クロスオーバー世界の破壊者 NEO-DECADE 作:サルミアッキ
AICで拘束されている千冬が、冷淡な瞳を向けてくる弟と教え子に非難の声を上げている。訴えかけるような視線で自分の無実を証明しようと懸命に口を開く。
「ぐっ…――――私に何をするんだ、“ラウラ”、“一夏”……」
「また、言ったな…!」
「うむ、間違いない。この女は教官ではない!」
二人はそう断言しAICの出力を上げた。
「あがッ…!何……、を根拠に…――――!」
「千冬姉はな、教師の仕事をしている時には俺らのこと…――――――――『織斑』みたいに名字で呼ぶんだよ。それに、何で“千冬姉”っつったのに俺に注意しなかった?」
その言葉に一瞬表情が無くなった後、千冬の姿をした人物の口からギリッという歯軋りの音が聞こえてきた。顔は不愉快そうに歪み、空中で磔にされた身体にコズミックエナジーが溜まっていく。
「……『ちっ』」
「…――――――――お前は誰だ」
「『ふん、信頼に訴えかけようとしたのが仇になったってか』」
声音が織斑千冬のものから打って変わって、粗暴で乱暴な口調へと変化した。それに続く形で仮面ライダー部の面々が理詰めで彼女の正体を暴いていく。
「それだけじゃねーぜ。千冬姉とツカサさんの会話はフードロイドで聞いていた」
「だからこうして仮面ライダー部が集まったわけだ」
「近隣住民の避難は済ませましたわよ」
「もう間もなく日本軍のIS乗り達が来るはずだよ?」
「投降するならば今の内だ、こう言った開けた土地ではゾディアーツは後手に回りやすいのは分かっているだろう」
次々己が武器を構え、彼女を逃がすまいと接近するIS乗りたち。ゲンタロウもフォーゼドライバーのレバーに手をかけ、変身をしようと動きだすが…――――その時。
「『ハッ、笑わせるねぇ。私を軽く見てるなぁ、ぇえおい?』」
その場の重力が曲がり、偽物の千冬を押さえつけていた斥力が腕力一つで捻じ伏せられた。激しい衝撃波と共に地面へと降り立つ世界最強の擬態は、その瞳を赤く怪しく輝かせる。
「なっ……!自力でAICを抜け出したとでもいうのか!?」
「『勘違いすんな。この姿はゾディアーツの身体の上に幻影を載せているだけだ。只の人間の姿とは格が違う』」
偽千冬は一本の杖を虚空から取り出すと、その石突で地面を叩く。シャリンと音が鳴ると一瞬だけ別な星座が輝き、そしてもう一度蜘蛛座が浮かぶ。その闇が晴れると、彼らとは因縁深い一体のゾディアーツに変化した。
「お前は……!」
「アラネア・ゾディアーツ‼」
『おおあったりー、んでもってな』
不気味な光粒子が発生すると、その体に幾つもの脚が生え、下腹部はメカニカルな金属組織細胞で覆われた。その姿は正しく神話のアラクネに相応しい。
『ハッハッハー!どぉだ‼ISとゾディアーツの融合合体だぜ?ご感想はぁ?』
「……悪趣味だな」
オータムの姿はホロスコープスとISを融合させた歪な機械生命体、
「……良いのかな、巨大化は負けフラグだよ」
『ほぉ?……それはこれ見て言いやがれ!』
「!」
簪のジョークに応える様に攻撃姿勢になったIS融合ホロスコープス、『アラネア・アラクネア』が頭上に超新星爆発を発生させる。
「やるってことか……」
一夏の展開した白式のアームが雪片弐型を握りしめ、一方ゲンタロウはドライバーのスイッチを押し、レバーに手を伸ばす。
「売られた喧嘩は買わせてもらうぜ‼」
『……ハァ‼』
ドライバーの変身シークエンスが起動すると同時に、アラクネの頭上から超新星がホーミング弾のように離散しISたちへ殺到する。無論、仮面ライダーへも迫って行く。
【3】
【2】
【1】
だが。
「変身‼」
巻き起こるコズミックエナジーの波動。ISの特殊機能。それぞれが迫りくる超高熱の火球を吹き飛ばした。濛々とする煙の奥からオレンジ色の瞳の仮面ライダーが叫びを上げる。
