いんじゃないか」

「あれは舌が溶ける甘さよ…」

 

まさか私が殺人を計画しているとは露程も思っていないんでしょう砂糖は呑気に話し掛けてくる。

悟らせないよう必死に動揺する気持ちを隠して会話を続ける。

 

「お前顔色も悪いし休んだ方が良いんじゃないか?」

 

突然砂糖から心配した表情を浮かべて気遣われる。もしかしてバレた!?と顔が青白くなるのを感じる。

 

「いやいや大丈夫だって!大したことないし元気だよ!」

「…まあお前がそう言うんならそう言うことにしとくか。でも無理はするなよ?なんかあったら俺らに遠慮なく言えな?」

「…う、うん分かった。ありがとね砂糖」

 

どうやら誤魔化せた様だ。それでも砂糖は訝しんだ顔をしている。

普通なら優しいこいつの言葉に甘えて休んだりしたいが、今はその砂糖の甘い優しさは私には毒でしかない。

 

砂糖は最後まで心配そうに私に顔を向けていたが、やがて目当てのジュースの箱を抱え、倉庫を出ていった。

 

私はもう…止まらない…止まってはいけないんだ。まずはこの模擬刀を誰にも見付からないように持ち出さないと。

それと……誰を狙うかだ。それはもう目星は付けてる。あいつなら、来てくれるだろうから……。

 

 

ーーー保健室ーーー

 

 

ドキドキと心臓が速まり私の体の内側で暴れる。まるで台風の様に荒れ狂い今にも破裂しそうだ。

 

来て…くれるよね?

 

この数日であいつなら誘いに乗って来てくれるだろうと思い、殺すターゲットに選んだが来なかったら明日の朝皆に知れ渡って疑われるかも。

 

それでも今さら止めるなんて事はしない。覚悟はとっくに決めてるんだ。

 

模擬刀はベッドの毛布の下に隠した。まずは油断させてから殺す。

確実に息の根を止めるため。

 

永遠にも感じるが時間を確認するとまだ数分ほどしか経っていない。

そうしていると誰かがこちらに歩いてくる音が響く。この時間だ。きっとあいつだろう。

私は気合いを入れ直し、保健室のドアを見つめる。大丈夫、これが終わればあの子達に…皆に会える。

私が支えないと…………。

 

 

ーーー

 

 

「ごめん!ごめんね!」

「っ~!!!?」

 

声にならない叫び声をあげ、俺は困惑していた。

 

パーティーの準備をして、明日に備えて寝ようかと部屋に戻ると部屋の扉の下から誰かがメモを挟んでいた。

読んでみると妻夫木君が俺に相談したい事があるから夜中二時に保健室まで来てくれ、との事だ。

 

俺は勿論保健室に向かった。あの映像を見せられてから妻夫木君は明らかに精神を磨り減らし、不安定な状態だ。

 

俺が少しでも和らげれれば幸いだ。そんな気持ちで保健室に入ると、妻夫木君がやけに怖い顔をして居た。

心配で声を掛けるも大丈夫だと言われたが…やはりまだ不安なのだろう。

 

力になるならいくらでも相談になるぞ!皆で助け合っていかないとな!

 

それで話は何だと聞くといきなり妻夫木君は保健室にある薬の入った棚を指差して、あそこの棚を調べてみてと言われた。

 

なんだろう?

 

訳が分からないまま、言われた通り調べてみるも特におかしい所はない……と後ろを振り返った俺を待っていたのは今まさに俺に向かって金色に輝く模擬刀を振りかぶり当てようとしている妻夫木君だった。

 

なんとか反射的に体が動き、妻夫木君のそれを避ける。そこから妻夫木君の猛攻を避けて妻夫木君に呼び掛け止めてもらうと叫ぶ。

 

だが、止まらない。懺悔の気持ちを呪詛の様に呟きながらも模擬刀を振るうのは止めない。

だがなんとか体格差で妻夫木君の模擬刀を掴み、投げた。

 

だがその時の俺は冷静ではなかった。模擬刀を奪われた衝撃でよろけて倒れる妻夫木君に、俺は近くにあった棚からある物を取り出し、妻夫木君の首を絞める。

 

「かっ!?…ぁあ!!がぁはあ!!ぎぃ、ぃぃぃぃぁぁぁっ!!!」

 

体を暴れさせ、逃れようと藻掻くも力の差は歴然。次第に妻夫木君から声が消え、動きが弱まり…………遂には動かなくなった。

 

俺が彼女を殺したとだと分かったのはそれから数分後、妻夫木君の亡骸の前で立ちすくんで居ると保健室の扉がカラカラと開く音が聞こえ、我に返った時だ。

 

恐る恐る扉の方を見ると驚愕に包まれて体を震わせてるシャルロット君。

 

…………ミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタミラレタ

 

シャル君が何かを言っていたが俺には聞こえなかった。一歩、俺がシャル君に向けて踏み出すと体を一際大きくビクッと震わせ、後退りに一歩。

 

構わず一歩一歩と進んでいたら足先に何かぶつかる。

 

…………ナンダロウ???

 

見ると妻夫木君が持っていた模擬刀……それを拾い上げシャル君を見る。

 

「ヒッ………!?」

 

小さく悲鳴をあげたと思えば走り去る。

 

ニガサナイ!

 

足には多少の自信がある。いくら努力家で運動神経が良いシャル君でも逃げ切れない。現に徐々に距離を縮まっていく。

ああ……もうすぐ追い付く……。俺はもう……止まれない。

 

 

ーーー

 

 

Pourquoi!?(なんで!?)Pourquoi!?(どうして!?)

 

PourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoiPourquoi………ナンデ!!?

 

訳が分からないヨ…ワターシが何かダメダメな事しちゃった?

神様、なんでどうしてワターシはイケナイ子でしたか?努力しました。

 

慣れない環境もあって中々寝れなかったから、散歩してたらおっきな音が聞こえた。

 

見に行ってみようと思わなければ良かった。そもそも夜は出ちゃいけなかったのに…。

それがイケナイ事?

 

後ろからススムが迫ってくる。いつものススムじゃない。ワターシは知らない、あんなススムは知らない!

ヤヨイが動かなくなってた…あれはどう見てもススムが……なんでススム!?

 

嫌だ、嫌だ嫌だイヤだイヤだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダN'aime pas!!(嫌だ!!)

 

ワターシはもう止まれない、止まったら……無我夢中で走っていたら衝撃がワターシの体を貫く。ススムに追い付かれた…………。

 

ふらつく、視界がボヤける、やめて……ボヤける視界の中、最後に見たのはキラキラに光っているもぎと『ゴッ!!』

 

鈍い音が耳に聞こえ、消えていく……。

 

ーーー

 

ああ、覚悟を決めたと言っていた少女。所詮はその程度の覚悟で殺せるわけがない。

だからこうなるのだ。

 

真面目に愚直に進む愚者。だからお前は止まれないんだ。

 

気まぐれで下手に刺激する事をするからだ。努力でどうにか出来ると思っていたか?

 

世の中は不浄で理不尽で下劣だ。

 

少しは勉強になったか?……ああ、もう全員死んでいたな。




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