「宇宙、来たーーーーーーーーッッ!」
『はっ、勝手に逝ってろよ!』
「タイマ…――――とぉあ!?口上邪魔すんなよ‼」
「ゲンタロウ、んなこと言ってる場合か!?」
「いやいや、ダチとの喧嘩に名乗り上げって重要なんだよ‼」
「知るか!てかアイツダチじゃねぇから‼仲良くしゃべってたら駄目だから!?」
アラネアは脚部をバッタの様に収縮させ、一気に筋力を解き放った。ひと跳びだけで宙を舞うISたちを掻い潜り、彼女らの頭上を制した彼女は攻撃へと転じようとする。
「させませんわ!」
「接近戦よりもこちらの方がやりやすい!」
怪人態よりも大きい分、良い的だとレーザーやレールカノンを発砲させていくセシリアやラウラ。だが、次第に表情が曇る。確かに命中率はけた違いに多くなっているが、シールドエネルギーではなくコズミックエナジーの外皮に阻まれ致命的な攻撃を与えられていないのだ。通常の攻撃では無理だと解ると、二人は飛び切りの攻撃を繰り出そうと身構える。
『痒いな、おぉい?どーしたどーしたァ!』
嘲るように首を傾げ、IS乗り達を挑発する亡国機業のオータムだったが…――――だが。その時。
【ROCKET ON!】
「おぉりゃぁあああ‼」
『ぬぉっ、と!』
オレンジ色のパンチがアラネア・アラクネアに迫っていた。クローアームを上手く使いその一撃を防御したアラネアに、真っ白なロケットライダーは元気に声を張り上げる。
『隙を突きたいなら、声は抑えるべきだぜ?「そんなこと関係ないな!」…――――ん?』
「改めて…――――仮面ライダーフォーゼ!タイマンはらしてもらうぜ‼」
遮られた決め文句を言い切り、大満足したリーゼントがそこにいた。
「…――――あの友情バカ…!」
「ま、まぁまぁ箒……ゲンタロウらしくていいじゃない」
「流石ダチだな」
◆◆◆◆◆◆◆
「さって…――――、おぉ。やってるやってる」
鴨川の上空で激しい空中大サーカスが行われている時。ようやく真打が登場する。マシンディケイダーから飛び降りたツカサと楯無。その前にはクロークを着た二人の幹部が立っていた。
『……』
『来たか。IS学園の連中と言い、良くここが分かったな』
「いや何、少し裏技を使ってな」
だんまりを決め込むレオとは対照的に口数が多くなっているスコーピオン・ゾディアーツ。男声もどこか楽し気だ。そんな“彼女”に向かって更識楯無は口を開く。
「聞きたいことがあるわ、スコーピオン……いえ。『スコール・ミューゼル』と言ったほうがいいかしら?」
『……「あら、ばれちゃった」』
驚いたのか、一瞬だけスコーピオンが身体の動きを停止させる。そして喉を震わせるとゾディアーツとしての姿を解除し、もとの姿を現した。
その豊かな金髪と胸を持つ妙齢な美女に、ほぉと感嘆の声を上げるツカサ。場違いな反応にイラッとした楯無が、彼をヒールで踏みつけたのは全くの余談である。
「何を考えてるの、
悶絶するツカサを他所に、咳払いと共に楯無は視線を鋭くする。胸元が開いた豪奢なドレスを揺らしてスコーピオン・ゾディアーツの変身者、『スコール・ミューゼル』は腕を組み直す。
「そのIS、モスクワの深い霧…――――だったかしら?」
「昔はね。今は、
互いにニコニコと笑っているが、今にも戦いの火ぶたが切って落とされようとしているのが誰にも分かる。そんな凄みを感じさせる睨み合いである。ゴゴゴゴゴゴゴ……とかいう効果音が最もふさわしいだろう。
「……レイディ?じゃじゃ馬娘の間違いじゃないのか」
…――――一触即発の雰囲気を台無しにする言葉。そこに茶々を入れる人間など一人しかいない。
「あら、私をエスコートしてくれたじゃない?」
「嫌々ながらな、子守りは俺の仕事じゃない。幼稚園の先生の仕事だ」
「むぅ……」
足をさすりながら立ち上がる角谷ツカサ。涙目になりながらも冷淡な瞳はレオ・ゾディアーツの方向を油断なく見ていた。
「仲が良いのね?」
「そうでしょ?」
「…どうでも良い。とっとと終わらせて旅館に戻らせてくれ」
投げやりな言葉でのらくら言葉を返す彼。いつの間にかバックルを腰に装着させていたツカサは、ライドブッカーからディケイドのライダーカードを取り出していた。
「あら連れないのね。もう少し愛想よくしないといろいろ勘違いされるわよ、世界の破壊者さん?」
「知らないな。アンチに嫌われようが英雄として称賛されようがどうだっていいんだよ、俺は」
言うが早いかドライバーへとカードを挿入し、ハンドルを操作し変身シークエンスを完了させてしまうIS学園の用務員。
「変身」
「あらあら。なら……私も」
スコール・ミューゼルの指がスイッチに触れると赤黒い星雲が発生し、その身を怪物へと変貌させる。片やツカサの身体に十九の幻影が重なり合う。
【KAMEN RIDE DECADE!】
ドライバー音声と激しい負のコズミックエナジーの波動が空気を震わせ、その場の雰囲気を支配する。ディケイドと
『ディケイド…貴方の力は見させてもらったわ。私でも正攻法ではまず勝てないでしょうね』
「そりゃどうも?」
『だから、少し趣向を変えさせてもらうわね』
唸り声を上げたスコーピオン・ゾディアーツ。彼女に黄金の粒子が集まり出すと、近未来的なサーキット模様の入った強化アーマーが身体の各部を覆い尽くす。
「え……何、ソレ?」
『ゴールデン・ドーン・スコーピオン……』
人型であるのはそのままに、スコーピオン・ゾディアーツの背後には輝く光輪が浮かび上がり、全身に赤と金の鎧が展開されていた。その姿に呆気にとられる楯無とツカサ。
「うわ……キンキラキンね。アナタどこの聖闘士星矢?ミロ子?」
「…――――完全に余談だが、異世界にはマルスとか邪武とかいうライダーもいてな……まぁそれは兎も角。とりあえず、あの鎧ぶっ壊すか」
「聖闘士の鎧みたいに牡羊座が修理して復活、とかないですよね?」
「あれISだからな。コアを奪えば誰も復元できんだろ……ん?」
自分の発言に引っ掛かったのか、小首を傾げたディケイドだったがすぐさま頭を切り替える。眼前にはホロスコープスが揃っているのだから、気を引き締めなければ命取りだ。
『かかってきなさい。ザ・ホール崩壊までもうすぐよ……』
『久々に牙を研ぐに値する戦いになりそうだ…』
◆◆◆◆◆◆◆
一方こちらは鴨川上空。
「おっらぁァァァ‼」
「はぁぁぁッッ‼」
『笑わせんじゃねぇェェェェェ‼』
アラクネを纏ったアラネア・ゾディアーツは空中を目まぐるしい勢いで移動し、一夏と箒と交戦する。
「ぐっ…――――」
『ちっ、チマチマちまちま……うざってぇな、クソが』
圧倒的な力とスペックを持つアラネアだが、ISを纏った生徒たちの援護や包囲網から抜け出せずにいる。焦れてきたのか、まずは鬱陶しい友の絆とやらを断ち切ろうと思ったオータムはコズミックエナジーをISの武装へと集中させる。
『はぁぁぁ……吹っ飛びな‼』
「させるか!」
「なら、俺も!」
【SHIELD ON】
AICとシールドモジュールが同時に展開し、極彩色のエネルギー弾がIS乗り達の前で急停止し、シールドバッシュで弾き飛ばされた。その光景を見て、思わず舌打ちをするオータム。ならばと左腕にコズミックエナジーを集束させ光刃を発生させた。
…――――その時。
『がッ!?ぐ……あッ…!』
突然、アラネア・ゾディアーツの姿に揺らぎが生じ、彼女が纏っていたISがはじき出された。光刃を生成させていた腕がひび割れ、裂け目から血のように宇宙の不可思議なエナジーが噴出していく。
「な、どうしたんだ……あいつ?」
『ぐ、おおぉぉぉ!?』
さらにそのブレはどんどんと大きくなり、星屑となって周囲に分散される。
(あの傷は……?)
見れば、ディケイドの斬撃がかすった腕部分が桃色の光を放っていた。彼女は空中から落下している最中、先頃の戦いを思い出す。
(まさかあの野郎…、この為に執拗な攻撃を……!あぐっ!)
そう、左腕はDエグゼイドの姿でガシャコンキースラッシャーの斬撃を食らっていたのだ。その一撃は『リプログラミング』を再現した力を受けたといっても過言ではない状況だろう。一般ゾディアーツに擬態した身体が崩れ、『ホロスコープス』としての姿が剥き出しになる。そして、激しい水音がその場に響いた。
腕を抑えて川の中へ着水したその怪人は、バシャバシャ水音を立てて河辺に這い上がる。
『アァァ……ァ、あのピンクやろぉおおぉぉぉ…………‼』
「あー、…何と言うか、迫力に欠けた姿になったな?」
高度を落としそのホロスコープスを取り囲むIS学園の生徒達。その視線の先には、箒が言うように先程の蜘蛛の形態とは打って変わった怪人になっていた。虚無僧を思わせる頭部に、カミキリムシの様な触覚。見方によってはシンバルやゴキブリのようにも見えてしまう損な外見。だが、怪人の背後に立ったセシリアはそのマークを見つけて叫ぶ。
「……!?箒さん、お気をつけて!クロークの背中…――――『天秤座のマーク』ですわ!」
「つまり…――――幹部級のゾディアーツ!?」
荒い息を漏らす、黒光りする天秤座のゾディアーツ。だが突然身動きを止めると、ゆっくりと膝を伸ばし俯いた顔を持ちあげた……。
『…――――な…』
「……!」
単眼が赤く光り仮面ライダー部の全員を睨みつける。その怪人は、ぼそぼそ掠れる声でどす黒い心の声を漏らす。
『……――――すな、……見ぃ下すなァァァァァァァッッ‼』
「「「「!」」」」
腕を乱暴に天にかざし、地面に叩きつける様に振り下ろす。瞬間、生徒たちは足を何かに掴まれたと錯覚した。
いいや、錯覚ではなかった。天秤座のホロスコープスの持ちうる特性の一つ、
『私を軽く見てんじゃねぇぞクソガキどもがあァァァァァァッッッ‼』
「「「ッッわぁぁッッ‼」」」
錫杖で彼らの身体の操作権を奪い、縦横無尽に振り動かす。オータムはそれでも怒りが収まらなかったのか、頭部から紫色の雷を放ち、シールドエネルギーを削る追撃を放った。
「う……う…!」
『よくもさせたな、この姿にぃィ…――――』
怒り交じりに錫杖“ディケ”で地面を叩き、数十体の星屑忍者らを召喚するアラネア……改めてリブラ・ゾディアーツ。
「クッ…」
「ダスタードが、こんなに……!?」
『命より重い物なんてねぇよなぁ……!とっとと尻尾撒いて逃げろよ尻軽の餓鬼共が‼』
「なめんじゃねぇ!タイマンはるっつっただろーが!オラァ‼」
…――――一方、物陰で戦いの様子を見ていたナツミの足元に、コロコロと転がってきた鈍色の結晶体。彼女は慌ててそのコアを拾い上げた。
「あれ?…――――(たしか、これ……ISコアでしたっけ?)……貰っとこ」
彼女がとったこの行動が、今後の展開を大きく変えることになるのはまだまだ先のことである………――――。
◆◆◆◆◆◆◆
「……ッ爆発させようとしてもナノマシンがエラーを起こしてる…?水蒸気が分子レベルに蒸発してるってこと……?」
『甘いわよ……このゴールデン・ドーンの力を舐めない事ね』
空中では蠍のISと透明な水翼の天使が激突する。一方の地上ではライダーと怪人の攻防が目まぐるしい勢いで展開されていた。
「なかなか面倒だな……、よっと!」
『グルゥ…、…ガァ‼』
電光にも近い速度で駆け回るレオ・ゾディアーツ。ライドブッカーのマーキングによるエネルギー弾攻撃もヒット直前によけられてしまい、ディケイドとしては戦闘開始時から攻めあぐねていた。マドカがタイミングを見計らうと同時、レオの鉤爪が手甲のように伸び、ディケイドは斬撃を数度そのボディに受けてしまう。
「おぉっと……!あぁ、そう言えば疑問だったんだが、さっきのマキシマムクリティカルフィニッシュ、どうやって防いだ?」
『…――――姿を変えられるのは、お前だけではないということだ』
手に持ったスイッチのボタンを押し込むと、レオ・ゾディアーツの身体が星雲に覆われ、真っ赤な体に棘付きの鋏を持ったホロスコープスへと変身する。
「おいおい。星座カーストを覆した最強の蟹じゃねーか……面倒なこった」
『私は特異体質のスイッチャーだ。見ての通り他のホロスコープススイッチを使う事ができる。それも持ち主以上の力を引き出してな』
「っ!」
そしてそのまま鋏を振り下ろし、斬撃が屈んだディケイドの真上を通過する。そして背後にあった寺社仏閣が真っ二つである。
「あっぶね……!おいお前、文化財保護法って知ってるか?」
ディケイドのコメントも無視したエムは、片手に光球を発生させ最輝星にそのエネルギーを取り入れた。
『……超、新、星』
「何っ⁉」
「ちょ……!待て待て待て!?」
『は、おいマドカ何して…――――』
その変化を察知した一夏一行。すぐさま衝撃に耐えようと身構えるが…――――。
―GYIIEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAA‼―
『『「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」エムゥゥゥゥ!?』マドカコノヤロォォォォーッッ‼』
キャンサー・ノヴァになったマドカの咆哮で吹き飛ばされるIS乗り(+リブラ・ゾディアーツとスコーピオンIS装備状態)。無残である。
「あだだッ……!あったま来た、カニ料理にしてやろうか…!」
『できるか?』
そんな事を構わずディケイドとMの変身したキャンサー・ノヴァは戦いを再開した。おのれディケイドォォ!と叫んでいた生徒たちの声なぞ聞こえるはずが無い。うーむ、この破壊者。
それはともかく……。今の彼女の外皮は、フォーゼの世界において裁てるものが無いレベルの硬度を有している。正攻法の攻撃では全くの無意味であることを察知したディケイドは、素早くライドブッカーから一枚のカードを取り出した。
「変身」
【KAMEN RIDE……――――RYUUKI!】
鏡像が幾つも発生し、ディケイドの身体に集まるとそのライダーのシステムが一新する。鉄仮面に赤い体。頭部には銀色の龍の面影を纏う鏡の中の戦士。ディケイドは仮面ライダー龍騎の姿へと変身した。
「お好みは何だ?焼きガニ?蒸し蟹?」
『……、生(ボソッ)』
「お前の意見は求めてねぇ」
暴論に近い受け答えの後、D龍騎はさらにドライバーにカードを入れた。
【ATTACK RIDE STRIKE VENT!】
「ハァ!」
空から降って来たドラグクローを右手に装備し、超火力によって甲殻の内部に深刻な熱ダメージを与えていくD龍騎。その火炎に思わず後ずさるキャンサー・ノヴァ。
『ぬぐっ……!』
「ちなみに、俺の好みは蟹の御御御付だ」
『お前の意見も聞いてない……!』
売り言葉に買い言葉、ツカサに向かって吐き捨てたエムは自身に流れるコズミックエナジーの奔流を操り、キャンサー・ノヴァの状態でインフィニット・ストラトスの如く浮遊しだした。これにはディケイド龍騎も一瞬面食らい…――――そして。
「蟹が飛ぶな!」
ツッコミついでに手に持ったドラグセイバー(攻撃力2000AP=100t)を投げつけた。だが…――――。
―バキンッッ!―
「あ、………――――折れたぁ!?」
『ふふ……無駄だ。その程度では私に傷一つ付けられない』
「チッ……。なら、これだ」
【ATTACK RIDE ADVENT!】
再びカードを選択するD龍騎。すると鴨川の水面から金属の様なものが擦れる特徴的な音が響き、そして真っ赤な影が現実世界へと呼び出された。
「んじゃ、大怪獣バトルと洒落込もうぜ?」
『ふん……、やってみろ』
ディケイド龍騎の騎乗するドラグレッダーとキャンサー・ノヴァが夕焼けの空で激突する………――――。
◆◆◆◆◆◆◆
一方、キャンサー・ノヴァの発生によって吹き飛んだIS学園の生徒たちは、それぞれ別な場所に墜落していた。鈴が最後に認識した光景では、一夏と箒、セシリアは山間部に、シャルルやラウラそしてフォーゼは町中に激突していた。つまり、鈴は今ただ一人で横たわっている。
「あってて……市街地で超新星なんて発生させんじゃないわよ……、にしても文字通り吹っ飛ばされたわね……」
痛みにしびれる身体だったが、“まぁ、おかげで変身しやすくなったけど”と誰ともなく感謝し、心の中で呟いておく。そしてシールドエネルギーが尽きそうな愛機“甲龍”にお礼を言うと、もう一つの彼女の姿へと変わる装置を身体に取り付けた。
「…――――M-BUS、変身認証よ」
タチバナの声はスイッチから聞こえてこなかった。だが、どうやら自動認識されたようだ。ベルトからディスコ風の軽いシステム音声が流れだす。
【METEOR Ready?】
スライドレバーを展開させ、拳法の型のように腕で弧を描くと右側についたレバーに手を叩きつける。
「変身!」
成層圏よりも遥か上、衛星M-BUSからコズミックエナジーが彼女の下へ照射されると、その身が銀河を思わせる蒼い仮面ライダーに変化、真っ青な炎を纏わせ河原で大暴れする三体のホロスコープスたちへ一直線に飛んでいく。
『……んぉ?』
『…――――何だ、あれは?』
『ッ避けなさいオータム、M!』
上司のスコール・ミューゼルの声で身を翻すホロスコープス。その流星が彼女らにぶつかることは無かったが、追尾弾を思わせる軌道でキャンサー・ノヴァの脚部を弾き、地面に激突する時の余波でリブラ・ゾディアーツにたたらを踏ませた。激しい爆発音と共に、大きなクレーターの中心から濛々と煙が立ち昇っている。
『ぐっ…――――』
『……ッ、そァ!一体なんだってんだ!』
戻ってきた専用機持ちのISに組み込まれたセンサーが、その大穴の中心に一体の人影があることに気が付く。その姿を認知した全員が呆気にとられる…――――。
「……え?」
「…な?」
「は?」
「ぁ、あぁあぁあぁぁ!?新しい仮面ライダー!?」
驚いたのは亡国機業たちだけではない。フォーゼのシステムしか知らない生徒たちはもっと驚いていた。特に仮面ライダーファンの簪の狼狽えようはどこぞのドルヲタの様だった…――――。
『アナタ…――――何者?』
混乱の中にいる彼女らに構わず、流星のライダーは鼻を擦る様な動作とともに口を開く。二人のホロスコープスを見て言った。
『…――――仮面ライダー、メテオ』
『へぇ……お前だな?IS学園を裏から守っているライダーってのは。京都土産には丁度良い‼』
『舐めるな。そんな歪な秤ではあたしを計れない。お前の定めは、あたしが決める』
リブラ・ゾディアーツ
オータムの変身するホロスコープス。本来ゾディアーツスイッチでは八十八星座以外の“星の運命”は再現できないため、蜘蛛座のゾディアーツなど存在しない。アラネア・ゾディアーツの姿は世界に干渉する幻術によって身体を変化させたもの。その力を利用しオータムは亡国機業内で諜報員として目覚ましい戦果を挙げている。念動力も強力で、ISやライダーの空中浮遊を含む重力操作機構を封じる事が可能。
実は変身者の身体能力も高いため、レオには及ばないものの亡国機業の主要戦力の一人となっている。冷静さを保ち続ければIS学園を一人で相手取る事も造作が無い。
オータムがリブラに選ばれた理由は
・オータム→蜘蛛→レンゲル→仮面ライダー剣→ダディヤナザン
・ヘタレ、愛すべき小物
などの要素から。ネビュられそうだ……。
小ネタ
>「蟹の御御御付」
本家の門矢士が好きだと思われる料理の一つ。ファイズの世界で海東が彼の好物として朝ごはんに提供した。
>「お前の意見は聞いてねぇ」
アナザーなディケイドの口癖。ツカサにも通じる要素がある。
>「折れたぁ!?」
龍騎(ブランク)の初戦闘シーン。城戸は戦っていないがボル“キャンサー”繋がり。折れた時の敵はディスパイダーだが、近くに蜘蛛姉がいるのでなんとか。